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第五十一話 昔語り

「さて、妖魔について更に踏み込んでみよう。人には少なからず霊力が備わっているというのは話したな。虫の知らせ、第六感とも言う。だがそれを真に理解している者はごく僅かだ。世の中には霊能者は数いれどその大半は偽物。その他にも漫画や小説、映画でも人気の題材だろう。だからこそ問題だと言える。中途半端な知識があるからな。その最たるものは陰陽師として名高い安倍晴明か。奴は本物だった。それが後世に伝わり虚実の入り交じった知識が蔓延している。しかし、霊力は実際に存在し、目には見えないが日常的に体から無意識に漏れ出しているものだ。気を使う、気力が無くなるなどと言うだろう? ︎︎気とは即ち霊力の事だ。いわば人の原動力だな。それは感情が大きく動く時に強く結びつき、それが凝り固まった物が妖魔となる。その姿は伝承にある怪異とよく似ている。人の思念によって形を得るからだろう。よって人の集まる所、特に愛憎渦巻く場所に多く現れ、心霊スポットと呼ばれるようになる訳だ。学校、病院、会社。寺社や人死のあった場所もそうだな。本人が知らずに膨大な霊力を有する場合もある。それらを監視、分析し、特務部の采配を行うのが情報部だ」 そう言いながら、ただでさえ難解な図にミミズののたくったような文字が追加される。優斗は既にノートを取るのを諦めていた。「そしてその情報部の指示の元、実際に妖魔と対するのが貴様の所属する特務部だ。ここ本部には七つの班があり、ひとつの班に妖刀持ちが二人、後方支援が三人の二部隊十人構成、計七十名となっている。京都はその歴史からも妖魔の発生しやすい土地柄だ。故に、妖刀持ちも強い者が集まってはいるが手が回っていないのが現状だな。近代に入ってからは都心部や地方の妖魔も活性化している。それだけ人の欲望も強まっているという事だろう」 そう言ってらしくない溜息を零す。その顔は憂いに陰っていた。 そしてぽつりと呟く。「げに恐ろしきは人の心か……」 その様子があまりに辛そうで、優斗は優しい声音で話しかけた。「長谷部さん、大丈夫ですか? ︎︎顔色が優れませんけど……水飲みますか? ︎︎少し休んだ方がいいんじゃ」 そう言って水筒を取り出そうとする優斗を睨みなが
last updateПоследнее обновление : 2026-01-06
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第五十二話 恋乞い想う

 マッドサイエンティストが嬉々として会議室を後にしていたその前日。 優斗との仲が拗れてから一夜が経ち、修復する間も無く律はとある廃村へ向かっていた。同行するのは三番隊第二班の面々だ。序列十三位で班長の水戸映司、その相棒である序列二十五位の飯田駿、そして後方支援員の三人。後方支援員は入れ替わりが激しいので名前などいちいち覚えていられない。 今回は優斗付きとなった律の代わりに配備された水戸の実地訓練だ。今まで序列五位の律と組んでいた飯田にとってはかなり勝手が変わるだろう。それを踏まえ、優斗が教習の間に引き継ぎをする事になっていた。水戸は急な班長抜擢に些か緊張していたが、律の表向きには柔和な笑顔にだいぶ肩の力が抜けてきている。指示を出す姿も様になっていた。 序列が十三位と班長としては少々心許ないがそれは本部だからこそだ。他の支部では班長の序列が二十位代などざらにいる。その中でも三番隊は特殊と言えるだろう。二位の玲斗と五位の律が同じ隊にいる事が異例であった。これは律を扱える人材が玲斗しかいなかったためである。律は幼い頃から高位の御代月と共に現場に立っており、そのせいで暴走する事があった。壊れた脆い精神を守るために箍が外れるのだ。暴走した律は時に味方にまで危害を加え、壊滅状態に追いやった事がある。それを抑えるにはより強い力が必要とされた。