Semua Bab ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった: Bab 111 - Bab 120

126 Bab

青年はついに王女との再会を果たす2

「それにしても……」 と、ソフィアがいう。「派手に戦っていたというのに増援が来なかったな」「私も城の中を探索していて守兵が少ないと思ってたわ」 アシュレイも気になっていたようだ。「なにか理由があるのだとしても、こちらには都合がいいのだし、このままクリスティーナを探そう」「他にできることはないしな」 その後、彼らは何度かの遭遇戦を行ったけれど、どの戦いも散発なもので騒ぎを聞きつけて増援が来るなんてことはなかった。「あとは、危険と踏んで後回しにした奥と謁見の間くらいか」「ええ。レイト、どっちを先にする?」「奥だな。魔王だって、昼間っから寝室でくつろぐなんてことはないと思うんだ」「あたしは昼間っから酒食らってくつろいでいたいけどね」「仮にも王がそれは無理でしょ?」 アシュレイのいうことももっともだ。 五人は慎重に、できる限り接敵しないように注意して「奥」つまり魔王のプライベートスペースへと侵入する。  そこは生き物の気配が全くしない空間だった。  かといって、おどろおどろしい雰囲気もない。  極めて変哲のない私的空間である。  だからと言って気を抜くわけにもいかない。  モンスターの中には無生物由来のものもいる。  いつ、突然襲われないとも限らないのだ。(なにもなさすぎて、かえってゾクゾクするなぁ) その気分はなんとなく理解できるよ、レイト。「ここが突き当たり?」「っぽいですね」「かすかに気配があるわ」「かすかってことは魔王じゃないってことかい?」 ドラゴンの気配はずいぶん遠くからでも感じ取れた。  だとすれば、魔王だってそうなんじゃないか?  ヴァネッサはそう言いたいようだ。「希望的観測で危機に陥らないように注意はしよう」 レイトは、そういって鞘から剣を引き抜くと、みんなの準備を待って大きな扉を開く。 そこは
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青年はついに王女との再会を果たす3

 しかし、ビルヒーの表情は言葉ほどの強さない。  まずベッドを染めるほどの出血。  いったいどれほどの血を流したのだろうか?  生きてはいてもかろうじてというのが正直なところだった。  それは一緒に駆け寄ったレイトにも判ることだ。「けど……」 そして、彼女の表情を曇らせているのが短剣の存在である。「この短剣、おそらく強力な呪いが込められています。まずはこの短剣の呪いを解かなくては」 聖女ビルヒルティスにかかれば解呪は可能だろう。  問題は解呪にどれくらいの時間がかかるかである。  レイトは少しでも長く生を繋ぎ止めるべくHPポーションを飲ませようとするが、衰弱しきっているクリスティーンには飲み下すことが難しいようだ。(こういう時は……) レイトはHPポーションを口に含むと口移しにクリスティーンに流し込む。「神よ、主の徳を持ってこの禍々しき呪を祓いたまえ」 ビルヒーの体から清浄なる気配が広がり短剣の悪しき気配を押し包む。  短剣の気配はその力に負けないようにと抵抗をする。  しばらくは拮抗していた二つの気配だったが、神の力はやはり短剣に宿っているだけの呪いでは抗し切れなかったようだ。  やがて神の力に完全に押し包まれて気配が小さくなり、完全にその気配がなくなった。 神の奇蹟は信仰心を依代に顕現する。 起こす奇蹟が偉大なほど聖職者には大きな負担がかかるもの。「大丈夫か?」 いかに聖女とはいえ年端のいかない少女の疲労はどれほどのものか。  しかも、彼女の役割はこれからが本番なのだ。  ビルヒーはHPとMPのポーションを取り出すと一気に飲み干し、再び神に祈りを捧げ始める。「以前、体現できたのです。神よ、再び大いなる奇蹟を、クリスティーン王女に加護と祝福をお与えください」 大きく深呼吸をすると長い長い祈りの言葉を唱え始めた。  この旅に出るまでは使えなかった瀕死の完治の魔法であ
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青年が決断を迫り仲間たちはそれに応える1

