All Chapters of 地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした: Chapter 31 - Chapter 40

104 Chapters

第31話・詐欺師の言い訳

「コア戦闘だよ」 大したことでもないように御影先生はさらっと言ったけど、内容はとんでもなかった。 だって、入試の時に渡良瀬さんの担当教員阿古屋先生が言ったように、法律でコアは職業上必要な場合及び自分の身を守るため以外に他人に攻撃的な使い方をしてはならないとされているのに。「何事にも例外はある。例えば、コア戦闘による対応策を練習するとか、対人コア能力を試す場合とか」「自分の持つ対人コア能力を試す?」 何だか詐欺師の言い分のようだけど。「この学園はコア研究のためにある。コア戦闘もごくごく当たり前だ。それに、社会に出た時に、戦闘能力を必要とされることも多々ある」「そりゃあそうですけど」「研究員同士でもあるのさ。今のコア研究は思った方向に進んでいるかという疑問がね。だから、コア研究の進展状況を調べるために、互いに合意の下模擬戦闘を行うことが許可されている」「それって言い訳ですよね」「ああ言い訳さ。だが、言い訳でもコア研究は進む。コア同士のぶつかり合いはまだまだ研究の余地があるからね。それに、君だってどうせ教わるなら強い教員に教わりたいだろう?」「それは……まあ」「と、言うわけで」 ぱん、と手を叩いて、御影先生は僕の前の椅子に座った。「まず、君のコアが現在何をどこまでコピーできるかを見てみよう」「楽しそうですね」「ああ楽しいとも。コア研究者として、コア能力の研究が楽しくないわけがない。それもこんな前例のない色を前にして」 透明、か。 肌の上に埋め込まれているから淡いベージュだとばかり思ってたよ。透明だって気付いたらもうちょっと早くコア能力に辿り着けていたかもしれない。「さあ、まずは君の現在のコア能力を試そうか」 先生は嬉しそうに言った。
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第32話・コア実験

「受験以外でそのコア能力を試したことはあるかね?」「いえ……あ」 涙でぐちゃぐちゃになっていた渡良瀬さんを思い出す。「一人、コピーしました。時間がかかったけど、色が変わった」「能力の発動は?」「大したことじゃないです。興奮状態が落ち着いただけ」「渡良瀬瑞希君か」 ばぶぅ! と吹き出しかけて、僕は反射的にそれまで黙って事態を見ていたココを見た。「はっは、コア監視員はこの場合関係ない」 御影先生は楽しげに言う。「受験生の中で精神強制安定のコア能力を持っていたのが渡良瀬君で、渡良瀬君がどんな能力を持っているかは受験に関わった全弧亜学園関係者が知っている。それに自己精神安定は数あれど、他者精神強制安定は珍しい能力だ。だから渡良瀬君と思ったんだ、他意はないよ。監視員にもね」 そこで御影先生は笑みを引っ込めた。「色々試したいことがある。例えば色でコピースピードが違うのか、能力は何処までならコピーできるのか。あるいは限界がないかもしれん。せっかく勝ち取った君の育成資格だ、君の能力を限界まで引き上げて見せる」 先生が持ってきたのは、たくさんの掌大の透明な容器一つ一つに収められたコア……らしきもの。 らしき、って言ったのは、見た目は確かにコアなんだけど、コアは普通人間に宿って、人間が死んだ時に一緒に消滅する、って言うのが常識だったから。「これは、コア主に不要とされたコアだよ」 謎なことを言い出す先生。「君も、コアを取り換えられないかと思ったろう?」 全くその通りなので頷くしかない。「そんな人の為にコアの解除と再定着を研究していた人がいてね、このコアはその結果だ。確かに人間にくっついていたが、そこから切り離されて、このケース内で定着している」「その研究はどうなったんですか?」「コアを取り除いた人間に、別のコアを見つけて定着させようとしたが、一度コアを切除した人間に新たなコアが定着することなく、コアなしとなってしまった。本来の目的からは外れたが、凶悪な
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第33話・コア紋

