隠された愛 ~ 「もう少し」ってあとどれくらい? のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

132 チャプター

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そんなことが嫌ってほど続いて、俺は投げやりな気分でまとわりつく女たちの中で一番人気があるという女と関係をもった。多分このときは感覚で、一番人気の女なら、他が諦めると分かっていたのだろう。 キスは嫌いだと言ってキスをせず、女の慣れた手管で反応させた自分のものを、女が自分で濡らした体に入れただけ。友人たちの言うような最高に気持ちいい初体験ではなかったが、友人たちの言うように世界は変わった。俺が一番人気の女を選んだことで、他の女は静かになったのだ。周りの人間をランク付けして判断する女たちだ。俺と関係を持った女に「負けた」と感じたから、それが彼女たちを大人しくさせたらしい。そして関係を持った女も、これまでと対応は変わらなかったはずなのに、何に満足をしたのか適当に次の男を見つけて俺の傍からいなくなった。 「女も一度ヤれれば満足なのか?」「おまえとヤったって箔がつけばいいんだろ」俺の疑問に答えたのは黒崎だった。あるパーティー会場で「白川茉莉から逃げるのが下手過ぎてみてられない」と声をかけくれたのがきっかけで、黒崎とは大学時代からの友人だ。 付きまとう女たちが煩わしくなると、その中で一番という女を抱いて追い払う。セックスって何のためにするのだろうと思いながらそんな生活をしていたら、そんな俺に白川茉莉は「それなら私がお相手しますわ」と宣った。この宣言のとき、白川茉莉は謀って俺とあるクラブの個室で二人きりになっていた。しかしこのことで、俺は白川茉莉に「自分だけは絶対にない」と思い知らせることができた。俺のものは白川茉莉に反応することがなかったからだ。 白川茉莉は、最初は抗う俺を楽しそうに見て、俺のシャツを脱がして肌に触れていた。しかし、全く反応しない俺の体。冷静になる俺とは対照的に、白川茉莉は徐々に焦り始めた。後ろ手で縛られて閉じ込められていた状況にも拘らず、「本当に無理ってあるんだな」と俺は変な感心をしてしまっていた。 俺を勃たせようと白川茉莉は躍起になったが、その気にならないものはならない。結局、白川茉莉の手の中で俺のものが硬くなることはなく、白川茉莉が唖然としている間に黒崎が俺を助けにきてくれた。大事ではあったが事なきを得た、それがこの事件の感想。ただ、このとき黒崎にはEDを心配された。俺は笑って「ないない」と
last update最終更新日 : 2026-01-14
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30

白川大老の葬儀後、俺は秘密裏に白川百合江の夫である白川泰吾に会った。率直に白川母娘を今後どうするのか尋ねた。白川泰吾は白川大老が婿に推しただけあって優秀であり、白川大老を尊敬し白川家のためなら非情にも慣れる男だ。彼は俺の言わんとすることをすぐに理解し、白川家は白川百合江と白川茉莉を抑えることはしないが、今後何かあれば冷徹に対処すると約束してくれた。ただし、それは俺が父を抑えられたらという条件付きだった。藤嶋家から協力要請が出てしまったら、その発端が白川の直系であることもあり、白川家は全面的に協力しなければいけない、と白川泰吾は俺に説明した。その口調は淡々としていて、陽菜を守らなければと焦る俺を少しだけ鎮めてくれた。   *  再び現れた白川茉莉を、また周囲は婚約者と思うようになった。今回は勘違いではない。完全に計算ずく。 以前の婚約騒動で、藤嶋と白川がより強固につながると見た企業からの大口案件が増えた。その甘い蜜の味を藤嶋建設の上層部は覚えていた。白川茉莉を妻にすれば、藤嶋建設は一層飛躍して世界的なプロジェクトに参加できると彼らは思っている。彼らは俺と白川茉莉が結婚していないことを知っている。だから、毎日のように俺に白川茉莉との結婚を推してくる。 実際に世界的なプロジェクトの鍵を切る社長の妻があんな選民意識の強い地雷女では飛躍どころか飛散すると思うのだが、日和見な奴らはその辺りは俺がどうにかするだろうと思っている。