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93 チャプター

第九十話 結ばれた手

 午前七時。 二人の姿は陰陽寮の駐車場にあった。  律は後頭部を押さえ、何やらぶつぶつと文句を垂れている。「ひどいよ優斗、思いっきり殴るんだもん。これタンコブになってない?」 いつかどこかで聞いた様な事を、律が言った。それに呆れながら、優斗はぷいっとそっぽ向く。「自業自得だろ。時間を考えろよ」 そう言いながらも、その手はしっかり律と繋がっている。 あの後、律は再戦に挑もうとしたのだ。今日は朝から実地訓練だと言うのに、何を考えているのか。優斗は呆れ気味に零す。「だって~、優斗めちゃくちゃ可愛いんだもん。我慢しろって言う方が無理だよ~」 何度も繰り返される可愛いという言葉に、優斗はじろりと睨んだ。「可愛いって言うな。僕は男だぞ。可愛いって言われても嬉しくない」 しかし律はへこたれない。「優斗、自分の可愛さ自覚した方が良いよ? ︎︎俺、すんごく心配。絶対優斗の事狙ってる奴いるもん。そんな奴ら、俺が殺しちゃうけどさ、そういう目で優斗を見られるのも嫌。優斗は俺だけのものだもん。勿論俺も優斗だけのものだよ」 律は無邪気に恐ろしい事を口走る。さすがに人を殺すのは無しだろう。律が捕まるのは、離れ離れになるという事だ。そうなれば優斗も耐えられない。叱ろうと口を開きかけると、自分を呼ぶ声が聞こえた。 そちらに目を向けると、父が手を振っている。その隣には永都の姿もあった。 手を繋いだまま、足を向けると玲斗が苦笑いをしつつ、顎を掻く。「あ~……、やっぱりそうなっちゃったか」 優斗はその態度にムッとして睨みつけた。「何? ︎︎悪い?」 口調は強気だが、その頬はうっすらと染まっている。息子の知らない一面を目の当たりにして、玲斗は慌てて両手を振った。「いやいや! ︎︎僕に文句は無いよ。優くんが幸せなら、僕も嬉しい。ただ陰陽寮が黙っていないかもと思って。君は共切の所有者だ。その血筋を残したいと考えるはずだからね」 申し訳なさそうに眉を垂れる玲斗に、優斗は少し考えて、はっきりとした口調で告げる。「精子の提供はする。それで勝手に子供でも作ればいい。ただし、僕は認知もしないし、父親になるつもりもない。それさえ認めてもらえば構わない。僕のパートナーは律だけだ」 玲斗は思わぬ言葉に目を瞬く。優斗は真面目で潔癖な所がある。友人を傍に置かないのも、その
last update最終更新日 : 2026-02-08
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第九十一話 交わる運命

