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第二章 十四の章〜春の夜の記憶〜

 私は、思いきって嘆願してみた。 「まあ、どなたかしら?」 派手かしい少年の母が、訝しげな声をあげる。 すねこすりの朝顔は、首の後ろをつままれて足をプラーンとさせていた。嫌がっている仕草を見ると、胸が痛む。 「えっと『銀紫の牙』の棟梁、風河の息子です」 「銀紫の牙? ああ、人も妖怪もいっしょに働くとかいう」 「そ、そうです。その子、捨てるなら私にくださいっ!」 「そうねえ」 すると少年が、母の十二単をキュッと掴んで懇願する。 彼もまた6、7歳くらいの姿であった。すねこすりをサッと母から奪うと、大切そうに両腕で包む。 「母上、捨てるくらいなら、この子に育ててもらいまするっ!」 「君……」 「待ちなさい、その妖怪はこちらで処分しますわ」 すねこすりを奪おうと、深緑色の十二単の袖が迫ってきた。冗談じゃない! 私はとっさに少年と、すねこすりの前に立ちはだかる。キッと睨むと、両手を広げた。 「絶対やだ! 君、いっしょに逃げよう!」 「わかった!」 少年と一緒に、部屋から逃げ出した。 朝顔は少年の腕に包まれて、丸まっている。その瞳に安堵の色が見えたので、私はホッとして地面を蹴った。早春の道を、2人と1匹で家路をたどる。 牛車で来たけれど、ここまでは川沿いの一本道だった筈だ。 逃げろ 逃げろ 走れ 走れ この子を守るために……!!! すねこすりを抱えて走る少年といっしょに、全速力で道を駆けていく。 追ってくるかと身構えたけれど、暗殺騒動でそれどころでは無いのかもしれない。誰一人として追いかけてくる人の気配はなかった。道の横を流れる川のせせらぎの音色が心地いい。 「はあ、はあ、ここが私の屋敷だよ」 「こ、ここまで来れば大丈夫だよねっ」 「ああ、でも念の為に馬小屋に隠れよう」 私は、とうとう自分の屋敷についた……! 誰にも見つからないように、馬小屋に案内すると、しばらく身を潜める事にしたんだ。すねこすりは、床の藁をチョイチョイしたり、ひざの上でゴロゴロ喉を鳴らしたりして、ご機嫌の様子だ。その無邪気な仕草に思わず、心がほころぶ。 「朝顔、かわいいね」 「ありがとう。己の名は、鈴丸」 「鈴丸、私の名は夕月夜だよ」 「夕月夜、急にす
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第二章 十五の章〜夕暮れと梔子色の君〜

 「やっと静かになったみたいだね」 ざわめきの声が遠くなった気がする、もう大丈夫だろうか? 母上は、帰宅したかな。 よい頃合いをみて屋敷に帰り、朝顔をなんとしても家で暮らせるよう、お願いせねばなるまい。そう決意を新たにしていると、隣に座っていた鈴丸のお腹が、ぐううぅ〜と鳴った。 「やばい、お腹すいたかも〜」 「鈴丸、ごめんな。もう外に出てみようか」 「そうだね。朝顔にも、何か食べさせてあげたいし」 私は覚悟を決めて、馬小屋を出ることにした。 そろそろと周りの様子をみつつ、朝顔を抱っこした鈴丸と屋敷にはいる。 廊下からそ〜っと、母上の部屋をのぞき見る。 怒られるかな? 白い几帳の向こうには、泣き腫らした顔の下女たちと、母上が佇んでいた。心配していたのかもしれない。母上は私たちの姿を目にすると、驚きの声をあげる。 「夕月夜! どこに行っておりましたの?」 「あ、あの実はっ……」 私の姿を見つけるや、一目散に廊下へと駆けてきた。 そうして私の頬を、打ったのだ──── パシン……っ! 「心配したのよ! どれほど皆で探したと思っていますか!」 「ご、ごめんなさい母上っ」 「お待ちくだされ! 夕月夜は、朝顔を助けてくれたのですっ!」 はらはらと涙しながら激昂する母と私の間に、鈴丸が割ってはいる。その腕には、どう見ても白猫の朝顔が、キュルンとした瞳で抱かれていた。うう、かわいい。 「母上、この子は鈴丸。