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【第45話】魔塔主との対話①

مؤلف: 月咲やまな
last update تاريخ النشر: 2026-06-09 18:20:41

 海洋王国・ロンディーネ。彼の国はオアーゼ大陸の北西に位置し、国の三方向を海に囲まれたこの国は多くの海洋資源と鉱山資源に恵まれ、大陸の中で最も栄えている国である。大国なだけあって異世界からの移住者も数多く滞在し、彼らの知恵と才能によって、この一年間の成長ぶりは他の国の追随を許さぬ程だ。

 そしてロンディーネの北東には魔法使い達が数多く所属している“魔塔”と呼ばれる施設がある。建築当初は初代魔塔主の残虐な行為のせいで、悪名高く、度々魔塔の周辺でヒトや魔物が忽然と消えたりした為悪い噂しかなかった。だが、長い長い歳月と、現・魔塔主の貢献のおかげですっかり汚名を返上する事に成功したそうだ。それでも最上部が常に雲の中に隠れている程に高い塔の威圧感は消しようがなく、今でも魔法使いくらいしか立ち寄らない場所のままだ。

 そんな塔の最上階には歴代の魔塔主のみが立ち入りを許される専用の部屋がある。そこでは扱いの難しい秘術の書かれた本や禁書扱いされている貴重な書物、隠匿すべき歴史の裏側について書かれた古いスクロールまで保管されているそうだ。

 初代・魔塔主は

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    「随分前の話なのに覚えていてくれたんだね」 「まぁ、な」(……お前との、最後の会話だったんだから当然だろ) スキアだって忘れてはいなかった。 ただ、最近までは思い出す事すらも避けていただけで。 パンっと両手を叩き、狐みたいに笑いながら「そっか、良かった!」と言う。でも内心、『……でも、その割には自分の行動に反映出来なかったみたいだね』とレアンは考えたが、また拗ねるかもと思うと言葉には出さなかった。「でもさ、“あの子”をいざ回収しようと決めたは良いけど、実際行動してみると、すごく大変だったんだよね。運悪く全く別の世界に生まれ変わっちゃったのに、本体が“黒竜”な私は強大な者であるが故の代償としてこの世界に縛られているから、異世界にまで会いには行けない。『ならばこっちへ引っ張り戻そう』と考えたけど、その手段が私には無かった。魔塔になら転移魔法の方法が眠っていると知ったけど、今度はその転移魔法陣に強固な縛りがあったうえに禁忌扱いになっていたから、起動させる為の理由も必要だしで、もう……。幸か不幸か魔族との戦争でヒトが絶滅の危機にあったり、復興の人手不足が深刻な状況になっていたからそれを利用させてもらったりって、ね。本当は生まれてすぐにこちらへ迎え入れるつもりだったのに、予想以上に苦戦したせいで向こうの世界では九年も経過してしまった。まさかそのせいで……“あの子”が、あんな扱いをされるだなんて思ってもいなかったから、かなり焦ったよ。せめてもの償いにと、此処へ来てからは“あの子”の周囲には“あの子”を『好き』『可愛い』って思ってくれる者ばかりを集めてみたんだけど、意思のある生き物達を使っているから完全にとはいかなかったけどね」 視線を下に落とし、レアンがはぁと深いため息をついた。揺れる瞳には苦悩が混じっている。その様子に共感し、スキアは歯が軋む程強く歯を食いしばった。「……だけど結局、僕はアンタの策に落ちたって事か」 苦々しい顔をしながらスキアが重たい息を吐き出した。自分で“あの子”を選んだつもりだったのに、全てはリュークェリアスの手の上での愚行だったのかと思うと、複雑な気持ちになる。「それは違う!」 レ

