成哉は、言葉を失った。中央大学は紬の第一志望ではなかった。しかし、その場所が彼女の人生においてどれほどの重みを持っていたか、成哉は痛いほど理解していた。紬は、彼に再びのチャンスを与えぬよう、二人が巡り合う可能性そのものを根絶やしにしようとしているのだ。成哉の胸の奥から、耐えがたいほどの切なさが込み上げた。「……紬、お前は……どこまでも残酷な女だな」「残酷?……もしあなたに出会っていなければ、私は今頃、自分が目指した業界で深く根を張り、華々しく芽吹いていたはずよ。毎日あなたと子供たちの顔色を伺い、食事の支度に追われ、文句ひとつ言わずに尽くす『都合のいい家政婦』に甘んじることもなかったわ」紬の唇に浮かんだ微笑が、少しずつ冷淡なものへと変わっていく。二人の間に横たわる深い溝は、望美という存在のせいだけではなかった。それは、二人の本質的な性格の乖離によるものでもあった。根本的に、二人は相容れなかったのだ。成哉はただの一度も、紬に全幅の信頼を置くことはなかった。彼はあまりに矜持が高く、自尊心が強すぎた。もしあの時、成哉が一度でも紬が嫁いできた真意を問いかけてさえいれば、結婚の経緯にこれほど長く、暗いわだかまりを抱え続けることもなかっただろう。帰らぬ夫を待ち続ける日々は、紬に「自分は未亡人ではないか」という錯覚を抱かせるほどに、あまりにも長く、孤独すぎた。成哉は、苦渋の滲む複雑な表情を浮かべた。長い沈黙の果てに、ようやく絞り出すようにして言葉を紡いだ。「……すまない」だが、今の紬の心には、その言葉さえ何の波紋も広げなかった。時を逸した情熱ほど、虚しく無価値なものはない。謝罪もまた、それと同じだった。紬が最も彼を必要としていたその時、成哉の姿はどこにもなかったのだ。たとえ望美がいなかったとしても、いずれまた別の誰かが現れ、二人の抱える問題は遅かれ早かれ破綻を迎えていただろう。問題の本質は、どちらが犠牲を払い、どちらが相手のために己を変える意志があるか、という点にあったのだから。そして今、紬の心は枯れ果て、疲れ切っていた。成哉の瞳に、傷ついた色がかすかに過る。窓の外では、いつの間にか雨がしとしとと降り始めていた。紬は不審げに眉をひそめ、濡れ始めた路面を確認した。「……スピードを落
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