闇より出し者共よ。 影に潜みし蠢く者共よ。 澱に微睡み聞くがいい。 その毒牙で人の世に仇なすのならば、この身をもって悉く滅してみせよう。 その首には共切の切っ先が突きつけられていると知れ。 この身は人にあって人に非ず。 罪なき人の子を守るためならば修羅にもなろう。 恐れよ。 慄き震えよ。 己らの在るべき場所は地獄のみなり。 東京都郊外に位置する小都市。 その更に端に人口五千人にも満たない小さな町、木崎はあった。 駅は無人駅。 電車もバスも一時間に一本だけで、都内ではあるが街中に出かけるには小旅行程の時間がかかる。そんな不便な立地はベッドタウンにもならず、降りる人もまばらだ。 駅前には昔ながらの寂れた商店街があり、町の中心を川が流れ、その周囲に田園風景が広がる。その中に家がまばらに散って、緑の生い茂る山々に囲まれた、ありふれた田舎町だ。 そんな町には学校が小中高と一校ずつしか無い。都会に憧れ、高校から町を離れる者もいたが、殆どがエスカレーター式に進級していく。周りを見渡せば見知った顔ばかりの閉ざされた町だ。 今日も変わらない風景の中、通い慣れた畦道を歩く。 少年、小堺優斗はこの春高校に入学したばかりだが、学校は皆同じ敷地に建っているため通学路は変わらない。 まだ着慣れない糊のきいた夏服に身を包み、朝だというのに夏の容赦ない日差しに焼かれながら、汗を拭いつつ一本道をひたすらに歩く。辺りに見える物といえば田んぼと、遠くに陽炎で揺らいだ家が数件。それが優斗の日常だった。 学校に着けばようやく日陰に入る事ができる。 下駄箱に辿り着くと、優斗は溜息を吐いた。授業も始まっていないというのに既にシャツは汗で濡れていて気持ち悪い。今日は体育の授業も無いから束の間の行水に勤しむ事もできなかった。 気休めと分かっていても、手で顔を扇ぎながら教室へ急ぐと、古びた廊下には登校してきた同級生達がガヤガヤと騒いでいる。 昨日のテレビが――。 隣のおばさんが――。 うちの猫が――。 皆、他愛無い話で盛り上がっている。 優斗には何がそんなに楽しいのか理解できなかった。友人はいる
Last Updated : 2025-12-06 Read more