この猫ちゃんの飼い主なんだ」 「夕月夜は、母上に捨てられそうになってた朝顔を、救ってくれたのです」 「どういう……ことなの?」 私たちは、一部始終を母上に伝えた。 鈴丸の父上のこと、母上の気持ち。それから、全力疾走して逃げたきたことも全部。母上の部屋の厚畳にすわると、「きりおほね」という料理を食べさせてくれた。 これは、おほね(大根)の葉を煮て、柚子汁をかけた煮物のことだ。体が温まって、お腹にじんわりと沁みていく。母上は、真摯に耳を傾けてくれた。 「まあ、そうですの。種継さまのことで、お家が荒れていましたのね」 「そうなんだ。ね、朝顔を家の子にしてもいい?」 「いいですわよ、大事になさい」 母は春の陽のような笑みをこぼした。 「や、やったあああああああああああああああっっっっ!」 私と鈴丸は、飛び上がって
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第二章 十七の章〜糺の森の、顔が近すぎる件〜

 あたし達は、下鴨神社の中にある、糺の森にたどり着いた。 「目に映る翡翠色がまぶし……ここ、キレイですね」 「ああ、この森は太古の昔から、ずっとあるんだってさ」 千年さまが、荘厳にそびえ立つ高い木々を見渡して、教えてくれた。 「なんか空気が澄んでますよね〜」 「そうだな、この森は広いぜ〜妖怪もちょいちょい住んでるって噂だ」 「新緑が心地いいですもんね。ここに住みたくなるの、わかります!」 瞳に映ゆる新緑。 流れる小川のせせらぎが、涼やかな水の音を響かせる。 森の中に佇む千年さまは、さっきまで……あたしを抱きしめていた人だ。瞳がふれあうと恥ずかしくなってしまう。あたしは、わずかに俯いて熱を帯びた頬をかくした。 「あのさ、今日は助っ人が来るらしいぞ」 「す、助っ人?」 「ああ、晴明さまが呼んでくれたんだ。なんでも腕の立つ、薬師らしい」 「薬師?」 夕月夜が手強いのは知っていたけど、晴明さま自ら誰かに協力を頼むなんて、初めての事だわ。まじまじと見つめると、千年さまの頬もほんわり桜色に染まっている気がしたの。 「なんで、照れてるんです?」 「べ、別に! 照れてねえしっ」 「ふ────ん」 ──かわいいんですけどっ。 すると突然、千年さまの花のような顔が、あたしの眼前まで迫ってきた。か、か、顔近いっっっ……っ! 「秋華も顔、紅いだろ?」 「ちょっ……」 「ん……見せてみ?」 突然の接近戦は、ずるい。 そんなん聞いてないし。 睫毛長いし、息がかかりそうだし、お顔が好みすぎるし、整いすぎて罪だしでで……っ! ちょっ……ちょっと、この後あたし、めちゃくちゃ戦うと思うんで、やめてもろてええええええええ。いや、やめないでいいですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。 「お主達に紹介したい人物がおる」 晴明さまでした! 「は、はいっっっ!」 絶賛キュンキュン中だったので、千年さまと二人、真っ赤になりながらピシッ! っと背筋を伸ばした。は、恥ずかしい……死ぬかと思ったんですけどっ。は〜やばい、やばい、やばい、心臓が爆ぜるかと思ったわ。 パタパタと手を団扇にしてあおいでいると 糺の森の奥から緑青色の狩衣に、深緑の袴を纏う。美丈夫な男の人がスルリと現れた。何やら踊りながら、こっちに向
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第二章 十八の章〜恋と幻想の森〜

