All Chapters of 聖衣の召喚魔法剣士: Chapter 91 - Chapter 100

110 Chapters

89  敵陣突入

 号令と共に、カリナ、カグラ、セリスの三人は、重力の枷を解き放った鳥のように空を駆けた。   上級歩方技術『空歩』。虚空を足場として蹴り、神速の勢いで谷底へダイブする。風切り音が耳元で唸りを上げ、眼下には禍々しい紫色の霧が晴れたばかりの敵本拠地が迫る。「着地するわよ! 派手にいきなさい!」 カグラの愉しげな声と共に、三人はタワー前広場の石畳へと、両足に魔力を集中させ隕石の如く着地した。 ズドォォォォォンッ!! 凄まじい衝撃波が広がり、敷き詰められた石板が波打つように砕け散る。もうもうと舞い上がる土煙の中、三つの影がゆらりと立ち上がった。 その轟音に、広場を埋め尽くしていたヴォイド・リチュアル・サンクトゥムの防衛部隊が、何事かと一斉に振り返る。「な、なんだ!? 空から降ってきやがった!」「ば、バカな……谷の結界はどうした!? あの絶対防御が破られたというのか!?」「どうやってここに入り込んだ!? 警報も鳴らなかったぞ!」 敵兵達は驚愕と混乱に包まれていた。絶対の自信を持っていた砦の入り口が、音もなく突破されたことが信じられないのだ。   だが、彼らの不幸はそれだけではなかった。迎撃しようと構えた武器――精霊の力を歪めた『反転精霊装備』が、まるでただの鉄屑のように黒煙を上げていたのだ。「う、うわぁぁぁ! 武器が……勝手に爆発したぞ!?」「反転精霊砲が全滅だ! 魔力を込めた瞬間に暴走しやがった!」「強化外骨格も動かねえ! ただの重りだ!」 先程、カリナが発動した『精霊王の加護』。その絶対的な権限によって、精霊の力を歪めるシステムは存在そのものを許されず、内側からショートし、既に爆散していたのだ。武器を失い、動かない鎧に閉じ込められた彼らは、ただの烏合の衆と化している。 狼狽する敵兵達を見渡し、カリナは不敵に笑った。彼女の体から溢れ出る虹色のオーラが、この空間の精霊法則を完全に支配している。「無駄だ。貴様らのその不愉快な玩具は、精霊王の御名において排除した。もはや貴様らは、ただの重い鎧を着た案山子に過ぎない」 その言葉が合図だった。カグラが扇子をパチリと閉じ、冷徹な瞳で敵を見下ろす。その口元には、獲物を前にした捕食者のような艶然たる笑みが浮かんでいた。「へえ、武器が壊れてお困りのようねぇ。……なら、遠慮なく掃除させてもらうわ。私の可愛いカリナ
last updateLast Updated : 2026-02-05
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90  相克と陰陽の嵐

 カグラが扇子をバチリと開き、口元を隠して妖しく笑う。その瞳の奥には、冷徹な計算と燃え上がるような戦意が同居している。   対するアモ・フォンも、燕尾服の襟を整え、革靴の埃を払うような仕草を見せる。その余裕は、公爵級悪魔としての絶対的な自負によるものだ。「よろしい……。貴女のような威勢の良い魂は、恐怖に歪んだ時の味が格別ですからね」 アモ・フォンが白手袋を嵌め直し、恭しく、優雅に一礼した。「では、始めましょうか。――『デヴィルズ・エチケット』」 その動作は洗練されていた。まるで舞踏会の開幕を告げるかのような美しい礼。   だが、その瞬間、カグラの動きがピタリと止まる。空間そのものが「礼儀」を強制する。攻撃しようと練り上げた魔力が霧散し、踏み出そうとした足が石畳に縫い付けられたように動かない。先制攻撃を禁じる、悪魔的なルールの押し付けだ。「なっ……!?」 