 色とりどりの主を失ったコアを机の上にズラリ、と並んで、先生は言った。「さあ、この中のどれでもいい、君の気に入ったコアのコピーを試してみてくれ」 ぴ、と何かのスイッチを入れる。 部屋中が淡い光に包まれた。「これは?」「コア周波数や反応を見る計器だよ。安心しなさい、君には害はない」「実験ですか?」「現在能力の把握は成長への第一歩だ」 御影先生は真面目な顔で言った。 確かにそれはその通りだと思うので、僕はどっちかって言うと地味な色が多いコアの中からブラウンのコアのボックスを手に取った。 渡良瀬さんにやったように、色に集中する。色が染まるように。この色になるように。 …………。 コアは変わらない。 一通り試してみたが、色は変わらなかった。 渡良瀬さんの時はできたのに……。「できません」 声が暗いのは、自分でもわかった。 あの二次・三次受験の時は偶然だったのか。「ふむ、まあ、予想通りだ」 落ち込む僕に、先生は左手親指の付け根についた自分のコアを見せた。 グレイ……というよりは、メタリックな輝きを放つシルバーのコア。「レアですね」「そう、レアだ。銀と言う色はなかなか出ない。透明程のレア度はないがね。さて、これはコピーできるかな?」 先生の科学者的雰囲気にそのメタリックシルバーはよく似合うと思った。 この色を、宿す。 この色に、変える、変える、変われ、変われ……。 ゆっくりと、僕のコアの色が変わり始めた。 先生が机から身を乗り出して僕のコアを覗き込む。 部屋中の計器が何やらカチカチと動いている。 もっと、もっと、深く、輝いて。 十分くらいかかったか。 やっと、僕のコアは先生と近いシルバーに変わった。「なるほど、やはりそうか」 先生は頷くが、僕は精神力を使
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第34話・コピー

「君が私のコアを見て変化を始める直前、君のコアの表面に確かに私のコア紋が浮かんだ。それがコア全体に広がり、変化を始めた。つまり、君のコアは誰かに定着しているコアじゃないとコピーできない。……おっと、もういいよ。元に戻しても」 先生の色のコピーする時、何だかコアが拒絶するような感じを見せたのを必死で抑え込んだので、僕はかなり疲れていて、許可が出たので色を戻した。あれだけ苦労した色が一瞬で消える。何だかむなしい気がした。「コア紋は人間に定着しているコアにしか生じない。実は、この中には、これとか」 と御影先生は一つの黄色っぽいコアを見せた。「これは、つい先日私が拾ったものだ。私と同化しなかったからね。何かの研究に使えるかもと思って持っていたが、君はこれもコピーできなかった。つまり、そのコアはコアを宿している人間の能力しかコピーできないということだ」「落ちてるコアが使えないと何か問題ありますか?」「例えば水の能力が必要だって時に、近くに水に関するコアを持っている人間がいない。落ちていたコアが青く水の可能性がある。しかし君はそれをコピーできない。人間と同化して能力の方向性の定まったコアでないと使えないし、色と関係はあってもコア主の使えない力は君もまた使えないというわけだ」「……はあ」「疲れたのは分かるが聞いておきたまえ、この先の君に必要なことを私は言っている」 どう必要なのか、正直分からない。「例えばコア戦闘の時、君は相手の能力をコピーして攻撃ができる。しかし、相手が持っているのと同じ技しか使えない。受験の時のように、同じ力で相手の技を相殺することができるが、そこまでだ。相手の油断、あるいは近くにいるコア主の能力をコピーして方向性の違う技を使えないと、引き分けには持ち込めても勝利とはいかない」 少しだけ、先生の言いたいことは分かった。 僕は人のコアの力をコピーできる。でも、コピー以上のことはできない。「つまり、やっぱりこのコアは外れってことですか?」「そう悲観したものではない。コピーが本物に勝つには、本物以上のプラスアルファがあればいい。君と私には短
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第35話・無意識

