All Chapters of ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった: Chapter 91 - Chapter 100

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青年は新しい必殺技を編み出したけどちょっと欠点が大きすぎる3

 アシュレイもレイトも少しでも有効な魔法を見つけるべく様々な魔法を繰り出しているのだけどこれといった決め手にかけるようだ。  それ以上にゴーレム系モンスターとは思えない素早さと、空を飛べることによる攻撃レンジの広さによって、思うように魔法を発動させられないのが問題だった。  そのせいで防戦一方のソフィアが攻撃に転じられない。  ソフィアには地裂斬、岩破突という対ゴーレムに有効な武技があるのにその技を繰り出すことができずにいた。  レイトも魔法と剣戟を併せ持つトラッシュサイクロンという武技を持っているけれど、あの技は風魔法で剣を包み相手に突き込むと同時に旋風が体内で暴れるというもので、ゴーレム系のモンスターとは相性が悪い。(風魔法は有効そうなんだけどなぁ……) 確かにブラストカッターは確実にガーゴイルの体に傷をつけている。  けれど、破壊力があるという感じでもない。「バーサークラッシュ!」 戦線にヴァネッサが戻ってきた。  それも初っ端から必殺技でだ。 派手だね。 しかも後ろからの不意打ちときた。  ヴァネッサのラッシュによって羽がズタズタになり、ガーゴイルがのけぞる。  ゴーレム系のモンスターのくせに。  おかげで防戦一方だったソフィアに反撃のチャンスが訪れた。「地裂斬!」 ガーゴイルの左手首が切り落とされる。「チッ」 もっとも、ソフィアは腕を狙っていたようだがね。(なるほど!) 何かを閃いたレイトはアシュレイに顔を近づける。 なに赤くなってんの? アシュレイ。「マイクロウェーブって魔法あったよね?」「どうするつもり?」「説明すると長くなりそうだから後でするよ。使い方教えて」 そう言われたアシュレイは頬を赤らめたまま後ろからレイトの手を取る。(鎧が邪魔だなぁ……) この非常時になに邪なこと考えてんだ、おい
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青年は槍に漢のロマンを感じ、軍師ばりの策を弄する1

 村はずれを開拓していた元冒険者家族と鍛冶屋の親父の証言を受けて、レイトたち冒険者は村を守った英雄として報奨を受け取った。  大きいとはいえそこは村、多額のお金があるわけもないし、むしろ彼らにとってはお金より旅を続けるための食料などの方がありがたかったので現物支給にしてもらう。「助かったな」 ヴァネッサが面倒くさい買い出しもしなくてすんだと馬車の中でホクホク顔だ。「しかし、困ったな」 と浮かない顔をしているのはむしろソフィアの方だった。  本当ならレイトがする表情だぞ。「この先には王国の国境砦しかないが、そこでレイトの武器が調達できるだろうか?」「なるようになるだろ」「ヴァネッサは本当に楽天家だな。羨ましいよ」「レイトさんは魔法剣士ですし、最悪武器がなくても戦えますし」 と、慰めにもならないフォローをするのはビルヒー。  それにアシュレイが反論する。「白兵戦力が二人というのは心許ないよ。ヴァネッサとビルヒーが別行動したガーゴイル戦で実感したんだから」「いやいや、鍛冶屋の親父の好意で五本も剣をもらったんだし、大丈夫じゃないかな?」「国宝級の剣であの始末なんだぞ。この先そんな鈍何本あっても足りない気しかしない」「逆にあんたは心配性なんだよ、ソフィア」 しかし、ソフィアの心配は現実になる。  砦に着くまでにもらった五本の剣をすべて使い潰してしまい、レイトの手には王都を出るときに予備として持ってきた「鋭利な鉄の剣」一本しか残っていなかった。「そりゃあ、災難だったな」 砦の隊長はこともなげにいう。「ここならもっとマシな剣を提供できる。それに、ここから先はゴーレム系はあまり出てこないだろう」「もっとも、出会うモンスターはゴーレムよりやばい敵ばかりですけどね」 副官として隊長のそばに侍っている男装の麗人が怖いことを言うので、ビルヒーの背筋にもぞもぞとなにかが這い上がってくる感覚が走る。「どんなモンスターがい
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青年は槍に漢のロマンを感じ、軍師ばりの策を弄する2