「な、なにこの圧倒的気配は!?」「これが魔王の気配なの?」 クリスティーン奪還のために集められたビルヒーとアシュレイには初めて感じる恐ろしいまでの気配である。「あの時以上じゃないかさ」 と、ヴァネッサがいうほどの殺気を初めて受けるのだ。  そりゃあ怖気づくのも無理はない。  しかし、彼女たちなしでは勝負にならないぞ、レイト。「みんな、戦えるか?」 低く、腹の底から声を絞り出すレイトにみんなの視線が集中する。「クリスティーンには会えた。けど、魔王を倒さなければ救い出したとはいえない。この魔王が生きている限り、人類に明日はない」 実際、戦闘力では王国でも有数の、いや人類屈指のエキスパートが揃っている。  彼らで敵わなければ人類に勝ち目はないに違いない。「『王国に危機が訪れる時、次元の回廊を越え救世主が現れる』。レイトのことです」 クリスティーンが王家に伝わる伝承を諳んじる。「次元の回廊を超え、伝説のハジマリの島にある塔の遺跡を登って囚われの姫を助け、神殿遺跡のダンジョンを抜けてきた光の巫女の守護者がレイトなんだ」 と、ソフィアが改めてレイトの経歴を話す。  超説明的台詞、ありがとう!「王国の……いえ、人類の存亡は私たちにかかっているのですね」 年端のいかないビルヒーもそれが何を意味するのか理解はできている。「あとは覚悟の問題か……」 ヴァネッサがゴクリと生唾を飲み込む。  伝説級のドラゴンと対峙した時でも普段通りだった彼女でさえそうなのだ。  それだけ生半可な覚悟ではいけないということを意味している。  どちらかといえば普段から慎重派のアシュレイの覚悟が決まらないのも無理はない。  なかなか決断できないメンバーにビルヒーが神の祝福の魔法をかける。「逃げるにしろ戦うにしろ必要な魔法です」 と、ビルヒーがいう。 もっともだ。 魔法の効果によって冒険
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青年が決断を迫り仲間たちはそれに応える2

「確かに……ここで逃げたからって逃げ切れるとは限らないわね」 心に余裕ができたことで思考がクリアになり、冷静な判断力を取り戻したアシュレイが状況の整理と今後の予測を始める。「追われて戦うくらいならこちらから打って出る方が覚悟も決まる」 ヴァネッサの覚悟もできたようだ。  六人は互いに視線を交わして頷くと、魔王城の大広間へと歩を進める。 そこはファンタジア王国の謁見の間の四倍はあるかという空間だった。  まるで野戦場のようなだだっ広さである。  その玉座の下に怒気を纏った魔王が仁王立ちしていた。  ギョロリと剥いた目はギラギラと輝き、耳まで裂けた口から覗く鋸のように並ぶ歯は一本一本が鋭い牙のよう。  耳は尖って横に伸び、その上には悍しく捻くれた角が生えていて、縮れた髪は黒い炎を連想させ、背中には蝙蝠の翼が生えている。「やはり貴様か光の巫女の守護者」 地の底から響くような声でいう。「王女は返してもらうぞ!」「こそこそ逃げていれば少しは長く生きれたものを、我が眼前に姿を現すなどその蛮勇を褒めてやろう」「散れ!」 レイトの号令一下、さっと散開する六人。  そこに巨大な炎の弾が着弾する。  魔王ラグアダルの先制攻撃で人類存亡を賭けた戦いの火蓋は切られた。  光の巫女がブレッシングを唱えると聖女のそれと二重がけになり、より強力な効力を発揮する神聖なる祝福となる奇跡が生まれた。  そこにアシュレイの加速の魔法が付与されると、それは神速と言っていいほどのスピードを戦士たちに与える。  さらに減速の魔法で魔王のスピードを遅くさせようとしたが、さすがにそれはレジストされてしまう。  減速効果があれば少なくともスピードで圧倒できただろうが仕方ない。  しかし、祝福と加速で身体能力を極限まで高めた彼らと互角に戦う魔王の実力は本当に脅威でしかなかった。
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青年が決断を迫り仲間たちはそれに応える3

