All Chapters of 隠された愛 ~ 「もう少し」ってあとどれくらい?: Chapter 141 - Chapter 146

146 Chapters

【外伝】4-5

「派手にいこう」派手。それは、凱おじさんの大好物だ。「レストランを貸し切ってパーティーだ」「かしきり?」「全部、俺たちのものにするってことだ」全部……お店を?できるの?僕は驚いて、海と顔を見合わせた。海は、笑顔。海の目の中の僕も、笑顔。なんだかすごいよね。「ホワイトデーはな、男性が女性をもてなす日だ」お祖父ちゃんが静かに言う。今日はお祖父ちゃんと会議に参加している。背筋がまっすぐで、声も落ち着いている。お祖父ちゃんは、元外交官。日本を守るために、外国の人とむずかしい話で戦うお仕事をしていた。外国では、バレンタインデーに男の人が女の人に「好き」って言うんだって。奥さんや恋人だけじゃなくて、お母さん……とか、『いつもありがとう』って言いたい女の人に気持ちを伝える日。お祖父ちゃんによると、日本人の男の人は女性に対して気持ちを言いなさ過ぎなんだって。将来好きな子ができたら、相手がもう嫌だって思うくらい、好きだって言いなさいって言われた。嫌なことをしていいのかな?そう思ったら、凱おじさんは「嫌よ、嫌よも、好きのうちだ」と教えてくれた。海が「ママはパパのこと嫌いって言っているけれど、それは好きってことなんだね」と言ったのには苦笑していて、その隣で蒼叔父さんは凹んでいたけれど。.「レディーをエスコートする。椅子を引き、ドアを開け、花を贈る」花!「僕もやる!」「もちろんだ、キャプテン」凱おじさんが僕の肩を叩く。「キャプテン? 僕が? おじさんじゃなくて?」「これは煌が考えたことだ」「凱伯父さん、僕は?」「海は副キャプテンだ。さて、今回のテーマは“ありがとう”だから、ここは思いきり格好よくレディーファーストでいくことを提案する」れでぃー……?「女の人を大事にするってことだよ」海が「ママを?」と聞く。「そう、海のママも、お祖母ちゃんも、翠おばあちゃんも……あとは、咲さんかな」お父さんの言葉に、凱おじさんが少しだけ咳払いをした。「凱おじさんへの報酬だね」「……黒崎になんて言うべきか……」がっくりって感じの蒼叔父さんの肩を、お父さんがポンポンって叩いた。「よし、決まりだ。レディーたちを招待して晩餐会だ!」晩餐会。なんだか、すごく大人だ。 *計画は、僕と海が中心になって進めるって決まった。まずは、
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【外伝】4-6

蒼叔父さんが、僕たちに係を決めてほしいといった。一生懸命考えて、お祖父ちゃんは僕たちにエスコートを教えてくれる係。お父さんはパソコンで会場を演出する映像と音楽を作る係にした。蒼叔父さんと凱おじさんは「てはい」って係をやると言った。あとは、当日の送り迎え。「「これは絶対にゆずらない」」凱おじさんと蒼叔父さんは真剣にじゃんけんした。すごいことに、ずっと相子が続いた。僕たちが飽きてきた頃、お父さんが呆れて「ふたりでやれ」って言った。さすが、お父さん。そして、僕たちがリーダーで……いろいろやる!なんだかすごい。.「煌、レディーの椅子はどうするんだ?」いけない。いまはお祖父ちゃんがエスコートを教えてくれる時間。「引く」「ゆっくり、音を立てずに引く、だよ」お祖父ちゃんは実演してくれる。スーって椅子が動く、すごい。「女性が座ったら、静かに押す。背もたれに触れないように」む、難しい。海は椅子を引きすぎて転びそうになった。みんなで笑う。「練習だ、練習」凱おじさんが言う。「失敗してもいい。本番で成功すればいい」なんだか勇気が出る。  * 夜、僕はお父さんの部屋に行った。「お父さん」「ん?」「僕たち、ちゃんとできてる」お父さんは少し考えて、笑った。「ちゃんとできているかどうかは、当日のレディーたちの反応で決まるんだ。でも、煌が相手を大事に思って計画しているから、お父さんはちゃんとできていると思うよ」「かっこいい?」「ああ、かっこいい」その言葉だけで、十分だった。 *招待状を渡す日。僕は正座をして、お祖母ちゃんに手紙を渡す。「ホワイトデーの日に、晩餐会にご招待します」お祖母ちゃんは驚いた顔をして、それからゆっくり笑った。『煌、ありがとう。もちろん、行かせてもらうわ』翠おばあちゃんは、郵便ってやつをした。切手を貼って、住所を書いた。赤いポストに入れたのは海の役目。僕たちがポストの前で「届きますように」って手を揃えたら、凱おじさんが『よくできました』って笑ってパフェをごちそうしてくれた。『煌ちゃん、ママに渡したよ』翠お祖母ちゃんからの電話を切ってしばらくしたら、海から電話がきた。嬉しそうに報告してくれたけれど……陽菜おばさん、どう思ったかな。「陽菜おばさん、なんだって?」『
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【外伝】4-7

