結衣も、真由美のことが心配でたまらないのだ。「結衣も、病院に行って綺麗なおばあちゃんに会いたい!」湊はハンドルを切り、前方の交差点を曲がって、反対方向へと走り出した。病院に到着した時。真由美はすでに傷の手当てを終え、病室のベッドに横たわっていた。足は高く吊り上げられ、動かすこともできない状態だ。少し弱っており、酸素マスクをつけているため言葉を発することもできない。そんな痛々しい姿を見て、二人の子供は心配のあまり、ベッドの左右から真由美の手を握りしめ、涙をポロポロとこぼした。湊の周囲には、重苦しい空気が立ち込めている。傍らにいた警察官が、状況を説明してくれた。「交通事故です。前の車が飲酒運転で、運転手はすでに拘束されています。本来なら奥様の怪我はそこまで酷くならなかったはずなんですが……奥様が腕に小さな子犬を抱えておられまして……」その子犬を守ろうとした結果、真由美は怪我を負ってしまったのだ。遥は驚いて顔を上げた。目の奥が、ツンと熱くなる。警察官が抱いていた小さなマルチーズを、湊の腕の中に渡した。子犬の頭には可愛らしいリボンがつけられている。真由美が結衣にプレゼントするために、心を込めて準備したものであることは一目瞭然だった。結衣はそれを聞いて、途端にしゃくり上げて泣き出した。「ごめんなさい、結衣のせいよ。結衣がワンちゃん欲しいなんて言わなきゃよかった……全部結衣のせいよ。綺麗なおばあちゃん、早く元気になってね……ごめんなさい……」結衣に子犬を買ってくれる途中で、真由美は事故に遭ってしまったのだ。真由美は手を伸ばして、結衣の顔の涙を拭ってやりたかった。だが、力が入らない。ただ、一緒になって涙を流すことしかできなかった。涙が医療機器の上にポタポタと落ちていく。それを見た湊は、歩み寄って真由美の顔の涙を拭った。そして、結衣を優しく宥めた。「大丈夫だよ。おばあちゃんはすぐに元気になるからね」幸い、急所は外れていた。ただ、しばらくの間はゆっくりと休養する必要がある。真由美はもともと体が丈夫だから。それに、九条家は最も優秀な医療チームを呼んで、彼女の治療に当たらせるはずだ。真由美の指が、結衣の小さな手を微かに握り返した。その顔には、結衣
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