しかし芽依の視線は、紬と手を繋いでいる小さな女の子に釘づけになっていた。すると突然、唯が自分の足首を押さえて「あ痛たっ」と声を上げ、いかにも可哀想そうな仕草で紬の腕にしがみついた。「きれいなお姉ちゃん、足がすっごく痛いの……」「どうしたの、唯ちゃん?捻ったの?急にどうして――」さっきまでの淡々とした態度とは一変し、紬の声にははっきりと緊張が走った。彼女は唯をひょいと抱き上げ、痛みを与えないよう細心の注意を払いながら、その小さな体をそっと腕の中に収める。その光景を目にした瞬間、芽依の胸に、まるで塵でも入り込んだかのような鋭い痛みが走った。――ママが、あんなふうに私を抱っこしてくれたのなんて……もう、ずいぶん前のことなのに。あんなちびっ子に、ママを奪われるなんて、我慢できない……!「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ただ歩けなくなっちゃっただけなの。少しだけ、抱っこしててくれる?」唯は紬の肩に顔をすり寄せて甘えながら、背後にいる芽依へ向けて、勝ち誇ったようにアッカンベーをしてみせた。「もちろん、いいわよ」紬はそのやり取りにまったく気づかず、唯のわがままをたしなめるどころか、首元に顔を寄せてくる小さな体を、愛おしそうに受け止めた。「お姉ちゃん、大好き。とっても優しいんだもん」芽依は、もはや平静を装えなかった。駆け寄って紬の前に立つと、唯を指さして叫ぶ。「ママ、その子、嘘ついてるのよ!分からないの!?」紬はゆっくりとまぶたを上げ、淡々と答えた。「ええ、分かっているわ。それで?」そんな返事が返ってくるとは思ってもいなかった。芽依の胸の奥から、得体の知れない苦しみが激流のように押し寄せる。「あいつは卑怯なのよ!離れなさい!」そう叫ぶなり、芽依は無理やり唯を紬の腕から引きずり下ろそうとした。紬は唯を抱いたまま、階段の途中に立っていた。足元はヒールの高い靴。強く引っ張られ、体が大きくぐらつく。子供を抱えたまま後ろ向きに転げ落ちそうになった、その瞬間――腰のあたりに、力強い感触が伝わった。誰かが彼女の体をしっかりと支え、引き戻してくれたのだ。心臓が早鐘を打つ。振り返ると、いつの間にか理玖がそこに立っていた。紬は申し訳なさそうに顔を曇らせ、唯を理玖に預ける。そして今度は、怒りを込めて芽依を見据えた
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