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第289話

Author: タロイモ団子
なんておしゃべりな男だ。

渉はきまり悪そうに手を振った。

「はいはい、僕の口が過ぎたようだね。それじゃ、お暇するよ」

彼は現れた時と同じく、嵐が過ぎ去るかのように慌ただしく立ち去っていった。

紬はまだ、少しばかり呆然としていた。その腕の中には一束の花が残されている。

理玖が助け舟を出そうと手を伸ばしたが、紬は花束に顔を埋めるようにしてそれを拒んだ。

「いいえ、大丈夫です。持てますわ、これくらい重くありませんもの」

震える長い睫毛。白い肌が淡いピンクの花々に映え、その姿はどこか儚く、そして可憐だった。

理玖の伸ばした手は空中で一瞬迷い、やがて彼女の頭へと静かに置かれた。

重苦しい沈黙の後、彼は低く、深い溜息を漏らした。

「……ごめん、君を十分に守りきれなかった」

事故の前夜、理玖の部下はすでに、望美の差し金で男たちが紬の車に細工を施したことを突き止めていた。

彼はあえて望美に悟られぬよう、男たちが去った後に車を元の状態に戻すよう命じていたのだ。

紬が区役所まで安全に辿り着けるよう万全を期し、その場を離れたはずだった。

それなのに、一瞬の隙を突かれてしまった。

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