「どうせ私があの場に出ていって派手に報復したら、後でこっそり私に嫌がらせするんでしょ?」円香がつんと唇を尖らせた。「あなたがわざわざ手を下して報復しなくてもできるわよ」玲子はふっと冷笑を残してそれだけ言うと、くるりと踵を返して部屋を出ていった。杏奈と円香のふたりが二人きりで話せるよう、気を利かせて場所を開けてくれたのだ。玲子がいなくなった途端、円香はこれまで張り詰めていた糸が切れたように、わあっと杏奈に抱きついて、子どものように盛大な泣き声を上げた。「杏奈ぁ〜!私、なんて可哀想なんでしょ〜!」杏奈は、やれやれと額に手を当てた。「ちょっと、もう全部綺麗に解決したじゃないの。なんで今さら泣いて、可哀想なのよ」「だってさぁ、家にいるときは、おやじが口うるさくあれこれ課題を押しつけてきても、毎日出てくるご飯だけは最高に美味しかったのよ!」円香は涙をぬぐうような大げさな仕草をしながら、泣きつくように訴え続ける。「でも、ここに合宿に来たら、テレビ局のご飯は味気なくて微妙だし、寝る部屋の環境も最悪で。その上、毎日の唯一の娯楽が、あの明奈とそのお取り巻きとのくだらない小競り合いって、一体どういうことよ!」「はいはい、わかった。わかったから」杏奈は子どもをあやすように、根気よく背中を撫でてなだめた。「収録期間はそんなに長くないんだから、もう少しの辛抱よ。すぐにお家に帰れて楽になれるわ」まだ延々と嘆き節を続けるつもりだった円香の目の前に、カサカサと小袋のお菓子が積み上げられた。ハッとして振り向くと、ほんの少し悪戯っぽく微笑んでいる杏奈と目が合った。その瞬間、感激のあまり円香の目が輝き、今にも涎を垂らしそうになった。「うわぁぁぁ!杏奈、あなたって本当に私のことわかってるよね!なんで私が今、甘いものを欲してるってわかったの!」杏奈は、円香のふっくらとした頬をちょんとつまんだ。「これだけ長い付き合いなんだから、親友の好きなお菓子のひとつも把握できていなかったら、友達失格でしょう?」「本当は美味しいご飯を作って持ってきたかったんだけど、後ですぐにステージに上がるから、食べすぎると衣装がキツくなって悪いかなって思って。お腹はいっぱいにはならないけど、口寂しさだけでも紛らわせてね」もはや杏奈の言葉に返事をする余裕すらな
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