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第七十一話 共に行く道

「僕もお前のために頑張るから。お前は僕が絶対守る。まだ未熟だけど、でも、こんな怪我なんてさせないようになる。一緒に戦いたい。他の誰でもない。お前のために」 まっすぐに律の瞳を見つめ、律の腕に手を伸ばして包帯を撫で決意を言葉に乗せる。律はぽかんとしていたが、ひとつひとつの言葉を飲み込んで涙を浮かべた。「うん……うん! 俺も優斗を守るよ。死ぬ時は優斗と一緒がいい。俺の命は優斗の物だから」 優斗も笑みを浮かべ頷く。「ああ、死ぬ時も生きる時もずっと一緒だ。僕の隣にはお前がいてほしい。他のヤツなんていらない。お前がいれば僕はそれでいい」 それは告白にも似た宣言。律にとっては何物にも変え難い言葉。二人は笑い合い至福の時間を過ごす。だが、その時間は短い。明日になればまた教習が待っている。律も仕事だろう。 離れる事は辛い。 それでも想いが通じた二人には些細な事だ。帰ってくれば、そこに自身の片割れがいてくれる。そう思えば乗り越えられた。 それにあと五日の教習が終われば一緒にいられるのだから。 しかし。「じゃあさ、この後俺の部屋で……」 頬を染め優斗を誘うもそれは無下にされる。「それとこれとは話が別だ! 僕はお前に抱かれるつもりは無いからな! あくまで友達、相棒だ。勘違いするなよ!」 つれない優斗の言い様に律はむくれるが、その目は諦めていない。虎視眈々と狙う目は肉食獣のそれだ。優斗の背は粟立つがそれすらも快感に変わってきている事に気づかないフリをした。ここで負けてしまってはグズグズになってしまう。さっきのキスを思い出すだけで疼くというのに、それ以上先を知ってしまえば抗えないだろう。 優斗は自分の気持ちに気付き始めていた。相棒だと思い込もうとしているがきっと違う。しかし、それが律と同じ物かは分からない。律も優斗を好きだと言うがそれは恋愛感情なのか。分からないままで関係を持つのは怖い。自分の独りよがりだったらと思うと、せっかくいい感じになれたこの空気が消えてしまうかもしれないのだから。 それに自分の気持ちにも確信が持てずにいる。優斗は初
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第七十二話 触れ合う心

 夕食を済ませると、優斗が後片付けをする間に律を風呂に行かせた。そんな何気ないやり取りに心が弾み、自然と鼻歌が零れる。だが、皿を洗い、流しを拭きあげる短い間に、もう風呂から上がってきた律に意表を突かれてしまう。時間にして十五分も経っていない。カラスの行水もいい所だ。「お前、ちゃんと暖まったのか? あー……髪もまだ乾かしてないし。もっとゆっくりしていいんだぞ?」 見かねてそう言っても、律は首を振る。「ううん。だっていつ緊急の呼び出しがかかるか分からないんだもん。これがいつもの事だよ。お風呂に入れるだけ良いと思わなきゃ」 にこやかに笑う律だが、その背景にあるのは凄惨な生い立ちだ。優斗にはまだそこまでの気概が無かった。呑気に湯船に浸かっていた自分が恥ずかしくなる。「そうか……そうだな。僕もまだまだ甘い。肝に命じるよ。でも、そうすると本当に一緒に入った方が効率がいいのか……?」 そう呟くと律の顔が眩しく輝いた。しまったと思うも後の祭りだ。「うんうん! それがいいよ! そうすれば緊急事態にも素早く対応できるしお湯も節約できる! 明日から早速実践しよ! わ~い! 優斗とお風呂! ねぇねぇ、洗いっこしようよ! 俺、全身隅々まで洗ってあげるよ。それから……ね?」 ねっとりと熱を帯びてくる律の表情に、優斗は引き攣る。またも壁際に追い込まれそうになりながら押し返した。「やっぱり今の無し! よく考えたらどっちかが連絡役で残った方がいい! 