 絶賛、今あたしは……千年さまの腕の中にいる。 右腕、けっこう筋肉あるんだ。 彼の片腕の体温が、じんわり温かい。 えっと、でもあたし……動けないんですけどっ。 「君の式神なんだね、そっか〜」 薬師の士道さまが、パッと離れる。クルッと華麗に回ると、悪戯な笑みをこちらに向けた。 「陰陽師と式神ってさ、結ばれないんだろ?」 「なっ」 「もしも恋なら、残酷だよねえ。僕なら、耐えられないかも」 「うるせえ……」 千年さまの瞳に、怒りの焔がチリチリと揺れていた。どうしよう、これから夕月夜と対決しなきゃなのに。こんな所でケンカしてる場合じゃないよね。 ただよう険悪な空気にかぶせて、なおも士道さまは言の葉をつづける。 「今のうちに、僕にしておいた方がいいかもだよ。化け猫ちゃん」 「てっめぇ、いい加減にっっっ!」 そのとき、真紅の扇が二人の間に咲いた──── 扇の端を、士道さまの喉元に向けると、花蓮がキッと厳しい視線を投げる。 「今から、夕月夜と戦うんだけど。あんた、何しに来たの?」 「そっか、そうだよね〜ごめんなさ────い」 士道さまは、小悪魔的に目を細める。 なんかこの人、仕草が艶っぽい。 まっすぐで裏表のない千年さまと正反対だわ。格好いいけど、なんだか危険な薫りを孕んでる。 「千年さま。あたし士道さま……怖いかも」 「ああ」 「離れないで……くださいね」 あたしを抱きしめる彼の腕を、そっとほどきながら視線をあわせた。今は、それが精一杯の告白。ああ、こんな時に上手い言葉とか見つからない。だって、これから命賭けた死闘がはじめる。けれど、離れたくないと胸の芯から祈ったの……! 「秋華、傍にいろよ」 「はい……」 千年さまが、あたしの頭をふわりと撫でる。 それが夢のように心地よかった。 一部始終を見ていた晴明さまは、安堵した顔で頭をポリポリとかいた。糺の森に着いたばかりだというのに、なんだか心配をかけてしまった気がする。もっと気を引き締めて挑まなくちゃ! 「もー良いかの。皆の衆」 「はい!」 「恐らくじゃ、夕月夜の力は以前よりも高まってきておる」 「あたしも、そんな気がします」 晴明さまの顔から、柔和な表情がスッと消えた。 糺の森の、荘厳な空気の奥に、なにか魔性の気配があったのだ。 「これはこれは
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第二章 十九の章〜宵闇のくちづけ〜

 「久しいな晴明、糺の森へようこそ」 白瑪瑙のごとき繊細な肌。 長き銀色の髪をたなびかせ この世のものとは思えぬほどに麗しき少年が、新緑の森の中、佇んでいた。 藤色の着物に、瑠璃色の帯。細帯から藤の花が、かんざしの如く咲いている。 「ああ、夕月夜ね……!」 「悪いが、宵闇の宴が好みでね……」 夕月夜が、蠱惑の笑みを浮かべる。 その言葉に呼応して、晴明さまが錫杖を握りなおしながら、口をひらいたの。 「どういう意味じゃ」 「この森に闇を降ろす、という意味だよ」 「闇とはなんじゃ」 「さあね、こういう事じゃないかな……ふふっ」 さながら天女のように、無邪気に目を細める。 そうして天空へ手をスッとかかげた。 「夜よ、堕ちよ────」 ズンッ──────────── 瞬間、青く澄んだ空が……漆黒の闇に染まる! 昼間だったというのに。え、お日様どこに消えたの!? 夕月夜の背後に、紅い月が煌々とのぼっていた。いつの間に? まるで夢でも見てるみたいに、世界が蒼き夜に染まっていたの。 「夜になってます! 晴明さま、これはっ!?」 「落ち着け、夕月夜の妖術じゃ。心を取り込まれるな」 「は、はい!」 神社の神主さんたちが、バタバタとやってきて篝火に火を灯した。平安の世において結婚の儀は、陽が沈んだのち、宵闇の中で行われる。今宵、婚礼の儀があるって聞いてたっけ。時間が早まってしまったけれど、花嫁さんを守らなければならないわ。 「千年さま、あたし花嫁さんをお守りしますね!」 「ああ、俺も守る!」 篝火が焚かれた境内。闇の中、パチパチと薪がはぜる。 焰が揺らめき、風に舞う火の粉はさながら、金色の蛍のよう。 あわく彩られた新緑の森。 幻想的な夜の向こうで、夕月夜がぼんやりと浮かび上がっていた。 「ふーん。あれが夕月夜か〜」 薬師の士道さまが、華麗にクルンと回って楽しそうに指を鳴らしている。まるで宴がはじまるのを楽しみに待つ、幼な子のようだわ。 千年さまがその様子を見て、士道さまの肩をポンと叩いた。 「士道だっけ。あいつ結構ガチムチに強いから、まこと気をつけろよ」 「そうねえ〜、僕は術とか使わないからなー」 「お前、じゃあどうやって戦うんだよ?」 「物理、かな」 「物理?」 千年さま