父はこの状況に興味がない。父にとって白川百合江以外はどうでもいい。さらに、企業のトップらしく人の感情を読む能力はあるから、俺が白川茉莉を妻にすることはないと理解している。俺が大切にしている祖母さんに白川茉莉は一生の怪我を負わせたから。だから積極的に俺と白川茉莉をくっつけようとしなかった。徒労で終わると分かっていたから。白川百合江を満足させる最低限の手助け、俺に「茉莉さんと〜したらどうだ」と言うくらいしかしない。最終的には俺が白川茉莉をどうにかすると、完全に丸投げだった。 息子の俺から見て父は経営者としての能力は高い。ただ驚くほどに父は白川百合江以外に興味がない。それを事業に向ければ藤嶋建設を父の代でも大きくできただろうにと思う。でも、白川百合江が絡めば父はなんでもする。「白川百合江のため」で
last update最終更新日 : 2025-12-12
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31

白川茉莉が現れてから、陽菜からの信用が日に日に減るのを手に取るように感じていた。デートくらいしたらいい、マンションに閉じ込めては陽菜が可愛そうだと黒崎に忠告されて「映画くらいなら」とデートの約束をしたときも――。「茉莉さんがお前を青山のあたりでよく見かけるといっていたぞ。贔屓にしているレストランがあるらしいから、今度一緒に食事にいってきたらどうだ?」父の言葉に、デートは中止にしようかと思った。しかし、「好きな監督の映画だから」と嬉しそうな陽菜に何も言えず、結局は現地集合で現地解散のデートとなった。「蒼が夫じゃなくて、黒崎さんが私の恋人かと思ったわ」陽菜にはそう言われ、それから陽菜が俺を何かに誘うことはなくなった。 それでも陽菜は我慢してくれた。甘い目論見も、あった。藤嶋と白川の蜜月関係は藤嶋の社員なら知っている。白川茉莉が俺の周りを彷徨いても、取引先の娘を無碍にできないだけと、藤嶋建設の社員の陽菜なら分かってくれると思った。「仕方がないんだ」「もう少し我慢してくれ」何が仕方がないのか言わない俺を、「もう少し」しか言わない俺を、陽菜は不信の目で見ていた。 白川茉莉は毎日のように会社に来た。白川茉莉が会社に来るたびに俺は相手を命じられた。本来の仕事さえ邪魔されてしまい、父から実権を奪う準備は大幅に遅れた。白川茉莉がこんなに会社にきていたのは、周囲に俺の婚約者と誤認させる目的があったからだろうが、俺の婚約者、つまり次期社長夫人としてごまをする社員たちにチヤホヤされるためでもあった。白川茉莉の関心を買おうと、取り巻きの社員たちは俺の情報を白川茉莉に与え始めた。こうしてそこかしこに監視の目があるような状態になった。俺は青山のマンションに帰るどころか、二台目のスマホで陽菜に連絡を取ることすら儘ならなくなった。連絡もよこさず、帰ってこない夫。会社で他の女を侍らせている夫。本当に、「我慢してくれ」なんて、よく言えたものだ。   *  白川茉莉は俺の周りにいる女性に過敏に反応した。想像はしていたが、業務で接っしている女性社員でしかない相手すら「彼女は蒼さんに好意をもっている」と攻撃的になった。高校時代のようで、白川茉莉の癇癪は子どものようだった。会社ではパワハラだ。理不尽な攻撃を受けた女性社員には俺が謝罪し、俺は被害者
last update最終更新日 : 2025-12-13
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最初は、早く食べて帰ろうと思っていた。でも白川母娘は上機嫌で、「俺と結婚したら」なんて妄想を揃って繰り広げていて、それの一つ一つが、全てが、俺が陽菜にしてあげられないことを列挙された気分になった。「俺があなたの娘さんと結婚することは絶対にありませんよ」会うたびにいつも言っている台詞だったが、このときに混じった怒気が白川母子に何かを感じさせたのだろう。俺の記憶にある限り初めて、白川百合江から「どうして?」と聞かれた。 「彼女を抱くことができないからです」それを聞いた白川百合江は、俺のこれを冗談だと思いコロコロと笑った。