「陰陽師と式神は、けして結ばれない」 そんな事、知らなかった。 あたしは、この想いをなんと呼ぶのか知らない。 いつか来るその日、妻と呼ばれる人がやってきて。あたしは一番近くにいて……想像するだけで、胸が焼かれるようだった。 「あんたさ、いつから惚れてたの」 花蓮の紅みがかった髪が、夜の青に染まっている。 ぶっきらぼうに、でも優しさを秘めた声が風に溶けていった。 「わからない。惚れてるって……あたしこれ、惚れてるんだ」 「気付いてなかったんだ、自分でも」 「全然」 花蓮はあきれたように「猫のくせに鈍いんだねえ」と、あたしの頭をこづく。そうして満天の星を仰ぎみると、いつか遠くの時を想うように呟いた。 「あたしもさ、人を愛したことがあるよ。だから少しわかる……その切なさも。どうしようもない想いもね」 「あたし知らなかったんだ。こんな強い想いが、自分の中にあることに」 「そう……」 「ねえ教えて花蓮。どうしたら、この想い……止められるの!?」 涙の止め方も分からないままに、花蓮に問いかける。 彼女は困ったように眉を下げると、自分の片足に頬杖をつく。夜風が、艶やかな彼女の髪を揺らした。 「そんなの、あたしが知るわけないよ」 「そっか」 「あたしだって止められなかった。どうなんだろうね。器用な人は……上手に自分を止められるのかな…」 そう呟いて、寂しげに微笑んだ。 そうか、あたしは。 あたし達は不器用なのか……! それすらも知らなかった。今宵、初めて知った想いだったから。 ふいに花蓮がスッと立ち上がる。砂をはらうと、見たこともない優しい瞳を、あたしに向けた。 「思いきり泣きなよ。あたしは誰にも言わないからさ」 フッ……と口の端を上げると地面を踏みしめて、そのままクルリと背中を向ける。晴明神社へと帰っていくのだろう。その優しさが、今はなんだか……ありがたかった。 ◇ それを人は『恋』と呼ぶらしい。 触れたくて。 ただただ傍にいたくて。 他の女子が傍にいると思うだけで、胸がキリリと痛む。こんな想いを……あたしは知らなかった。 陰陽師と式神。 考えてみれば恋をするような間柄ではないもの。 元々『戦友となってくれ』と言われて、契りを結んだのだし。こんな想いを抱える方が、きっと……おかしいんだ。 「そっか、もう朝……
Última atualização : 2026-01-16 Ler mais