Semua Bab ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった: Bab 71 - Bab 80

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青年はイベントモード突入で指を加えて見ているしかない1

 謁見の間にはクリスティーン王女の帰還の知らせを受けたお歴々が左右に居並んでいた。 古めかしいながらも行き届いた清掃と、大きく開口された窓から差し込む光できらびやかにさえ感じる。 数段高くなった王座まで赤絨毯が伸びている。 セドリックとソフィアに先導されてレイトとヴァネッサが赤い道を進む。 王座にはまだ距離があるところで先に待っていたクリスに並ぶように止められ、片膝をついて控えているようにと言われてその通りにすると、ファンファーレが鳴り、王座に誰かが座った気配がした。 まぁ、王座に座るのは王様と相場が決まっているけどな。「面をあげよ」 と、壇上から声がかかる。 見上げると、王座にはひげもしゃもしゃの初老の男が座っている。 遠くはあったが、目元がクリスティーンによく似ているので(ああ、王様) と判った。 ──って、レイト、不敬だよ、それ。 王座の後ろにはドレスで着飾ったクリスティーンが控えている。 たぶん、レイトが初めて見た時もこんな格好だったんだろうね。 あの時レイトの目には32×32ドットキャラに見えていたんだけど。 階下にはセドリック。 宰相とかそんな地位にいる人だったんだね。 直々に呼びにきたけどね。 セドリックが王女クリスティーンが王国にとっていかに大事な存在か、そのクリスティーンがウィザードにさらわれたことでどれほどの騒動になったのか、彼女を助け出し王都へ連れ戻してくれたことを王家をはじめとした臣民がいかに嬉しくありがたいことと感じているのかをとうとうと語る。 長い、長すぎる。 じいさん校長の朝礼挨拶かってくらいの長さだ。 その苦痛を必死な無表情でやり過ごしたレイトたちに国王が直々に声をかけてくれた。「クリス。レイト。ヴァネッサ。こたびの一件王として、また一人の父親として感謝する」「もったいなきお言葉。このクリス・パーク王家の剣として今後、よりいっそうの忠心を持って職務を果たして参る所存で
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青年はイベントモード突入で指を加えて見ているしかない2

「誰だ!」 立ち上がり、辺りを見回しながらクリスが声を張る。 居並ぶ重臣の中でいち早く事態に対処しようと行動する辺り、さすがは歴戦の戦士にしてクリスティーン奪還作戦のメンバーに選ばれただけのことはある。「これは失礼、まず挨拶するのが人間の風習だったか」 その言葉とともに謁見の間の中央に黒い靄が集まってきたかと思うと漆黒の衣を纏った異形の存在が現れた。 うん、厨二表現バリバリだ。 いや、この際だからこのまま行こう。 ギョロリと剥いた目は爛々と輝くが如く、耳まで裂けた口から覗く舌は蛇蝎のようにチロチロと垂れ下がり鋸のように並ぶ歯は一本一本が鋭い牙のよう。 耳は尖って横に伸び、その上には悍しく捻くれた角が生えている。 縮れた髪は黒い焔を連想させ、背中には蝙蝠の翼が生えていた。 …………。 うん、どっからどう見てもある意味典型的な悪魔か魔王だ。 レイトがそんな感想を思い浮かべていると、その異形はひときわ低い声でその場の全員を威嚇するように「挨拶」を始めた。「我が名はラグアダル、新しき魔王。我が覇道、世界を手中に入れるためこの国をもらい受けに来た」 おびえて、王の後ろに隠れるクリスティーンと魔王を名乗ったラグアダルの間に入ったクリスが叫ぶ。「そうはさせるか!」(あ、イベント?) 魔王出現で一度飛び退き、重臣の列に紛れていたレイトだったが、自分も戦おうかと思ってみたけど体が意思に反して動かないことを瞬時にそう解釈したレイトは、成り行きに任せることにして傍観者を決め込む。 いいのか? それで。 少しは運命に抗って見せろよ! 主人公がイベント視聴モードに突入したので仕方ない。 クリスは勇敢にも魔王を名乗った異形の存在に果敢に切り込んでいく。 それに触発されたのか、居並ぶ重臣たちも命を顧みず
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青年はイベントモード突入で指を加えて見ているしかない3