「レイト、ヴァネッサ、時間を稼いでくれ」 ソフィアが少し距離を取り奥義の準備に入る。「!? させるか!!」「それはこっちのセリフだよ!」 追撃しようとする魔王とソフィアの間にヴァネッサが割って入る。「フレイムオン!」 レイトの剣身が炎を纏う。「チッ、マジックソードか!?」「フレイムバーニングトルネード!!」 大技には技の終わりに硬直時間があるものだ。  バフ効果で極めて短縮されているとはいえなくなるわけではない。  しかし、単身で戦っているわけではない彼らにはその時間をカバーしてくれる頼もしい仲間がいるのだ。「小癪な!」 力あるものはドラゴンも魔王も似たような悪態をつく。「うらぁあ!」 全身を炎に包まれてなお大きなダメージを受けているように見えない魔王の背後からヴァネッサのバーサークラッシュが叩き込まれる。  戦いは始まったばかりだというのに冒険者たちは次々と大技を繰り出していく。  そうでもしなければ勝機を見出せないとみんな知っているからだ。  アシュレイの放つ絶対不可避のマジックミサイルはしかし、ダメージこそ通っているようだけれど効いているという手応えが薄い。  というか、魔法全般の攻撃力がなんらかの効果で相当減衰しているようだ。  特に雷系の魔法が全く効いていない。  レイトもアシュレイも早々に雷系魔法の使用をやめて風と炎に切り替えた。  もちろん、こちら側も無傷というわけにはいかない。  特に奥義の準備で一時的にソフィアが接近戦から離脱しているため手数が減っていることと、ソフィアに攻撃を向けさせないためレイトとヴァネッサは大技で牽制しつつ囮役もこなしているので必然的に攻撃を受ける頻度が高くなる。  しかも三人で攻撃しているのであれば一人ずつ回復に退がることもできるが、魔王相手に一人で接近戦を受け持つなどさすがにできなかったため、二人のダメージは見た目にもかなり蓄積しているようだ。  回復魔法は対象に接近して
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青年が決断を迫り仲間たちはそれに応える4

 鎧兜に盾まで持って武装しているレイトでさえ無事ではない戦いに、ほとんど身を守るものを身につけていないビルヒーやクリスティーンが近づくなど自殺行為以外のなにものでもない。  こうなってくると次第に肉体的に優位な魔王が優勢になるのは自明の理だ。「折れるな!」 傷の痛みと疲労で重くなる体に挫けそうになった二人の背後から鋭い声が飛ぶ。「ヴァネッサ、もう一息だ。レイト、貴様それでも光の巫女の守護者かっ!!」 ソフィアの叱咤に気力が戻る。 それはパーク家に伝わる騎士の秘奥技『鼓舞』の力だった。 教わってできるものではない。 事実、パーク家にその名と効果は伝わっていても使えたものは初代ただ一人、初代以来の才人と言われ、わずか十三歳で奥義真空裂破斬を習得したクリスパークでさえ会得しえなかったものである。  それをこの土壇場で体得したソフィアはやはり伝承に語られる救世主を先導する女騎士だったということだろう。(そうだとすれば……) そうだ、レイト。  ここで挫けてちゃ救世主の名折れだぞ。 レイトの闘志に反応したのか、フレイムソードの炎も熱く燃え盛る。  ソフィアの秘奥義『鼓舞』と、レイトの闘志に呼応したフレイムソードに闘魂を注入されたヴァネッサも立ち上がる。  その体からは目に見えるほどの魔力が溢れ出してきた。「神よ……」 クリスティーンとビルヒーのそれは魔法発動のための祈りの言葉ではなかった。 「これは!?」 二人の戦士の傷がみるみる癒えていく。  それはまさにこの世界の理を超えた神の奇跡だった。  ただただ奇跡を願った神への祈りは聞き届けられたのだ。「人の神がぁ!!」 魔王が吼える。「いくぞ、兄の仇!」 アシュレイが雄叫びをあげ、渾身の力で剣を振るう。
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青年は魔王を倒し英雄となったのか?1

