「俺たちに何かあるかも、とでも思っているのか?」「……どうしてそれを?」レティーシャは驚いたが、自分を見る目の優しさに強がりの鎧が外れた。「みんの声が聞こえなくなるのは嫌です」「俺は、絶対に君を一人にしない」レティーシャを捕らえた赤い瞳がやんちゃな光を帯び、アレックスの表情が小さな男の子が宝物を披露するような自慢げなものになる。「安心しろ、俺たちは全員ウィンスロープだ」ウィンスロープの名に、周りが静かになる。「ソフィアだって戦うぞ、彼女の平手打ちはすごいのだからな。何度この尻を叩かれたか。誰もそう簡単にやられないし……もともと、先手必勝がお家芸だ」アレックスが顔をあげ、会場の者たちをじっくり見わたす。その美しい赤い目は悪魔のような冷酷な光を宿す。「ネズミがどれだけ湧こうが、レティーシャが心配するようなことはない。レティーシャの目に留まる前に、俺たちが仕留めてみせる。ネズミ捕りは……それはそれはもう、とーっても得意だからな。いままでは使用人に任せていたが、そろそろ俺も出ようか。我が愛槍もたまには活躍したいだろうからな」ただ一人、身長差でアレックスの目が見えないレティーシャだけはその目の本気に気づいていなかった。悪魔のように笑うアレックスに気づかず、その腕の中で安心していた。「アレックス様」すり寄るようなレティーシャにアレックスは驚き、紅蓮の悪魔がひゅっと引っ込んだ。威圧感は霧散し、貴族たちは(特に男)はほうっと息を吐く。「レ、レティーシャ?」キョドるアレックスの目に映る自分をレティーシャはジッと見る。(もし囚われるなら、この赤色世界がいいわ……)「アレックス様……」「レティーシャ……」完全に二人の世界。まるで歌劇のワンシーン。そして、歌劇ならここで幕が降りるのだが――。「ウィンスロープ公爵! 義理のご姉弟の仲が良いのはいいことですが適切な距離を保たれてはいかがですか?」その言葉にレティーシャはパッとアレックスから離れた。レティーシャはこの瞬間までアレックスがラシャータの夫であることを失念していた。例えそれが書類上の関係とはいえ、自分たちの姿は不適切に違いなかった。(私、アレックス様の醜聞に……)どう振舞っていいか分からず戸惑うレティーシャの肩に、アレックスの手が触れる。その温かさと大きさにレティーシャの目
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