二人とも風呂に入ってたら着替えるのにも時間がかかるだろ!? 緊急事態にそれはまずいんじゃないか!?」 それに洗いっこで済むはずも無い。その先を想像してしまって上気する頬を見られまいと顔を逸らすと、律が不満げな声を上げる。「え~。そんな事無いよ。スマホは風呂場に持ち込むから着信にはすぐ気がつくし、脱衣所も広いから十分二人で着替えられるもの。でも邪魔されるのは嫌だな~。もういっそスマホ壊しちゃおうか」 どこまで本気か分からない律の言葉に、戦慄を覚えた優斗は慌てて止める。このままでは本当に壊しかねない。「ちょっと待て! それはダメだろう!? 壊したら
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第七十三話 傷痕

 あの後、なんとか優斗を宥めて勉強会を始めた。二人で課題を持ち寄りリビングのテーブルに広げる。ソファに隣同士で座り律は上機嫌だ。ピッタリと寄り添う相棒に優斗もぶつくさと文句を言いつつも満更でも無い様子で課題に取り組んでいる。 律は勉強を頑張ったと言うだけあって問題をサラサラと解いていく。時には手が止まった優斗に分かりやすく教えてくれて、その時ばかりはいつもの押しの強さも無く至ってまともだった。 優斗はその横顔をそっと覗き見る。 ――もう触らないのかな……。 自分から拒否したというのに触れてほしいと願ってしまう。その矛盾に気付き自分の身勝手さに自嘲が漏れた。その時目に入った参考書を指す手の甲にはあの傷跡。先日、初めて自分から口付けた場所だ。思い出したら自然と手が伸びていた。重ねた手から伝わる体温に優斗の心は暖かい物で満たされる。 そんな優斗の様子を律も柔らかい笑みで見つめていた。そのまま動かない優斗に首を傾げて艶めいた視線を送る。「今日はキス、してくれないの?」 その一言に優斗は紅潮するとペシりと手を叩き口を尖らせる。「だから! あれはただの気まぐれだって言っただろ! ……この傷、もう痛くないのか?」 左手のその傷は親指の付け根から小指まで縦断している。残った跡からも相当な深手だったろう事は容易に知れた。律はヒラヒラと手を振りながら笑う。「うん! たまに引き攣るけど痛みは無いよ! 結構前の傷だしね。御代月を継いだ頃だったかな~。確か十二とか十三とかそのくらいの時。まだ玲斗さんの所に来る前でさ、初めて班長を任された任務でやらかしちゃった。御代月もまだ上手く使いこなせなくてね、自分で斬っちゃったの。馬鹿だよね~。この程度の傷なら身体中にあるよ~。見たい?」 そう言いながらTシャツを脱ごうとする律を必死に止めた。「いや、いいから! 脱ぐな!」 ちらりと見えた体は筋肉質で引き締まりがっちりとしていた。それが魅惑的で何故か顔が火照る。それに目敏く反応して律が身を寄せてきた。「あれれ~。優斗顔真っ赤。可愛い~。どうしたのかな~? 俺の裸見て興奮
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第七十四話 未完成の恋

「ふふ、優斗エッチな顔してる。ねぇ、もっと触って。優斗に触られるとゾクゾクしちゃう」 律は優斗の手を取ると下腹部へ誘う。触れるか触れないか。ぼうっとする頭に鳴り響く鐘の音で我に返った優斗は目の前の猛ったモノに思いっきり拳を振り下ろした。それはクリティカルヒットして律は悶絶する。「あ、危なかった……。お前、ほんっといい加減にしろよ!」 そう言うも、息も絶え絶えな律には届く事は無い。自分から触ってきたのに。律の声にならない声は虚しく消えた。 しばらく立ち直れない律を脇にどかして、優斗は黙々と課題を熟す。それでも、今しがた見た律の身体が頭から離れずムズムズする。 律と再会してから、歯止めが効かなくなってきている様に感じた。たった一日会わなかっただけなのに。律の行動ひとつひとつが優斗の心を揺さぶる。 律はあくまで相棒。