「武器は鍛冶場に行って好きなやつを選んでいいぞ」 と言われたので、レイトはソフィアとヴァネッサと連れ立って鍛冶場に足を運ぶ。  蒸し蒸しとする熱気の中、何人もの鍛冶師が槌を振るっていた。  壁には打ち上がったばかりの武器がなかなか無造作に並んでいる。  鍛冶場の奥には斧や槍などに仕上げる工房が併設しているようだ。「こんなに武器にバリエーション作ってどうすんだろ?」 素朴なレイトの疑問に斧柄を取り付けていた男が耳ざとく答えてくれた。「そりゃあお前、それぞれ得意な得物ってのがあるだろう。お前さんだって剣が得意なんじゃねぇのか?」 たしかに「得意な武器は?」と聞かれれば、使い慣れた剣だと答えるだろう。  けど、日本でオタクをやっていたレイトとしては、大規模戦闘は槍で統一した方が有利なのを知っている。  地球では、世の東西を問わず銃による近代戦以前の主力兵装は弓と槍と相場が決まっていた。  ファンタジーものではなぜかみんな剣で戦ってるけどね。  てなわけで、レイトは文献知識による槍の有用性を信じて自分の身長の二割り増しほどの長さにしてもらった槍を使うことにした。  新しく手に入れたものは使いたくなるのが人情ってもんだ。  レイトは訓練場に移動してソフィア相手に槍を試してみることにする。  不慣れな武器ながらその倍以上のリーチで互角以上に戦うことができたことに満足して、隊長のところに戻ってくると、「どうした? 騎士にあるまじき表情だぞ?」 と、隊長にからかわれるソフィアであった。「人のことは言えないでしょう」 と返された隊長は眉間の皺を深くしてガシガシと頭をかく。  フケ、飛んでますけど?  風呂、入ってますか?「斥候からの報告がな、かんばしくないんだ」「どう言うことですか?」「いつもより数が多くて種類も多い」 副官の補足によると、いつもならゴブリンやオークが百から百五十体で襲ってくるらしい。  砦の兵士は常時二百人は戦場に出られる程度に
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青年は槍に漢のロマンを感じ、軍師ばりの策を弄する3

「つまり、この砦の向こうは『魔の領域』ではなく『魔王領』になったってことなんだな?」「こんなに早く魔王がモンスターを掌握できるなんて想定外だけど、遅かれ早かれ魔王軍が攻めてくるだろうってのは判っていたことさ」(シナリオ的に言ってもね) ゲーム思考から離れなさい、レイト。  でも、そういう風に割り切って考えた方が冷静でいられるかもしれないね。「副官、今日は見張り以外全兵に休息を命じて明日に備えるよう……おっと、一小隊割いて王都に向かわせてくれ。増援部隊を要請しておこう」「かしこまりました」 副官がカツカツと軍靴の音を響かせて出て行く。「君らもできるのならゆっくり休むがいい。明日は頼りにしているぞ」 なんて言われてぐっすり寝られるやつなんてよっぽど肝の据わった……って、ぐっすり寝たなぁヴァネッサとレイト。  もっとも、レイトの方はこの世界に来てからの仕様で「寝る」と一瞬にしてすっきり爽やかな朝を迎えてしまうからなんだけど。  装備を整えて砦の城壁に登ると、そこにはすでに隊長と副官がいた。「よう! ぐっすり眠れたか?」「おかげさまで」 と、答えたのはレイト。「勇者様はさすがだね」 そんな軽口を受け流して、彼は砦の外に視線を向ける。  防衛しやすいように障害物を綺麗に排除した下りの丘陵地帯の先に魔王軍が見える。  下を見ると日本のお濠より幅も深さも倍はある空壕が掘られている。(巨人系モンスターにはこれでも心許ない気はするな)「作戦は?」 武者震いなのかさっきからふるふると震えているソフィアが上ずる声で聞く。「いつもならうってでるんだけどな。正直どうすりゃいいか迷ってる」 副官が補足するには人間相手と勝手が違うのでいつもなら籠城戦は取らないのだという。「オークはともかくオーガたちには並の矢じゃ効かねぇんだよ」 なるほどとレイトも納得する。「攻撃魔法が使えるやつ
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青年が仮に一騎当千の兵だとしても実際千人相手にできるわけもなく1

