All Chapters of 麻雀家政婦『紅中』〜接待麻雀専門家〜: Chapter 51 - Chapter 60

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その6 第三話 家政婦のイメージ

51. 第三話 家政婦のイメージ 「では、私達は家事全般をまず終わらせますね。麻雀はそのあとで」  とは言ってみたものの……  錦野邸の掃除はやってもやっても終わりが見えず、途方もない作業であった。「これ、終わる日って来るんですかね」「この掃除に終わりは無いに等しいのでどこかで我々のほうが妥協して終わらせないと掃除してるうちに婚期を逃すわね」「シロ子は婚期とか気にしてたんですか。ていうかシロ子は27歳ですよね? 婚期ってもう過ぎ去ってませんか?」「考え方古いわねチュン。イマドキの結婚適齢期は20代後半〜30代前半なのよ。結婚は25歳までとか言ってた時代はとうの昔なの」「あ、そうなんですか。結婚とか自分に縁のない話だから疎いんですよね」「私も縁は無いけど……」  言ってて悲しくなったのかシロ子は元気がない声でそう言った。 「……ま、まあまあまあ。そんな気にしなくてもシロ子は美人だから大丈夫ですよ。ねぇ? ご主人様もそう思いますよね?」「あ……うん。そうですね(ご主人様って、おれ?)」「チュン。あんた、依頼主のこといつも『ご主人様』って呼んでんの?」「え、はい。そうですけど、変でした?」「何年前の家政婦のイメージよ。大豪邸に仕えるメイドじゃないんだから。イマドキは『◯◯さん』か『◯◯様』が主流よ」「そうだったんですか!? あ……でも。ここは大豪邸ですよ」「確かに!」「まぁ、確かに大きな家かもしれないけど『ご主人様』はやっぱり変な感じするので普通に『サスガ』って呼んでくれると嬉しいかな」「承知致しました『サスガ様』」「ん…&hell
last updateLast Updated : 2026-01-12
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その6 第四話 先生の麻雀

52. 第四話 先生の麻雀 「おーい、家政婦さんたちー。もうお昼過ぎだしそろそろ休憩して下さーい」 「……あ、もうそんな時間でしたか」「私は洗濯物を干したら一旦終わりにする。チュンは先に休憩入っていいよ」「そうですか、それではお言葉に甘えて先に休みますね」  そう言って紅中は居間に移動した。 ──── 「お待たせ、チュン。お昼はどうする予定なの?」「近くにとんかつ屋さんがありますのでそこに行こうかと」「いいね。錦野兄妹はお昼はどうするつもりなんだろう?」「2人はひと足先にそのとんかつ屋さんに行かれていたみたいです。それで私もオススメされました」「そうだったんだ。いつの間に」「家が広すぎですからね。これだと遠くにいる時は人の出入りにも気付きませんね」  その頃、妹の今日子は部屋にこもって夢中で紅中の描いた漫画を読んでいた。 どうやら麻雀の場面で理解が難しい所に直面したらしく、紅中は流して読んでくれていいつもりで描いた場面なのだが全てを理解したい派の今日子は何回も何回も読み返して自力で理解しようとしていた。  どうもこの話が難しくて一度読んだだけでは分からなかったようだ。 ◆◇◆◇ 東京雀士物語 レッドドラゴン:著 1巻第三話『先生の麻雀』より  先生手牌 切り番 南3局②③③④④赤⑤⑤3466六七八  ここから1枚外してテンパイの手になった。ドラは2索 タンピ
last updateLast Updated : 2026-01-13
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その6 第伍話 一番の功績

53. 第伍話 一番の功績 ────── 「ただいま戻りましたー」 「どうだった、とんかつ。美味かったろう?」「もう絶品! なんですかあれ、庶民的な店なのにあの値段であの味はありえない!」「お姉ちゃんたちもそう思った? キョーコもそう思う。だからよくお兄ちゃんに連れてってもらってるの。2人きりで暮らすようになって外食が増えたから気付いたんだよ。あんなに近くにあるのに家族4人の時は行ったことなかったんだよね」「母さんが料理作るの好きだったからな。外食は本当に少なかった。それについて不満は1つも無いけどね」「でもあのとんかつ屋さんを見つけたのはお兄ちゃんの人生で一番の功績よね」「それは言い過ぎだろ。……と、じゃあそろそろやるか」  そう言うとサスガは押し入れからなんだか変わったテーブルを引っ張り出してきた。「これは……もしかして、座卓?」「そう、麻雀専用に作られた手積み座卓。最近ネットで安くなってたから購入したんだ」「本当に麻雀が好きなんですね。2人暮らしなのに麻雀専用座卓を買うだなんて」「好きだね。それにこれから大人になっていくにつれ必ず必要になると思う」「それはどういうことですか?」「おれは跡継ぎだからね。いずれ親父の会社にそれなりのポストで入るだろう『弐式㈱』って聞いたことかないか?」「弐式。……食品から家電。雀卓まで様々な業界で安くて最先端なものを提供してる『オーヤマ・アイリス』のライバルとも言われている大会社ですよね。あ、ニシキ! 錦野! あー、そうだったんですか!」「そう、雀卓。あまり知られてないけど『弐式』は麻雀用品からスタートした会社なんだ。だからさ、仕事でコミニケーションとして麻雀をする風習がある。いずれは接待麻雀をすることもあるだろうし
last updateLast Updated : 2026-01-14
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その6 第六話 麻雀は算数