そう思い込もうとしても、心とは裏腹に身体が反応してしまう。初恋もまだ、勿論未経験な優斗は自分の変化に戸惑っていた。友人さえ数える程しかいなかったのに、急に恋だなんてどう接すればいいのか分からない。しかも相手は男だ。普通とは言い難い恋。誰かに相談するのも怖かった。もしかしたら気味悪がられるかもしれない。 昨今、性的マイノリティは周知されてきてはいるが、それでも少数派だろう。そんな優斗の悩みもそっちのけで律はグイグイ来るのだから始末に負えない。律も自分に恋してくれているのか。それさえも確かめる勇気は無かった。 律は好きだと何度も繰り返す。そして優斗を求めた。でもそれが恋なのかは律も分かっていなさそうだ。ただ、狂信的に優斗を手にしようとしているだけのように思える。それも共切のせいなのか。 この陰陽寮という狂った場所で寄り添うには、二人は幼すぎた。 菖蒲達と歳はそう違わないが、育った環境が違いすぎる。菖蒲達は生まれた時から妖魔と対峙するべく教育されてきたのだ。 律も八歳で家族を亡くしてから時間が止まっている。優斗と出会ってやっと時が動き出したが、それもまだ身体に追いついてはいない。 そして優斗は剣術の稽古を受けていたとはいえただの子供で、い
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第七十五話 街の影

 東京の片隅に、古びた洋館がひとつ。  そこはビルの陰に隠れる様にひっそりと佇み、昼なお暗い。都会の真ん中でも静かなそこは忘れ去られた場所だ。ビルの隙間の細い路地の突き当たりに位置し、表通りからは見えない。 その建物は木造二階建て、和洋折衷の外観はレトロで古いが手入れはしっかりとされていた。だがしかし、人の気配はまるで無い。都会の一等地にあるにしては広い敷地に小さいながらも噴水や庭園があり、裕福層の住まいだと一目で分かる。 路地裏の暗がりに何かが壊れる様な音が響くと、何も無い空間から男が現れ、何食わぬ顔で屋敷の敷地内に足を踏み入れた。 男は蔦の絡まる鉄でできたアーチ状の門を潜り、玄関までのアプローチをゆっくりと歩く。 庭に咲き乱れた狂い咲きの真っ赤な薔薇がふわりと揺れた。 男は夏だというのにドレープのたっぷりと取られた裾の長いテールコートに身を包んでいた。頭上にはシルクハットを被り、手にした凝った作りのステッキをくるりと回すと金の髪が風に靡く。 細い目を柔和に緩めたその男は鼻歌を歌いながら玄関のノブに手をかけた。軋みを上げて開いた先は光の差さない闇の世界だ。そこかしこに妖蟲が飛び交い、喰い合っている。 その内の一匹が男に牙を剥く。しかし、その牙は男に届くこと無く弾け飛んだ。まだ実体の無い妖蟲は霞と消える。 男は暗闇を軽い足取りで進む。行き着いたのは一際豪勢な両開きの扉の前だ。ノックをすると少女の声が入室を促す。 扉の先には五人の男女が揃っていた。 一番目を引くのは最奥の豪奢な椅子に腰掛けた白髪の少年。レースがふんだんに使われたドレスシャツに半ズボン。足元はソックスガーターと白いハイソックスを着用している。まだ十にも満たない幼い面差しだが、人の心までも見透かす様な鋭い瞳はひれ伏したくなる気品と威厳を湛えている。 その右側にピッタリと寄り添うのは亜麻色の髪を肩先でおかっぱに揃え、桜色の袴を着た無表情の少女だ。白皙の美貌は人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。 その反対側、椅子の左には艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、深いスリットの入ったオペラ色の
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-01-27