 ファイヤーウォールで敵軍勢を分断するというレイトの戦術は図に当たったわけだけど、根本の戦力差を埋めきれたわけじゃあなかった。  予備兵力まですべて駆り出し打って出た歩兵はしかし、ファイヤーウォールの持続時間が切れるまでに前衛を倒し切ることができなかったため戦略的撤退を余儀なくされ、門を閉ざしての防戦になる。  映画ランボーもびっくりのグロ描写が目の前に繰り広げられるのでレイトのSAN値がゴリゴリと削られていく。  あ、いや、そんなパラメーターがあるわけじゃないよ。  比喩だよ、比喩。  もちろん、防衛部隊は必死に戦っているし、レイトやアシュレイは攻撃魔法で応戦する。  ビルヒーだって回復魔法で負傷兵の手当てをしていたけれど、戦況は悪くなるばかりだ。「まずいぞ」 一度壁の上の前線に出たソフィアとヴァネッサが血みどろになって帰ってくるなりそう漏らした。  状況は逼迫している。  今日は何とかしのげても明日はどうか判らない。  それが二人の見立てだった。  砦にこもってからの隊長の指示は非常に明確で、飛び道具は徹底的にオークを狙い大型のモンスターは無理に倒そうとするなと言明していた。  ソフィアたちは試しにオーガ、サイクロプス、トロールと一体ずつ倒してみたが、二人がかりでも相当骨が折れるといっている。(っつーか、お前ら相当強いだろ? 砦の兵なんて四、五人で囲んでいても誰か一人は大怪我してるようにみえたぞ) そのとーりっ!  一見、一進一退にみえた攻防は日暮とともに終了した。「状況は?」 隊長と共に戦況報告を聞く冒険者たち。「まずは敵へのダメージですが、確認できた範囲でオーク49体、オーガ九体、サイクロプス13体、トロール八体を倒しました」(少なっ) そういうなよ、レイト。「味方の戦死者88名。現在、魔法による治療を施しているものの明日の戦線復帰が難しい者が62名にのぼると思われます」「損耗率26%か……」(うはぁ、近代戦なら撤退を考えるレベルだ)
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青年が仮に一騎当千の兵だとしても実際千人相手にできるわけもなく2

「それは状況としてはどんな具合なんだい?」 基本、個人戦しか知らないヴァネッサが訊ねると、「俺の経験上、兵の損耗率が50%を超えると守備に穴が開く。すると逃げ出す兵も出てくるから戦いにならんな」「今日と同程度の損耗率だとすれば50%を超える危険があるのではないか?」 他人事のようにいうあたりソフィアも大規模戦闘は初めてらしい。「あるのではないか? ではない、彼我の損耗率を考えるとなにか手を打たにゃ確実に崩壊するぞ」 とはいえできることなんて限られている。「お、俺たちも明日は本格的に戦おう」「いや、お前たちはこれから闇に紛れて魔王領へ向かえ」「なに!?」「お前たちの使命はこの砦を守ることじゃなかろう? お前たちはお前たちの使命をまっとうしろ」「でも……」「気にするな。俺たちは砦を守るのが使命だ。それぞれがそれぞれの使命を全力で遂行する。それだけだよ」 気負いもない穏やかな口調は覚悟の決まった男のものだ。  かっこいいね。「心配するな、いつものことだ。隊長はいつも我々の大半を死地から救ってくれた」 副官もそういって冒険者の旅立ちを後押ししてくる。  イカすなぁ、男装の麗人。  夜陰に紛れて出発するため馬車を置いていかなければいけなくなった彼らに「餞別だ。これを持っていけ」 と、隊長に渡されたのは冒険者垂涎の超便利アイテム次元袋+10と隠匿の天幕だった。  背負い袋になっているそれは、袋の口から入れられるサイズならば見た目の十倍も入る優れもの。  しかも入れたものの重さがほとんど感じられない。  レイトなんか本当に入っているのかと何度も覗いて確認したほどだ。  冒険セットのほとんどをその背負い袋にしまった冒険者たちは隊長と副長と固い握手を交わして王国側の門を出る。  少し遠回りになるのは仕方ないのだけれど、拓けた街道をそれて森の中へ入
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青年が仮に一騎当千の兵だとしても実際千人相手にできるわけもなく3