「おやおや、挨拶もなしに殴りかかろうなどと、淑女にあるまじき野蛮さですね。私の庭では、礼節こそが力なのですよ」 アモ・フォンが指を鳴らすと、燕尾服の裾が翻り、彼の姿がブレた。「――『ファントム・ワルツ』」 ヒュン、ヒュン、ヒュン!   複数の残像が生み出され、まるで舞踏会で踊るかのような優雅なステップでカグラに迫る。右から、左から、背後から。どれが本体か分からないまま、無数の鋭い鉤爪がカグラの喉元、心臓、両眼へと同時に繰り出された。「死の舞踏へようこそ」 刃のような爪がカグラの肌に触れる寸前。彼女の瞳は凍りつくほどに冷静だった。「ご挨拶? いいえ、お断りよ。その薄汚い手で私に触れないで。――相克術・双圧扉!」 カグラを中心にして、空間に透明な力場が発生する。押しても引いても開かない、物理法則を拒絶する「力の逆圧扉」だ。   キィィィィィンッ!   アモ・フォンの鋭い爪撃は、見えない壁に弾かれ、空しく火花を散らした。強制された「礼儀」の縛りを、相克する力の反発だけで無理やり抉じ開けたのだ。「あら、ごめんなさいね。私の玄関は、招かれざる客には開かないの」 「……ほう、私のエチケットを力技で破りましたか。小賢しい」 「お返しよ。とびきり熱いのをプレゼントするわ! ――相克術・|炎刃颶《えんじ
last updateLast Updated : 2026-02-06
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91  神獣の翼撃

 タワーの最上階、実験室のさらに奥にある巨大な鉄扉を、セリスの剣技が切り裂いた。「アイアンクリーバー!」 轟音と共に鉄扉が両断され、カリナとセリスは教団の中枢――『虚無の祭壇』へと踏み込んだ。   そこは、ドーム状の広大な空間だった。中央には禍々しい紫色の炎が燃え盛る祭壇があり、その前に一人の男が立っていた。ヴォイド・リチュアル・サンクトゥムの本拠地を管理する最高責任者、教祖ゾルフだ。「ここまで来たか、エデンの走狗共よ」 ゾルフが振り返る。その顔は痩せこけ、瞳は異様な光を放っている。彼は追い詰められているにも関わらず、狂気じみた笑みを浮かべていた。「アモ・フォン公爵が敗れたのか? ……だが、時間は稼げた。儀式の準備は整ったのだ!」 「儀式だと? これ以上、何を犠牲にするつもりだ!」 カリナが叫ぶ。「犠牲? 違うな、これは融合だ! 大いなる虚無の力と私が一つになり、この世界を浄化する神となるのだ!!」 ゾルフは祭壇の紫色の炎を、あろうことか自らの口へと流し込んだ。ゴク、ゴク、と喉が鳴る。直後、彼の肉体が痙攣し、膨張を始めた。「グガッ、ギギギ……アアアアアッ!!」 皮膚が裂け、内側から黒い筋肉と紫色の体液が溢れ出す。背中からは不格好な翼が生え、腕は丸太のように太くなり、顔は原形を留めないほどに歪んでいく。悪魔化だ。だが、それは生まれながらの悪魔とは対極の、制御を失った醜悪な暴走だった。「チカラが……溢れル……! コワレる……世界ガ、コワレるゥゥゥッ!!」 理性を失った怪物が咆哮する。その衝撃だけで祭壇の間が激しく揺れた。「くっ、制御できていません! ただ暴れまわるだけの化け物です!」 セリスが剣を構えるが、怪物が適当に振り回した腕の風圧だけで、彼女の体勢が崩される。「セリス、下がってくれ。……こいつは私が終わらせる」 カリナが一歩前に出る。その瞳には、憐れみと、王としての決意が宿っていた。彼女は刀を構えず、左手を天に掲げた。「ホーリーナイト! 詠唱の間、奴を抑えろ!」 カリナの召喚に応じ、純白の騎士団が顕現する。彼らは巨大な盾を構え、暴れ狂うゾルフの攻撃を受け止めた。その隙に、カリナは厳かに祝詞を紡ぐ。「――天を統べし蒼穹の王、  獣の王たる獅子の力、  鳥の王たる鷲の眼を宿す神獣よ」 空間が震え、黄金の風が巻き起こる。