「いくぞ、兄の仇!」 ソフィアが雄叫びをあげ、渾身の力で剣を振るう。  クリスの真空裂破斬で左腕の攻撃力を奪われた魔王が同じ轍を踏むほど愚かではない。  空気の歪みが半弧を描いて魔王を切り裂くかに見えたが、魔王は両腕を大きく振って威力を殺す。  もちろん完全に相殺できたわけではなかったようで、痛みを堪えるように低く唸っている。  そこにたたみかけるようにレイトのフレイムウェイブとアシュレイの減速の魔法がおそう。「ぐぬっ! この魔法は!?」 その変化は魔王をして驚愕せしめる。  そこに超集中状態に入ったヴァネッサの必殺技白熱一閃が追い討ちをかける。  気力で持ち上げ防御姿勢を取った魔王の両腕が、魔力を纏って赤熱した神速の刀身に切り裂かれる。「貴様らぁっ!!」 魔王が吼え、その体から魔力の塊が何十と吹き出し冒険者を襲う。  それはアシュレイのマジックミサイルを遥かに凌駕する数と威力だった。  魔法の盾も神の加護をも貫いて冒険者をめったうちにする。  それはクリスティーンでさえ例外ではなかった。  特にクリスティーンとビルヒーを庇うように魔王との間に立ちはだかったソフィアのダメージは計り知れない。  もはや立つこともままならない程のダメージを受けている冒険者たち。  しかし、魔王もまた多大なダメージと激情に任せて放出した魔法攻撃によって魔力が枯渇してしまい、減速魔法の効果もあってトドメを刺すことができないようだ。  全身をめったうちされ床に倒れ伏しているレイトは気力を振り絞ってHPポーションに手を伸ばす。(動け動け) と、自らを鼓舞し、ゆっくりと口元にポーションを運ぶレイト。(こういう時は、コマンド選択式がありがたかったなぁ……) なんて軽口が浮かぶのなら大丈夫だ。  レイト、君ならできる。  さぁ、立ち上がれ。  魔王を倒し、救世の英雄になるのだ!  わずかに体に力が戻り、ふらふらと立ち上が
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青年は魔王を倒し英雄となったのか?2

「なっ!?」 それは魔王を再び驚愕させる。  お世辞にも鋭さのない剣はしかし、まるで豆腐を切るように魔王の胴体に食い込んでいくとそのまま反対側まで振り抜かれた。「なんだこの技は!?」 レイトは勢いを止めるどころかさらに力を込めてもう一回転、遠心力を利用して振り上げた剣を重力を利用してこめかみから斜めに斬り下ろす。「バイブレーションフレイムクラッシュ」 必殺技の名前長くない?  それはともく、フレイムオンコマンドのアダマント製マジックソードは超振動の魔法にも砕けることなく耐え切った。  そして、胴と頭を斬られた魔王は目を見開いたまま絶命する。  振り回した剣に耐えられず、どうと倒れ込むレイトは最後の力を振り絞ってHPポーションを取り出して口にする。  立ち上がる力が戻ってきたレイトはよろよろと仲間たちに歩み寄り、次々とHPポーションを飲ませていく。  瀕死だったそれぞれが体を動かすだけの力を取り戻すと、いまや三分割の骸となった魔王を見下ろし「勝ったのか?」 ソフィアが実感のないままつぶやく。「これで生きてたらそれはそれで気味が悪いと思わないかい?」 そうだね、ヴァネッサ。「じゃあ、あとは王女様をお城に送り届けたら任務完了ね」 嬉しいんだか寂しいんだか複雑な表情を浮かべるアシュレイにクリスティーンが「いけない。魔王は軍を率いて進軍していたのです」 と、衝撃の発言をする。「だから城の中にほとんど何もいなかったのですね」 と、納得するビルヒー。  そう、魔王はクリスティーンに呪いの短剣を刺して光の巫女の力を弱め、魔王軍全軍を持って一気に王国に攻め込もうとしていたのだ。「だとすれば王国の一大事じゃないか。魔王が死んで魔王軍がどうなるか判らないけど、とにかく急いで王国に戻ろう」 レイトがいうと、五人は頷いて回復しきっていない傷ついた体を支え合うように魔王城を後にする。  魔王城潜入の際、苦労なく進むことができたのはプロテクショ
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青年は魔王を倒し英雄となったのか?3