「朝?」 お、気づいちゃったね。  そう、なぜか爽やかな朝だった。  昼を少し過ぎたくらいに寝たのに目覚めたのは翌日の朝、他の四人も一度も起きることなくレイトと共にグッドモーニングとなったようだ。(こんな仕様だから微妙に現実味がないんだよなぁ) いいじゃないか、ボヤくなよ。  テントを片付けて携帯食をかじりながら林の中を北へと進む冒険者たち。  魔王領は確かに砦の人たちが言っていたように手強いモンスターが多かった。  死を連れてくるという黒い犬ヘルハウンドは素早くなかなか攻撃を与えられなかったし、ヒュージグリズリーはデカくて硬くてこちらのダメージがなかなか通らないのにベアナックルの一撃がしんどいほど重いとか反則級の強さを持っている。  下半身が蜘蛛や馬のモンスターもやっかいだ。  なんせ人並みの知能があるのに好戦的で野蛮なんだから。  アンデッドはより醜悪で単なるアンデッドより知能のある食屍鬼や吸血鬼が現れる。  吸血鬼なんて魔法か魔法の武器じゃないとダメージが与えられないんだから困ったものだ。  そんな体力も精神力も魔力も生命力もギリギリの中、彼らはひたすらに魔王のいるだろう城を目指す。  もちろん、「魔王」っていうくらいだから城にいるに違いない……という考えなだけであって、それがどこにあるのかなんて前人未到の魔王領を進む人の身では判ろうはずがないのだからいかに無謀な冒険なのかが判る。  しかも、出会う敵出会う敵片っ端から倒していればさすがに魔王側にも彼らの情報がもたらされているとみなければいけないわけで、いつ組織的な敵に襲われるかと日毎に警戒レベルを上げなきゃいけない。  魔王領に入って十日以上経ったある日、ついにその時は来てしまった。  明らかに組織的な武装集団が近づいていた。  彼らにとって幸運だったのは、最初に敵を発見したのがヴァネッサだったことだ。  やり過ごせるならそれに越したことはなかったのだけれど、世の中そんなうまくはいかないらしく、ついに彼らは敵に発見されてしまう。  相手は魔族らしい十人以上の武装集団だ。
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青年のゲーム思考は王道展開を的中させる1

 亀裂の先は深い洞窟になっていた。  自然の裂け目はやがて下へ下へとくだっていく。  十分もくだると洞窟内が湿ってきて、三十分を過ぎた頃には鍾乳洞に変わった。鍾乳洞になると浸食作用で空間が広がる。  人一人がやっと通れるほどだった入口と違ってこの辺りは「戦闘もできそうな空間だな」 お、おいヴァネッサ、それはなんていうか……「フラグだな」 レイトの直感どおり、彼らの前に現れたのは巨大なコウモリだった。  体は黒く翼は血のように赤い。  剥き出しの牙は一本一本がレイトの親指くらいもありそうだ。「オリティアウ!」 さすがは大賢者バガナスの弟子アシュレイ、博識ですこと。  レイトがコウモリと戦うのは久しぶりだった。  あれはまだ16bitパソコンの3Dダンジョンみたいな視覚だった頃のことだ。  まだ数週間前のことなのに遠い昔のことのようだと感慨に浸りたいところだったが、オリティアウとの戦いはそんなレイトを嘲笑うかのような強さだった。  いや、本来のコウモリはこうだったのかもしれない。  どうやら反響定位を利用しているようで、物理攻撃が全くと言っていいほど当たらない。(コマンド選択だった頃はそこそこ当てられたのにっ!) そんなこと言ってもねぇ。  ソフィアもヴァネッサもまったくと言っていいほど攻撃を当てることができなかった。  翼を広げると3mはあろうかという巨体だと言うのになんたる機動力!「俺も反響定位能力欲しくなるなぁ」 なんて軽口いってみても始まらない。  結局、アシュレイのミサイルとレイトの範囲攻撃魔法フレイムウェーブを連発することでなんとか倒すことができた。  できたわけだが、結果として魔力が尽きてしまった。「私、もう魔法使えないわ」「俺も魔力が残ってない」「体力的にもここらで休憩した方がいいな」 ソフィアの提案で冒険者は野営の準備をすることにした。
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青年のゲーム思考は王道展開を的中させる2

