Tous les chapitres de : Chapitre 51 - Chapitre 60

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青年は価値観の違いを認識する3

 翌日、王都への道へ続く門を出る冒険者たちを砦の守備隊長と町長が見送りに出てくれた。「道中お気をつけて」 と町長がクリスティーンに向けて挨拶をする。「商隊の報告ではサラマンダーの生息地にドラゴンが出たという未確認情報があります。十分気をつけてください」 と守備隊長はクリスに注意を促す。 それが当たり前と思っているライアンやそんなところに頓着しないヴァネッサと違い、ここのところまったく主人公感のないレイトはちょっといじけ気味に拗ねている。 本ト、やーね、未成熟の男って。 町を出て街道を進む冒険者たち。 幾らもいかないうちにちょっとした違和感にレイトは気づいた。 そう、例によってビジュアルがアップデートされていたのだ。 なぜすぐに気づかなかったのか? それは視界に仲間たちがあまり入ってこなかったからだ。 え? どうしてかって? そりゃ、ガゼラクトの町長がクリスティーンのためにと新しい馬車を用意してくれたからだよ。 寂れた村の荷馬車から箱馬車になって四人はその中に乗り込んでいたので気づかなかったってわけだ。 単純にポリゴン数が一〇〇から一〇〇〇くらいになっていると見て間違いない。 10倍の表現力はヴァネッサの魅力的なナイスバディをより強調し、クリスティーンを可憐に表現している。 頭身も現実感を感じさせる六頭身(ライアン)から七頭身あり、2D四頭身のデフォルメな可愛らしさとはまた違う好感をレイトに感じさせる。 それでは現在のパーティの装備を確認しよう。●レイト 鋼鉄の剣 鉄の鎧 鉄の盾 鉄の兜 耐火マント 大きな背負いカバン 力の石 知恵の石 守りの石 加護の十字架 HPポーション2 MPポーション5 解毒薬3 金貨8,147GP
last updateDernière mise à jour : 2026-02-09
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青年はなんて鈍感なんだろう?1

 冒険者は街道を王都へ向けて進む。 一日に一組くらいの旅人とすれ違う。 だいたいは商隊だ。 モンスターとはその三倍から五倍くらいは遭遇している。 街道でさえこうなのだとすれば、街道から外れた場所ではいったいどれほどのモンスターと遭遇するのだろう。 モンスターはだいたいがスケルトンやゾンビといったアンデッドだ。 ライアン曰く「無念を残して死んだ旅人が負のエネルギーで動き出したものだ。プリーストである俺が責任持って成仏させてやるよ」 っていうのだけれど、ライアンは仏教徒だったのか? 見た目はどちらかといえばキリシタンって感じなんだけど……いや、日本語翻訳機能のエラーってことにしとこう。 それが一番精神衛生上いいぞ、レイト。 アンデッド以外でいうと、いつでもどこにでも出てくるゴブリンだのオークだのだ。 ここら辺りはRPG的視覚情報とは違ってある種のリアリティってことなんだろう。 これまたライアン曰く「この大陸の隅々に勢力を伸ばしているのは人間とゴブンリン、オークくらいだ。まあ、ゴブリンもオークも村を作ることはあっても国を作ることはないけどな」 だそうだ。 えーと……地球でもそうだけど人間の繁殖力は世界でも有数ってことですかね? モンスターたちは数はワラワラと出てくるけれど、一体一体は決して強くない。「いや、でも、限度ってものがあるでしょうが!」 その日三度目のゴブリンとの遭遇戦でついにレイトが叫んだ。 戦は兵力ですな(By軍師) なんて某有名シミュレーションゲームの名台詞が頭に浮かぶほど、一度に戦う相手が多いのだ。 味方は五人、かたや敵は最低二十体。 これが家族単位だっていうんだから、親族総出だと一体何人になることやら……。 と、レイトは辟易してしまう。「以前襲われた村にはオークの軍勢が四六五体押し寄せたことがある。俺はその時一人で八六体倒して隊長に昇進した
last updateDernière mise à jour : 2026-02-10
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青年はなんて鈍感なんだろう?2