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第七十六話 鬼の王

伽陸の細い首に手がかかり、みしりと音を立てる。 しかし、それさえ楽しそうに細い目は弧を描く。「ようございますねぇ。私めも貴方様のお役に立つ事こそ至上の悦び。しかしながら、僭越ではございますがひとつご提案をお聞きくださいませ。愚かな戯言ではございますが、彼の方をこちらにお招きするためには必要な事かと存じます」 その進言に少年はぴくりと眉を上げる。しばらく思案した後、手を振り赤毛の男を引かせた。「なんだ。申してみよ」 足を組みかえ、鷹揚に顎で先を促す。伽陸はハットを取り、恭しく一礼した。「ありがたき幸せ。それでこそ我らが御大将。寛大なお心に感謝致します」 大仰な所作で頭を下げる伽陸に少年の柳眉が顰められた。どこまでも慇懃無礼な奴だ。だがそれもまた伽陸を伽陸たらしめる所以。そこが気に入って末席に加えた。「御託はいらぬ。さっさと申せ」 少しの苛立ちを込めて言えば伽陸は礼の姿勢のまま語り出す。「これは失礼を。ご提案とはトリガーについてでございます。貴方様もご存知の通り、彼のお方は未だにお目覚めではございません。この七年間、密かに見守ってまいりましたがその兆候さえ窺えない様子。しかし、好機が参りました。彼のお方の目覚めのきっかけ……トリガーに成りうる存在が現れたのでございます。その者は」 そこで言葉を切るとそっと少年を盗み見た。  そこにあったのは美しい顔とは程遠い鬼の形相。少年の顔はどす黒く変色し怨嗟の念を吐く。「小堺優斗……!」 その様に伽陸は愉快げに口角を上げる。「左様でございます。まずは小堺優斗を手中に収め、彼のお方の目の前で喰らうのです。さすればトリガーとなり目覚めを促す事も可能かと。ただお連れしたのでは抵抗されるだけでございましょう。小堺優斗を餌として御自らの足で赴いていただき、惨たらしい死を拝見なされば箍が外れる事請け合いでございます。その暁には我らの王としてお迎えできるはず。それは貴方様の悲願。この世の地獄の始まりでございます」 少年
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第七十九話 陰に棲むもの

「な~んだ~。そんな事なら喜んで教えますよ! はい、座って座って~」 キャッキャウフフと笑いながら、井垣はつらつらと言葉を紡ぐ。「鬼っていうのはですね、妖魔の最終形態と言われています」 その言い方に、優斗は引っ掛かりを覚えた。「妖魔の始まりは小さな綻びです。思念が凝り固まり、形を持つと妖蟲へ。更に霊力を取り込み、成長していくと妖魔となります。それはまだ知恵を持たない魑魅魍魎。言い換えれば野良犬と変わりません。しかし、それがそのまま力を増すと知恵を持ち、人の形を取ります。最初は餓鬼と呼ばれる雑魚ですが、幽鬼、怨霊鬼、牛鬼などを経て童子と呼ばれる最強の鬼になるのです」 そこで何故か井垣は胸を張る。まるで自分を誇るかの様だ。だが、次の言葉で表情が曇る。「しかし……残念ながらこれは推測に過ぎないんですよね。童子で有名なのは酒呑童子ですが、それは疫病の比喩だったとされています。それが大江山の盗賊の頭領の話と合わさり、鬼と呼ばれる様になった。少なくとも陰陽寮の文献ではそうです。陰陽寮は平安の時代から続く機関ですが、童子の資料は不自然なほどありません。その存在はあくまで仮説の域を出ないんです。いくつか鬼と目される検体は捕獲された事はありますが、解明には至らず」 腕を組み唸る井垣は、心底悔しそうに顔を歪めている。しかし指を翻すと、パッと表情が輝いた。「そこで浮上するのが共切です。共切は明らかに他の妖刀とは違います。一代に一人しか抜けない事、どんな妖魔でも断ち切ってしまう事。そんな共切は突如として文献に名前が上がります。製作者も不明、初代所持者の名前も不明。