「交代で仮眠を取ろう」 言い出しっぺのソフィアとビルヒーが最初に見張りを担当し、次いでヴァネッサとアシュレイ、最後にレイトが見張りに立つと取り決めて毛布にくるまる。  いつものように一瞬で睡眠を終えたレイトは形ばかりアシュレイに揺り起こされた。「あ、もう交代か」 すごく実感こもってるよね、レイト。  こんな洞窟内でそんなに頻繁に接敵するわけもなく、冒険者はふたたび奥へ奥へと探検を続ける。  やがて低い音が聞こえてきた。「出口が近いのでしょうか?」「下へ下へと降りてきたのに出口かい? そりゃないんじゃないかね?」「確かにそうね。定期的に音が止むみたいだし、一体なんの音かしら」「規則正しく音が止むな。……どうした?」 ソフィアの発言で音の正体に思い当たってしまうレイトの作った表情が、並んで歩くソフィアの視界の端に止まったようだ。「あー……音の正体に見当がついたというか、なんというか……」「すごいじゃないか! で、音の正体ってなんなんだ?」「呼吸音だと思う」「呼吸音?」「この音が呼吸音だとしたら、相当大きな生き物ってことになりますよ?」「なるだろうね」「じゃあ、この漂ってくる生臭い臭いは口臭なの!?」 途端に顔をしかめるアシュレイ。  しかめっ面さえ可愛いかよ。  するいぞハーフエルフ。  一緒に鼻をつまむビルヒーもめんこいな。「ただ呼吸しているだけでこれかい? いびきであって欲しいね」 レイトはヴァネッサに意見の賛成したいと思った。「この先になにかがいると言うのならこの先慎重に進まなければいけないな」 先に進むと言う選択以外にないのか、ソフィアよ。  レイトを見てみろ。  全身から行きたくない感を出してるぞ。  きっとあれだな、音の正体どころかどんなヤツが出している音なのかも見当つけているんだろう。「明かりはどうしましょう?」 真
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青年のゲーム思考は王道展開を的中させる3

 真相は判らないものの洞窟の中での接敵はこれまでオリティアウとの遭遇一度だけだった。  しかし今、この先に間違いなくなにかがいると気づいたからには何か対策を立てた方がいいのはビルヒーに言われなくてもみんな理解できていただろう。「冒険道具の中にカンテラがあったはずだから、カンテラの中に光源を移そう」 冒険者用のカンテラにはシャッターがついているので光量の調節や拡散範囲の調整ができるのだ。  しかも、光源が魔法の灯りだとなればどんなに傾けても油が漏れるなどの事故は起きない。  明かりをカンテラに仕舞い込んでシャッターで足元だけを照らせるように調整すると、冒険者たちはより一層慎重に洞窟内を進む。  最初はかすかだった呼吸音と思われる規則正しい音は、やがて耳をつんざくほどの轟音になる。(もうこれ間違いないでしょ) 暗闇の先が仄かに明かるく見えてくる。  道の先はどうやらさらに広い空間になっているようだ。  視界が開けていくと道の先が判るようになってくる。  淡く光っているのは光苔の類か?  無造作に積まれているのは財宝といいえる品々だ。  貴金属や道具など、見るからに素晴らしい品々だとレイトでさえ判る。  そのうずたかく積まれた文字通りの宝の山に寝そべっているのがこの轟音を立てている主。(ああ、やっぱり……)「こ、こいつは……」「ド、」「よくきた人間よ」(しゃべった。いや、ドラゴンがしゃべれるなんてRPGではある種の常識だけど、寝てもいなかった)「なにをしに来た」 みんなが怖気づいて一歩後退りしかけたところで、ヴァネッサが声を張る。「魔族から逃げてきただけさ。ここを通してもらえりゃそれでいいんだ」 さすがにレイトと共に一度ドラゴンと戦っただけのことがある。  大した胆力だ。「ほぅ、通してほしい、か」 ドラゴンはまるで鼻で笑うようなニュアンスでつぶやくと、のっそりと立ち上がった。「ここを通りたければ
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