現在三位と四位は空席で必然と玲斗の元に預けられる事になった訳だ。玲斗はお仕置という形で律の手綱を握った。 そして三番隊の第二班班長として活動してきたが、それも優斗という存在と出会い新しい道を見つけた。これがどういう結果をもたらすかはまだ誰にも分からないが律にとっては運命と言っていい。 その優斗と離れ、あまつさえ喧嘩別れした状態で今の律は不安定だ。それを抑える玲斗とも別行動で不安要素は多い。だがそれを乗り越えてこそ優斗を守るという目的が果たされる。律はそれを理解していた。これもひとつの試練だ。自分が成長するための。律とて今のままでいいとは思っていなかった。このまま暴走を繰り返していては優斗を守るどころの話では無い。それどころか優斗を手にかけてしまうかもしれないのだ。今回の仕事は
last updateПоследнее обновление : 2026-01-07
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第五十三話 嵐の前の静けさ

 車は市街を抜け、山道に入る。鬱蒼と茂る木々の合間を縫うように走ること約一時間。ようやく草木に侵食された廃村に辿り着いた。入口には左右に杭が打ってありロープが張られている。そこには「立ち入り禁止」の看板が揺れていた。その横の少し開けた空き地に車を停めると準備に取りかかる。機材を並べ、情報部と回線を繋ぐ。律も車を降り、右耳にイヤーモニターを装着した。しばらく待つと少路の声が聞こえてくる。『宮前君、聞こえますか?』 それに律は元気よく返事をする。「はいは~い。聞こえてるよ。感度良好~」 半ば投げやりな律の声を敏感に察知した少路は苦言を呈し、注意を促す。『宮前君。小堺君と離れるのが嫌なのは分かりますがこれも仕事です。私情は挟まないように。少しの油断が命を失う事に繋がります。そうなれば小堺君とも会えなくなりますよ。それでいいんですか?』 痛い所を突かれた律は頬を膨らませながら言い返した。「分かってるよそれくらい。大丈夫、仕事はちゃんとやるから。そんで早く優斗に会うんだ」 そして仲直りしたい。優斗だけが今の律にとっての原動力だった。そのためにもチンタラしてはいられない。律は少路に確認をする。「で、ここには大型の妖蟲が出るんだっけ? ︎︎実体化レベルの妖蟲って珍しいね。人喰ったの?」 それに呆れた溜息が返る。『道中にも打ち合わせがあったはずですが』 叱責の色を含んだ声音を律は鼻歌で誤魔化し、少路が諦め折れる。それがいつものやり取りだった。律は基本、現場の人間を信用していない。いざ命の危機に瀕すれば我先にと逃げるからだ。その卑しさを何度も目にしてきた。それならばいっそ安全な場所で他人事の様に指示を飛ばすだけの情報部の方が余程信頼できる。少路はそれを知っているのだ。『はぁ……まぁ、いいでしょう。そうです。心霊番組の撮影に訪れたテレビ局の人間が襲われ三人が犠牲になりました。それが四日前の事です。その状況もカメラに収められていて、今はデータを陰陽寮が没収していますが反発が凄まじく抑えるのに苦労しています。このままでは無謀にもまた撮影に行くでしょう。その前に片付け
last updateПоследнее обновление : 2026-01-08
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第五十四話 違和感