「このままでは……」 そう呟いたクリスは剣を構えて瞑想に入る。  重臣たちがクリスの剣技発動までの時間稼ぎに魔王に挑んでいく。「奥義 真空裂破斬!」 リアルな視界でみるその奥義は空気が大きく歪んだ半弧を描き、魔王目掛けて飛んでいく。  名前の通りに真空を生み出しているんだろう。  それが視認できるほどのレベルだと言うのだから奥義の名にふさわしい。「ぬうっ!」 魔王は左腕をブンと音がなるほど大きく振り下ろし、クリスの奥義に対抗する。  真空の刃と高圧の空気の塊が激突してその場にいた全員の耳を圧する硬質な音がした。「……人の技も極まれば恐ろしいものだな」 と、うなっているが、片腕一本でそれを防いで見せた魔王こそ恐ろしい。  もちろん魔王といえど無傷ではない。「本来こんな場所で使う技ではなかろうに」 魔王の言う通りだ。  下手をするとフレンドリーファイアになりかねない。  というか、謁見の間は尋常じゃない被害を被っているし、相討ちの余波で怪我を負ったものも多い。「狭い場所には狭い場所に適した戦い方がある」 と、独り言なのかクリスに向けた言葉なのか判りかねる発言をしたかと思えば右手の三本の指を開いて前に突き出す。  とがった爪がみるみる伸びて三本のうち二本がクリスを鎧ごと貫いた。  クリスティーンの悲鳴が響き、クリスの口から鮮血が吹き上がる。  悲鳴の先に王女を見た魔王は「光の巫女」 と呟くとゆっくり彼女に近づいていく。(あ……) ここにいたってさすがに傍観者ではいられないレイトだったのだけれど、想いに反して体が動いてくれない。(動け、動けよ! さすがにダメだろ。イベントだとしても!) 焦るレイトを一顧だにせずクリスティーンに近づく魔王。  娘を守ろうと錫杖を構えて立ちはだかる国王。  左腕はズタズタで右手には爪で刺し貫いたクリス。  魔王は無造作にクリスごと右腕を振るい王
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青年はイベントモード突入で指を加えて見ているしかない4

「お兄様!」 ソフィアはかろうじてそう叫ぶ。 魔王は空いた右手でクリスのようにクリスティーンを刺し貫こうとした。 しかし、魔王の爪牙は不可視の障壁に防がれる。「ぬぅ、やはり光の巫女か」 いまいましそうに呟くと、王女をその大きな手のひらにつかみ取る。 魔王の力と光の巫女の力が干渉しているのだろう、魔王の右手は左手同様体表が裂けて血を吹き出す。「クリスティーン!」 ようやくイベントモードの呪縛から解放されたレイトは、鞘から抜いた剣で力の限り魔王の右腕に斬りかかる。 しかし、その一撃は彼の力不足か、剣の性能か、前腕に深く斬り込まれはしたもののそこで刀身が折れてしまったのだ。「ぐぅ……この力……!? 貴様、光の巫女の守護者か」 魔王は動かない左腕を腰をひねることで振り回してレイトを振り払うと、障壁に阻まれて握り潰すことのできないクリスティーンを掴んだままで広間の窓から飛び出していく。「レイトーッ!」「クリスティーン!!」 互いに伸ばした手はしかし、あと数センチ届かない。 飛び去る魔王の後ろ姿を唇を噛み締めて見送るしかなかったレイト。 何もできずに震えていたクリスの妹、騎士ソフィア。 同じく、王を身を挺して助けることしかできなかったヴァネッサ。 そして、一瞬にして重臣の大半を失ってしまった国王。 果たして彼らは魔王を倒し、光の巫女クリスティーンを助け出すことができるのか? 続く。 …………。 なんじゃこの番組ナレーションみたいなヒキは?
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青年は勇者としてお姫様を助けに行くことになる1