「「よろしくお願いします」」今日はお父さんたちと一緒に、パーティーをするレストランに行った。お父さんたちは名刺交換ってやつをした。大人の儀式で、僕たちは子どもだからお父さんたちが代わりにやってくれた。「テーブルクロスの色はどうしますか?」「「白」」白以外はないって気持ちで、僕も海も即答。「テーブルに飾る花は、何かご希望はありますか?」「ピンク!」「青!」……海と、合わなかった。どうしよう……海、青が好きだもんな。蒼叔父さんの色だからって……でも、女の人が青は好きかなあ。「煌はなんでピンクって言ったんだ?」「女の人はピンクが好きだから」「なるほど」お父さんは僕の頭を褒めるように撫でてくれて、風船の色をピンクにしたらどうかと言った。風船があった!デザイナーのお父さんがスケッチブックに白とか色々なピンクの風船に、金色と赤いのリボンをつけたかっこいいデザインを考えてくれた。いつもみたいにパソコンじゃないのにすごく上手!「お上手ですね」お店の人も、すごいって目でお父さんを見た。えっへん。「僕、将来お父さんみたいな仕事をするんだ」「それは楽しみだ」僕の隣で「ずるい」と言った海が、蒼叔父さんにしがみつく。「煌ちゃんばかりずるい! パパも絵を描いて」「え……俺は、絵は……」「海、いやなことがあった日に描いてもらうといい。めちゃくちゃ下手だからお腹が痛くなるくらい大笑いできる」「兄さん!」お父さんの話に凱おじさんが大笑いした。「そこまで笑うなら、描いてみろよ」蒼叔父さんが凱おじさんにスケッチブックを押しつけた。「「おじさん
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【外伝】4-8

「本日は、ようこそお越しくださいました」レストランの人が扉を開けてくれた。あの日、僕たちと『うちあわせ』をした人だ。扉の先は、あの日僕たちがお願いしたものになっていた。真っ白なテーブルクロス。テーブルには濃い青や薄い青が、空や海のように広がる花が飾られている。風船は、お父さんがあの日スケッチブックに描かれていたものと同じ!僕と海で決めた全部が、そこにちゃんとあった。海が僕の手を引っ張った。うん。「「ようこそ、いらっしゃいました。お席にどうぞ」」 だあっ!返事をしたのは、翔だった。翠おばあちゃんの膝の上で、まるで、僕たちと一緒に準備をしたんだぞって言いたそうな顔をしている。「あはははは」僕が笑うと、海が笑って、みんな笑った。.なんだろう?お祖父ちゃんに教わったように、お祖母ちゃんの椅子を押したところで、何かが聞こえた。……誰かが、きた?海を見ると、キョトンとしている。そうだよ。今日は“かしきり”、僕たちの場所なのに。レストランの人が慌てた感じで入口のほうにいくから、僕も行こうとしたけれど、お父さんに手をひかれた。「……お父さん?」「煌、お前はいかないほうが良い」お父さん……ちょっと、怖い顔をしている。どうして……。「まあ、貸し切り?」その声を聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっとした。あの人だ。お祖母ちゃんのお友だちの人。「せっかく来たの。隅っこでもいいから、入れてくれないかしら」お友だちの人の声に、お祖母ちゃんの眉が寄った。これは『だめ』の印。おばあちゃんがこの顔をしたら、僕たちはそれをやめなきゃいけない。怒られるから。「貸し切りって言葉の意味が分からないのかしら」「身内も華やかになったことだし、お付き合いの見直しが必要だね」お祖母ちゃんとお祖父ちゃんのお話しは、アニメで見た作戦会議みたいだ。「それにしても……しつこいな」お父さんが困ったように言う。海を見ると、困った顔。きっと僕も同じ顔をしている。だって、計画が台なしだ。レストランの人だって、困っている。凱おじさんが席を立った……凱おじさん?凱おじさんと目があった。そして、凱おじさんは僕のほうにくると、「行くぞ」と言った。「凱さん!」「いまの煌なら大丈夫さ。任せろ」凱おじさんはお父さんにウインクをする。「危険な目に合わせ
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【外伝】4-9