 まるで、自慰という行為に嫌悪感を持っている様に見え、玲斗は首を傾げたものだ。 それなのに、子種を提供すると言う。 じっと息子の瞳を見つめると、強い意志を感じた。それだけ律の存在が大きくなっているのだろう。 愛情も無く、ただ子を成すために女と交わるのも、この少年にとっては嫌悪しか無い。 律が、もしくは優斗が女であれば、どれだけ良かったろうと玲斗は思う。しかし、それでは二人の出会いも無かったかもしれない。 友人と遊びに出かける事も無かった息子が、これほど心を許す相手に巡り会えたのだ。殺伐とした環境ではあるが、いやだからこそ、この縁が尊く感じられた。「そっか……君もちゃんと考えてるんだね。だったらお父さんも頑張っちゃう! ︎︎なんたって僕は序列二位だからね! ︎︎文句言う奴はイチコロだよ!」 ウィンクをして首を斬る真似をする玲斗。その様子は正にテヘペロだ。こいつもか、と優斗は溜息を吐く。 しかし、そんな優斗でさえも、結婚を強要されるような事があれば容赦はしないだろう。陰陽寮が動くなら、おそらく本家筋の女を宛がってくるはずだ。そんなものには興味が無い。この心も、身体も、律だけのものだ。他の人間に触るのも、触られるのも我慢ならない。 序列二位と五位、そして特級。 これだけ上位の者の意見を、無視はできないだろう。京都本部の所長が一位だと聞いているが、優斗は更にその上なのだ。 研究部も、子種さえ手に入れば無理強いはしてこないはず。他の検査にも協力しているのだから。 優斗は心の底で、律の子を望んでいた。できるなら、自分が産みたい。しかし、それは現代医学では不可能だ。 愛する者との子を成したいと思うのは、本能と言える。日本ではまだ同性婚は認められていない。ただでさえ、いつ命が消えるかも分からない生活で、目に見える絆が欲しかった。 勿論、身体を重ねる事も、ひとつの愛情表現だ。だが、自身が死んだ後に、何か残したい。律と愛し合ったという証を。 隣を見上げれば、優しい笑顔。 首を傾げる様は、昨夜と全然違う。それを知っているのは、優斗
last update最終更新日 : 2026-02-09
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第九十二話 愛するということ

「優斗、そんなの関係ないよ。子供ができなくたって、結婚できなくたって、俺は優斗とずっと一緒にいる。もしかしたらさ、医療部が何か開発する可能性だってあるんだよ? ︎︎だって、序列二位と特級の子供だもん。きっと喉から手が出るほど欲しいんじゃないかな。法律も、変わっていくはずだよ。外国じゃ同性婚も珍しく無くなってきてる。日本でも、裁判やってるとか聞くしね。今から諦める必要はないよ」 それは優斗にとっては意外な言葉だった。何も考えていないようで、自分よりもしっかりと未来を見据えている。陰陽寮に長くいる事で、何を欲するかも理解していた。 それも全て、二人の未来のために。「そう……だな。僕達はまだ十五なんだ。急ぐ必要は無いよな」 優斗と律は見つめ合い、頷いた。 それを見ていた玲斗も、嬉しそうに微笑んでいる。我が子が、唯一の存在に出会ったのだ。喜ばない親などいないだろう。勿論、同性愛に忌避感を抱く者が多いのも事実だ。特に陰陽寮は共切の後継を残したいはず。苦難は続くだろうが、二人を引き合わせたのもまた、陰陽寮なのだ。 玲斗も、妻の佐江と出会えた事には感謝している。陰陽寮の指示で、本家筋の佐江とお見合いを強制させられ、当初は嫌々ながらに従った。しかし、見合いの日に初めて目にした佐江は、それは美しく、あっという間に恋に落ちたのだ。 血筋を残すという身勝手な婚姻だが、それでも確かに愛は育った。その証が優斗だ。だからこそ、優斗の気持ちが玲斗にも分かる。「あ~……僕も佐江さんに会いたくなってきちゃったな……」 佐江とはもう何年も会っていない。電話はできる限りしているが、余計に想いが募るばかりだ。抱き合ったのも、随分昔に感じる。「優くん、弟妹欲しくない?」 いきなりとんでもない事を言い出した父に、優斗は面食らった。「は……? ︎︎何言って……」 律もキョトンとして、玲斗を見る。「だってだって! ︎︎ラブラブな二人を見てたら、僕も佐江さんとラブラブしたくなっちゃったんだもん! ︎︎うぅ、佐江さ~ん、会いたいよう……そしたらさ、一晩中抱いて、鳴かせたいな。めっちゃ可愛いんだよ。あ、ヤバい。勃ってきちゃった。昨日抜いたのにな」 優斗は聞きたくもない両親の営みを聞かされ、なんとも言えない表情を浮かべる。仲がいい事は息子としても嬉しい。だが、それを聞かされるのはちょっと遠慮
last update最終更新日 : 2026-02-10
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