54.第六話 麻雀は算数 麻雀を打ちながらサスガが色々と質問してきた。どうも接待麻雀に相当興味があるようだ。「プロとアマチュアの大きな違いとか、麻雀プロならここはすごい得意であるとかそう言う部分ってどんなのがあるの?」 これは一見簡単そうでありながらその実、回答が難しい質問である。 なぜなら麻雀はプロとアマチュアの力量差がいまいちはっきりしない競技だから。 これが例えば将棋だったらアマチュアがプロに勝つのは相当難しい。明確に実力の開きがある。しかし、麻雀はプロでもアマチュア相手に本気を出した上で負けることが普通にあるのだ。だからこそ面白いとも言えるが、それならプロってなんなんだ? というのがサスガの持った疑問なのである。「そうですね。複数の算数を正確に行うのがプロの得意なことじゃないですかね。例えば南3局自分が17700点持ちラス目だとして相手3人の持ち点は24100点 26000点 32200点だと仮定します。すると三着との点差は24100−17700=6400 二着との点差はそこに1900足すわけだから8300 トップとの点差はさらに6200足して14500。そうなると誰から何点をアガるといい? 残り局数2局に分けてアガるなら何点が妥当? と全員との点差を考えますよね」「まあ、考えるね(そんな考え方はしないけど)」「それを相手3人視点で全部計算するのがプロかもしれませんね」「「エッ!!」」「ひとつひとつは簡単な算数です。しかし問題数はすごい数になります。でも、これを全て把握しておくことが推理の大きなヒントとなるのでやらないわけにはいきません。何点を作る必要があるかを知ることで推理から安手が除外されたりしますから」「ほぇ……。チュンはそんなに正確に計算してんの……」「エッ、シロ子はやらないんですか?」「う、うん。恥ずかしながら」「それでよく接待麻雀をやれてますね。逆に尊敬します」「私は勘が鋭いほうだから……大学時代は心理学を専攻してたから心を読むのは得意だし。相手3人の息づかいや目線とか。会話の内容や声のトーンからも読んだりしてる」「まあ、接待麻雀プロなら心を読む能力は必要ですよね」「あとは想定をしてるのもプロの条件かと思うな。たったの34種類だもん。どの牌引いたらどうするかくらい全部ツモ番回ってくる前に思考しておいて鳴くもの
last updateLast Updated : 2026-01-15
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その6 第七話 麻雀家政婦たちの読み

55. 第七話 麻雀家政婦たちの読み 「ねっ、これ読んでみてよ。どんな思考なのか打ちながら話しちゃっていいから」 今日子捨て牌 ドラ北 親番西南一9①②3六西(リーチ) 「いやぁ、超能力ではないですからね。ズバリ1点読むとかは滅多に出来ないんですよ。でも、わかることはありますよ。例えば一萬がオタ風よりあとに捨てられたこと。そこからわかるのは一萬にはそこまで持つ価値があったということです。つまり、多分ですけど2巡目の時点で四萬は持っていないんです。一四西とあれば一から先に切り出していいですからね」「また、①→②の切り順から④⑤のターツがある可能性の高さが見えるし、最終手出しが安全牌の西である点からリーチの前巡や前前巡の牌の跨ぎも本命候補と見ていいわね。重複ターツを処理してメンゼンに固定したことからもタンヤオ未確定である。あるいはタンヤオにはなりえない手と予想出来る。ここまで中央寄りの牌を持っている場合タンヤオに行けるなら行く場合が多いはず。しかしどうもそうはせず、中張牌を処理してスマートにしたような切りをしてます。つまりタンヤオに行かない理由がある。それは頭がドラの北だからではないですか?」 「結論。本命③-⑥筒、対抗は六跨ぎと4-7索。穴が1-4索。雀頭北のメンピンドラドラではないでしょうか。でもね、私の手から③-⑥を切るのは不自然なんですよね②③④なんで。自然に差し込み可能なのは……これですね」 打1 しかし通る。 「不自然なのは差し込まないんだ?」「はい。接待麻雀はフリー打ちではなく仲間内の麻雀ですからね。突然『どんな手から放銃してんだよ〜』と覗かれる可能性もあります。言い訳のきく選択の中からしか差し込めないんですよ」「そんな高度な……!」 「ツモった」 
last updateLast Updated : 2026-01-16
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その6 第八話 アインシュタイン