 野戦病院と化した謁見の間に沈痛な空気が満たされている。 せっかくウィザードの魔の手から奪還したクリスティーンを今度は魔王に奪われてしまったのだ。 しかもその際、国を支える多くの重臣と奪還の功労者であり王国でもトップクラスの騎士を一人失った。 事態を重くみた国王は国民の動揺を最小限に抑えるために箝口令を敷き、ごく少数のクレリックを謁見の間に入れて怪我人の治療をしている。 いずれことは露見する。 それは避けられない。 こちらでどんなに厳重に情報統制していても、多くの重臣が魔王に殺されている。 これを無かったことにはできないし、魔王が世界を征服すると宣言しにきたのだから、遅かれ早かれ重大な事態が出来するのは火を見るよりも明らかってやつだ。 国王としては少なくとも事態を打開する希望を見出したい。 セドリックが応急で整えた謁見の間で、緊急の御前会議が開かれる。 会議に参加しているのは王と十に満たない重臣と、現場に居合わせていたレイト、ヴァネッサ、そしてクリスの妹ソフィアの三人。 悲痛な面持ちの国王が重臣を見回す。 残っているのは文官ばかり。 臆病で生き残ったんじゃない。 武官が勇敢に戦って死んでいったからだ。 特にクリスが剣技を発動するまでの時間を稼ぐために、ただそれだけに多くの武官が魔王に挑んでいった結果だ。 無駄死にか? そんなことはない。 それがあったからこそ魔王は手傷を負い、撤退したのだから。「まず、何から手をつけるべきと思うか?」 やること、やらなければいけないことはとても多い。 やらなければいけないことであってもすぐすぐできるものとできないものがあるだろう。 王は決して凡愚ではないようだ。(まずはブレインストーミングが必要だと判断したんだな) と、レイトは思う。 おおよそ出たのは戦死した重臣達の代わりを選出することと、魔王に対抗するための軍事力の増強案だった。
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青年は勇者としてお姫様を助けに行くことになる2

「誰が良いかは後で決める。他にはないか?」 議論が誰をポストにつけるかという枝葉の議論に向かいかけたのをセドリックが軌道修正する。  そうして適度にコントロールされた話し合いは粛々と進んだのだけれど、誰も触れようとしていない議題が一つあった。(一番大事なことだろうに) レイトはなぜ居並ぶ重臣達がそこに触れないのかと訝しむ。(これはあれか? 俺待ちか?) ゲーム的な思考でそこに至ったレイトより少し早く、ヴァネッサがその件に言及する。「クリスティーンはどうすんのさ?」 重い沈黙が謁見の間を支配する。(やっぱ、そうだよなぁ。ここで俺が手を上げなきゃ物語が進まないんだろうなぁ……) なんて思いながら辺りを見回すレイトはずっと下を向いて両拳をプルプルと握りしめているソフィアに気がついた。(…………) そんなソフィアを見ていて、レイトはもう少し様子を見てみる気になった。  なんとなくまだ自分のターンじゃない気がしたのだ。  案の定、彼女はキッとまなじりをあげて発言を求めた。「国王陛下」「発言を許す」 王と目くばせをしたセドリックが取り次ぐ。  ここらあたりは厳格に身分差があるらしい。  ヴァネッサはお構いなしだったけどね。「その使命、私にお命じいただけないでしょうか?」 漫画やラノベなら「その役、私にお命じください」とかいうところだよなぁ……と、レイトがぼんやり思いながら成り行きを見守る。  ソフィアの心持ちはそんな意気込みだっただろうさ。  けど、彼女には実績がない。  実力を認められたこともない。  悲しいかな女騎士はこの世界では一格も二格も下に見られていた。
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青年は勇者としてお姫様を助けに行くことになる3

