「偏屈なのは事実だが、それより大きな問題があるのだ」 大賢者バガナスの住む塔を訪うと、埃っぽいローブを着た弟子が「どこまで登らせるんだ?」ってほどの螺旋階段を先導する。「バガナス様は御歳《おんとし》一〇四歳。旅に出るのは難しい」 案内されたその先には枯れ木のような肌色のしわくちゃな老人が、目だけは煌々と輝かせて座っていた。 開口一番、バガナスはどこから出るのかというほど馬鹿でかい声でこういった。「弟子との会話は聞いておったぞ」(盗聴かよ) いやいや、そういう言い方は野暮だわ、ここは剣と魔法のファンタジー世界だぞ。「まったく、わしを誘いにくるのが十年遅いわ!」(十年!? 五十年の間違いじゃないのか?) レイト、それを言っちゃあおしめぇよ。「頭はまだまだ冴えておる。この塔を出ないですむならどんな魔法でもいくらでも使ってやっても良いが……魔王討伐の旅など足腰立たんわ」(これだけ元気でハキハキものが言えるのなら旅もできんじゃねーの?) なんてレイトよ、口が達者なのと矍鑠と歩くのは別物だぞ。「そりゃ困ったねぇ」 他人事みたいな言い方をするヴァネッサにバガナスは息が抜けるような笑い方で答える。「わしの代わりが務まるものではないが、そこの弟子なら旅につけてやってもよいぞ」「お、お師匠!?」「これも修行じゃ、行ってこい。魔王ごときに負けて死んで帰ってきたら承知せんぞ」 いやはや、すごいスパルタですな。 ローブをまぶかにかぶっていたお弟子さんは二の句も継げずうなだれるしかない。 そのまま旅支度に追い立てられて放り出されるように塔からパーティごと締め出されてしまう。 五人はしばし呆然と塔を見上げるしかない。 放心状態からようやく醒めたレイトは、パンと柏手を一つ打ってみんなの正気を取り戻す。「さ、こんなところにいつまでもいるわけにはいか
Last Updated : 2026-02-23 Read more