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-02
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第二章 二十の章〜鮮血のうたげ〜

 今、あたしは……額にくちづけ、されたらしい。 「ふふ、照れてるの?」 呆然とするあたしの右隣で、士道さまは小悪魔的に目を細めた。その首筋の奥に、何か……ギラついた視線を感じるんですけど。あれって、千年さま? 「なあ、士道よ……」 「何かな、新・米・陰・陽・師」 「殴っていいか」 「へえ、君。もしかして〜焼きもち、妬いてる?」 千年さまの体が、わなないた。 拳を大きく振り上げると、そのまま士道さまを殴らんばかりの姿勢で、突進する。 「てめえ、何しとんじゃあああああああああああああっっっ!!!」 バチン───── 破裂音。 ビクッとして音のする方に視線を向けると、白煙の向こうから、夕月夜があらわれた。 「え、夕月夜。生きてる……!」 「無論だよ。こんな玩具があるなんてね、知らなかったよ」 花のような笑み。 なんて清廉でかわいいのだろう。 ひょっとして昔は、ただの愛らしい少年だったのではないだろうか? どこかで歪んでしまったのかな、瞳には憂いがある感じがしたのだ。女の勘だけど。 「ちっ、一時休戦か」 千年さまが、士道さまの首元をギリギリと掴んでいたけれど、パッと手を離した。士道さまも、夕月夜の気配を察して真剣な眼差しでクルッと回転した。 「あの子、何者? 唐の国の火薬は、貴族でも知らない武器のはずだよ〜」 「俺も知らない武器だ。どういうコネで手に入れたんだよ」 「火薬はさ〜うちに代々伝わる、秘密の武器だから」 「お前んち変わってんな」 「まあね〜」 「やっぱ、気に入らねえ……!」 またケンカが勃発しそう! あたしは二人の間に割って入った。 「そこまで! も〜とにかく今は、夕月夜と戦おうよ」 「はーい」 「はーい」 ん〜なんか、かわいい。 二人同時に返事をするけど、お互いに気に入らないみたい。でも何故だろう、拗ねて口を尖らせる千年さま……あたし好きかも。他の誰でもなく、あたしの為に怒ってくれたから。 「ありがとうございます……千年さま」 「え、何がだ」 「あたしの為に怒ってくれて」 「そりゃ。大切だから……」 見上げた千年さまの顔からは『心配したんだぞっ!』って想いの色が見えた。あたしの髪をクシャと撫でると、柔らかな瞳でつぶやく。 「離れないでくれ……」 「え、はい」 「これは
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-03
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第二章 二十一の章〜春の夜の夢と散るがいい〜

 白き霧が風を孕み、闇に溶けてゆく ゆらめく篝火の向こうで、ムラサキの瞳が妖しく揺らめいていた。 「お待たせしたね。安倍時宗どの」 「気やすく私の名を呼ぶな」 「何度でも呼ぶよ。君と、化け猫ちゃんの命をいただくまでは」 ゴッ──── あたしの頬を、炎の固まりがかすめて飛んだ。 「きゃあああああああ」 境内のあちこちで、宮司や巫女の悲鳴が聞こえる。 夕月夜がまっすぐに放った、炎の球が地面に落ちたり、榊に燃え移ったりしていた。よく見ると、白無垢に身を包んだ花嫁が、榊の木の下で座り込んでしまった。 「これは、水が必要じゃな」 晴明さまの漆黒の狩衣がひるがえる。そうして素早く印を切った。 「龍の力よ、穿て。急急如律令!」  