しかし、俺の隣に座っている白川茉莉の顔が強張っていることに気づいて、徐々に笑いは小さくなっていった。「冗談……」「冗談ではありません。実際に経験済みです、全く反応しませんでした」俺の明け透けな言葉に白川茉莉の顔が屈辱で赤くなった。流石は母娘というべきか、俺が言っていることは真実だと白川百合江は察した。ようやく、という思いだった。 「どうして……」「当然でしょう。俺は祖母を大事に思っています。その祖母に一生のケガを負わせた娘さんを決して許せない。恨んでさえいる。そんな女性を妻として迎え入れる気には到底なれない」「なるほど、それならば仕方がない」ずっと黙っていた父の言葉に、白川百合江は驚いた顔で隣に座る父を見た。「司さん……」「白川家には立派な後継ぎが必要だと言ったのは君だろう。蒼では茉莉さんの子どもの父親にはなれない、それなら他に夫を探すしかない」この言葉に白川母娘は驚いたが、俺も驚いた。思い返せば、父の考えは一貫している。父は白川百合江以外に興味はない。 「そんな! 小父様、私だって頑張れば……」「まあ、確かに体外受精とか代理母とか方法はあるが……」父はあっさりしていた。白川百合江はそんな方法は屈辱だと、白川茉莉が可愛そうだと父に訴えた。しかし、父はその訴えを全く理解しなかった。多分、父は本気で分からなかったのだ。白川百合江のことではないから。大して考えていない。仕事と同じ処理の仕方。プランAが無理ならばプランBにすればいい、というくらいの感覚だったのだと思う。 「蒼さんが茉莉を妻にすれば愛することも……」「それは無理だ。妻だからといって愛情が芽生えるわけではない」父の俺に接す
last update最終更新日 : 2026-01-15
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兄さんが西山家の養子になっても、俺と兄さんはよく会っていた。お互いに会社員になって忙しくなっても、それでも年に三、四回は会っていた。陽菜と共に外に出るようになり、陽菜の信頼が少しずつ修復されつつあると感じていた。だから、陽菜への隠し事は少しずつでも減らすべきだと考えた。兄さんのこと。兄さんを陽菜に紹介したいという気持ちもあった。次に兄さんに会ったら「陽菜と会ってみないか」と提案してみよう。そのための口裏合わせをしようなどと、その頃はそんなことを考えていた。 兄さんの養母である西山夫人から、兄さんが病院に運ばれたという連絡がきた。急いで病院に駆けつけたが、兄さんは意識不明の重体。落ちたときにぶつけた場所が悪く、医者から兄さんは植物状態になる可能性があると言われた。兄さんは歩道橋の一番上から落ち、地面に頭部を強く打ちつけていた。即死でもおかしくなかった、生きていることすら奇跡であると医者が言ったときにはゾッとした。冬だから良かった。冬だから兄さんは厚着で、コートのフードが多少なりともクッションになったようだった。幸いなことに脳波はあり、植物状態ではないが、兄さんはあれからずっと、いまも眠り続けている。このまま目覚めず、そのまま亡くなる可能性もあるらしい。 当初は、兄さんが足を滑らせて歩道橋から落ちた、ただの事故だと思われていた。しかし、兄さんの同僚が兄さんが歩道橋の上で誰かと会う約束をしていたと、兄さんとそんな話をしたのだと警察に証言した。そのときの兄さんは顔色が悪く、兄さんの同僚はあまり会いたい相手とこれから会うのかと思ったとも証言した。 司法関係の人が多い西山家は警察に顔が利くため、西山夫人が知人に頼んで兄さんの事故は“事件の可能性もある”ということで再捜査されることになった。そして事件のあったとき、歩道橋の上で兄さんが女性と言い争っていたという証言が得られた。「いいところのお嬢さんっぽかった」という証言にふと白川茉莉が浮かんだ。完全に直感だった。俺は黒崎に白川茉莉の所在を確認させた。海外の別荘にいると思っていた白川茉莉は少し前に帰国していた。その事実に、嫌な予感がした。しかも白川茉莉は、帰国後は都内にある白川邸ではなく、北関東にある別荘にいた。「潜伏」という言葉が頭に浮かんで、嫌な予感が膨らんだ。 
