幸いなことに、円香はこういう子どもの情緒の揺れにいちいち頓着するような繊細な性格ではない。ましてや、こんな恩知らずな子どもに対しては、哀れみなど欠片も湧いてこなかった。円香は無造作に足先で、うずくまる小春のお尻をちょんちょんと小突いた。その反動で小さな体がぐらぐらと揺れる様子を上から眺めながら、意地悪くにんまりと笑いかける。「ねえ、ちびっこ。何がそんなに悲しくて拗ねてるの?私が悩み相談に乗ってあげるから、素直に話してみなさいよ」小春は珍しいことに、今日は一切の反応を拒絶した。騒ぎもしなければ、怒りもしない。まるで分厚い殻の中に閉じこもってしまったかのように、ただ膝を抱えて隅にしゃがみ込み、誰とも目を合わせようとしないのだ。これには、さすがの杏奈も少し驚いて眉をひそめた。授業参観の開始までまだ少しだけ時間があったため、杏奈は担任の花原先生のところへ事情を聞きに行った。先生もひどく困惑した様子でため息をついた。「小春ちゃんのお母様……実は、今朝学校にいらした時から、ずっとあの調子なんです」「……何か、原因に心当たりはありますか?」「私からも本人に優しく聞いてみたんですが、頑なに何も言ってくれなくて。その後、念のためにスクールカウンセラーの先生にもお話を聞いてもらったところ、小春ちゃんは現在『非常に深い悲しみと喪失感の中にある』という見立てでした」杏奈は口元をわずかに引きつらせた。そんな大げさな診立て、わざわざ専門家に話を聞かなくても一目でわかるというものだ。「もしこの状態が長く続くと、小春ちゃんの心身に支障をきたしはしないかと心配でして……」先生は、真剣な顔つきで言葉を継いだ。そして、杏奈に誤解させてはいけないと思ったのか、慌てて付け加える。「もちろん、すぐにお父様の方にもご連絡を差し上げたのですが……」その時の蒼介の冷淡な反応を思い出したのか、花原先生はひどく呆れたように言葉を濁した。「お父様は、『しばらくすれば勝手に機嫌を直すだろうから、放っておいて構わない』とだけおっしゃって……」「……なぜ、先に私の方へ連絡してくださらなかったんですか?」杏奈は解せないといった様子で眉をひそめた。確かに、小春との間に情がほとんど残っていないのは紛れもない事実だ。それでも、娘が学校でこれほど異常な状態にあると知ったなら、一人の
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