――そこは、戦場の跡のようだった。 床には割れたグラスと酒瓶。 壁には拳で殴られた跡。 ベッドのシーツは乱れ、空気は血と酒と涙の匂いに満ちている。 その中央で、蓮が壁に背を預け、ゆっくりと呼吸をしていた。 だが、その顔には生気がなかった。 虚ろな瞳で一点を見つめ、まるで魂だけが抜け落ちたようだった。 隼人は一歩近づき、静かに声をかけた。 「……社長……」 蓮の肩がわずかに震える。 視線の先――床に落ちたスマートフォンには、 玲の番号が何度も表示されていた。 発信履歴が何十件も並び、最後の通話には「応答なし」とだけ残っている。 蓮は唇を噛みしめ、掠れた声を漏らした。 「……玲、俺は……お前を守るつもりで、全部を壊した」 その声は、まるで断罪のようだった。 胸の奥が焼けるように熱い。 喉の奥に溜まる嗚咽をこらえながら、蓮は拳を握りしめる。 隼人は膝をつき、そっと肩に手を置いた。 「社長……」 だが、蓮は反応しない。 虚ろな瞳のまま、どこか遠い場所を見つめている。 「玲を……傷つけた」 「……」 「信じさせて、裏切った。俺の手で……」 隼人は拳を握りしめ、視線を落とした。 胸の奥に、言葉にできない痛みが広がっていく。 蓮と玲――二人は互いに不器用なほどまっすぐで、 それゆえに誰よりも惹かれ合っていた。 その絆を、こんな形で断ち切らせるわけにはいかない。 「社長、立ってください。ここにいたら、あの女の思うつぼです。まずはここを出ましょう」 隼人の声は冷静だが、その奥には焦燥が滲んでいた。 「俺たちにはまだやることがある。西条を潰さなきゃ、 玲さんを守れない」 蓮はわずかに顔を上げた。 目の縁が赤い。 「……もう、俺にそんな資格はない」 「資格なんて関係ありません!」 隼人は珍しく声を荒げた。 「玲さんは、あんたをまだ信じてます!写真を見ても、真実を知りたがってた。 俺は……二人を見てきたんです。あんなに互いを想い合う人間、他にいません!!」 蓮の拳が震える。 唇が何かを言いかけて止まり、静かに閉じられた。 部屋の外から、遠くのサイレンの音がかすかに聞こえる。 夜は深く、空気は冷たい。 だがその冷たさよりも、蓮の胸
Last Updated : 2025-12-02 Read more