All Chapters of ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった: Chapter 61 - Chapter 70

76 Chapters

青年は新たな旅の仲間と旅に出る3

「偏屈なのは事実だが、それより大きな問題があるのだ」 大賢者バガナスの住む塔を訪うと、埃っぽいローブを着た弟子が「どこまで登らせるんだ?」ってほどの螺旋階段を先導する。「バガナス様は御歳《おんとし》一〇四歳。旅に出るのは難しい」 案内されたその先には枯れ木のような肌色のしわくちゃな老人が、目だけは煌々と輝かせて座っていた。 開口一番、バガナスはどこから出るのかというほど馬鹿でかい声でこういった。「弟子との会話は聞いておったぞ」(盗聴かよ) いやいや、そういう言い方は野暮だわ、ここは剣と魔法のファンタジー世界だぞ。「まったく、わしを誘いにくるのが十年遅いわ!」(十年!? 五十年の間違いじゃないのか?) レイト、それを言っちゃあおしめぇよ。「頭はまだまだ冴えておる。この塔を出ないですむならどんな魔法でもいくらでも使ってやっても良いが……魔王討伐の旅など足腰立たんわ」(これだけ元気でハキハキものが言えるのなら旅もできんじゃねーの?) なんてレイトよ、口が達者なのと矍鑠と歩くのは別物だぞ。「そりゃ困ったねぇ」 他人事みたいな言い方をするヴァネッサにバガナスは息が抜けるような笑い方で答える。「わしの代わりが務まるものではないが、そこの弟子なら旅につけてやってもよいぞ」「お、お師匠!?」「これも修行じゃ、行ってこい。魔王ごときに負けて死んで帰ってきたら承知せんぞ」 いやはや、すごいスパルタですな。 ローブをまぶかにかぶっていたお弟子さんは二の句も継げずうなだれるしかない。 そのまま旅支度に追い立てられて放り出されるように塔からパーティごと締め出されてしまう。 五人はしばし呆然と塔を見上げるしかない。 放心状態からようやく醒めたレイトは、パンと柏手を一つ打ってみんなの正気を取り戻す。「さ、こんなところにいつまでもいるわけにはいか
last updateLast Updated : 2026-02-23
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青年は王女とちょっぴり親密になる1

 クレリックのライアンを失ったパーティは苦戦を強いられた。 サラマンダー以外には特にモンスターもいないフレイテン火山はまだよかった。 平地に戻ると攻撃的なモンスターであるゴブリンやオークがかなりの集団で襲ってくる。 町までの二日間で遭遇した集団は七つ。 レイトも数が多すぎて正確には数えていなかったのだけれども、おそらく一二〇体はくだらないだろう。 一体一体は決して強くない。 しかし、そんな弱いモンスターといえども一度に一〇も二〇もの集団で襲ってくるとなると話は違ってくる。 しかも、こちらは治癒の中核だったライアンがいないのだ。 必然的にクリスティーンの負担が増すことになる。 クリスは完治は求めず最低限パフォーマンスが落ちない程度の回復にとどめさせた。 おかげで町についた頃の彼らは満身創痍の状態だった。 冒険者組合で戦利品の換金を済ませ、そこで得たお金で治癒術師に傷の治癒を頼み、宿についた。 その翌日、レイトとクリスの部屋をヴァネッサが訪うた。「どうした、ヴァネッサ?」「ああ、その……クリスティーンがな、すごい熱いんだ」「熱い?」 うん、そう聞き返すか、クリス。「どんな状態なんだ? 詳しく教えてくれないか」 さすが現代人レイト、なんとなく判ったようだね。「呼吸が浅くて汗がいっぱいで、熱いんだ」 レイトはクリスと見合ってガタと椅子を倒しながら部屋を出る。 クリスはノックもせずにクリスティーンの部屋へとずかずか入っていく。(デリカシーがないなぁ) だね。 クリスは苦しそうなクリスティーンの額に手を当て、深刻そうに腕を組む。「治癒の魔法で回復しているはずなのに、これは一体どういうことだ? なにかの呪いか?」「なにが呪いだよ。疲労によるダウンだろう。長旅で精神的にも肉体的にも疲れていたんだ。しかし、二、三日は休ませる必要があるだろうな」「そうか&hellip
last updateLast Updated : 2026-02-23
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青年は王女とちょっぴり親密になる2