引き継いだ一族に、時の天皇から共咲の名を賜ったとあるだけです。その一族に伝わる伝承により、この共切だけが鬼の存在を示しています」 そこまで一気に言うと、ひとつ咳をする。「妖刀は共切の模倣です。しかし、その製法すら口伝で伝わるのみ。どうやって鬼を封じ込めたのか、その鬼はどんな物だったのか。それを知る術はありません。だから私達は日々研究に勤しみ、謎を解き明かすべくメスを握るのです!」 最後の締めは演説の様だ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-01-28
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第七十七話 朝の始まり

 翌日も教習に出かけた優斗は会議室へと入る。時間も余裕があり窓の外に目をやれば頭に浮かぶのは朝の出来事だ。 今日は出がけに律が見送ってくれた。相変わらずのフリフリエプロンを靡かせ、玄関まで出てきた律が徐に優斗の頬にキスをする。それに優斗は目を丸くした。「なっ! 何を……!」 顔を真っ赤にして頬を抑える優斗に律は笑いながら言う。「いってらっしゃいのキスだよ~。俺、今日は引き継ぎないから休みなの。班員が大怪我しちゃって、予備の人員も出払ってるから待機だって。美味しいもの作って待ってるからね。楽しみにしてて」 これではまるで新婚夫婦だ。それに優斗は文句を言いつつ視線を彷徨わせた後、意を決した様に律を見上げ、エプロンを摘みちょんと引く。それに律が首を傾げるとそっぽを向きながら呟いた。「しゃがめよ……届かないだろ」 ぽかんとしていた律だったが、その意味に気付くと嬉しそうに頬を差し出す。それでも少し遠くて爪先立ち、そこに唇を押し当てる。それだけで満面の笑みをくれた。 幸せだと思う。 好きだなんてまだ言えずにいるが、それでも律が喜んでくれる事をしたい。自分に何ができるだろうか。たぶん素直に好きだと言えれば一等喜んでくれる。それが一番いい事だとは思うが勇気が出ない。おそらくその先には未知の体験が待っているのだから。 それを思えば身体が熱くなる。嫌ではないのだ。ただ、一度関係を持ってしまえば飽きられるかもしれない。律ならばきっと大事にしてくれる。そう思っても踏み出せずにいた。 思わず溜息が零れると、会議室の扉が静かに開く。長谷部が来たかと姿勢を正すが、一向に入ってこない。訝しんで首を伸ばすと俯いた女性が立っていた。その女性は小さい身体を更に縮こまらせて挙動不審に辺りを窺っている。その度におさげ髪が揺れた。 そうっと警戒するように足を一歩踏み出すとおずおずと会議室を覗き込み、優斗と目が合いびくりと肩が跳ねる。まるで小動物の様なその女性は丸襟の白いブラウスにベージュのカーディガン、茶色いチェックのロングスカートと丸眼鏡という委員長とでもあだ名がつきそうな出で立ちだった。
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第七十八話 命の重さ

「は、初めまして。井垣多未子です。今日は長谷部部長のご都合が悪いので、私が座学を担当させていただきます」 そう言って頭を下げる。それに倣い優斗も名乗った。すると井垣は俯きぶつぶつと呟く。「ちっ。あの野郎、自分が解剖したいからってガキのお守り押し付けやがって……私も解剖したいっての。せっかくの活きのいい珍種だったのに……」 小さく聞こえる声は、外見からは程遠い毒舌だった。若干引き攣りながら教習を急かすと、誤魔化すように上目遣いで猫なで声を出す。「あらごめんなさい、私ったら。えへ。えっと教習ですよね。今日はお仕事の内容についてご説明します」 優斗も居住まいを正すと、井垣は丁寧な口調で話し始めた。「小堺君はご存知の様に特務部所属です。妖魔との戦いの最前線だというのは既にお聞きですよね」 小首を傾げて問う井垣に、優斗は首肯で返す。