言の葉の呪により、何もない空間から五芒星がみるみる生まれていく……! そこから透明な水で形を成した龍が顕現された。それは澄んだ水なのに、ちゃんと龍のまま動いてて、ヒゲや触覚すらあるのだ。 「吼えろ」 オオオオオオォォォォォォォォ──────────── 水の弾丸。 五芒星から数多の方向にザン! ザン! と放たれる。 燃え上がった炎たちが、水龍の咆哮を浴びて、あっという間に鎮火していく。榊に燃えうつった焔たちも、滝のような水により、消えていったのだ。 「すごい。龍の咆哮で、消えちゃいましたね……!」 「ああ、じゃが夕月夜は手強いぞ」 「はい! あたしも負けません」 銀色の髪が妖しく揺れて、夕月夜が愉悦な笑みをこぼした。パチパチパチと拍手をしてるのだ。背後では、燃え落ちて黒焦げになった榊がブスブスと、黒煙をあげている。 「あははははははは、やるじゃないか晴明」  「花嫁は、そなたには渡さぬからのう」 「ふ。そうはいくまいよ」 時宗さまが印を切る。その呪にあわせて、あたしの体は跳躍する。 「オン アビラウンケン」  空中で猫の爪をジャキン! と伸ばすと、そのまま天空から弧を描く。 夕月夜の頬めがけてブン! と、ふり降ろした。 「笑止」 夕月夜は静かに笑みをたたえたまま、スルリと爪をかわした。 「残念だけど。今宵の獲物は君じゃない」 涼やかに身をひるがえし、あたしに一瞥をくれると、まっすぐに花嫁
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-04
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️第二章 二十二の章〜蒼き恋と修羅〜

 士道さまに、お姫さま抱っこされた。 どんな甘美な囁きも、あたしには響かない。 あたしの恋はたった一つ 千年さまに向かっているから──── 「秋華、まずは花嫁を助けよう」 「はい!」 この一年、千年さまと一緒に戦ってきたんだ。苦戦した時もあったけれど、先刻は夕月夜の右腕に、はじめて一撃を当てる事ができた。たしかに手強い敵だけれど、絶望なんかしない! 「呼吸、合わせようぜ! 俺たちなら、きっと夕月夜を打破できる」 「ですね、はい!」 スウゥゥゥ……あたしは思いきり息を吸った。 ゆっくりと構えながら、背後に立つ千年さまと呼吸をあわせる。瞳を閉じて、心静かに、いつもの声を待つ。胸の奥がしん……と静まっていく。さながら深淵の水辺に立つ、鳥のように。 「急急如律令」 その呪を待っていた! 右足で大きく跳躍し、夕月夜の真上まで跳ねる。そのまま攻撃をしかけようと身構える。奴はサッと方向を変え、疾走した。白夜の眼差しの先には、二人の花嫁と花婿がいた。 「いけない……!」 空中にいる今、地上に降りる他ない。 そのまま地面に着地すると、夕月夜のあとを追いかける。けれど、奴の目と鼻の先には狙われた二人がいて、どうにも間に合わない! ま、間に合えええええええええええええええええええ!!! 「今宵、欲しいのはその花嫁さ」 夕月夜は右手を伸ばすと、二人めがけて長き爪をふりおろす。 シュン──── 「彼女は渡さぬ!」 「春臣さま!」 長き爪で切り裂かれる直前、春臣さまと呼ばれし花婿が、大太刀で夕月夜の攻撃をガシン! と止めた。よ、良かった。間一髪だわ。 「人の身で、君は抗うのかい?」 ギリリ……と刃がこすれる金属音が響く。 「くっ、負けぬ。負けぬぞおおおおおおおおっっ」 夕月夜の長き爪と、刀が拮抗する。 花婿の額には汗がじわりと滲んでいた。夕月夜の爪を、両手で受けているが力が強いのだろう、大太刀はカチカチと揺れ、腕は震えている。 「いいねえ。頑張りなよ、君?」 対する夕月夜は男を見下ろし、冷たい笑みを浮かべながら、片手で刀を止めていた。なれど、花婿の君は必死で抵抗をつづけている。 「私の妻となる人だ。藤のあやかしになど、渡しはしない!」 「貴方には、言葉を交わす資格すらない。わきまえた方がいいよ」 淡い紫の瞳がカッ! 