 その翌日、彼らは次の町にたどり着いた。 この町も砦の町だ。 そこで彼らは冒険者組合で倒したモンスターと戦利品の報告および換金をして、宿をとる。 ガゼラクトまではモンスターを倒すとなぜかモンスターのポリゴンが砕け散り、直接金が落ちていたのだけど、この旅では倒したモンスターの後には牙だの爪だのが落ちていた。 もちろん、アンデッドや群れのボスはお金を持っていることはあったけど、虫系や獣系モンスターからお金を得られることはなくなった。(細かいとこまでアップデートされてるなぁ……) レイトよ、感心するのはそこか? …………そこか。 うん、そこだな。「いやあ、モンスターを倒してりゃ賞金を貰えるなんて、外の世界はいいところだねぇ」 ヴァネッサはジャラジャラと鳴る銭袋をふりふりしてほくほくしている。 冒険者なんて危険と隣り合わせだよ? いいのかい? ヴァネッサ。「出発は明後日だ。この先は火の山フレイテン、サラマンダーの生息地だ。俺はガゼラクトでもらったドラゴンが出たという情報の真偽を確かめる。三人は各自買い物を忘れないように」 明日を旅の間に消耗した備品の買い足し、補修に当てるとクリスは宣言した。(また俺たちは買い出し班かよ) こればっかりはしょうがないぞ。 不貞るな、拗ねるな若人よ。 青春だね。 さて、翌日だ。 機嫌の治らないカリカリした彼にニヤニヤとした笑い顔を向けるライアンと、お構いなしのヴァネッサと共に買い出しをするレイト。 しかしさすがに鈍感……いや、他人の機微に興味のないヴァネッサでもレイトの様子があまりにもおかしいことに気がついたようだ。「どうしたレイト、なにをカリカリしてるんだ?」「……なにも」 なにもじゃないよ、レイト。 ヴァネッサだってカッコイイ系美女だぞ。 そんな美人さんに心配されているってのにレイ
last updateDernière mise à jour : 2026-02-11
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青年はなんて鈍感なんだろう?3

 最初は嫉妬をはらんだ愚痴だったものが、いつしかガス抜きがうまくいったためか冷静さを取り戻し、思考が冴えてくる。 嫉妬以外にも度重なる戦闘などの旅のストレスも募っていたのかもしれない。「で、俺、思うんだよ。クリスティーンをお姫様として扱うのはよくないんじゃないかって」「なんでさ?」「考えてみてよ、ただでさえ一度さらわれてるんだよ? いつまた誰かに襲われないとも限らないじゃないか」「けど、首謀者のウィザードはあんたが倒したんだろ?」「ああ」「俺は寝返ったし、他の奴らもあらかた倒したんだから大丈夫じゃねぇか?」「そうかなぁ……」「なにか気になることでもあるのかい?」「んーん……クリスティーンは城からさらわれたのか?」「ああ、城内じゃあない。公務で城を出たところを襲ったそうだ」「やっぱそうだろ? 王族が城から出るってことはそれくらいリスキーなことなんだよ。ましてや今は護衛が少ないんだし、打てる手は打っとくべきなんじゃないのかな?」「それで、素性を偽って冒険者にって案なわけだな」「そ。光の巫女を狙っているのがウィザードだけとも限らないし」「それもそうだな。よし、俺がクリスに掛け合ってみるよ」 ライアンは抱えていた荷物をレイトに押しつけ、ふらりとその場を離れていった。「あ、ちょ……おっと」 追いかけようとしたレイトだったけれど、機敏に動くには荷物が多すぎた。「体よく買い出しから逃げたしやがったな」 と、ヴァネッサはカラカラと笑いだす。「笑い事じゃないよ、まったくもう……どうすんだよ、この荷物。まだまだ買い出し残ってるんだよ?」「しょうがない。いっぺん宿に戻ってもう一度出かけようじゃないか」「それしかないか……」 一旦宿に戻って部屋に荷物を置くと、改めて買い出しに出かける二人。 …………。 ちょっと待て、レイト。 二人だぞ。 男前美
last updateDernière mise à jour : 2026-02-12
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青年はRPGマニアだというのにフラグに気付くのが遅れてしまう1

