今でこそこんな風に冷静に分析しているけど、赤ん坊の写真を見た直後は荒れた。「どうして」って、いま思えば陽菜に理不尽だと呆れられそうなことを思って、でもかけなしの理性がここで陽菜を問い詰めてはいけないと俺の衝動を抑えた。つまり、辛うじて俺は陽菜に何もせずにすんだ。 体調不良と言って青山のマンションに逃げた。そこのあった酒を全部飲んで、それでも足りないからデリバリーで注文して、いまの時代なんでも届くなって思いながら暴飲を重ねて二日酔い。胃をぐるぐるさせながら気分の悪さに耐えて、ただベッドに横になりながらあの赤ん坊の写真を思い浮かべた。 最初は、陽菜の裏切りだと、許せないと思った。俺を捨てたこと。李凱に抱かれたこと。そして、李凱の子どもを産んだこと。……完全に八つ当たりだ。許せない?それは違う。許さないという、ただ単に俺の我侭。陽菜にだって幸せを求める権利があり、そのために俺との別れを選んだのだから、陽菜はもう俺の赦しなんて求めていないのだ。陽菜が求めた幸せが、李凱との子どもだったというだけ。……俺は我侭だから、陽菜は寂しさで人肌を求めただけだと思おうとした。李凱が陽菜の傷心につけ込んだとか、あの李凱の見た目に陽菜がちょっと蹌踉めいたとか、自分に言い聞かせようとした。……馬鹿だな、陽菜のこと、分かっていたくせに。陽菜はそんなに弱い女じゃない。 ――― I love you, Kai. 陽菜は電話でそう言っていた。愛しているって……とても優しい顔と声で、李凱に「愛している」と言っていた。あれを見て、分かってしまった。陽菜は李凱を愛している。あの言葉を、表情を、感情を俺は疑うわけにはいかない。――― 愛しているわ、蒼。あの全てはかつて俺に与えられていたものだから。あの顔、あの声での「愛してる」を嘘だと言ったら、俺に与えられていたものも嘘になってしまう。あれを嘘にはしたくない。 結局、悪足掻きの初っ端で撃沈した。陽菜にふられただけなら“まだ”と足掻けたけれど……子どもじゃだめだ。だって俺は陽菜が子どもを欲しがっていたことを知っている。だから、孕ませようとしたんだ。例え俺を憎んでも、陽菜は俺の子どもを産んでくれる。子どもがいれば俺と陽菜が完全に切れることはない。そんな俺の悪辣な作戦を
最終更新日 : 2025-12-21 続きを読む