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第二章 二十三の章〜桜色の陰陽師〜

 「急急如律令」 その声は────── あたしの体が、はぜるように飛ぶ。 地面を蹴り、あざやかな一撃を白夜の顔に向けて放った。ザシュッッ! 「莫迦な」 あたしの爪が、奴の頬をかすめたのだ。……勝手に今、体が動いた……! 「散りなさい。大好きな兄さまを、貴方などに触れさせない!」 桜色の単衣に深紅の袴、桔梗さまが立っていた。 千年さまの錫杖を握りしめて。 「桔梗! まさか……今の術を放ったのか……っ?」 「おじい様、そうよ」 「あり得ぬであろう。お主はたった1日、陰陽師の稽古に励んだだけであろうに」 「だってなんか、できちゃったんだものっ!」 呆気に取られる────── 「桔梗さまが、式神を……操るなんて」 天才の片鱗を見る。 なれど、意外ではなかった。 だって桔梗様はたった1日の修練で、あたしの足を動かしたから。けれど、ここまで式神を自在に操れるなんて……恐ろしいのほどの才能だわ……。 「これは、血?」 白夜は頬の傷をぬぐい、その血を確かめている。 険しい顔で桔梗さまを見ると、フッ……狂気を秘めた笑い声をあげる。 「あはははははははは、これは愉快だ!」 「何を笑うの」 「私の顔に傷をつけた女は、君がこの世ではじめてだよ。陰陽師の女」 「いいえ、私は桔梗。ただの女よ」 「ただの女? 陰陽師でもない人間が、なにゆえ式神が使えるのかな」 シャン! 錫杖の涼やかな音色が、糺の森にこだました。 「わからない。ただ、兄さまを傷つける者は、誰であろうと許さないだけよ」 砂煙がザン! と舞いあがる。 夜の榊にかこまれた社のなかで、彼女がまとう桜色の着物だけが、際立っていた。黄昏の風が、その長い髪を揺らす。 「似てる」 なぜかしら……。 錫杖を持つ桔梗さまに、天下の陰陽師『安倍晴明』の気配が重なってみえる。あたしは体が震えるのを感じて、額から血を流す時宗さまを、きつく抱きしめた。すると、士道さまが楽しそうに、タタンと踊りだした。 「いいね〜! 盛り上がってきたじゃないか!」 「士道さま、そんなっ」 「千年が気を失っている今、僕たちでなんとかしなきゃ、でしょ?」 「そう、ですね」 士道さまの言う通りだわ。 この危機的状況を、あたし達で打破する他ない! 決意を固めた瞬間、士道さまがあの茶
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-07
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第二章 二十四の章〜血と討伐と初恋と〜

 声にはじかれて、ふり向く。 安倍晴明さまを真ん中に、鬼童丸、花蓮が立ち並んでいた。 「さあ、お相手願おうか」 鬼童丸はゆっくりと、構えを見せた。 楼門の下に立つ晴明さまは風をうけ、砂煙まいあがる向こうで、静かな殺気を泡だたせる。黒衣の陰陽師たる迫力をみなぎらせ、あたし達をみるや『安心しろ』とでも言うように、強くうなづいてみせた。 「もう一つのあやかし討伐に時間がかかってしまってな。遅くなってすまない」 「鬼童丸、ありがとう!」 あたしは嬉しくて、思わず声をあげる。鬼童丸が来てくれたなら、これほど心強いことはないわ。傷を負った夕月夜なら、今夜中に倒すこともきっと可能だ。 夕月夜は憎々しげに一同を睨む。銀の髪をかきあげて、遥か空に目を馳せた。 「やれやれ饗が醒めたよ。また出直すとしようか」 そのまま闇に消えるが如く、飛び去ろうとする夕月夜を、あたしは呼び止める。 「待って!」 「……なにかな、化け猫の姫君」 「水鏡さまは、無事なの」 「彼女は君を待っている」 横顔のまま、視線をこちらに向けて冷笑する。 ひとさし指が真っ直ぐに、あたしの瞳を指さした。 「次は水鏡と迎えにくるよ。楽しみに待っているといい」 「あ、待って!」 蒼き闇に銀色の髪が透ける。 あたしが遠く手を伸ばすと、彼の体は跳躍し、そのまま柊の社を飛び去って、幻の如くに消えていった。しんと静まり返った社の中に、榊の葉がカサカサとこすれる音だけが響く。 遠くに消えていく夕月夜の姿を目で追いながら、あたしは想っていた。 あの里にいるんだ、水鏡さま。 もう一度、逢いたい。 胸が詰まるような想いを抱えていると、いつの間にか隣に立っていた千年さまが、あたしに優しく声をかける。 「逃がしてしまったな、すまない」 「千年さま、その血。まだ流れてる…!」 額から、ひとすじの血が雫となって流れていた。 こんな時にまで人の心配なんて、どんだけお人好しなのだろう。 あたしは袖に入れておいた綺麗な布をだして、その血をそっと拭う。 「すまないとか……言ってる場合じゃありませんよ。もうっ、血が流れてるのに」 「これぐらい、かすり傷だって。大丈夫だ、案ずるな」 照れたような、ふてくされたような表情であたしから目をそらす。その顔は、驚くほどすぐ近くにあって、なんだか緊張してしま
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-08
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