「ブラストカッター!」 火の山フレイテンは予想以上にサラマンダーの生息地だった。 そこここにサラマンダーがいる。 カテゴリーはモンスターではあるけれど、その生態はトカゲのそれであり常に人間を襲ってくるわけじゃないのが救いだ。 夜は寝ているようだったし。 ただ、いつどんな理由で襲われるか判らないから心休まる暇がない。 しかも、血が燃えるので下手に傷をつけるとこっちにも被害が及ぶ。 本当に厄介なモンスターだ。(血が燃えるってなんだよ?) どういう成分なのか判らないのだけれど、空気に触れると燃え出すんだ。 なんて地の文で説明してもレイトには伝わらないんだけどね。 ………… むなしいなぁ……。「つーかさ、いつ噴火するか判らない活火山はフツー入山規制するもんじゃないのか?」「なんだい? そのニュー斬鬼性ってのは?」 ヴァネッサの絶対おかしい変換をしているに違いないイントネーションも仕方ない。 二十一世紀日本の防災体制を持ちこんじゃいけないぞ、レイト。 ところでなぜレイトが魔法でサラマンダーを倒しているかといえば、剣を失っているからだった。 確かに最初の二、三日は主に剣で戦っていた。 しかし、サラマンダーの燃える血にさらされているうちに金属疲労なのか形質変化だったのか、とにかく切れ味が極端に悪くなり、鞘にも収まらなくなるほど歪んだかと思うと鋼鉄の剣は四日目についに刀身の半ばあたりでパキリと折れてしまったのだ。 それ以来、レイトはブラストカッターとウォーターショットで戦うようにしていた。「予備を用意していないからだ」 と、説教をたれるクリスはしこたま予備の剣を用意していた。 その数じつに十二本。 これもクリスティーンのポケットマネーで支払われているものだ。 武器ってものは決して安いものじゃあない。 それを十二本も買うだなんていくらなんでも正気じゃあないとレイトは思っ
last updateDernière mise à jour : 2026-02-13
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青年はRPGマニアだというのにフラグに気付くのが遅れてしまう2

 ちなみに予備はある。 鋭利な鉄の剣が一本。 世の中なにがあるか判らないので非常事態に備えて温存しているのだ。 他にクリスに取り上げられている鋭利な鋼鉄の剣もあるにはある。「クリス、一本くらい使わせてくれてもいいんじゃないのか?」 と、頼んではみたが、にべなく断られていた。 そのクリスも十二本の剣のうちすでに七本使い潰している。 数を揃えるために安物を買ったせいもあるんだろうけど、それにしてももっと大事に使ってもいいんじゃないかとレイトは思ったわけだ。 けど、「武器こそ消耗品だ」 という。 や、そうだけど。 武器は高いんだぞ。 しかも他人の金で買ったものじゃないか。 ちょっとは遠慮というか、配慮くらいしたらどうなんだ? そんなクリスも最初から持っていた騎士の剣は非常事態のために温存している。 アマゾネスの大剣+2という魔法剣持ちのヴァネッサは、サラマンダーと相性が悪いこともあってクリスティーンとライアンを守るのに専念しているため、ほとんど戦う機会がない。 ところで、その非常事態というのはなんだ? って気になっている読者もいるかもしれない。 ちゃんと読んでくれている人は薄々勘付いているだろう。 そう、ドラゴンが出たという情報があるからだ。 出会わなければそれに越したことはない。 けれど、神頼みだけですますわけにはいかないのだ。 そして、レイトは(ドラゴンとの戦いは避けられない。絶対シナリオに含まれているはずだ。そもそもガゼラクトでドラゴンの話が出た時点でフラグが立ったに違いない) と、確信している。 何度も何度も現実っぽいぞと気合を入れ直していても、パソコンのモニターに吸い込まれたというそもそもの経緯から始まって、このゲーム画面を見ているような視覚情報のせいでゲーム感覚が拭えないでいる。 そのせいでついつい思考・発想がゲーム的になってしまうのは
last updateDernière mise à jour : 2026-02-16
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青年はRPGマニアだというのにフラグに気付くのが遅れてしまう3