「さて、誰かのコアでなければコピーできない能力なら」 御影先生は立ち上がった。「それを伸ばすには、コア主に頼んでどんどんコピーしていくしかない。しかも、できるだけ多くのコア主から」「そんな、協力してくれる人っているんですか?」 色々聞いた話によると、担当教員同士の仲はそんなに良くないって言う。 僕の場合みたいに一人の生徒を取り合ったり、研究内容が一部似ていて、早い者勝ちで栄光を掴むとか。 そんな、競争している研究員やコア医が、能力コピーに協力してくれるんだろうか。「心配はいらない、君の教員の候補者は大勢いたからね。研究の一部に協力できるだけでも私も相手も研究は進む」「……そう言うもんなんですか?」「そう言うものだ」 先生はそう言い切って、机の傍にあるモニターのスイッチを入れた。「これは?」「君の二次試験、三次試験の録画だ」 映し出されたのは、確かに中学の制服を着ている第二次試験の時の僕で。 周りのみんなが微妙に色が変わっているのに、僕だけ色は変わってない。 だけど。 モニターの外から、コア能力と思われる水の噴射が僕めがけて飛んできた。 その時、僕の体は、確かに全身青に染まっていた。「分かるかね?」 モニターに映る青色の僕を示して、先生は言った。「君のコピー能力は、君に敵意を持ったコア攻撃を感じた時、相手の色を確認しなくても速やかに発動される。こちらもだ」 今度は第三次試験。中庭のど真ん中で彼方に攻撃を仕掛けられ、僕の全身は白に近い青に染まった。そして、相手の攻撃がどんなものか分からないのに(技名を言ってたじゃないかと思われるだろうけど、技名だけでどんな攻撃が来るかは完全に把握できない)、全く同じ力を使った。いや、相手の技のマネをして、相手と同じ力を発揮した。「危ない、と感じると、君は無意識のうちに相手のコア周波数を読み取って、それをコピーする。そして相手と同じ技で相殺できる。だけど、これを見たまえ」
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第36話・課題

 御影先生は、ホワイトボードに字を書き殴った。 課題1。相手の色を見ずにコピーすること。 課題2。コピーした能力を、相手を上回る力で発動すること。 課題3。攻撃された以外の技を使えるようになること。「この三つをクリアできれば、君は恐らくコア戦闘では最強のコア主になれる」「……それって、どういう理屈で」「コンビニのコピー機のようなものだな。同じ書類をコピーしても、インクの濃い薄い、色が白黒かカラーか、写真コピーが書類コピーかで仕上がりが違ってくるだろう。それと同じだ。相手の情報を得る前に、君のコア威力を高め、そして相手が放つ前に相手の技で攻撃できれば、泥仕合にならずに済む。コアをどれだけ相手より強い力で発揮するかだ」「……すいません、よくわかりません」「まあ推論より実践だな。データは多い方がいいから、大人数のコアをできる限りコピーしなければいけない。後はコピー速度の上昇か。攻撃されない限り瞬時に色を変えられないのは致命的だ」 そして先生は僕のコアを見た。「私のコアをコピーするには十分くらいかかったが、わたら……もとい、以前コアをコピーした時はどれくらい時間がかかった?」 一瞬動揺した僕に気付いたのか言いなおした御影先生の言葉に、僕は渡良瀬さんのコアをコピーした時のことを思い出した。「確か……三分、くらいかな」「そこまで差が出たか」 先生は腕を組んで考え込む。「コア主との相性か、コア色との相性か、それともコア周波数との相性か。そこまで調べなければならないな」「すいません、手間をかけて」「なに、研究と育成は手間をかけるものだ。手間のかからん育成など育成とは言わない」 研究者らしいことを言って、先生はモニターのスイッチを切った。「コアを知らない人間のコアをコピーすることも必要だな。これは君が暇な時にやればいい」「はい?」「授業で隣に座った人間のコアをコピーするんだ。断りなくてもいいだろう」「いや、それって失礼なんじゃ」
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第37話・先輩