 まず、向かったのは防具屋だ。 レイトは焼け焦げたり傷だらけになっている鎧と盾を防具屋の前に出してこう訊く。「直すのと買い換えるのとじゃどっちが安く上がる?」 訊ねられた防具屋の親父は拳で叩いたり持ち上げてひっくり返したりした後、大きくため息をついた。「買い替えだな。特に鎧は寿命だよ。直したところでいくらもしないうちにまた壊れるだろう」「そうかぁ」「武具防具は消耗品だ。どんなにメンテナンスしたところで、使えば壊れる。大事にしたいなら使わないことだな」「使わないですみゃあそれに越したことはないんだろうけど、戦闘になったらそうもいかないからなぁ」 それは、今回の旅で身に染みて実感したことだった。「だが、隣のねーちゃんの鎧はあんたのと違って傷ついた様子はねーぞ。相当実力に差があるんじゃねーのか?」 そう言われてレイトはちょっとムッとした。 今でこそ異世界で冒険者なんてやってはいるけれど、もとをただせば人間のまだできていない大学生だ。 ヴァネッサの鎧は魔力的防御力が付与された「アマゾネスの胸当て+1」である。 そんな一級品の鎧と市販の鎧の損傷具合を見比べて戦士としての実力を測られるなんて心外以外のなにものでもない。 レイトはドンと金の入った袋をカウンターに置いて「これで買えるもっともいい鎧と盾をくれ」 と、ぶっきらぼうにいう。「おお、気前がいいな。しかし、自分の命を預ける防具に出す金をケチらないのは冒険者として見込みがあるぞ。どれ、少しサービスしてやろう」 金額を確認してホクホクと奥の部屋へ行くと、真新しい鎧と盾を抱えて戻ってきた。「鎧は俺の作った最高傑作だ。盾もA級品だ」 たしかに悪くない。 しかし、本当なら「鋭利な鋼鉄の剣・鋼鉄の鎧・鋼鉄の盾+1・鋼鉄の兜」という地下迷宮で手に入れたクリス曰く「国宝級」の装備を身に帯びていたレイトである。 なんとなく納得いかない気分が残るのは仕方がない。 次に武器屋へ行く。
last updateLast Updated : 2026-02-24
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青年は王女とちょっぴり親密になる3

 クリスティーンの様子をうかがいに行くと、まだ熱は高いもののだいぶ容体が落ち着いたらしく、小さな寝息を立てて穏やかに眠っていた。「代わるよ」「う・うむ……」 クリスは後ろ髪ひかれるように部屋を出て行った。「うーむ、とはいったものの……」 女部屋にいるのは案外いたたまれないなと、レイトは考えてしまった。「どうしたのさ」「いやぁ……男として女性の部屋にいるってのはどうも居心地が悪いというか……」「なにをいまさら」 確かにいまさらだな、レイト。  とはいえ、視覚的にデフォルメ二頭身ドットキャラだった頃とは違い、今は七頭身リアル系ポリゴンキャラで見えている。  そりゃあソワソワもしますわな。「で、あたしはなにをすればいいんだい?」「あ、ああ。じゃあ、洗面器の水をかえてきてくれないか?」「水をかえてくりゃいいんだね? お安い御用だ」「ありがとう。よろしく頼むよ」「意外というのは失礼ですが、細やかな気遣いのできる方ですよね」  ヴァネッサが部屋を出ていくと、クリスティーンが声をかけてきた。「起きてたの?」 たぶん質問には微笑で答えてくれたんだと思うが、なにぶんにもレイトの視覚的にはレイトの腰掛けているイスの横にあるベッドに寝ているキャラがわずかに首を振ったようにしか見えない。「ごめんなさい」「なにが?」「私が非力なばかりにライアンを助けることができなかったばかりか、こんな状態になってしまって……」「君のせいじゃないよ。それをいうならライアンの死は俺のせいってことになる」「…………」「なにかして欲しいことはあるかい?」「…………」「なんでも言って?」「本当になんでもいいですか?」「え? ああ……俺にできることだよ?」「じゃあ……」 と言って、クリスティーンは掛け布団から手をそっと差し出した。
last updateLast Updated : 2026-02-25
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青年は必殺技を編み出す1