「退屈ですか?」 そんなレイトの様子を察してくれたのか、クリスティーンが話しかけてきてくれた。 すると、視覚情報がフィールドを進む騎士と箱馬車から、馬車の中のFPSになった。 荷物だらけの車内で目の前にはクリスティーンとヴァネッサが座っている。 狭い空間に視界に入るのは二人だけということもあるのか、情報処理能力がその二人のポリゴン処理(いや、それはあくまでレイトの視覚に限ったものらしいのだけど)に振り分けられたようでなかなかどうして高精細な美女と美少女がレイトの目に映っている。「あー……そんな風に見えた?」「ええ」「あたしにも見えたね」「そうか、確かにちょっと単調で飽きてるかもしれない」「おいおい、モンスター殺しながら『飽きた』はないだろ。ひでーやつだな」 と、声をかけたのは馬車の御者をしているライアンだ。 彼だけは馬車の外にいて、御者席とは小窓でつながっている。「ウィザードの手下やってて悪逆の限りを尽くしていたやつに言われたくないなぁ」 と、レイトが言い返すと、「おいおい、確かに手下だったけどそこまで非道じゃなかったぞ」「そうかい? あたいらアマゾネスうちじゃあ『いけすかない坊主』で通っていたし、第一あんた、王女様殺してダンジョンから抜け出すんだとかいってたじゃないか」「うぐっ、それを持ち出すなよ。反省してるんだから」「うふふ。確かに私たちと一緒になってからのライアンは心を入れ替えて私たちを守ってくれていますね」 いかにも育ちのいいお姫様然とした笑い方と言い草に場の空気が和む。「でも、確かにただただ馬車に揺られているだけってのは退屈にもなるよな、クリスティーン」 と頭の後ろに手を組んでニタリと笑う。(そんな仕草まで表現できるとかすげーな) とか、どうでもいいところに感心しているレイトであった。 まぁ、かなり進化してきていたとはいえ、ずっと前世紀然としたキャラクターとして映っていた美
last updateDernière mise à jour : 2026-02-17
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青年は己の非力さに唇を噛む1

「まずはドラゴンを地上に落とさないと満足に戦えないぜ」 ライアンが叫ぶ。 レイトはざっと戦力を確認する。 そもそも武器を持っていないクリスティーンを除いても飛び道具を持っているメンバーがいない。「俺に任せろ!」 馬から降りたクリスが騎士の剣を構えて瞑想を始める。「何をやってるんだ?」 ドラゴン相手に戦おうって時にそのドラゴンを無視して目を閉じ、瞑想を始めるのだからレイトが疑問に思うのも仕方ない。「騎士には代々伝わる剣技ってものがあるんだ。詳しいことは判らねぇが、技を発動するまでの手順の一つなんだろうよ。レイト、それからヴァネッサもクリスを守って時間を稼げ」「時間を稼げったって、あたしにはあんな高いところを飛んでるドラゴンに攻撃できる技なんてないよ」 ヴァネッサが見上げる先はどれくらいの高さなのか? TPSのレイトにはイマイチよく掴めない。 それはともかく、クリスに狙いを定められるのだけはよろしくないと彼から距離をとったレイトは、とりあえず手持ちの札から使えそうなものを試すことにした。 まずはファイヤーボール2。 火山地帯にいる赤い竜だし、効く気がしないと思いつつ試した魔法は案の定彼自身がタゲられる以上の効果を発揮しなかった。(火がダメなら) と、次に試したのはウォーターショットだ。 しかし、ウォーターショットは射程が短いらしく、上空を飛ぶドラゴンに当たらない。「何やってんだよ!」 と、仕方ないとはいえ口を出すだけで何もしない(正確にはできないんだけど、レイトの心証としてはやっぱり「しない」と感じてしまう)ライアンに舌打ちしたい気持ちになる。「ブラストカッター!」 カマイタチを発生させる魔法もドラゴンの羽ばたきに相殺されるらしく攻撃が届かない。(くそ、ゲームならそんな物理現象無視してダメージ与えろよ!) 無茶をいいないな。(これだから現実世界は) 一応ち
last updateDernière mise à jour : 2026-02-18
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青年は己の非力さに唇を噛む2

