菖蒲達は後堂の元を離れると、優斗に近付き向き合った。「……小堺。昨日はすまなかった。だが俺も負ける訳にはいかない。必ず追いつくからな」 そう言って真っ直ぐに優斗を見つめる。それに優斗も真剣に応えた。「ああ。僕だって譲る気は無い。それより一人足りないようだけど?」 その言葉に菖蒲の顔色が陰る。茉莉花も同様だ。「蓮は……死んだ。いきなり三位に手を出して呆気なく。俺達は本当に血に頼っていただけだったんだ。ここから地道に這い上がっていくさ」 優斗もさすがに口を噤んだ。 菖蒲は軽く頭を下げると、茉莉花と共に隊員達の輪に加わっていく。 その後ろ姿を見送ると、後堂が入れ違いにやってきた。「小堺君、君は今日も私が相手しよう。君は実に面白い。まだまだ荒削りだが伸びるぞ」 そう言って豪快に笑い背中を叩く。力強い励ましに、優斗も大きく返事をした。「はい。よろしくお願いします!」 深く礼をすると律が声援を送る。「優斗! ︎︎頑張って!」 あまりに場違いな明るい声に、周囲の目が集まり優斗は照れくさそうに手を振った。 緊張をほぐす様に大きく息を吐くと、改めて後堂に向き合い模擬刀を構える。教官自ら指導してもらえるのだ。これほど恵まれた経験はそうできないだろう。祖父も段持ちではあったが、後堂は更に実戦的だ。容赦なく拳や蹴りが飛んでくる。それは寸止めなど生易しい物では無い。気を抜けば目を潰される事さえ有り得た。 訓練は二十五分置きに五分の小休憩を挟みながら三時間行われる。三十分六セットだ。長時間集中力を維持するため、体力の分配を身に刻むために短い時間で息を整える。 昼食後すぐの訓練だ。中には激しい訓練についていけず、胃の中身をぶちまける者もいた。だが優斗は必死に耐える。律が作ってくれた物を吐くなんてできない。それに今はその律自身が見ているのだ。無様は晒したくない。頭に浮かぶのは、どんな時でも律の笑顔だった。 午後三時半。教官補佐から訓練終了の笛の音が鳴る。それと同時に皆が崩れ落ちた。立っているのは優斗だけ。それ
Dernière mise à jour : 2026-01-29 Read More