 騎士の家系で父や兄に憧れて自らも騎士を志し、涙ぐましい努力で正騎士に叙勲されたまではともかく、そこから先も準騎士と同じ扱いで任務にあたり、式典などで見栄えと「女騎士も平等に扱ってますよ」というポーズのために華やかな場所に並ぶことだけを与えられてきた。 きっと彼女より弱いに違いない生き残った重臣達さえ眉をひそめてソフィアを見る。 これも仕方ない。 魔王襲来の際、彼女は震えているしかできなかった。 兄の仇は討ちたい。 騎士として重要な任務に就きたい。 王の剣としての職務を全うした兄のようになりたい。 今の彼女を突き動かしているのはそんな感情だった。 レイトにもそんな感情は透けて見えていた。(あー、なるほど。こういうイベントなのね)「その旅、私がお供いたしましょう」 ここにいたってようやくレイトが声を上げた。 重臣達がざわめくのを片手を上げて鎮めた王は真っ直ぐレイトを見つめている。「そなた、魔王に『光の巫女の守護者』と呼ばれていたな」(あれ? そうだっけ?)「この者、兄クリスによれば兄に会うまでに姫をウィザードから救い出し、姫を護りながら地下迷宮を攻略した勇者だそうです」 ソフィアが、身分も弁えず国王に直言する。「勇者……」 ふたたび重臣達がざわめく。「レイトよ、それはまことか?」 こちらも王の直言だ。「クリスが勇者と呼んだのは大袈裟ですが、ウィザードから姫を救い出し、地下迷宮を攻略したというのは本当です」 自慢がしたいわけじゃない。 こうでも言わなきゃ話が進まないと思ったからだ。「そういや、クリスティーンが救世主がどうのこうの言ってなかったかい?」 とヴァネッサが援護射撃をする。「救世主じゃと!?」「ああ、言ってましたね」 「言ってましたね」……じゃないでしょ!
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青年は勇者としてお姫様を助けに行くことになる4

「女騎士ソフィアよ」「はっ」「この緊急の事態に一人でも多くの騎士が王国には必要じゃ。本来ならばしかるべき騎士に命じる使命なれど、兄に代わって末姫クリスティーン救出を下命する」「ありがたき幸せ。我が身命を賭しても必ずや姫をお救いして参ります」(死んじゃったら助けられないでしょうに) と、心の中でつぶやくレイトであった。「レイト、ヴァネッサ。本来であれば関係ないそなたらを巻き込むのは筋違いではあるが、未熟な我が臣下とともにいってはくれまいか?」「目の前でさらわれたのですから、関係ないことはありません」「クリスティーンはあたい達の大事な仲間だからね。きっと奪い返してきてあげるさね」「魔王が攻めてくることが確実なご時世、多くは施してあげられぬが旅の支度はこちらで用意しよう」 セドリックが言うので三人は遠慮なく王城を歩き回って武器や防具などを手に入れる。(いやいや、城を歩き回って装備を漁るとか、どこの和製RPGですか) いいじゃん、お墨付きなんだから。 と言うことで、クリスに没収され宝物殿に収められかけたダンジョンの戦利品他、あさりにあさってこうなった。●レイト 鋭利な鋼鉄の剣 鋼の鎧+3 鋼鉄の盾+1 鋼鉄の兜 耐火マント 大きな背負いカバン 力の宝石 知恵の宝石 守りの宝石 加護の十字架 HPポーション7 MPポーション5 解毒薬7 金貨3,107GP 宝石7 鋭利な鉄の剣●ヴァネッサ アマゾネスの大剣+2 アマゾネスの胸当て+1 耐火マント 質素なかつぎ袋 HPポーション9 MPポーション2 金貨6,877GP●ソフィア 鋼の騎士の剣+1 騎士の鎧 騎士の盾(クリスの形見) 騎士の
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最後のシステムアップデート

