想いというものは、一方通行では決して長続きしない。互いに想いを交わしてこそ、初めて本物の絆へと昇華されるのだ。どれも、ほんの些細な出来事にすぎないのかもしれない。それでも、そんな小さな欠片が長い年月をかけて降り積もれば、やがて円香の胸の奥に、決して消えることのない確かな重みとなっていく。黙って耳を傾けていた賢治は、その顔に複雑な色を滲ませていた。胸の内にじわじわと広がっていくのは、娘に対する深い後悔の念だ。長年「のびのびと育てている」などと聞こえのいい綺麗事を並べていたが、その実態は、ただ欲しい物を買い与えるだけで、育児放棄も同然の日々だった。その結果、円香は「今を楽しまなきゃ損だ」とばかりに、享楽的で刹那的な生き方をする娘に育ってしまったのだ。決して、娘の奔放な性格を正そうとしなかったわけではない。ただ、もう手遅れだと悟った時点で、賢治はあっさりと手を引いてしまった。一度たりとも立ち止まって考えようとはしなかったのだ――娘がなぜ、こんな風になってしまったのかを。すべての元凶が自分自身であったと今更突きつけられ、賢治はしばらく呆然と口を開けたまま、どんな言葉を紡げばいいのか分からずにいた。重苦しい沈黙を破るように、円香が静かに口を開く。「お父さん。こんなことを話したのは、罪悪感を煽って杏奈を助けてほしいからじゃないよ。ただ、あの子は私にとって大切な家族なんだってこと、分かってほしかったの。これから何があっても、私は絶対にあの子を見捨てない。たとえ、この命を懸けることになったとしても」円香の心に、一片の迷いもなかった。彼女は決して愚かではない。名家に生まれ、幼い頃から大人の世界の醜悪さもあらゆる裏事情も見聞きして育ってきた。世の中の理不尽さなど、とうの昔に骨身に沁みている。もし本当にただの世間知らずの阿呆だったなら、とっくの昔に誰かにいいように食い物にされていたはずだ。飛び交う世間の噂を拾い集めるだけでも、杏奈の置かれた状況が絶望的なまでに最悪であることは容易に察しがついた。単に会社が潰れて終わる話ではない。最悪の場合、命の危険だって十分にあり得るのだ。だからといって、恐れをなして逃げ出すとでもいうのか?今日一日、病室に張り付いて彼女のそばを離れず、さらには世論を誘導するためのネット工作の指示まで出した。その
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