last updateLast Updated : 2026-02-07
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92  銀翼と光弧の輝き

 タワー中心部でカリナ達の激闘が終わる頃、外の戦場も激しさを増していた。 谷に湧き出る改造モンスターと、武装した信者達の波。だが、その防衛線は鉄壁だった。エデン王国騎士団副団長ライアンが指揮する部隊と、聖光国から派遣されたルミナス聖騎士団の本隊が連携し、敵の増援を片っ端から粉砕していたのだ。「ここは我らが食い止める! 精鋭部隊は予定通り、左右の研究棟へ!」 ライアンの号令が響く。それに応えるように、白銀の鎧を纏ったカーセルがメンバーと動き出した。「右の研究棟は僕達ルミナスアークナイツが引き受ける。エリアさん、左は頼んだよ!」 カーセルが柔らかくも芯のある声で告げる。その後ろには、愛槍を手にしたカイン、護符を構えたユナ、そして静かに祈りを捧げながらロッドを握るテレサが続いていた。「ええ、任せてカーセル。そっちも気をつけてね!」 「ああ、行こうみんな。世界の悪に聖なる光の鉄槌を下す時だ!」 カーセル率いるルミナスアークナイツの精鋭達は、一糸乱れぬ動きで右側の第2研究棟へと殺到していった。それを見届けたエリアは、自身の仲間達へと振り返った。「さあ、私達も行くわよ! 『シルバーウイング』の実力、見せてやりましょう!」 「おうよ! 暴れるぜ!」 「うむ、遅れはとらん!」 「はぁ……野暮な男達ね。エリア、私の護衛は頼んだわよ!」 アベル、ロック、セレナがそれぞれの武器を構え、タワーの左側に位置する第1研究棟へと突撃を開始した。「入り口の雑魚は我々が引き受けます! 皆様は中へ!」 研究棟の入り口を固めていた敵兵に対し、カグラの配下である『相律鎮禍連』の精鋭達が呪符と式神を操って突撃する。彼らが切り開いた血路を、エリア達四人が駆け抜けた。「ありがとう、助かるわ! 行くわよみんな、遅れないでね!」 副団長エリアの指示で、シルバーウイングは研究棟の内部へと侵入した。 内部は薄暗く、不気味な魔力光に照らされていた。通路の奥から、改造手術を施された異形の兵士達が襲い掛かってくる。「罠はないぜ。最短ルートで突っ切る!」 スカウトのロックが先陣を切る。彼は二本の短剣を逆手に持ち、風のように敵の懐へ飛び込んだ。「――クイック・スラスト!」 目にも止まらぬ高速の刺突。右手の短剣が敵のガードを弾き、左手の短剣が喉元を正確に貫く。血
last updateLast Updated : 2026-02-08
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93  制圧完了、次の戦場へ

 激闘を終え、カリナ達は半壊したタワーを降りた。天井の大穴から差し込む陽光が、戦いの終わりを告げている。 タワー前の広場では、それぞれの研究棟を制圧した『シルバーウイング』と『ルミナスアークナイツ』の面々が待っていた。「おーい、カリナちゃん! 派手にぶっ飛ばしたわね! それに団長もカグラさんもお疲れ様です」 シルバーウイング副団長エリアが手を振りながら駆け寄ってくる。その鎧には戦闘の痕跡が残っているが、表情は晴れやかだ。「ああ、そっちも無事だったみたいだな」 カリナはエリアに対して笑顔で返す。「エリア達も無事のようですね。強敵はいませんでしたか?」