範経は兎女の娼婦リリーに導かれるまま「ビストロ・モンストレ」の戸口を離れ、表通りへと歩み出た。外は相も変わらず色とりどりの街灯が明滅し、その光はむしろ不快なほどに眼を刺した。 リリの背丈は、姉の瞳とほぼ同じほどであった。背の低い範経が並べば、その視線はおのずと彼女の首もとに落ちる。そこから漂う香りは乾ききった花の残り香のように、かすかに胸の奥を騒がせた。 だが、がっしりとした体つきの瞳に比べれば、リリの骨格はひどく華奢であった。範経はそっとその腰へ手を回す。胸と尻にはほどよく肉がついているのに、くびれた胴は驚くほど細い。思わず力を入れるのをためらうほどであった。 リリは冷ややかな表情を崩さぬまま、ひと言も発せず歩き続けた。やがて表通りから二筋ほど奥へ入ると、ひっそりとした細い路地に出た。安っぽい酒場の前のテラスには、三人のならず者めいた男たちが、だらしなくたむろしていた。 その中から、頭に牛の角を生やした大柄な男がリリの方へ歩み寄った。「リリ、また客引きか」「そうよ」「子供じゃねえか」「腰抜けのあんたと違って、れっきとした冒険者様よ」「なんだと!」 その言葉を聞くや、範経は思わずリリの肩を押しのけ、男との間へと身を滑り込ませた。「やる気か」 男の声が低く響いた。 範経が身構えるや否や、角を戴いた男は腰の短剣へ手をかけ、ほとんど反射のようにそれを抜き放った。 だが、刃が光ったのとほとんど同時に、範経の足が男の手首をはじいた。短剣は乾いた音を立てて地面に転がった。範経は一歩踏み込み、相手の動きを封じるように距離を詰めた。 その成り行きを眺めていた残りの二人が気怠げに歩み寄って来る。一人は巻いた羊の角を頂き、顔には古傷の走る男。もう一人は血の気を欠いた細面に、鋭い角を突き出した背の高い痩身の男だった。いずれも腰にはサーベルを帯びていた。「リリ、ここで揉め事を起こす気か」 羊角の男が低く言う。「このでくの坊が、先に刃物を抜いたのよ」 リリは淡々と返す。「それは見ていたさ。だが、そのお坊ちゃんはお前の客だろう」と男。「正当防衛よ」 リリの声は夜気よりも冷たかった。「こいつが脅しで小刀を抜くのなんて、いつものことだ。それに人を斬る度胸なんてありゃしない。お前も知ってるはずだ」 羊角の男が、ため息まじりに言った。「バカ犬には、ち
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