助手席で待っているはずの明奈の姿も、どこにもない。どう見ても、誰かに力ずくで連れ去られた直後の現場だった。紗里が手を下したのか。杏奈は眉をひそめて思考を巡らせたが、長くその場に留まることはしなかった。すぐに踵を返し、円香を捕まえて、撮影拠点のゲート外に設置された防犯カメラの映像を確認するよう頼んだ。チャリン。その時、スマホの通知音が短く鳴った。画面を開くと、見知らぬ番号からの短いメッセージだった。しかしそこには、送り主の名前がはっきりと明記されている。【桐島明奈です。さっき急な事情ができてしまって。あとでまた必ず会いに行きます】杏奈がすぐさま返信しようとしたが、すでに相手の番号はブロックされていた。ちょうどそのとき、確認に走っていたスタッフが申し訳なさそうな顔で戻ってきた。「お二人とも、本当に申し訳ありません。外を映している防犯カメラが、どうやらシステムの不具合で映像が真っ黒になってしまっていて。現在急いで修復中なのですが、指定された時間帯の録画データは、おそらく残っていないかと……」「そう、ありがとう」杏奈は静かに礼を言い、円香を連れてその場を離れた。円香が訝しげに眉をひそめる。「ねえ杏奈、明奈が消えたのとまったく同じタイミングで、都合よく外のカメラだけが壊れるなんて、あまりにもできすぎじゃない?」杏奈は頷いた。「ええ、確かにできすぎているわ。でも、それが人為的な破壊だと証明できない以上、今は『単なる偶然』として処理するしかないわね」円香は深くため息をついた。「で、どうするつもり?わざわざ労力をかけて、あの女を探しに行く気?」絶対にそんな善人ぶった真似はしない。自分には関係ない。でも杏奈が助けたいなら、尊重するつもりだ。杏奈はゆっくりと首を振った。「円香、私も正直どうすべきかわからないの」明奈に対する感情は、ひどく複雑だった。決して好意は持っていないが、かといって、彼女に不幸な結末が訪れてほしいとまで冷酷に願っているわけではない。円香はあごに手を当てて、現実的な提案をした。「とりあえず、今は放っておく?また気が向いたら考えるってことで」杏奈はかすかに苦笑した。気が向いたときには、明奈の初七日がとうに終わっているかもしれない。「念のため、警察に通報だけはしておきましょう。無事に見つか
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