クリニックに戻ったときには、すでに日付が変わろうとしていた。 扉を開けるや否や、練は真っ直ぐトイレへ向かい、便器を抱え込んでしばらくえずき続けた。だが結局、何ひとつ吐き出すことはできなかった。 「あれほど飲みすぎるなって言ったのに。無理するからだよ」 リビングから聞こえる颯斗の小言も、今の練には受け止める余力がない。 颯斗がリビングに入ると、クリニックのマスコットであるフロイトがタタタッと駆け寄ってきた。ニャーニャーと甘えた声を上げながら足元をぐるぐると回り、ふっくらとした頬を颯斗のふくらはぎにこすりつける。 颯斗の頬がゆるむ。「フロちゃ〜ん。やっと俺が恋しくなったんだね!」 「自惚れるなよ」 トイレから戻ってきた練が、ソファに身を投げ出しながら言った。 「そいつ、十中八九エサのことしか考えてないぞ」 フロイトは、まるで同意するかのように「ニャー」と一声鳴いた。 颯斗が猫ちぐらの横を覗き込むと、案の定、今朝入れたカリカリはすっかり空になっている。 「はいはい。俺じゃなくてエサが恋しかったんだな……」 そうぼやきつつドライフードを継ぎ足し、さらに棚から新しく買ってきた輸入物の魚の缶詰を取り出した。 「あまりやるなよ」 ソファに横たわったまま、練が気だるげに忠告する。 「こいつ、お前のせいで豚になりかけてるんだからな」 それも無理はない。颯斗が甘やかし続けた結果、クリニックに来た当初は五キロにも満たなかったフロイトは、立派な太鼓腹を携え、いまや八キロの大台に手が届きそうな体格へ
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