 というソフィアの意見に従って魔族領の森の中を進む冒険者たちは、森のモンスターとの戦いを日に何度か行いながらやはり十日目にしてついに目指す砦を目視できるところまでたどり着いた。「あぁ……」 とソフィアの声が漏れる。  クリスティーン、ビルヒー、アシュレイは声も出ないようだ。  無理もない。  砦は見るも無惨に壊されていた。  その光景を見た時レイトが真っ先に思い浮かべたのが副官だったあたり、これだけリアルな五感を獲得してもなおゲーム感覚が抜けていないのだろうか?  本当なら隊長だったり槍を提供してくれた鍛治の親父だったりしてもいいんじゃないかと思うよね。「ソフィア、とにかく先を急ごう」 レイトに促されてソフィアが歩を進める。  それに続いてクリスティーンたちも後に続く。  数歩遅れて歩き出したレイトの横に近づいたヴァネッサが耳元で囁く。「生き残りがいると思うかい?」「全滅玉砕はないと思っているけど、砦に残っているとは思っていないよ」「なるほど、ヤバくなったら撤退。あの隊長ならちゃんとやれそうだね」 凄惨な場数で言えばやはりヴァネッサが一番積んでいるということなのだろう。  確かに他の冒険者たちもこの旅で様々な戦いを経てきた。  けれど、負け戦は経験してきていない。  そこが平静さを失わせているのだ。  レイトが平静なのはどこかでゲーム感覚だからなのだろう。  はやる気持ちが冒険者たちの足を早めさせていた。  たどり着いた砦は物理的な力で壁が大きく壊されており、そこかしこに魔族の死体や人の遺体が放置されていた。「誰かっ! 誰かいないのか!?」 ソフィアの叫びが虚しくこだまする。  ビルヒーは感覚を研ぎ澄まして生きている人がいないかを感じようとしているが、「……いた!」 それは光の巫女の奇跡なのか?  クリスティーンの指差す方に集まると、そこには副官に覆い被さる隊長がいた。  全身を鋭い爪や牙などで切り刻まれた隊長はす
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青年たちは魔王軍をおって王都を目指す1

 砦の唯一の生き残りである副官の麗人カーナ・シュタルダーを連れ、冒険者たちは王都へ急ぐ。  移動手段は二本の足だけだ。  ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻したカーナの話によると、彼らと別れた後の攻防戦はなぜか数日の睨み合いが続く膠着状態に陥った。  その間に増援が到着し、これでなんとか戦えるぞと上がった士気を一気に萎ませるほどの大軍団が現れたのが十日ほど前。  一気に押し寄せられることを覚悟したのだが、その大軍団は砦を無視して王国内に入っていったのだという。  決死隊を組んで後を追おうとしたのだが、最初の魔王軍が砦に攻撃をかけてきたので追うこともできずに十日近くも奮戦し魔王軍の八割近くを打ち倒してついに砦軍は全滅したと言うことだった。「よく十日もの間持ち堪えられましたね」 クリスティーンがねぎらいの言葉をかけると、「攻撃再開の日のような猛攻が続いていたなら三日と持たなかったと思います。二日目に突然統率が乱れ、後はてんでに攻めてくるようになったのでなんとか各個撃破で抵抗できたのです」「おそらく我々が魔王を倒したことで軍としての機能が失われたのでしょう」 と、アシュレイがいう。「ま、魔王を討ち倒したのですか!?」「そうでなきゃ姫と一緒に戻ってきてないだろうに」 と豪快に笑うヴァネッサ。「そ、そんなものでしょうか?」(そういう感想になるのも仕方ないよな) と、レイトは心の中でツッコむ。 魔王軍に攻め込まれたことに焦燥感を抱き、ともすれば走り出そうとするソフィアをなだめすかして荒れた街道を王都へ向けて歩くレイトたちは、途中の村で馬車を調達して先を急ぐ。  とはいえ、足の速い軍馬でも馬車を引く専用の馬でもない農耕馬に普段は穀物などを載せているだろう飾り気もない使い古した荷車だ。  「徒歩よりまし」な歩みにソフィアが焦れる。  途中で魔王軍からはぐれた魔獣なのか、王国内では目撃例もなかったモンスターと遭遇し、戦闘を余儀なくされる。  もちろん魔王を倒すほどの冒険者たちが遅れをとるわけはないのだけ
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