「団長、悪魔の男爵が出て来ましたよ。でもみんなで討伐しました!」「それは良い経験でした。訓練の成果が出ましたね」 セリスの言葉にエリア達は誇らしげに胸を張った。「カーセル達はどうだったんだ? そっちにも悪魔が出たのか?」「うん、こっちには悪魔子爵が出たよ。でも陛下からの報酬の武具や加護の御陰で被害は最小限で討伐できた。それにしても……、あの塔の天井の大穴には驚いたなあ」 ルミナスアークナイツの団長カーセルが、苦笑しながら見上げる。彼らの背後では、エデンとルミナスの騎士団が慌ただしく動いていた。投降した信者兵や、動けなくなった研究員達が次々と拘束され、護送用の馬車へと乗せられていく。ビィタールの谷は、完全に連合軍によって制圧されたのだ。「強敵でしたが……。皆様、お疲れ様でした。それで……この方は?」 テレサが、カリナの後ろで居心地悪そうに立つ男に気づく。「彼は錬金術師のベルガーだ。ここの研究を人質を取られて無理矢理強いられていたんだよ。このままエデンで保護することになった」 カリナが短く説明し、一行はそのまま谷の南側に展開している本陣へと移動を開始した。 ◆◆◆ 谷の南の本陣では、エデン国王カシューと、ルミナス聖光国のジラルド国王が並び立ち、戦況を見守っていた。戻って来たカリナ達を迎えると、両王は満足げに頷いた。「よくやった、カリナ、カグラ、セリス団長。そして他のシルバーウイングのメンバーに王国騎士団もだ。見事な働きだった」 「うむ、我らが誇る聖騎士団にルミナスアークナイツも見事だったぞ。被害報告がほぼ皆無とは、驚嘆に値する」 カシューとジラルドが労いの言葉をかける。カリナは居住ま
last updateLast Updated : 2026-02-09
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94  突入! ドゥーカス公爵邸

 ガリフロンド公国、ドゥーカス公爵邸の最深部。かつては公国の軍事を担う名門の執務室であったその場所は、今や光と音を遮断した狂気の温床となっていた。 分厚いカーテンと鉄板で閉ざされた薄暗い部屋で、ゴートス・ドゥーカスは苛立ち紛れにワイングラスを床に叩きつけた。「ええい、まだか! ゾルフからの連絡はまだ来んのか! 『虚無の祭壇』の計画はどうなっている!」 ゴートスは執務机の周りをうろうろと歩き回っていた。   その姿は異様だった。かつては病弱なだけだった体は、今や土気色に変色し、黒い血管が全身に浮き出ている。痩せこけているにも関わらず、腹部だけが餓鬼のように膨れ上がり、呼吸をするたびに喉の奥からヒューヒューという異音が漏れていた。悪魔との契約による副作用と、過剰な欲望が体を蝕んでいるのだ。「ゴートス、落ち着きなさい。貧乏ゆすりが耳障りよ?」 部屋の奥、暗がりに置かれたビロードの長椅子から、妖艶な声が響いた。ゆったりと足を組み、優雅に扇子を仰いでいるのは一人の女性だ。 夜会用のような漆黒のドレスに身を包み、透き通るような白い肌。真紅のルージュを引いた唇は蠱惑的だが、その瞳は爬虫類のように縦に割れた金色。背中からはコウモリの如き翼、そして、艶やかな黒髪の間からは、捻じれた二本の角が突き出ている。   彼女こそが、この一連の騒動の元凶――災禍伯メリグッシュ・ロバス。表の公爵など足元にも及ばない、魔界の裏階級の序列二位に位置する高位の女性悪魔である。「落ち着いてなどいられるか、メリグッシュ! あの忌々しいヴィクトールめ、他国と結託して私を干上がらせるつもりか! だが、私にはお前がいる! そうだろ!?」 ゴートスは母親にすがる幼児のような目で、メリグッシュを見上げた。