元々、成哉にとって最後の拠り所は、「理玖は紬とただ火遊びをしているだけだ」という確信だった。どれほど親密になろうとも、入籍という一線だけは越えない――そう高をくくっていたのだ。成哉が頑なに紬との離婚を引き延ばしていたのも、理玖の不誠実さを彼女に思い知らせ、目を覚まさせるためだった。まさか二人が、自分の知らないところでここまで踏み込んでいたとは。成哉は激しい怒りと痛みに引き裂かれそうになった。だがその一方で、胸の奥底から湧き上がるどうしようもない無力感が、まるで見えない鎖のように彼の全身を縛りつけていた。理玖は冷ややかな眼差しで彼を見下ろし、その瞳に愉悦の色を滲ませた。「それは悪かったな。紬を手に入れるためなら、俺はどんな姑息な手段だって厭わない。だが、それがどうした?結果がすべてだろう、天野さん。もし本当に彼女の幸せを願うなら、一刻も早く離婚届に判を押すことだな」「なぜお前が……!なぜお前のほうが彼女と別れようとしないんだ!」成哉は血走った目で理玖を睨みつけた。「なぜなら、彼女が今愛しているのは、この俺だからだ」理玖の揺るぎない声音が、容赦なく成哉の胸を抉る。紬が今でも自分を愛しているのか。その問いを考えることさえ、成哉にはもう恐ろしかった。ましてや口にする勇気など、今の彼には欠片も残っていない。結局、成哉は二人の子供を連れ、逃げるようにその場を後にするしかなかった。帰りの車内で、彼は正気を失ったかのようにアクセルを踏み込んだ。芽依と悠真はチャイルドシートのベルトをぎゅっと握りしめ、息を潜めたまま固まっている。――パパ、理玖さんに殴られておかしくなっちゃったのかな……どうしてこんなに飛ばしてるの?悠真は激しく吹き込む風に髪を乱されながら、頭の中までぐちゃぐちゃに混乱していた。――一方の紬は、自分がすでに理玖の口から「再婚相手」として既成事実のように扱われていることなど、露ほども知らなかった。ただ、その日の夜。彼女のスマホに、再び喜久子から電話がかかってきた。「紬!今すぐ理玖と離婚しなさい!」受話口の向こうから、鼓膜を突き破りそうな勢いの怒鳴り声が響く。紬はうんざりしたように眉をひそめ、スマホを耳から離した。――今度は何の癇癪かしら……小さくため息を
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