 その時、ブザーの音がした。「む」 先生が顔を上げる。「何です?」「来客だ」 先生は外の様子を確認してからドアを開けた。「御影先生、うちの担当教員から預かり物」 メモリを持って入って来たのは、かーなーりー筋肉質で背の高い、なんて言うかごつい人だった。その人の視線が僕の顔に来る。「お、お前がコピーくん?」「コピーくんて」「悪い悪い、御影先生が無色コアコピー能力生徒をゲットしたって噂になっててな。いやー俺の色もかなり珍しいと思ったけど無色と来るとは思わなかった」 ニッと笑った人は、悪意のある人には見えなかった。「丸岡君、彼は二年生の八雲一君だ」 先輩なんだ。「よろしく、お願いします」「おう。じゃあ先生、俺はこれで」「ありがとう八雲君……いやちょっと待ちたまえ」「なんすか先生」「ちょっと実験に協力してもらえないだろうか」「俺のコアをコピーするんすか? いやそれはやめた方がいいんじゃ。こんなひょろい身体じゃ……」 八雲先輩は眉間にしわを寄せた。「なに、コピーして能力を使うわけじゃない。コピーできるかどうかを調べるだけだ。君のコア能力の弱点はよく知っている」「いいっすけど、見せたりとかはしなくていいんすか? 俺のコア見せるといちいち服脱がなきゃいけないんだけど」「その必要はない。十分かそこらの時間、ここにいてくれればいい」 と言って御影先生は僕の方を見た。「やってみたまえ」 八雲先輩に意識を集中する。 先生は僕がコア紋を読み取ってコピーすると言っていた。だから、別に目で見てコピーする必要はない。それは分かるんだけど。 どうすれば、と思った瞬間、不意にそれは来た。 何て言うか、波動のようなもの。 八雲先輩の周りに
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第38話・チャイム

 先輩の豪快に笑う声の終わりに、凄まじい音量のチャイムが響いてきた。 振動が床に響くほどの大音量。 思わず耳を押さえる僕の目の前で、御影先生は明らかに舌打ちしていた。「もう時間か」 迷惑チャイムが鳴り終わって、耳から手を離した僕に聞こえたのは、そんな言葉。 あれだけの大音量だったのに、平然とした顔をしている。「この学園のチャイムって、どこもこんなにうるさいんですか? 寮は普通の音量だったのに」「いや」 残念そうな顔をして御影先生は言う。「我々研究者は、育成・研究に夢中になって時間を忘れるということが多々ある。その場合、対象である生徒への負担が大きくなるので、夢中になった教員を止めるためにこれだけ大音量なんだ。研究者の使っている部屋や場所のチャイムは大体さっきの音量だ」 確かに。もう一時間以上は経っている。僕は先生のコアのコピーで結構疲れていたのに、先生はけろっとしている。「この音に早く慣れときな。いちいち驚いていると心臓がいくつあっても足りねえよ」 八雲先輩は笑って、じゃあな、と部屋を出て行った。「では、今日の担当時間は終わりだ。これから休憩を挟んで、午後から一年生合同教室で自己紹介と授業担当教師、時間割などの発表がある」「ありがとうございました」「ではー」 それまで黙っていたココが口を開いた。「一年合同教室までご案内いたしますー。行きましょうー!」  さっきのチャイムの音量の動揺が落ち着いても、僕の心臓は高鳴っている。 これから同級生に会うというのもちょっと緊張している理由だろう。 同級生で、僕が知っているのは、彼方と渡良瀬さんだけ。残る五十人近くの全員とも顔を合わせているはずだけど、受験の緊張や僕みたいな落ち込みで誰かさんの顔を覚えている余裕なんてなかったはずだ。あと三次試験の対戦相手くらいか。 階段を上って少し行くと、「一年生合同教室」と書かれたドアがあった。 何人かの生徒が入って行
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第65話・