last update最終更新日 : 2025-12-14
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「ある男の母親は、ある巨大企業の社長の愛人でした。そして男を産んだ数年後に死亡。男は父親に引き取られたものの、愛人の子と周囲に蔑まれた」白川茉莉が語ったのは兄さんのことだった。「高校を卒業を機に、彼はある家の養子になった。彼は生まれながらにして後継ぎと認められた異母弟を恨み、彼の婚約者と知られている女性を暴行した。その結果、女性は妊娠。女性は生まれてくる子どもに罪はないと出産することを決めた」「下らない作り話をするな。兄さんは女性を暴行などしない」「それなら、なぜこの子どもができたのです?」「君が襲ったのだろう?」「女性の私が襲う、ですか?」「あり得るだろう、実際に俺は君に襲われている」あのときのことを示唆して見せたが、予想していたのか白川茉莉は平然としていた。 「そうですわね。確かに私が襲った……かもしれませんわ」白川茉莉は笑った。「お義兄様は女性を暴行なさらない、いえ、できない……かもしれませんわね」笑い続ける白川茉莉が、怖かった。「青い顔をして、やめてくれと言った彼に、私が無理やり薬を飲ませて、無理やり行為に及んだ……かもしれませんわね」ニタリと笑いながら醜悪な事実を話すその姿に吐き気がした。これ以上は聞いていられない、と席を立ちかけたとき――。「でもその証拠はない」俺の動きがとまった。「お義兄様は意識不明で、何も言えない」白川茉莉は、このためだけに兄さんを歩道橋の上から突き落とした。 「この子がいる以上、誰もが私とお義兄様との間に体の関係があったとみるでしょう。それが合意だったかどうかは、私しか証言できません」ね、と白川茉莉は首を傾げて俺に念を押してきた。「やった、やらないの水掛け論では裁判も長引くでしょうね。その間、この子は私のもの。家という他人の目が届かない場所で、母親が子どもに何をするか――蒼さんはよくご存じでしょう?」白川茉莉は抱いていた子どもを抱きしめた。まだ幼い子どもには強い力で、子どもの顔が苦痛に歪んだ。その光景に、俺は頭から冷水を浴びせられたような気分になった。喉がグッと詰まった。 「私に沈黙を求めるならば相応のものをくださいな。それが何か、あれから二年もたったので改めて教えて差し上げます」俺には分かっていた。白川茉莉の言うことも。そして、それを俺が承諾するしかないことも。 
last update最終更新日 : 2026-01-15
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俺の家出先なんて、どこかのホテルか祖父さんたちのいる白金の屋敷だけ。相談相手を求めていた俺は白金の屋敷に向かった。 白川茉莉とのやり取りについて話すと二人は唖然とした。「あいつが生きていればこんなことにはならなかったのに……」祖父さんはため息を吐いて白川大老の死を改めて嘆いたが、何の解決にもならない。そのくらい、祖父さんたちですら唖然とするやり方だった。 恐ろしいことに、馬鹿みたいな計画なのに成り立っていた。意識のない兄さんでは反論できず、子どもの身柄が白川茉莉の手の中にある以上、俺たちにできることは何もなかった。 「とりあえず陽菜さんを引き留めた」俺が白金の屋敷に来た理由で陽菜との喧嘩を離したとき、祖母さんはすぐに誰かをマンションに向かわせろと言った。陽菜さんにだって家を出ていく権利がある、と祖母さんに言われて俺は黒崎に青山のマンションに行ってもらった。危機一髪だったらしい。「白川茉莉はお前と結婚するためなら何でもするぞ。子どものことがある。今回は、残念だけど、子どもを守るなら、陽菜さんとの離婚も考えるべきだ」初めて黒崎に離婚を提案された。煌のことがあったからだろうが、引き留めたときの陽菜の様子がギリギリだったということだった。状況を見ての、正しい判断。でも、俺にとっては鬼のような選択だった。 「いい知恵を出してくれ」 「……むちゃ振りが過ぎないか?」  黒崎はいい奴だ。呆れつつも、祖母さんたちと一緒に打開策を考えてくれた。 