 廃村に足を踏み入れた律は違和感を感じていた。本来であれば鬱陶しい程いるべき妖蟲が一匹もいないのだ。妖蟲は妖魔が現れる前兆となる。それがいないとはどういう事か。 怪異の目撃談は何も夜に限った事では無い。幽霊は夜に出るものというのは固定概念に過ぎず、人を喰らうのに時間は関係ないのだ。ただ、知恵持つ妖魔が人に紛れるには夜の方が都合がいいだけで。そいつらは妖蟲を侍らすなんて愚は犯さない。ただ闇から闇へと渡り歩くのだ。だから霊場に集る知能の低い下級の妖魔は昼夜問わず目撃例がある。その前兆が妖蟲だ。霊力の低い者には人魂と言った方が分かりやすいか。そしてそれに気付かず深入りすれば取って喰われる。いつも飢え、餌を見れば見境なく喰らう。それが序列の低い下級妖魔だ。そうやって妖魔は霊力を蓄え実体化し、知恵持つ怪異へと成長を遂げる。 その危険性を排除するために優斗の故郷で行った塚封じのように昼間に妖魔退治を行う事も度々あるのだ。その時は十分に予防線を張り、一般人の目に晒す事は無い。塚封じでは山中だったのでそれも必要なかったが。 しかし、ここは捨てられた廃村だ。それなのに妖蟲の気配が感じられない。実体化までしている妖蟲がこそこそと隠れる理由が分からなかった。そも実体化しているとはいえ所詮は妖蟲止まり。そこまでの知能は無いだろう。 廃村の中を辺りを警戒しつつ進み、律達は中心部までやってくる。すると狭い通りの交差する路上に赤黒い染みが広がっていた。おそらくここが撮影スタッフ達が喰われた場所だろう。崩れたブロック塀にまで血痕がこびり付いている。そこはまだ乾ききっておらず、血溜まりに食い散らかされた肉片や骨の欠片が異臭を放ち散らばっている。周囲を見渡せば、割れたアスファルトの隙間から草が顔を出し揺れていた。それは静かすぎる風景。「計測器準備」 溜息混じりに律が不意に呟いた。その意図に気付いたのは飯田だけだ。慌てて後方支援員の二人に指示を出し、赤外線センサーや熱探知ソナー、霊圧測定器を起動させる。霊圧測定器はその名の通り、霊体を察知するための機器だ。実体を持った妖魔は高い霊圧を有する。例え周囲に姿が見えなくても捕捉する事が可能だった。探索範囲は半径五百メート
last updateПоследнее обновление : 2026-01-09
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第五十五話 異音

 路上に広がる赤黒い染みがここだけにしか無いのだ。もし妖蟲が移動したのならば全身に浴びたであろう血の跡が続くはず。律はそれを追おうと考えていたのだがそれがどこにも見当たらない。それは妖蟲がこの場所から忽然と姿を消したという事に他ならないがそんな事例今まで聞いた事も無い。妖魔と言えど実体がある以上物理的な制約を受けるのだ。 それに気づいた時、律は総毛立った。ここは何かがおかしい。注意深く辺りを窺うが聞こえるのは葉擦れと虫の声だけ。霊場にあるべき淀んだ空気が感じられない。妖魔が出る場所には人の念が渦巻いている。恨みつらみ妬み嫉み。そして愛と憎しみ。様々な念は混ざり合い暗い闇と化す。特にここでは人が喰われているのだ。おそらくは生きたまま。その痛みは計り知れず、怨念となって留まるのが常だ。そしてそれがさらなる妖魔を生む事に繋がる。それすらも無いとはどういう事か。『宮前君? ︎︎どうしました。何か気付いた事でも?』 急に黙った律を訝しみ少路が訊ねる。律はそれに頭を掻きながら気乗りしない声で応えた。「これ、なんかヤバいかも? ︎︎分かんないけど嫌な感じがする。はぁ、早く優斗に会いたいのにヤダなぁ。取り敢えず村の探索続けま~す。その間に行方不明者の情報ちょーだい」 踵を返し更に村の奥へと歩を進める律の後を四人は慌てて追った。 廃村の中をうろつき、見つけた捕食の形跡は三ヶ所。少路から得た行方不明者の数と一致した。行方不明者は全部で六人。カップルと三人連れ、そして単独の計三組だ。皆、ここに肝試しに来る事をほのめかせていたという。その後消息を絶ったのだ。それはここ二ヶ月の事らしい。 この村が捨てられたのは約三十年前。十数年前から心霊スポットとして知られるようになり興味本位で訪れる者がいたそうだ。だが、行方不明者が出たというデータは無い。それが最近になって実害が出てきたというのは何か意味があるのか。律は歩きながら思考するがヒントになる様な物は発見できなかった。 一通り村とその周辺を見て回った律達は集会所跡らしき建物前の広場に行き着き荷物を降ろして一息つく。空を見ればもう陽も沈みかかっていた。今夜はこ