そこには公爵の威厳など欠片もない。 その時、部屋の扉が乱暴に叩かれ、青ざめた私兵隊長が転がり込んできた。「か、閣下! ご報告します! た、大変です!」 「なんだ騒々しい! 礼儀も知らんのか!」 「そ、それどころではありません! 国境に展開されていたヨルシカの結界……あれは我らを守るためのものではありませんでした!」 「な、なにぃ!?」 ゴートスが目を剥く。「ヨルシカ軍が結界を開き、そこからなだれ込んで来たのは……エデンとルミナスの連合軍! さらにヨルシカの術士軍団までもが加わってい
last updateLast Updated : 2026-02-10
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95  災禍伯メリグッシュ・ロバス

 ガリフロンド公国、ドゥーカス公爵邸の広大なエントランスホール。吹き抜けの巨大な空間は、今や現世と魔界の境界線と化していた。 大階段の頂点に立つ災禍伯メリグッシュ・ロバス。彼女が優雅に扇子を開いた瞬間、その背後から溢れ出した魔力は、ホール内の空気全てを重油のように粘つく殺意へと変えた。肌に突き刺さるようなプレッシャーに、並の兵士なら立っているだけで心臓が止まるだろう。「もう既にご存じでしょうけど、我が名は災禍伯メリグッシュ・ロバス。さあ、始めましょうか。私のための、そして貴女達のための……最期の舞踏会を!」 メリグッシュが指を鳴らす。それだけで世界が歪んだ。「ディザスター・エレガンス」 言葉と共に顕現したのは、魔法という枠を超えた災害そのものだった。天井の巨大なクリスタルシャンデリアが瞬時に融解し、紅蓮の豪炎の雨となって降り注ぐ。   同時に、鼓膜を劈き、視神経を焼き尽くす紫電の落雷が空間を乱舞する。そして、床の隙間からは吸い込めば肺が腐り落ちる致死性の猛毒瘴気が噴き出した。本来あり得ない三つの複合災害が、逃げ場のない嵐となって四人を襲う。「くっ、いきなりなんてものを……! 来い、サラマンダー! ヴァジュラ!」 カリナが叫ぶ。虹色の『精霊王の加護』が激しく輝き、炎精霊の巨大な蜥蜴と雷の虎王が顕現した。サラマンダーが大口を開けて豪炎を飲み込み、ヴァジュラが咆哮と共に数万ボルトの落雷をその身に吸収する。 「ギィィィッ!!」「グガァァッ!!」   精霊達が悲鳴を上げる。相殺しきれない熱量と電荷が彼らの体を焼き焦がすが、それでも主を守る壁となり、災害の直撃を防いだ。 だが、物理的な破壊を防げても、忍び寄る毒は止まらない。紫色の毒の瘴気だけは、生き物のように意思を持って彼女達を包み込み、呼吸を奪おうとする。「甘いわよ、クソ悪魔!」 カグラが扇子を一閃させる。  「相克術・風禍払い!」   カグラの扇から放たれた清浄な突風が、とぐろを巻く瘴気を物理的に吹き飛ばし、ホールの空気を強引に浄化する。 視界が晴れた、その一瞬の隙。「あら、どこを見ていらして?」 メリグッシュの声が、不自然な方向から響いた。大階段にいたはずの彼女が消失している。「ナイトバット・ダンス」 背中の翼を羽搏かせ、影から影へ
last updateLast Updated : 2026-02-11
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96  龍王の咆哮