 クリスティーンが起き上がれるようになるまでに三日、旅ができるまでに体力が回復するのにさらに二日を要した。「ご迷惑をおかけしました」 翌日、食料などを買い込んだりと出発の準備に費やしたので、結局一週間もの滞在になった。  おかげで彼らの財布の中はすっかり空っぽになってしまった。「モンスター退治で稼がなきゃなぁ」 と、レイトがいえば「それは難しいな」 と、クリスがこたえる。「どうしてさ?」「ここまで来れば治安もよくなってくる。モンスターとの遭遇なんてそれほど多くはないからだ」「もっと強いモンスターが出てくるとかじゃないのかよ」 レイト、それはゲーム脳過ぎだぞ。「出るわけがなかろう。ここから先は人間の領域だぞ。王都にモンスターを近づけるなど、騎士団の威信にかけても許すわけにはいかない」「ああ、確かに」「じゃあここから先、あたしらどうやって食べていくのさ」 さすがのヴァネッサも心配のようだ。  そりゃあそうだ。  王国は経済で動いている。  地下迷宮でその日暮らしができた頃のようにはいかないのだ。「二、三日稼いでから行くのはどうだ?」「バカな。一日でも早く姫を王のもとへ送り届けるのが使命だろう」「そうは言っても、金がなきゃ何も買えないんだぞ。そんなんで王都に行けると思っているのか?」「う……いざとなれば王国の権限で物資を徴収……」「やめたれ、クリス。いらん反感買うだけだから、それ」「クリス、彼らの言い分ももっともです。私のせいで苦労しているのですから……私からもお願いします」「一日、一日だけです。二人もよいな?」 ということで冒険者は村を出て一日、街道をそれてモンスターを探しながら進むことになった。  町を出るのに馬車に乗り込む。  すると、視界がFPSになった。「うおっ!」「どうかしましたか?」「
last updateLast Updated : 2026-02-26
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青年は必殺技を編み出す2

 王都に近づくに従って治安が安定していくとはいえ、町までの街道にはそこそこ頻繁にモンスターが出ていた地域だ。  意識的に森の中を探索すればまだまだモンスターに出くわすことになる。  一週間近く町に滞在して気力体力共に十分な冒険者たちは、オークやゴブリンといった一団に遅れをとることもない。  ただ、レイトは視覚情報のアップデートにともなって多少のもたつきが見られた。  時々コマ落ちしたり、視界の追随性能の遅延によって敵の認知が遅れるのだ。(ま・これはこれはこれで縛りプレイだと思えばいいけどね) さすがゲームオタクだ、たくましいね。  体を動かす感覚はもうほとんど現実世界と変わらない。  フィードバックされる衝撃などもびっくりするほどダイレクトだ。  視覚的に自分がまったく見えないので避けられたのかどうかが衝撃でしか測れないのが厄介ではあるけれど、それだって紙一重な攻防はオークやゴブリンとの戦いには特に重要な要素じゃない。  多少ダメージを受けたところで戦闘に差し支えるような怪我につながることもなかろうし、慣れてくると余裕を持って対処もできてくる。  一番気をつけなければならないクリスティーンの護衛はクリスが騎士の責任において引き受けてくれるので、レイトとヴァネッサは心置きなく戦闘に集中できるのも気が楽だった。  その日一日で実に五度の遭遇戦をこなし、レイトはヴァネッサともどもホクホク顔で野営の準備をすることができた。 翌日からは街道に戻り、粛々と先を急ぐ。  クリスの言うとおり街道筋はモンスターの襲撃もまれになり、日に一度が日にあるかないかに変わり、三つ目の町を通過する頃にはモンスターの襲撃など心配するのもバカらしいほどの旅になる。「だからと言って気を抜くな」 次の街へ着いたらその次は王都だと言う道の途中で冒険者はモンスターの襲撃を受けてしまった。  それに対するクリスの悪態である。  返す言葉もなくレイトはウルフベアーと戦う羽目になっている。  見た目は狼だ。  四つ足で俊敏に飛び跳ねる様は狼だが、サイズはヒグマ並でおそらく3メートル
last updateLast Updated : 2026-02-27
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青年は必殺技を編み出す3