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     海洋王国・ロンディーネ。彼の国はオアーゼ大陸の北西に位置し、国の三方向を海に囲まれたこの国は多くの海洋資源と鉱山資源に恵まれ、大陸の中で最も栄えている国である。大国なだけあって異世界からの移住者も数多く滞在し、彼らの知恵と才能によって、この一年間の成長ぶりは他の国の追随を許さぬ程だ。 そしてロンディーネの北東には魔法使い達が数多く所属している“魔塔”と呼ばれる施設がある。建築当初は初代魔塔主の残虐な行為のせいで、悪名高く、度々魔塔の周辺でヒトや魔物が忽然と消えたりした為悪い噂しかなかった。だが、長い長い歳月と、現・魔塔主の貢献のおかげですっかり汚名を返上する事に成功したそうだ。それでも最上部が常に雲の中に隠れている程に高い塔の威圧感は消しようがなく、今でも魔法使いくらいしか立ち寄らない場所のままだ。 そんな塔の最上階には歴代の魔塔主のみが立ち入りを許される専用の部屋がある。そこでは扱いの難しい秘術の書かれた本や禁書扱いされている貴重な書物、隠匿すべき歴史の裏側について書かれた古いスクロールまで保管されているそうだ。 初代・魔塔主は残虐な性格で有名だった。ヒトや獣を実験材料として扱い、素材が足りないからと異世界から生き物を攫って来ては、無尽蔵な魔力を使って、今では禁忌魔法と化した魔術を数多く生み出した。 “心の壊れた天才” 彼の部下であった魔法使い達は主人の事を影でそう称していたが、全ての始まりは、彼の一番弟子であった少年からであるとは誰も考えすらしなかったそうだ。その少年は己の存在を完全に隠して器用に逃げ切った為、二人による数々の悪行は、全て初代魔塔主の仕業であると周知された。なので当時の国王は人格の破綻した者が再びトップに立たぬ為にと、『魔塔の主人になるにはそれ相応の資格を必要とする』と定めた。ヒトとして必要な良識がある事を一番の前提とし、最低限のカリスマ性、膨大な魔力、そしてそれを自由自在に操れる者でなければならない。塔の主人となる資格の有無を判断する魔法が魔塔主専用の扉に施されている為、何十年も魔塔主が不在だった時期もあった。 現在の魔塔主の名は“レアン”。 スキアの肉体のモデルであり、ルスとリアンの教育者でもあった彼は、条件の厳しい魔塔主の

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  • 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!   【幕間の物語④】『私が移住を決めた理由』・後編(あんず・談)

    『——間に合わなかった、か』 不意に聞こえた声に驚き、周囲を見渡す。 こんな典型的な程の犯罪現場、誰かに見られでもしたら言い訳なんか絶対に出来やしない。早く、すぐにでも姉の犯行だけでも隠して、せめてただの自殺で済ませてあげたいのに!と心ばかり焦るが、既に部屋の中には人が居て、その人は何故かふわりと宙に浮いていた。『優秀な人材がいるって情報を元にスカウトしに来たんだけど……どうも、それどころじゃないみたいだね』 キラキラと、小さくとも眩い星でもまとったみたいに光っている男性がそこには居る。服装はアニメやゲームの登場人物みたいな格好なのに、着古した感があるからかコスプレっぽさは微塵も無い。浮いているせいか現実味もなく、驚き過ぎて絶句してしまっている私の口からは返事すら出なかった。 血溜まりを避け、その人はスタッと軽やかに床に舞い降りた。キョロキョロと周りを見ると、少年っぽさのある彼は状況を把握したのか、『……なるほど、ね』とぽつりと呟く。『この状況を無かった事にしてあげると言ったら、君は僕のお願いを聞いてくれるかい?』『……え?』 『思うに、この年配の男が金銭絡みとかで何かやらかして、その結果この女性が自害したって所だろう?そっちの男が自殺じゃ無いのは明らかだから、きっと自害した女性が状況を変えようとした結果、殺しちゃったんだろうけど……』とまで言って男は一呼吸置き、鋭い目つきをこちらに向けた。『殺人って、どこの世界だろうが大罪だよね?』 無言のまま素直に頷く。事実を他者から突き付けられ、じわじわと状況をちゃんと頭が理解し始めたせいか、指先は酷く冷たくなっていき、寒くもないのに体がガタガタと震える。『君は、この女性の親族?それとも友人かな』 『妹、です……。血の繋がりは、半分だけ、だけど』 『そうか。じゃあ、そっちは?』 目の前に転がる遺体を指差し、そう訊かれた。こんな奴、意地でも“父さん”だとは言いたくない。ずっと父を名前で呼んでいた姉の気持ちが今更わかった。『……生物学的な父親ってやつ、です』 口元に手を当て、男性は何か考える

  • 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!   【幕間の物語④】『私が移住を決めた理由』・前編(あんず・談)