last updateПоследнее обновление : 2026-01-10
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第五六話 呼霊

 そこに現れたのは全長二メートル程の巨大な妖蟲が四体。そして、その奥に佇む人影。その人影は宙に浮いていた。白いシルクハットを被りドレープのたっぷり取られた裾の長いテールコートに身を包んでいる。顔は月の逆光で見えないがシルエットで男だと分かった。その髪は襟足が長く金色で緩く靡き月光に煌めいている。帽子を取り胸に置くと恭しく腰を折り凛とした声が響いた。「皆様、こんばんは。ご機嫌いかがでしょうか。良い月夜でございますね」 それは異様な光景だ。男の足元には確かに何も無い。律とていくつもの修羅場を潜ってきているのだ。様々な怪奇にも遭遇している。だが宙に浮く人間は初めて見た。初めは妖魔の類かとも思ったが匂いが違う。霊圧も人のそれだった。あまりの異様さに一瞬呑まれたがすぐに脳が回転し始める。「総員戦闘準備!」 律の掛け声で水戸と飯田も我に返り抜刀して正眼に構えた。やや遅れてあとの二人も銃を手に取る。銃と言っても対妖魔の特別製だ。弾丸に妖蟲を練り込んだそれは致命傷にはならないまでも、援護射撃程度ならできる品物であり足止めとして活用される。妖刀を持つには霊力の足らない後方支援員に配備される軍用のアサルトライフルを改造した物だ。 そんな物々しさを男は大仰な手振りで笑う。「これはこれは。流石は序列五位の強者。この程度の手品では臆しませんか」 その口振りは律を知っているかの様だ。だが律にこんな知り合いはいない。何処かで会ったのだろうか。思考を巡らせるが思い至らない。だから素直に聞いてみる。こういう所が律らしい。「俺を知ってるの?」 御代月に手をかけ抜刀の姿勢のまま口を開けば男は愉快そうに応えた。「はい、勿論。宮前律様、でございますよね。初めまして。私の事は伽陸とお呼びください。以後お見知り置きを」 そう言って指を鳴らす。「折角の逢瀬。まだお話したい所ではございますが、申し訳ございません。そろそろお時間です。この子達のお相手をして頂きましょう。貴方様のお相手をするには少々小物すぎますが何卒ご容赦を。貴方様がいらっしゃると分かっていればもっ
last updateПоследнее обновление : 2026-01-11
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第五七話 呪詛

 まずは先制。アサルトライフルが弾丸の雨を降らせ硝煙の匂いが充満する。空になった薬莢が乾いた音を立てて落ちた。 的が大きいためそれは全て命中したが妖蟲の突進は止まらない。 血飛沫を上げながら奇声を上げ、ただ闇雲に突っ込んでくる妖蟲を水戸と飯田が前に出て迎え撃つ。 折り重なるようにして餌に群がる妖蟲共は先を行く飯田に狙いを定めた。 牙が歪に並ぶ口を大きく開け押し潰すように迫る。 飯田は反転して身を躱し、一歩引いた足に膂力を乗せ口角から側面へと刀身を走らせ振り抜く。その反対側から水戸も続いた。 それは妖蟲を両断し絶叫と共に地面に沈め黒い染みが広がる。「一匹撃破!」 飯田が宣言し、次の目標に狙いを定める。 そこへ攻撃が集中した。 飯田は飛んでくる群れを転がりながら回避したが妖蟲の様子がおかしい。 飯田達には目もくれず息絶えた仲間の死骸に喰らいついたのだ。見る間に喰い尽くしていく妖蟲共は次第に膨張していった。腹が裂けても喰う事を止めない妖蟲は肥大化し手脚が生え進化していく。餌食となった仲間の霊力を取り込んだのだ。 これでは倒せば倒すほど敵に力を与える事になってしまう。律は歯噛みした。今までも複数の妖魔を相手取った事はあるがこんな事は初めてだ。