するとペンを持ち、ホワイトボードに図を書き連ねる。それは長谷部とは全く違い、几帳面な文字だった。「まず、基本的な構造です。五人を一班とした、二部隊十人編成で任務に当たります。敵の規模によって合同の時もありますが、個別に対応する事も多いです。しかし、小堺君は共切の所有者ですので、序列五位の宮前君と二人だけの特殊編成となります。その下に班がつくという状態ですね。任務によって組む班は変わり、小堺君が指揮権を持ちます。勿論、宮前君や班長の補佐はありますが、貴方の意見が優先です。命を背負っちゃう訳ですね。ヤダかわいそー」 そう言う井垣の顔は煌めいていた。こいつもやはり陰陽寮の所員だけあって、一癖も二癖もありそうだと優斗は胸中で冷や汗を流す。「妖魔に対しては……明日から実地教習が始まりますから、そちらで習ってください。同行するのは三番隊第一班、つまりお父さんの部隊です。まずは妖蟲狩りから始めると聞いています。部隊行動の練習ですね。小堺君は封印の経験があるとか。それなら妖蟲くらいちょちょいですよ」 そしてまた邪気の無い笑顔で刀を振る真似をする。それはあまりに無責任な言動だ。実際に戦う優斗達の事など意に介していない。
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-01-28
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第八十話 日常にある幸せ

 朝の講義を終えて一人、会議室で弁当を広げる。律が持たせてくれた物だ。 青いランチバックに入った二段重ねのそれを開けると、一段目には白米の上に梅干しが乗っていた。いつだったか優斗が好きだと言った、果肉の柔らかいタイプの梅干しだ。そんな些細な事まで覚えていてくれた事に、心が暖かくなる。 二段目にはウインナーにピーマンの肉詰め、プチトマトとブロッコリーなどの野菜もしっかり入っていた。ボリュームもあり彩りも鮮やかで、工夫してくれた事が窺える。 しかも朝食とは品ぞろえが違う。手間だったろうにと、フリフリのエプロンをつけて弁当を詰めている律を想像すれば、自然と笑みが零れた。しっかりと手を合わせて感謝し、午後の訓練に向けて頬張る。 鬼の事は不確かな情報しか得られなかったが、仕事をする内に遭遇するかもしれない。その時に備えて鍛えなければならないのだ。 律の心に平穏を。 それが今の優斗にとって、一番重要な事だった。 弁当を食べ終え時計を見ると、十二時を回っている。もう道場に行かなければ。 共切を肩にかけ、会議室を後にした。 道場につけば早速着替え、他の隊員達に混ざり柔軟体操で体をほぐす。ちらりと窺えば、昨日より人が少ないように思えた。昨日絡んできた瀬下という奴も見当たらない。律が予備の人員は出払っていると言っていたし、ここにいるのはまだ仕事が割り振られていない者達なのだろう。詳細は知らされていないが、優斗と同じ教習中の同期といったところか。その割には座学が一人だが。もしかしたら他の部屋で行われているのかもしれない。 時間になれば集合がかかった。優斗は思考を中断し、昨日と同じように整列すると後堂が全体を見回す。「こんにちは諸君。今日も鍛錬に励もうではないか。死して屍拾うものなし。無駄に散るな。それは無辜の民を危機に晒す事と同義と思え。剣を振るえ。妖魔を八つ裂きにしろ。その先にあるのは闇無き世界だ。お前達が戦う事にはちゃんと意味がある」 昨日も聞いた口上。だが皆、じっと耳を傾けていた。その様子に満足そうに頷き手を鳴らす。「では、稽古を始める。と、いきた
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-01-29
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