 ウルフベアーから少し距離をとり、風の魔法を発動して握る剣にまとわせる。 その状態で一直線にウルフベアーに突進して渾身の一撃を突き刺すと同時に魔法を放つのだ。 魔法は胴体に突き込まれたところから体内で発動しウルフベアーの内を旋風のように暴れ回る。 ウルフベアーは一声吠えて、どうと仰向けに倒れた。「すごい……」「なにをどうやったんだい?」「あー、ドラゴンとの戦いでさ、クリスが奥義とか言うやつを使ったじゃない?」「真空裂破斬だ」「そうそれ」 レイトはムッとしたクリスを無視して説明を続ける。「それでね、魔法を応用すれば似たようなことができるんじゃないかと思ったわけよ」「しかし、私の奥義とは似ても似つかないものだったぞ」「そりゃ、まるっとパクったら申し訳ないじゃん。で、風の刃じゃなく旋風的なものにできるんじゃないかとやってみたらできた?」「なぜ自分で行っておいて疑問系なのですか?」「気にしなさんな、クリスティーン。しかし、あんたやっぱり面白いよ、レイト。最高だね」「で? 技名はなんだ?」「え?」「技の名前だ」「あー……決めてないなぁ」 それを聞いてクリスはクリスティーンの方を見た。「姫」「はい」「技名を与えてはいかがでしょう?」「私がですか?」「はい」「……そうですね。ヴィザードから救っていただいてからここまで、ずっと助けられているのに何も与えられずにおりましたのを心苦しく思っていたのは確かです」 そういって、クリスティーンは可愛らしく小首をかしげて名前を考え始めた。(かわいいな、おい) 王女様に対してそれしか感想がないのかよ。 不敬だな、レイト。「旋風突き…
last updateLast Updated : 2026-03-02
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青年は仲間と共に王都にたどり着く1

 レイトたちは、ようやく王都の見えるところまできた。  となり町まで二、三日かかっていたのが、朝町を出れば夕暮れ前には着くようになり、今日は昼には着きそうだ。  道幅は広くなり行き交う人も多く商隊だろう馬車の列もひっきりなしに行き交っている。  人々の服装もミレーの落穂拾いで描かれている農婦のような野暮ったいものからレンブラントのフランス・バニング・コック隊長の市警団に描かれている人々のようなものにかわっている。  まあ、レイトには落穂拾いはともかく、なんちゃら市警団なんて言っても判らんちんだろうけどね。  王都は高い城壁に囲まれたたいそう立派な街のようだ。  レイトにはまだ知りようもないことだけれど、街は古い市域である丸い城郭に囲まれた貴族地と星形要塞として拡張された下町とでできている。  外郭は深い堀で囲まれ、王城から放射状に伸びる四本の主要道を跳ね橋で繋いでいる。  跳ね橋は朝の合図とともに降ろされ、日暮れの合図で跳ね上げられる。  王都への入場には通行証が必要で、王家であっても例外はない。  もっとも、王家が発行するのだから王様はいくらでも新規発行できるんだけどね。  まぁ、ご多分にもれず警備はわりと雑でルーズ。  たぶんいくらでも警備の目を盗んで侵入できるだろう。  そもそも通行証にしたって偽造防止の仕掛けがあるわけじゃなく、たとえば冒険者はギルドが発行した通行証を持っているのだけれど、見せればほとんどフリーパスだ。  むしろ、村長や町長発行の市民パスの方が厳重に調べられるとか、どうなってんだ?  それはともかく、レイトたちは騎士であるクリスがいることも幸いしてか楽々と王都に入場した。  下町区域は雑多で猥雑、人が多いこともあって騒がしく臭いがきつい。(あれ? 臭い!?) そう、ニオイ。  レイトが匂いを感じたのはクリスティーンと二人で地下迷宮をさまよっていたとき、第二階層ボスのメイジと戦った際の一度きりだ。  あの時は唐突に匂いを感じた。  つまりあの時はイベントとして匂いが与えられたのだ。  嗅覚以外の五感はだいたいあ
last updateLast Updated : 2026-03-03
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青年は仲間と共に王都にたどり着く2