妖魔が喰うのは人の念のみ。それが定説だ。しかしこれではまるで――。「まさか蠱毒!?」 律は教習で聞いた話を思い出していた。壺に毒虫を入れ共食いさせ、最後に残った虫を使った呪い。それを妖蟲でやっているというのか。本来は人が人を呪うために行われる秘術のひとつ。つまりは犯罪だ。それは陰陽寮ではなく警察の管轄となる。自然発生する妖魔を相手にしてきた律には討伐経験が無かった。背中を冷たいものが伝う。 そんな律の様子を見て伽陸がほくそ笑む。「流石でございますね。その通り。ここにいるのは皆共食いを経て成長した子供達です。可愛いでしょう? ︎︎手っ取り早く妖魔を育てるには絶好の手法です。妖蟲とて人の念に変わりはございません。自然に任せるより確実で
last updateПоследнее обновление : 2026-01-12
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第五八話 巨妖

 それは全長四メートルにも及ぶ巨大な妖魔だった。四肢で這いつくばり、不揃いな牙がザワザワと蠢く真っ赤な穴だけがぽっかり開いた頭部。太く短い脚には鎌の様な鋭い爪が鈍く光り、ぶくぶくと肥太った腹を引きずるようにして振り返ったそれは上空から律達を睥睨すると地を揺るがす咆哮を上げた。 ――ヤバい。これじゃ麓まで届いちゃう。 いくら山中といっても、市街からはそれ程離れていない。声もそうだが、この大きさでは木々の合間から目撃される可能性があった。今のご時世、録画機器は身近にある。それを拡散するツールも豊富だ。もしネットの海に広がってしまえば、国の力を持ってしても抑え込むのは至難の業だろう。一刻も早く始末する必要がある。 しかし、その霊圧は呪いの相乗効果も相まって、今や序列十位にも迫る勢いだ。ここまで成長してしまっては、律とて易々と討伐する事ができはしない。それに加えこの大きさ。数ではこちらが勝るとはいえ、手駒が心許ない。 唯一の利点は満月で、明るく妖魔の視認が容易な事くらいか。 だが、それでもやるしか選択肢は無いのだ。例え死への道しか無くとも突き進む。それが陰陽寮に身を置く者の運命だ。しかし、律に死ぬ気は毛頭なかった。死ぬなら優斗と共に。今まで惰性で生きてきた律の目に光が宿る。「美津代さん。ちゃんと記録取ってるよね? ︎︎前情報も穴だらけだったんだから、ちゃんとやってよ。後処理の手配もよろしく。できたらあの変なのも捕まえたいけど、そこまではちょっと無理かな~。サンプルだけでも上等でしょ」 イヤーモニターに声をかけると、騒然とする音が聞こえる。この様子はカメラを通して情報部へ中継されているのだ。突如として現れた脅威に、本部もてんやわんやなのだろう。その音に紛れて、小路の抑揚のない声が返った。『了解しました。すぐに応援を編成します。ご武運を』 それだけ言うと音が遮断される。生き死にの状況にあっては多少の雑音も命取りだ。こちらの音声はカメラで共有されているから問題は無い。律は唇を舐めると部下に指示を出す。「想定より強い奴が出てきちゃったけど、やる事に変わりは無いよ。妖魔を殺す。それだけ。映司さんと駿さんは左右から脚を狙っ
last updateПоследнее обновление : 2026-01-13
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第五九話 月夜の死闘