「私が遺産を盾に蒼に『命の恩人の孫娘(架空)』との結婚を強制したことにすればいい」祖父さんの言葉に、誰よりも早く祖母さんが反対した。「あなたが、命を狙われるかもしれませんのよ?」「わしはほとんどこの家から出ないし、お前の足をそんなにしてしまった責任をずっと取りたかったんだ」 その言葉に祖父さんの覚悟を感じ、俺たちは実行した。このくらいしか手段がなかったのもある。そして祖母さんの危惧した通りになった。あれから一年、白川茉莉はあの手この手で祖父さんに近づこうとした。俺が身内を大事にしていることは、祖母さんの件で拒絶されたのだから知っているはず。それなのに、白川茉莉は祖父さんが死ねば遺産問題が片付き、晴れて独身になった俺と結婚できるとしか考えていない。 「晴れて独身、ね……な
last update最終更新日 : 2025-12-15
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『御社の朝霧陽菜と仕事がしたい』李凱は堂々と、俺に曲解させる隙もないほど堂々と、陽菜を仕事のパートナーに指名してきた。仕事の話だったけれど、陽菜のプロジェクトを見て興味を持ったという話を信じることはできなかった。陽菜の実力を疑ったわけではない。実際に、陽菜は多くのプロジェクトを成功に導いていた。ただ陽菜が担当したどのプロジェクトもキャメロットが気にするような規模のものでも、内容でもなかった。他の者を推薦してみたりしたが李凱は「陽菜と」の一点張りだった。余計に“興味”の理由を疑った。正確には、邪推した。何度も遠回しに断り続けたら、今度は陽菜と会う場を設けてほしいと堂々と申し出てきた。 李凱という男は一筋縄ではいかない。法律に基づくルールはもちろん、暗黙の了解といった倫理観に基づくルールも守る男だが、「神様からのおすそ分け」と言われるほどの輝かしい美貌、豊かな才能、そして堂々とした風格は、法律や倫理観の上へと李凱を押し上げてしまう。陽菜の表現ではないが、よくいう【チートキャラ】というやつだ。李凱は容姿だけでなく経歴も煌びやかだ。香港の下町で育ち、キャメロットの工事現場で働いていたところを先代のCEOだったマクシミリアン・キャメロットにその才能を見出された。建築業界で「キング・マックス」の名前を持つマクシミリアン・キャメロットを知らない者はいない。本人の才覚も有名だが、彼を有名にしたのは彼が発掘した十一人の天才たち。彼の息子のアーサ・キャメロットを含めて十二人。まるでアーサー王と円卓の騎士の再現。その最後に円卓についたのが、李凱。李凱はキング・マックスの資金援助で学校に通い、飛び級して最短で大学を卒業。その後、キャメロットに入社した。キャメロット・アーキテクツはうちの設計部をそのまま世界規模にしたような会社で、うちとは違って完全に実力主義。縁も実力のうちといって縁故採用も厭わないが、それ相応の結果をみせなければお終い。縁故採用で才覚を見せなければ縁しか良いものはないというレッテルが貼られ、次の就職にも大いに響くため『お終い』のレベルが半端ない。李凱は社長直々の縁故採用だったが、実力を示しつつも使えるものは何でも使って爆速で出世。その結果、その日暮らしだった貧しい少年は三十代の若さで確固たる地位と莫大な資産を築き、堂々
last update最終更新日 : 2026-01-15
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37(※)

「ん……」口づけて漏れた陽菜の声に煽られて舌を絡めた。唇の端から唾液が溢れ出て、こくりと喉を鳴らして俺たちの唾液を飲み込む様に欲情した。「あぅ……」陽菜はとろんと蕩ける顔をして……俺とのキスを気持ちいいとまだ思ってくれることに、安堵した。 ――  実は、キスってあまり好きじゃな……かったんです。陽菜と初めてキスした日、「でも、藤嶋さんはなぜか大丈夫」って言われた。『なぜか』と困ったように陽菜は笑っていた。陽菜があのとき困った理由は、なんとなくだけど俺には分かった。陽菜とするまで、俺もキスは好きじゃなかったから。キスをしなくてもセックスはできるから、「キスは好きじゃない」で避けてきた。