 内郭に入ると視覚情報のクオリティがまた一段上がった。  必要以上にリアリティを強調して逆に作り物感があった景色や人物がごく自然にそこに存在しているという確かな実感を得られるまでにアップグレードされている。  その代償なのか、解像度が明らかに落ちた。  TFT液晶のフルHDからブラウン管モニタのSD画質で16ミリフィルム撮影のドラマを見せられている感じだ。(モヤるなぁ……) 確かに輪郭がぼやけ気味だな。  しかし、それに合わせて自分の視覚が本来の情報をすべてうつしてくれているんだから、いいじゃないか。(ま、これでとりあえず五感を取り戻したってことでよしとしよう) よっ、さすが主人公! クリスが凱旋したことが王城に報告されたのだろう、ほどなくして豪奢な四頭立ての箱馬車がギャロップで飛んできた。「姫ー!!」 急停車の馬車から転がるように飛び出てきたのはいかにも「じいや」と言った身なりのおじいさん。「セドリック」「おお、まさに、まさにまごうことなきクリスティーン様であらせられる」 と、滂沱の涙を流して咽び泣く。  しばらく泣かせていた同行者であったけれど、やがて「セドリック様、往来ですぞ」と王城へと戻る準備を促す。「おお、そうであった。姫、ささ、こちらへ」 と、乗ってきた馬車にエスコートする。  馬車に乗り込むと、とっとと出発していってしまった。「いやあ、清々しいほど爆無視かまされましたけど」 思わず口を吐いても仕方ないよねぇ。  ヴァネッサも開いた口が塞がらない。「お前たちのことは、私が責任持って報告する。姫の救出はお前たちの協力がなければなせなかったことだからな」 なんのかんのと面倒見がいいクリスである。「お兄様」 と、心地いいアルトの響きが耳を打つ。  人好きのするハスキーなヴァネッサやイメージ通りの落ち着いたクリアなソプラノボイスのクリスティーンとは違
last updateLast Updated : 2026-03-04
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青年は仲間と共に王都にたどり着く3

「この者たちは?」「旅の仲間だ。私より先に姫をウィザードから救い出し、姫を護りながら地下迷宮を攻略した勇者だよ」「勇者……」「ああ、勇者だ」 そう言われたソフィアは、数歩進み出て胸に拳を当てて一度目を伏せる。「失礼をした。兄を助け、姫を取り戻してくれた恩人への非礼をお許し願いたい」(かったいなぁ) そうゆうてやるなよレイト。 ボーイッシュな美人さんはこれくらいの方が似合うと思わないかい?「礼はいいからそろそろ移動しないか? 人だかりができてるし」 と、ヴァネッサが居心地悪そうに辺りを見回す。「そうだな。帰城報告もせねばならん。積もる話は道々といこう」「判りました。お兄様」 セドリックに連れ去られたクリスティーンの代わりにクリスの妹ソフィアを加えた一行は、メインストリートの緩い坂道をゆったりと進む。 小高い丘の上に建つ王城は質実剛健で飾り気もない厳しいものだった。 内郭である貴族街の街並みも古めかしいことからも古い代から変わっていないんだろう。 外郭の平民街の方がむしろ街並みが新しい。 それだけ王都は平和だったと言ってもいいのだろう。 そんな街並みを見ていると、レイトはクリスたちがどれほど騎士としての務めを果たしてきたかが慮られる。 21世紀日本の大学生からみてちょいちょい思想・言動に相容れないものがあったとしても、彼らがこの世界で当然の責務ってやつをまっとうしていることは尊敬に値する。 王城警護はこれまでになく厳重で、剣は鞘に納めて腰に吊るすいわゆる帯剣こそ許されたもののすんなり抜けないように留め金で留めるように指導され、それ以外の武器どころか持ち物すべてを取り上げられてしまった。「城を出るときに返しますよ」 と、報告のため別行動になったクリスの代わりに残ったソフィアは言うけど、有無を言わさず取り上げられたことにはやっぱり納得のいかないレイトであった。 案内されたのは来客用の
last updateLast Updated : 2026-03-05
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