56. 第八話 アインシュタイン 「あれ!? もうこんな時間なの?」  時計を見るともう夕方であと少しで家政婦たちの帰る時間であった。 「いやー、楽しい時間ほど過ぎるのが早いと言うけど麻雀はそれの最たるものだよね」「キョーコねー、世界の偉人たちの本で相対性理論のやつ読んだんだけどー。アインシュタインは絶対麻雀してる時に(ん? いつもと時間の経過が違くないか?)って思ったんだと思うの。アインシュタインだってびっくりするよこれは」「それは多分違うと思う。……が、確かに麻雀打ちなら時間の流れが一定とは限らないと感じる人は多いだろうな。とにかくまあ、今日は2人ともありがとう。また近いうち来てもらうからよろしく。次の日が決まり次第連絡をするので、本日はお疲れ様でした」「ん。サスガくんもキョーコちゃんもお疲れ様! シロ子のことをまた呼んでね」「もちろん、シロ子はおれの相互フレンドだからね。必ず来てもらうさ」「あっ、私は。私はどうでしょうか。私もまたお呼ばれされたいのですが……」「当然さ。また来てくださいね、チュンさん。漫画も続きが読みたいし! あ、1巻購入しますね」「ありがとうございます!」 ──────  数日後。 「ごめんください」「おー、チュンもきたのかー」「よっす」「えっ、今日は3人呼ばれたの?」  紅中が来てみると既にリュウハとシロ子が来ていた。 「大丈夫、金ならある」「いや、そうでしょうけど……まあ、それでも掃除は果てしないか……。よし、今日も頑張ります!」「やるぞー」
last updateLast Updated : 2026-01-17
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その6 第九話 ワイロ

57. 第九話 ワイロ カラカラカラ 「いらっしゃい! 何名様で?」「2名です」「はい! 2名様テーブル席ご案内!」  紅中と今日子は通り沿い窓際のテーブル席に案内された。 (あ、またこの席か)  紅中は前回と同じ席に案内された。 紅中のような美人は窓際に案内して外から見えるようにするのがいいということをここの大将はわかっているのかもしれない。だとしたらなかなかの経営手腕である。  紅中と今日子は2人ともロースかつ定食を注文した。刺身定食や牡蠣フライ定食も気になったが2人はもうとんかつの口になっていたので今さら違うものを注文する気にはなれなかった。 「ねえ、そもそも接待麻雀ってなんで必要なの」「それは、仕事を獲得するためですね。言い方は悪いけど『賄賂』のようなものです」「ワイロ? ワイロって?」「んー、お金を渡すことで『私と契約して下さい』と交渉することですね。つまりはお得クーポンとか、ポイントカードと同じです。同じ値段で2社ある場合お得クーポンやポイントカードのある方を取りますよね、そういうことなんです」「なーんだ。そんなの直接『うちで契約したらお金あげるよ』って言っちゃえばいいのに」「フフフ。ほんとそうですね。でも、そうもいかない事情が色々あるんですよ」「ふうん……。それで、なんでお兄ちゃんは接待麻雀に興味があるんだろ。そういうまどろっこしい事は嫌いな人なんだけどな」「多分、契約すべきでない人からの賄賂を受け取らないようにしたいんじゃないでしょうか」「つまり、お兄ちゃんは契約相手を選べる力を欲しいってこと?」「私には分かりませんが、おそらく」「でも、仮に接待麻雀によるワイロ受け渡しを拒もうとするとして、そ
last updateLast Updated : 2026-01-18
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その7 第一話 謝ることの習慣付け