「現在までの研究結果では、コア主が、宿った色からできそうな力を想像する。こんな使い方ができるんじゃないかと思う。願望とでも言うのかな、見た瞬間の想像から、コア能力の方向性が決まる。無論宿したコア色を気に入っているかどうか、なども影響はしてくるようだが」「つまり、コアのことを何も知らない人に宿った場合、色を見た、赤かった、火みたいだと思った、だからコア能力が火の方向に定まる……」「そう、だから君が最初にコアを見た時淡いベージュに見えて、何も力が思い浮かばなかったのは幸いだね。無色、コア周波数を微弱にしか持たないという、貴重なコアに方向性を与えなかった。だから君の能力は周波数コピーと言う独特の方向になったんだ」 ……言っちゃなんだけど、よく分からない。「君はコアの力で、近くにいる人間のコア周波数を読み取り、それをコアに宿せる。脳波とコア周波数の関係にも影響してくるな。これはデータを取らないと」「先生も分からないことばかりなんですね」「ああ分からん。コア研究は長く続けられているのに、宇宙の成り立ちにも匹敵するほど分からんことが多すぎる。研究者にとっては宝島だよ。いつどこからお宝が出てくるか分からない」 先生はコードがたくさんつながったヘルメットのようなものと、何やらコードのついた器具を持ってきた。「早速やってみよう、実験だ」「僕、疲れてるんですけど」「それもデータには有益だな」 ……担当教員って言うのはみんなこんななんだろうか。 先生は無理やり僕に重いヘルメットをかぶせた後、右手甲のコアに器具を貼り付けた。「さ、コピーをしてみろ」「どのコピーをですか」「今は私のコアでいい」 先生も重いヘルメットをかぶって、自分のコアに器具を貼り付けた。 僕はしぶしぶ先生の指示に従った。 先生の方に意識を向ける。 先生から感じるのは、何か波のようなもの。コア周波数。 その波を自分の中に取
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第39話・そう言えばここは学校だった

 一年合同教室に来ていた数十人は、僕が入ってくるのをチラリと見て、挨拶もせずにぼそぼそと話している。「私の担当、本当は彼が欲しかったんだって」「俺もだよ。二番目の男ってな」 ……確かに無色ってのはないし、コピー能力もこれまでない超レアだってのは認めるけど、そんなことで嫉妬されてもなあ……。第一、二次試験で水の攻撃を受けなければ、僕は間違いなく受験滑ってたし……。 ……ん? そもそも、二次試験の時、水をぶっかけようとしたのは、誰だ? 彼方ならコアは白に近い青だから、可能性はある。でも、空気操作に特化した彼が水も操れるなんて、ちょっと無理があるよな。能力や、もしかして二つ以上コアを持ってるなら、そもそも受験の前に出会ったあの時に名乗りを上げていただろうし。でも、受験生への攻撃は三次試験以外では認められていなかった。彼方が何度も僕に突っかかって来ては警告されていたことを考えると、これからここに集まる五十四人のうちの誰かとは考えにくい。 試験官の先生や研究者? 僕があまりにも色が変わらないから頭に来て? いや、それなら、その前に失格を宣告すればよかっただけの話だ。 攻撃のおかげで合格できたわけだけど、僕に攻撃してきた誰かが間違いなくいるんだ。この学園に。 ……夢の学園生活なんて浮かれてられない。 第一、ここにいる僕を含めた五十四人は全員ライバル。どんな手段を使ってでも相手を出し抜こうとするヤツだっているかも知れない。 ただ弧亜に受かったって浮かれてるだけじゃダメなんだ。マンガや小説ならエンディングだけど、僕の人生は僕が死ぬまで終わらない。敵がいる可能性があるのなら、警戒はしておいて当然だ。「丸岡くん!」 高く心地のいい声が耳に届いた。渡良瀬さんだ。「担当教員、どうだった? 丸岡くんの担当は御影先生、だっけ?」「切れ者っぽい、でも面白そうな人だったよ。渡良瀬さんの担当は、受験の時に診察してた阿古屋先生だね」「そ。会うなり、『丸岡くんが欲しかった~』って大溜め息」 けらけら笑いながら言う渡
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more
PREV
123456
...
11
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status