 突き飛ばされて動けるようになったレイトが絶叫に振り返ると、炎に焼かれるライアンがいる。 クリスティーンの悲鳴が上がり、ブレスを履き終わったドラゴンは次の標的にそのクリスティーンを選んだようだ。「ヴァネッサ!」 レイトに呼ばれて我に帰ったヴァネッサがクリスティーンをかばうようにドラゴンとの間に割って入る。「ライトニングボルト!」 唯一ダメージを与えられる魔法で自身にタゲを移すレイト。(クールタイムの長い魔法は不利だ。かといって弱い魔法じゃ威嚇や牽制にもならない。どうすりゃいいのさ)「待たせた」 再び空中に静止し天を仰ぎ、ブレスを吐こうとするドラゴンに向かってクリスが剣を逆袈裟に斬り上げる。「奥義 真空裂破斬!」 ブラストカッターをずっと派手にしたようなエフェクトで斬撃が、今まさにブレスを吐こうとしているドラゴンを直撃する。 胴と一緒に切り裂かれた片翼がドラゴンから離れ、一撃でドラゴンが地に落ちた。「これなら!」 すかさずヴァネッサがドラゴンに近寄り、バーサークラッシュを放つ。 剣先が何本も見えるようなエフェクトで次々とドラゴンの横腹に突き刺さる。「ウォーターショット! ブラストカッター!」 レイトもここぞとばかりに魔法を連発する。 どうもウォーターショットよりブラストカッターの方が与ダメージは大きいようだ。「地裂斬!」 動きは真空裂破斬同様だが、剣による直接攻撃の技なのだろう。 クリスの攻撃も大きなダメージを与えている。 どうも、三人の中でレイトの攻撃力が一番低いらしい。 魔力が底をついたレイトが予備の剣でちまちまと攻撃する横で二人が大技、剣技を繰り出す。(俺も剣の技が欲しいな) その気持ちよく判るよ。 その後もドラゴンはブレスこそ吐かなかったが尻尾、噛みつき、かぎ爪などの攻撃
last updateDernière mise à jour : 2026-02-19
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青年は己の非力さに唇を噛む3

 呼吸を整えていると、視覚情報がFPSに変更される。(…………) レイトは戦闘中は強く強く意識的に考えないようにしていたことに向き合わなければいけないことを覚悟する。「ライアン! ライアン……」 悲しげなクリスティーンの彼を呼ぶ声がともすればせっかくの覚悟をゆるがす。 長いこと戦っていた。 もうずいぶん前からレイトの魔力は枯渇している。 その間、クリスティーンも必死にライアンを救うために治癒魔法をかけ続けていたに違いない。 とすれば彼女の魔力だってもう残ってはいないはずだ。「どうしたんだい、魔法で怪我は治るんじゃないのかい!?」 ヴァネッサがクリスティーンに詰め寄っていた。「治す先からどんどん生命力が奪われていくのです」「ブレスの炎が体の中で燃え続けているんだろう」 クリスが地面に横たわるライアンを見下ろしている。 普段あまり感情を表にだす方ではない男だが、その表情は沈痛だ。「じゃあ、その炎を消せば助かるんだな? レイト、水の魔法でライアンの体の中で燃えてるっていう炎を消しておやりよ」「…………」「レイト?」「ごめん。もう、魔力がない……」 そもそもレイトの魔法は攻撃用魔法だ。 仮に消せたとしても魔法そのものによるダメージを与えかねない。「ヴァネッサ。レイトの魔法ではたぶん炎は消せない。消せるとすれば聖水だけだろう」「じゃあそれで消しておやりよ」「ヴァネッサ……」 言いながらそっと彼女の肩に手を置くクリスティーンの頬を涙がつたう。「ここに聖水はないのです。聖水を生み出せるのは聖職者だけ……これ以上、私たちにできることは…………」 言葉はしりすぼみに消えていく。 最後までいうことができないようだ。 低い嗚咽がヴァネッサから漏れる。 決して長いとは言えない付き合いだった。 しか
last updateDernière mise à jour : 2026-02-20
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