「煌くん、久しぶり。覚えてる?」「うん。僕に、僕のお母さんになりたいって言った人でしょう?」女の人は、驚いた。そして一瞬、怒ったような顔をして、すぐにあの嘘っぽい笑顔になった。「ええ、そうよ。私ね、煌くんのお母さんになりたいの」この人は、やっぱり少し怖い。優しく笑っていても、何を考えているか分からない。心臓が速くなる。でも……大丈夫。僕は、海の手を握った。海は驚いた顔をしたけれど、すぐにニッて笑ってくれた。これが、笑顔。小さくて温かい海の手が、僕の手をぎゅっと握り返す。うん、これが、僕の大切なもの。「おばさんにとって、“お母さん”ってなに?」「お、おば……」おばさんの顔から嘘っぽい笑顔が消えて、ぎょって驚いた感じになる。これは、本当の顔。「オバサン……子どもって、容赦ない……」凱おじさんは、笑っている。これも、本当に笑っている。「おばさんは、僕のお母さんになって、どうするの?」……上手く聞けない。通じるかな……。おばさんは、キョトンって顔をしたけれど、ニッコリ笑った。嘘っぽいだけだから、もう笑わなくてもいいのに。「本当のお母さんに代わって、大切にするわ」「そこの人みたいに?」僕はおばさんの“お母さん”を見る。「ええ、そうよ」「僕は、こんなお母さんは要らない。だって、凱おじさんに非常識って言われて、馬鹿って言われるお母さんだよ? 欲しいと思う?」凱おじさんの真似をして、ふうってため息を吐く。「お、おもちゃを買ってあげるわ」「要らない
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【外伝】4-10

「前菜です」レストランの人、お父さんがウエイターって教えてくれた、ウエイターがかっこよくお皿を置く。こういう仕事も素敵かも。「とても春らしいわね」「サーモン大好き」陽菜おばさんと海は楽しそうに話している。「女ってシーザーサラダが好きだよな」「ご存知の数の多い方がいうと実に信ぴょう性がありますね」凱おじさんと咲さんは楽しそうに喧嘩している。「お父さん、あれが“ケンカップル”?」「……そうだけど、そんな言葉をどこで覚えたんだ?」「学校」「最近の小学生はすごいな」そうなの?.「チキンのクリーム煮でございます」チキンのクリーム煮はお祖母ちゃんが時々作ってくれる僕の大好物。「柔らかくて食べやすいわ」「家庭料理だけど、こういうところで食べると特別感があるね」翠おばあちゃんたちも美味しそうに食べてる。みんなニコニコ笑っている。僕の大好物で笑っている。嬉しいな。あ、そうだ。「お祖父ちゃん、チキン野郎ってどういう意味?」「……そんな言葉をどこで?」「凱おじさんが言ってた」大人たち全員の顔が凱おじさんに向いた。どうしたんだろう?凱おじさん、顔が引きつっている。  * 「煌、海、いくぞ」凱おじさんに呼ばれて、僕と海は立ち上がる。お父さんたちは不思議そうな顔をしているけれど、僕はウインクして『大丈夫』と安心させる。「凱さんに似て……」「いいじゃないか、これからの時代に図太さは大事だよ」「でも、煌もイケメンに育つだろうから、女の子とのお付き合いには注意しないと」&hellip
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