見物人たちの間から、落胆の溜息が漏れた。もっとも、彼らが惜しんだのは画の真贋などではなく、あえなく消え去った五十両という大金の行方である。「道士様!これはいったい……どう説明されるおつもりですか!?」書生は気が気ではない。もし画が本物であったなら、得体の知れない賭けに乗せられたがために、あの中に描かれた美人と永遠に引き離されてしまったことになる。どう転ぼうと、この場で最も割を食ったのは自分ではないか。しかし、練は微塵も動じることなく、悠然とした態度で書生の肩を叩いた。「案ずるな。真打ちの登場はこれからだ」そう言うと、懐から一枚の霊符を取り出す。食指と中指に挟んで短い呪文を唱え終えるや、火鉢に向かって鋭く打ち放った。霊符は空中で透明な氷の刃へと姿を変え、凄まじい速さで宙を裂く。次の瞬間、硬質なものが貫かれるような鋭い音が響き渡り、火鉢から巨大な火柱が噴き上がった。「浅はかな目くらましが、俺に通じるとでも思ったか?」練は冷笑を浮かべ、鋭く一喝した。「――破ッ!」氷刃と化した霊符が、火鉢を木端微塵に粉砕する。直後、耳をつんざくような凄惨な悲鳴が轟いた。焼け爛れていたはずの画巻は、いつの間にか元の無傷な姿を取り戻している。だが、画の中の美人はもはや優雅に臥してなどいなかった。地に這いつくばり、まるで針の山や火の海に投げ込まれたかのように、苦悶の表情を浮かべて転げ回っているのだ。「な、なんだ……これは!?」火鉢のすぐそばにいた書生は、その異様な光景に目を奪われた。確かめようと身を乗り出したその時、画の中の美人の顔が突如としておぞましく巨大化した。紙面を突き破らんばかりの勢いで血生臭い大口をあんぐりと開け、紅蓮の炎の中から躍り出てきたのである。白日の下にさらされたその正体は――絶世の美女などではない。醜悪で凶暴な三毛の「猫又」であった。「う、うわああッ!化け物だ!」猫又が実体化したことで、周囲は一気に大混乱に陥った。書生は顔を土気色に染め、腰を抜かしかけながらも練の背後へと逃げ込み、その衣の裾に縋りついて泣き叫んだ。「ど、道士様、助けてくれぇ!」「おのれ、小賢しい真似を……!私の邪魔をしたばかりか、罠にかけて焼き殺そうとしたな!」猫又は鋭利な爪を剥き出しにし、双眸にどす黒い殺気を宿して吠え猛った。「八つ裂きに
Read more