「展開せよ! 『陰陽頭領役・四神相応・絶対結界』!!」 ソウガが叫ぶと、東西南北に青龍・白虎・朱雀・玄武の巨大な幻影が出現。それらが光の障壁となり、膨張しようとする虚無の爆発を物理的に押し包んだ。本来なら国一つを飲み込むエネルギーが、わずか数十メートルの空間に圧縮される。『グ、ヌ……!? コノ、ワタシヲ……トジコメル……ダト……!?』「黙れ。……我が結界の中で、押し潰されるがいい」 ソウガが涼しい顔で扇子を閉じる動作に合わせ、結界がギリギリと収縮し、虚無の主を締め上げる。「今だ、ジラルド殿!」 「承知! 天よ、裁きの光を! 『聖王剣・グランドクロス・パニッシャー』!!」 ジラルドが剣を振り下ろす。天空から巨大な光の十字架が落下し、結界の中に囚われた虚無の主に突き刺さる。強烈な浄化の力が、虚無の再生能力を根こそぎ焼き払った。『ギャアアアアアアアッ!!!』「トドメだ! 『王技・エデンズ・ブレイブ』!!!」 カシューがブースト全開で突撃する。機神剣が回転し、超振動による破壊エネルギーを纏った一撃が、虚無の主の核防壁を粉々に打ち砕いた。 三王の完璧な連携により、虚無の主の外殻は崩壊した。だが、その中心で剥き出しになったメリグッシュの本体は、まだ死んでいなかった。『オ……オノレ……ッ! 人間風情ガァァァァッ!!』 泥のような姿になりながら、周囲の物質を暴食し、再構成を始める悪魔。その執念は、まさに災厄そのものだった。『ワタシハ……災禍ノ女王! 道連レダ……貴様ラ全員、虚無ノ底へ引キズリ込ンデヤルゥゥゥッ!!』 泥の巨腕が膨れ上がり、カシュー達を飲み込もうと迫る。王達が迎撃の構えを取ろうとした、その刹那。「――いや、お前はここで終わりだ」 凛とした声が戦場を切り裂いた。その声の主はカリナ。一瞬の衝撃で体勢を崩していた彼女だが、既に立ち上がり、その瞳には強い決意が宿っていた。「私の全魔力、そして最強の相棒の力を借りて……引導を渡してやる!」 カリナが刀を地に突き刺し、左手を頭上に掲げる。虹色の『精霊王の加護』に加え、輝く巨大な魔法陣が幾重にも展開された。「雷鳴よ、王座を照らせ 天穹よ、極光の道を拓け 黒き天を裂き、白銀の腹に力を宿す 覇を戴く龍王、万雷を統べし者 我はその名を呼ぶ
last updateLast Updated : 2026-02-12
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97  公国での祝宴と魔導列車実装へ

 決戦が終わり、その夜。   公国の大公ヴィクトールの広大な屋敷にて、盛大な祝宴が催された。公国は内陸に位置するため、海の幸こそないが、山脈で採れた新鮮な山菜、最高級の猪や鹿のロースト、そして芳醇なワインなどの多くの豪勢な料理が大広間のテーブルを埋め尽くしていた。「カンパーイ!!!」 カリナ、カグラ、セリス、サティアに加え、今回の戦いを支えた二つのギルド、『シルバーウイング』と『ルミナスアークナイツ』のメンバー達が、高らかにグラスを掲げた。「いやー、一時はどうなることかと思ったけど、さすがはカリナちゃんだわ! ちょっとしか見れなかったけど、あの黒いドラゴン、痺れたー!」 シルバーウイング副団長のエリアが、ジョッキ片手にカリナの背中をバシバシ叩く。既に顔が赤い。「痛いぞエリア。飲み過ぎじゃないのか?」 「いーのいーの! 今日は特別よ! ほら、アンタ達ももっと飲みなさいよ!」 エリアに絡まれたシルバーウイングの面々も、それぞれ宴を楽しんでいた。巨大な戦斧を背負った重戦士アベルは、豪快に骨付き肉にかぶりつき、ワインをラッパ飲みしている。「うむ、やはり大仕事の後の酒と肉は最高だな」 その横で、ロックはキョロキョロと周囲を観察しながらも、山盛りの山菜料理を口に運んでいる。「おお、このキノコのソテーは絶品だぜ。……っと、あっちの料理も気になるな」 そして、セレナは、騒ぐ男連中を横目に優雅にグラスを傾けていた。