58. ここまでのあらすじ  紅中の次なる依頼先は大富豪の錦野家。将来は会社の重役というポストを約束されている跡継ぎ息子のサスガは自分のすべきことを把握していた。いずれ自分もやることになるであろう『接待麻雀』を学びたい。と―― 紅中たちは今初めて『接待麻雀を教える』という任務についた。  【登場人物紹介】 紅中ほんちゅん  本名は真中紅子。チュンの愛称で親しまれる成績優秀な『アズマ』のスーパーエース。趣味は同人誌作りでプロ顔負けの漫画を描く実力者。ビジュアル的にもイイ女だが味音痴なのが玉にキズ。いつか同人誌フリマで壁サークルになるのが夢。  東あずま  本名は東正美。アズマの所長。口では厳しいことを言うがその実は面倒見が良くて母性に溢れた優しい女性である。  緑發りゅうは  本名は阿智山緑。アズマの給料泥棒。基本的に事務仕事専門。頭脳明晰で高学歴。身長144センチで高い所に届かない。しかも人見知り。家政婦をやるには少し向いてない女。麻雀は得意でどんなルールの麻雀も器用にこなす。  ミナミみなみ  本名は片岡南。アズマに所属している家政婦。成績はそこそこ優秀で紅中の次くらいに稼いでくる。紅中の成績にあやかって最近は長い髪をお団子にした。  シロ子しろこ  本名は白田雪子。アズマ所属の家政婦。出勤日数は少なめで実家暮らしの27歳。アズマに出勤してない時は本を読んだりSNSをしたりでゆっくりしてる。たまに紅中の同人誌作りも手
last updateLast Updated : 2026-01-19
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その7 第二話 麻雀指導係

59. 第二話 麻雀指導係  紅中と今日子が帰ってくると錦野家はランチにしていた。 「ただいま帰りました」「あっ、おかえりー。2人ともいつの間に消えてたのよ。てっきり家のどっかにいるもんだと思って5人前作っちゃったわよ」  錦野邸は大きすぎるので1人や2人見つからなくても家のどこかにいるんだろうと思ってしまうのは仕方ない。 「天ぷらそばだ! いいねぇ」と今日子は目を輝かせた。 「今日子おまえ、例のとんかつ屋に行ってきたんじゃないのか?」「そうだよ」「とんかつ食ったあとによく天ぷら見てその顔になれるな。さすがに今は入らねえだろ」「まだひとつくらい食べれるもん。ねえ、1個だけ食べていい?」「まったく……。んじゃコレ、うまいから食ってみろ。少し熱いから気をつけろよ」  そう言ってサスガは天つゆにつけた鶏肉のようなものの天ぷらを今日子のアーーンと開いている口に入れた。  サクッ 「はふ はふ あちっ。ンっ!? ナニコレうまっ! 柔らかウマー」「うまいよなそれ。信じられないけどこれスーパーで買った普通のサラダチキンなんだぜ」「ええっ!!!? だってすごく柔らかいよ?」「なー。不思議だよなー。じゅわっとしっとり柔らかくてうまいよな」   ※サラダチキンは天ぷらにするととても柔らかくなります。 ────── 「ごちそうさまでした」  サスガ、シロ子、リュウハの3人も昼食を終え、紅中は3人の食器をすかさず洗った。依頼人の
last updateLast Updated : 2026-01-20
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その7 第三話 崩す勇気

60. 第三話 崩す勇気  紅中は錦野兄妹の手牌が両方見える位置に座ることにした。2人とも手牌を見て欲しいというからそうしたのだが正直、同時に2人ともしっかり見るのはかなり大変である。だが、これも自分の成長に繋がると考えて紅中は「わかりました。やってみましょう」と引き受けた。 しかも2人の強い希望でかなり高度なレベルの指導をして欲しいということだったから小さな見落としもしてはならない。 (とは言ったものの。これは……ちょっと忙しいですね……) 「あの、確認なんですが。先日のように局途中で今行われていることに口出ししてよろしいんでしょうか」「ああ、それはもちろん。これは練習なんだから、その都度言ってもらってかまわない」「わかりました。それではさっそくですがサスガさんのその手。三萬チーして下さい」「えっ!?」 サスガ手牌一二三四伍六⑤⑦33(中中中) 「親であるシロ子の手牌が高そうだから役牌中のみで流そうとしたんですよね。それは間違ってません。このままアガリを狙うのも悪くないでしょう。しかし、この⑥筒待ちで本当に大丈夫そうですか?」  場にはピンズがパラパラと出ているのに⑥筒だけは出てこない嫌な空気であった。 「そ、それは……でも! テンパイはテンパイだよ」「私はそれをキープするよりはその三萬をペンチャンで鳴いてピンズを落としていき三四伍六の形を活かしたイーシャンテンに戻す方がアガリを作れると思います。少し勇気がいりますが、テンパイしてもアガリを作れなさそうだなと思ったら一度崩す勇気も必要なのが麻雀です」「うっ、じゃあ……チー」「ここでどちらを捨てますか? こういった選択ひとつひとつが麻雀です。絶対
last updateLast Updated : 2026-01-21
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