それに対して可愛く膨れてみせる女もいたが、最終的には「それでもいい」で、俺はキスすることなくセックスを終えていた。 キスしたいと思えるほど好きな人とセックスするのは陽菜が初めてだった。陽菜にとっても、俺はそうだったのだと思う。でも、優しくて気のいい女というのが俺の中の陽菜だったから、俺と同じキスはしたくない相手と、俺と同じそういうセックスをしてきたってことがちょっと意外だった。 ―― 心に触れられても構わないって思ったのは蒼が初めてだったの。陽菜を知ると、陽菜が実はとても臆病なのだと知った。家族に恵まれず施設で育った陽菜は『家族』を切望していたけれど、また家族に捨てられるのが怖くて、それは次第に愛情を裏切られることへの怖さに変わり、誰もその心に近づけなかった。俺のことは、近づけさせてくれた陽菜。俺とのキスは気持ちよくなれるのだと陽菜がいったとき、俺のキスに全身を委ねくたりと力を抜いてくれる陽菜は俺のものだと独占欲がわいたとき、俺は陽菜にプロポーズしていた。   *  「う……あぁ……」 夜間照明の仄かな灯りの中、陽菜の足を開いてゆっくりとナカに指を埋めた。陽菜のナカは温かいけれど狭くって、柔らかくないそこに誰も入り込んでいないことにホッとする俺がいた。「そ、う……蒼……」しがみついて俺の名前を呼ぶのも、背を逸らして俺の指に応えるのも今まで通り陽菜だった。でも陽菜はどこかに、何かに気をとられていることが分かった。何度も抱いてきた女だ。俺のキスに身を委ねきれず体が硬いことが、なかなか柔らかくなりきらないナカが、俺に真実を
last update最終更新日 : 2025-12-15
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38(※)

煌を俺の子だと誤解されてもおかしくないような行動をしている上に、それを「聞かれていないから」という理由で否定していない以上、陽菜に責められることは覚悟していた。でもこのタイミングで、陽菜の怒りを目の当たりにするとは思わなかった。 この行為はやめるべきかと悩んだとき、俺の迷いを察知したように陽菜が俺の首に腕を回してキスをしてきた。強引なほどの力強さで俺の腰に足を回してきて、意図的にナカを締めてきた。「気持ちいいの……」……嘘つきの陽菜。本当は気持ちいいなんて思っていなかったくせに。 陽菜は、俺がなんで気持ちいいって言わせたいかを分かっていない。男のプライドくらいに思っている。確かに、抱いている女を気持ちよくできることに誇らしさは感じる。でも、本当は言葉なんていらない。言葉がなくたって陽菜が気持ちいいと思っていることは蕩けた全身から伝わってきていたんだ。恥ずかしがる陽菜が可愛くて、愛おしくて、ただ言わせたかっただけ。 「陽菜……」俺たちの唇をつないでいた銀糸が切れた感触に陽菜を見下ろした。嫉妬を孕んだ毒々しい熱と、女として俺に挑む様な挑戦的な光を宿す陽菜の目と目があった。俺の男が刺激されて、俺の目に灯った荒々しい欲に共鳴したのか、陽菜のナカが締まった。その刺激に俺の体は震えた。俺の体の震えに反応して、陽菜のナカが蜜が溢れさせて結合部がじゅわりと熱くなった。 そこからは野生の獣のような交わりだった。力加減も忘れて陽菜の腰を掴み、欲望のままに奥を突き続けた。肌がぶつかる合う激しい打擲音に理性が怯んでも、卑猥な水音が理性をかき消して、本能を煽りった。粟立つ蜜。陽菜で濡れた俺の手は滑らかな肌で滑ってしまい、腕を回して、力を込めた。獣のような交わりだった。 「あっ、あっ……イクッ、蒼、そ、うっ……イッ!」「……っ」勢いよく精を吐き出したことで一瞬暗りと気が遠くなった。でも、理性を飲み込んだ本能で俺のものはすぐ硬くなり、さっさと処理して次の新しいゴムを取り出そうとしたとき――悪魔が囁いた。何もつけずに陽菜を抱けばいい、と。子どもができれば陽菜は離婚など考えなくなる、と。 幸いにしてそんな考えはすぐに捨てた。でも、そんな自分勝手な思いを一瞬でも抱いた自分に嗤った。日頃は綺麗ごとを連ねて隠せているが、一皮剝
last update最終更新日 : 2026-01-15
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