 王城を出ると、景色が非常に鮮明になった。(これはあれだ) もう、ゲーム的な視覚ではない。 眼前に拡がるすべてがリアルであり、遠くの景色もどこまでも続いている。 街の喧騒も事前に録音されたいかにもな同じものが繰り返されるようなガヤ感は微塵もなく、ただただ純粋に城下に生きる生活者の日常であり、一人一人の生の声。 耳をすませば誰が何を言っているかまではっきり判る。 触れる感触も一様ではない。 今までのようにモノを握った、手を離したという単純なフィードバックではなく金属ならその硬さや冷たさ、生地の質感や肌触りまで感じ取れる。 においもそうだ。 もちろん現代人であるレイトには文明の遅れからくる不衛生なさまざまな刺激臭は感じるが、それだけじゃなく花の香りや人いきれなども感じられて懐かしい感じまでする。(あ、そういえばこの世界に来て体洗った記憶ねーな) と、自分の体臭を嗅いでしまったほどである。 一度気になってしまうともう無視もできない。「なあ、体洗いたいんだけど」 と要望を伝えると、「そういうのは城から出る前に行ってくれ」 ソフィアが呆れた視線をレイトに向けながらいう。(だってしょーがねーだろ。今まで臭わなかったんだから) だよねー。 まぁ、またしばらくは冒険の旅に出ていつ体を洗えるか判らないのも確かだということでソフィアの家に立ち寄って湯浴みをすることになった。 この世界には残念ながらレイトが望むようなお風呂は存在していなかったわけだけど、さすがは名門騎士を代々輩出している貴族のお屋敷だけあって、大きなタライに沸かしたお湯を張り、貴重な石鹸まで用意してくれたので、旅の垢を綺麗さっぱり落とすことができた。「お湯で体を拭くってのは気持ちがいいねぇ。気に入ったよ」 汚れの落ちた艶々の肌で豪快に笑いながらヴァネッサがそういった。
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青年は新たな旅の仲間と旅に出る1

「まずはどうするんだ?」 王城を出て湯浴みのためにソフィアの家に立ち寄った後、貴族街を北上しながらレイトが訊ねる。「魔王に囚われた姫君を助けるのですから、魔王の根拠地に行くことになります」「だろうね」 重武装の女剣士ソフィアの話に胸当て程度で露出の多いアマゾネス・ヴァネッサが相槌を打つ。 いやあ、今までは映像の世界という感覚だったビジュアルが究極のリアルになったのと石鹸で汚れをきれいさっはり落としたおかげで女っぷりが一段も二段も上がったヴァネッサには目のやり場に困っちゃうよね、レイト。「当然、その道中は王国内とは比較にならないほど危険なものとなりましょう」 レイトはこれまでの冒険を思い返して「あれよりか」と思ってしまう。「時間がない中でも十分な準備が必要です」 話がまどろっこしいのは騎士という職業がなせる業か兄譲りの性格なのか?「我々に今一番足りないものは魔法です」「魔法?」「はい。ということでまずは大聖堂に向かいます」 何がということでなのかは置いといて、どうやら三人は大聖堂というところへ向かっているらしい。 その大聖堂、国教の聖地に建てられた宗教施設で最高司祭が祈りを捧げているらしい。 だどりついた聖堂はどこが大聖堂なのかと疑いたくなるほどこじんまりとした建物だった。 もちろん神や天使を模したレリーフなど荘厳な意匠は凝らされている。 決して質素とは言えないがそこに華美さは微塵もなく、この国の宗教のあり方が体現されているようだ。 ソフィアたちは、応対に出てきた僧侶に来訪意図を告げて聖堂の中に案内される。 礼拝室に通されると、そこには聖像の前で祈りを捧げている女性が一人。 祈りが終わるのを待っていた三人に振り向いたのは歳の頃で三十前後、肉付きの良いふっくら美人だった。「最高司祭様」 と、ソフィアが腰をかがめて礼の姿勢を取るので二人も見様見真似で礼をする。「旅に出るのですね?」 
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