「よ~い……」 後ろで息を呑む気配が伝わってくる。「どん!!」 掛け声と共に猛烈なスピードで前に出る律。 狙うは首だ。いくらデカい口を持っていようが首を落とせば意味は無い。だがその首は丸太の様に太く一筋縄では攻略できないだろう。まずは体力を削ぐ。そのためにも脚を攻めさせたが後続が遅れている。「何やってるの!? ︎︎遅いよ!」 叫びながらスライディングの要領で妖魔の首の下に入り込み、跳力を利用して深く突き刺す。それは根元まで埋まり、刀身を捻り抉りながら力任せに横に薙いだ。 妖魔は雄叫びを上げ体を持ち上げる。がら空きになった胴体にアサルトライフルが火を噴いた。良い射撃の的になった妖魔の腹は無数の穴が開きドス黒い血がシャワーのように吹き出る。 そこにやっと駆けつけた水戸と飯田が脚へ斬りかかった。 水戸は脇差、飯田が太刀の妖刀だ。 二人とも脚の裏側、腱を狙って攻撃をしている。しかし、分厚い肉に阻まれ功を成していない。そもそも今となっては、水戸達の妖刀より序列が上がってしまった妖魔には効果が薄いのだから無理もないだろう。この規模の妖魔は、本来ならいくつかの隊が連携を取って退治する案件だ。それをたった一班だけで対応するには限界がある。 これは律が頑張らねば全滅も有り得た。律としてはいくら手駒が死のうが知った事では無いが、自分まで巻き込まれては困る。なんとしても優斗の元に帰らなければならないのだから。それに班員が死んだと知ったら、優斗が悲しむかもしれない。それは嫌だ。 暴走しようとチリチリと疼く体を抑えつけながら頭を回転させる。 どうすれば死なない? どう動かせば手駒を活かせる? 考えろ! 律の頭の中は優斗の笑顔で埋め尽くされる。あそこに帰るんだ。その意思だけで体を動かす。 迫る爪を弾き、肉を裂き、血に塗れながら前に進む。何度も攻撃がかすり傷も増えていく。腕に足に体に。裂傷は増えていき、妖魔と自分の血が混ざり服が貼りついて気持ちが悪い。どうしても体重の重い妖魔の方が力が強く、捌ききれない。刀で受け
last updateПоследнее обновление : 2026-01-14
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第六十話 夜明け

 体は疲労と裂傷でヘトヘトだ。お腹も減ったし血も足りない。それでも負けてやる気など微塵も無かった。 上空に視線を向けると、そこでは相変わらず伽陸が笑いながら戦いを傍観している。その態度がムカついた。 妖魔に目をやる。全身傷だらけだが、首を落とすにはまだ足りない。さすがに弱点なだけあって守りが硬かった。ならば守れない場所を狙えばいい。 四肢に、そして妖刀にまで霊力を巡らせ、地を蹴り駆ける。 妖魔は立ち上がり腕を振り回した。 鋭い爪が頬を掠め、血が舞う。 それにも構わずに突進する。 猛攻を掻い潜り巨体に肉薄すると、全体重を乗せて曝け出された腹に突きを叩き込む。「おぉぉぉぉぉぉおおっ!」 雄叫びと共に渾身の力で斬り上げれば、腹が裂け内蔵が飛び散り、腐敗臭を撒き散らしながら妖魔が絶叫する。 そのまま前方に倒れ伏し、起き上がれないまま踠き苦しむ様は醜悪だ。 律は肩で息をしながら首をよじ登り、頭上に立つと刀に渾身の力を込めて脳天に突き刺した。 それは頭蓋を割り脳に達する。そのまま掻き回すように抉ると、妖魔は痙攣を繰り返し動かなくなった。さすがに脳を破壊されては、特殊な妖魔と言えど一溜りも無い。 それを確認して空を仰ぐ。 睨んだ先には伽陸の姿。 その顔は朝日に照らされ、はっきりと認識できた。そこにあったのは白い顔。目と口だけが弧を描く仮面だ。それはまるでピエロの様で気味が悪い。その右側面に血の様な赤で陸の文字が刻まれている。無表情な笑顔が楽しそうに揺れ、俳優に送るように拍手した。「お見事でございます。出向いた甲斐があったというものです。ますます欲しくなりました」 欲しい? 何の事を言っているのだろうか。 睨み合う二人の間を朝日が焼いた。 それと同時に大量の足音が近づいてくる。やっと応援が到着したようだ。「次は君だよ」 律が刀を向けて挑発するも、伽陸は肩を竦め笑う。「折角のご指名ですがそろそろお暇いたしま
last updateПоследнее обновление : 2026-01-15
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