「私に対して、よほど根深い不満が溜まっていらっしゃるみたいね」紗里は円香を真正面から見据え、その口もとに、どこか底知れない笑みを浮かべた。「当たり前でしょ」円香は全く怯む様子を見せなかった。「まさかこの私まで、あんたに鼻の下を伸ばした男たちみたいに、コロッと騙されるとでも思ってたわけ?」紗里は、確かに底知れない人間だ。普通の人なら、こんな侮辱を受ければとっくに感情を爆発させているところだが、彼女は微塵も怒りの色を見せなかった。それどころか、さも嬉しそうに微笑んで言い返した。「ふふっ、まさか、あなたの目に私がそれほどまでに魅力的な女として映っているとは、思ってもみなかったわ」「……は?え?」円香は一瞬、ぽかんと口を開けた。これ、私がアイツの魅力を認めてベタ褒めしたことになってる?渾身の嫌味が、あの厚顔無恥な女には1ミリも通じてないってこと?「円香、もういいから」杏奈が静かに遮った。そして、改めて紗里に向かって問いただした。「それで?私たちに、一体何の用?」「そっちも、これから病院に戻るのでしょう?私もちょうど帰るところだったから、よければ一緒に車でどうかと思って」「お断りよ」円香がすかさず食い気味に答えた。「私たちとあんたとじゃ、仮に行き先が同じだとしても、同じ空気を吸って同じ道を歩く気には絶対なれないから」紗里は円香の拒絶など最初から聞こえていないかのように無視し、ただ杏奈の口からの返事だけを待った。杏奈は、少しだけ思考を巡らせる間を置いた。この狡猾な女が、一体何を仕掛けてくるつもりなのか、その手口をこの目で見てみたいという探究心があった。「……いいよ。一緒に行きましょうか」「あっ、ちょっと、杏奈!」円香は本気で焦った。「なんでわざわざあの女と一緒に行くのよ。縁起でもないし」杏奈は円香の腕をそっと宥めるように叩き、二人だけにしか聞こえない微かな声で耳打ちした。「あっちがこれだけ不自然に近づきたがっているなら、今ここで無下に断ったところで、絶対にまた別の手段で機会を作ってくるはずよ。それなら、最初からあっちの懐に飛び込んで、一体何が目的なのか、直接探りを入れた方が話が早いわ」それから、ふと思い出したように話題を変えて円香を問い詰めた。「そういえば円香。あの人が私と同じ病院に入院してるってこ
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