「まったく、アベルもエリアも野蛮ねぇ……。ま、今日くらいは仕方ないか。私はカリナちゃんを見つめていれれば充分……はぁ」 一方、ルミナスアークナイツのテーブルでも、団長カーセルを中心に会話が弾んでいた。「カリナちゃん達はやっぱり凄かったな……。僕ももっと精進しないといけない」 カーセルが真面目に語る横で、カインが、給仕の女性にウインクを飛ばしながら軽口を叩く。「ははっ、俺はエデンの特記戦力のみんなが全員美人揃いなのに驚きだ。カリナちゃんとサティア様は勿論、あのカグラさんにシルバーウイングのセリスさんも美人だよなあ」 「もう、カインったら不謹慎ですよ。でも……サティア様の祈りの光は、本当に温かくて素敵でした」 神聖術士のテレサが、カインをたしなめつつも、同意する。そして、陰陽術士のユナは、カグラの式神に興味津々の様子だった。「カグラ様の
last updateLast Updated : 2026-02-13
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98  エデンでの宴会

 決戦が終わり凱旋した、その夜。 エデン王城、大謁見の間。   普段は国政の重要事項が決定される厳粛な場であるが、今宵ばかりはその空気が一変していた。高い天井から吊るされた巨大なシャンデリアが煌々と輝き、広大なフロアには長大なテーブルが幾列にも並べられている。そこには、エデンの豊穣な大地が育んだ山海の幸――否、エデンは大陸の中心部に近い内陸国であるため海産物こそないが、その分、清流と深き森、そして肥沃な大地からの恵みが所狭しと並べられていた。 大皿に盛られたのは、香草と共にじっくりと焼き上げられた巨大な猪の丸焼き。皮はパリッと香ばしく、ナイフを入れれば溢れ出す肉汁が食欲をそそる。   その隣には、清流で獲れた鮎や岩魚のコンフィ。骨まで柔らかく調理され、彩り豊かな野菜と共に美しく盛り付けられている。   さらに、香り高いキノコと木の実をふんだんに使ったリゾット、新鮮な高原野菜のサラダなど盛沢山。山葡萄から醸造された芳醇な赤ワインや、冷えたエール、そして彩り鮮やかな果実水が次々と運ばれていた。 今宵は、世界を救った英雄たちを祝う祝勝パーティである。エデンの自由な気風を象徴するように、ドレスコードは「フリー」。参加者は皆、思い思いの格好でリラックスした表情を浮かべている。冒険者装備を綺麗に手入れして身につける者、軽装のチュニックで寛ぐ者、正装に身を包む騎士達。 そんな中、会場の入り口が一際大きくざわめいた。「あら、ごきげんよう」 現れたのは、エデンが誇る筆頭魔法使い、エクリアだ。   普段のローブ姿ではない。彼女の美しい金髪をより一層引き立てる、夜空のような深い蒼色のイブニングドレス。胸元には大粒のサファイアが輝き、その立ち振る舞いは深窓の令嬢、あるいは一国の王女と見紛うばかりの完璧な優雅さだった。彼女が歩くたびに、ドレスの裾が流麗な波を描き、周囲の貴族や兵士達が感嘆の溜息を漏らす。「おぉ……なんと美しい……」「あれは災害級魔法使いのエクリア様か……? まさに才色兼備だ……」 だが、その完璧な姿を遠巻きに見ていた四人――カリナ、カグラ、サティア、カシューだけは、揃って微妙な表情を浮かべていた。「……またやってるわよ、アイツ」 「ああ。中身はアレなのにな……」 「黙っていれば完璧な淑女なんですけどねえ……」 「あはは、まあ彼女なりのオンとオ
last updateLast Updated : 2026-02-14
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