     私が『不義の子供なんて酷い扱いをされるもの』だなんて先入観を持っていないのは、単に姉のおかげだと言える。彼女は私の人生の恩人だった。唯一にして絶対的な味方であり、あの家の中で、たった一人だけ私を守ってくれた人だ。 姉と初めて会ったのは、私が小学校に入学する直前くらいの頃だった。  父を知らず、ずっと今まで母子家庭で育ってきたのだが、母が突然事故で亡くなり、嫌々『お前の父親だ』と名乗る男に引き取られる事となった。初めて会った父は私を不快そうな顔で見てくるし、継母となった正妻の女性は初対面の時から罵りの言葉を浴びせてきた。『保険金がなかったら、引き取らなかったわ』 つまりは金目当てに私を引き取ったのかと、子供ながらに理解した。だけど、『そういう扱いを受けるのは当然なのかも』とも心の片隅で思っていた。当時見ていたドラマの影響もあってか、“継母”という存在には元から悪い印象しか抱いていなかったし、突然の事で新しい家族への期待なんか抱ける心境ではなかったからだ。だから当然、五歳年上の姉にも嫌われるものだと思っていた。なのに、だ——『ウチの父親が浮気したのが悪いのであって、結果的に生まれたアナタには罪はないでしょう?…… それとも何?卵子の段階で、ウチの馬鹿親を誘惑でもする様に母親に命令でもしたの?違うでしょう?もしそれが出来るんなら、むしろ尊敬しちゃう』 姉は初対面時にこう言ってのけた。小学生とは思えない発言に、ただただ驚く事しか出来なかった。正直、当時の私は姉が何を言っているのかもわかっていなかったんだけども。『あの二人には愛情とかそういうのは全く期待しない方がいいよ。でも最近仕事が上手くいってるみたいだしさ、お金は持ってるからアイツらを沢山利用して、賢くなんな』 『責めるべきなのは無責任に浮気した父の方なのに、母さんは貴女の事ばっかり目の敵にして……ホント、バカみたい』 当時からもう達観気味だった姉は、私によくそんな話をした。浮気者の父を嫌い、恨む先を間違っている母親を軽蔑しながらも、ひんやりとした家庭環境の中で姉さんはずっと私を守ってくれた。まともな人が一番近くに居てくれたから、家庭環境の割には、自分は比較的真っ当に育った方だと思う

  • 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!   【第30話】『僕らが欲しいのは服であって、新しい“虫”じゃない』①(スキア・談)

     ルスが話していた装備品を売る店は討伐ギルドから程近く、同じ並びにある。近隣には他にも彫金ギルドや武器・防具などを作成するギルドもある為、討伐任務や護衛などを仕事にしている者達でそれなりに賑わってはいるが、夕方から開店する飲み屋も多いので目抜通りよりは人が少なく、すぐに辿り着く事が出来た。「いらっしゃいませー」 扉を開けて二人が店内に入ると、後衛職向け装備を中心とした完成品がずらりと並んでいた。 僕が持っている六年前の知識では、服や装備品はデザイン帳の中から気に入った物を選んでからオーダーメイドで注文するか、金の無い者達は布だけ買って来て自分で縫うのが当たり前だったのだが、今では大雑把

  • 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!   【第19話】山猫亭③(スキア・談)

    「はぁぁぁぁぁぁ⁉︎」 店内どころか、外にまで聞こえそうな声をマリアンヌがあげた。彼自身がこの店や周辺一体のオーナーでもなければ通報モノの大声だ。“男”丸出しの低い声だったからか、彼を“彼女”だと認識していたルスがかなり驚き、僕の履いているスラックスの太腿部分をぎゅっと掴んでくる。その甘えがちょっと嬉しいなと思っている自分に喝を入れつつ、「その夫です」と宣言して僕は軽く手を挙げてみた。「最初から『誰だ?コイツ』とは思ってはいたけど、ま、ま、まさか、一番有り得ないだろうと思った答えだったなんて…… 」 愛どころか恋すら理解していなさそうな(実際問題、マジで理解していないのだが)くらいに幼

  • 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!   【第10話】討伐ギルド・後編(スキア・談)

    「——つまりは、『助けてもらった優しさに触れて、この人に一目惚れした』と言うわけね?」 腕組み状態にあるシリルが要約を口にしながら訊いてくるが、どう見たってルスの話を信じている感じではない。だが、僕らが所詮は『仮初の夫婦でしかない事』や『契約を交わして、僕がルスの身に取り憑いている状態にある事』をきちんと伏せた上でルスが事実説明をやり遂げたので、ひとまずは良しとしよう。「はい。スキアさんが森の中で倒れているワタシを見付けてくれていなかったら、あのまま獣の餌食になっていたかもしれませんから」 ルスは一言も『一目惚れをした』とは言っていないのだが、反射的に訂正するというバカはせず、話の補足を

  • 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!   【第8話】いざ、仮初の夫婦に(ルス・談)

    「目を瞑ってろ」と言われ、一秒後には「もう開けていいぞ」とスキアが許可をくれる。指示通りに行動しはしたが、ワタシにとってはただ瞬きをしたにすぎなかった。 なのに、たったそれだけの間でもう、目の前の情景は一変していた。 森の中に響いていた獣の遠吠えも、梟の鳴き声も消えて、耳に届くのは町の騒がしい営みの音に変わっている。喧嘩でもしているかのような怒鳴り声、店への呼び込み、酒を飲んで歌う人達の声が聞こえ、『町に戻って来たんだ』と実感した。平和そのものの音を聴き、ちょっと嬉しくなる。コボルトの群れをこの町から随分遠く引き離したのだ。 かなり大袈裟かもしれないが、今夜のこの光景を守ったのは自分なん

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