私が『不義の子供なんて酷い扱いをされるもの』だなんて先入観を持っていないのは、単に姉のおかげだと言える。彼女は私の人生の恩人だった。唯一にして絶対的な味方であり、あの家の中で、たった一人だけ私を守ってくれた人だ。 姉と初めて会ったのは、私が小学校に入学する直前くらいの頃だった。 父を知らず、ずっと今まで母子家庭で育ってきたのだが、母が突然事故で亡くなり、嫌々『お前の父親だ』と名乗る男に引き取られる事となった。初めて会った父は私を不快そうな顔で見てくるし、継母となった正妻の女性は初対面の時から罵りの言葉を浴びせてきた。『保険金がなかったら、引き取らなかったわ』 つまりは金目当てに私を引き取ったのかと、子供ながらに理解した。だけど、『そういう扱いを受けるのは当然なのかも』とも心の片隅で思っていた。当時見ていたドラマの影響もあってか、“継母”という存在には元から悪い印象しか抱いていなかったし、突然の事で新しい家族への期待なんか抱ける心境ではなかったからだ。だから当然、五歳年上の姉にも嫌われるものだと思っていた。なのに、だ——『ウチの父親が浮気したのが悪いのであって、結果的に生まれたアナタには罪はないでしょう?…… それとも何?卵子の段階で、ウチの馬鹿親を誘惑でもする様に母親に命令でもしたの?違うでしょう?もしそれが出来るんなら、むしろ尊敬しちゃう』 姉は初対面時にこう言ってのけた。小学生とは思えない発言に、ただただ驚く事しか出来なかった。正直、当時の私は姉が何を言っているのかもわかっていなかったんだけども。『あの二人には愛情とかそういうのは全く期待しない方がいいよ。でも最近仕事が上手くいってるみたいだしさ、お金は持ってるからアイツらを沢山利用して、賢くなんな』 『責めるべきなのは無責任に浮気した父の方なのに、母さんは貴女の事ばっかり目の敵にして……ホント、バカみたい』 当時からもう達観気味だった姉は、私によくそんな話をした。浮気者の父を嫌い、恨む先を間違っている母親を軽蔑しながらも、ひんやりとした家庭環境の中で姉さんはずっと私を守ってくれた。まともな人が一番近くに居てくれたから、家庭環境の割には、自分は比較的真っ当に育った方だと思う
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