湊は首を横に振った。「連れて来なくていい、結衣をゆっくり休ませてやってくれ。それから、小児専門の心理カウンセラーを手配してほしい。俺が刺された時、結衣に見られた気がするんだ」結衣と陽は睡眠薬を飲まされていたが、あかりの両親が薬代をケチって少なめに飲ませていたのだろう。途中で結衣は目を覚ましてしまったのだ。あかりの父親がナイフを振り下ろした瞬間、結衣は目を大きく見開き、湊に向かって叫んだ。湊おじさんではなく、パパだと。湊自身も、あの時自分が見間違いをしたのか、聞き間違いをしたのか分からない。あの時、彼の頭の中にはただ一つの念しかなかった。結衣を、何としてでも守り抜く!もし結衣に何かあれば、遥と真由美は悲しみのあまりどうにかなってしまうだろう。――俺は結衣が生まれた時から、父親として彼女のそばにいられなかった。もしこれで償えるなら、俺の命なんて安いものだ。湊は思った。遥が昔のように自分のことを深く愛していなくて、本当に良かったと。そうでなければ、彼女もまた深く悲しむことになっただろうから。これらの思いを、彼は口には出さなかった。喉が痛くて声が出ないというのもあるが、どう切り出せばいいのか分からなかったのだ。遥は頷いた。病室を出た。ドアを閉め、入り口に立ったまま、遥は自分の心臓が激しく鼓動しているのを感じていた。病室の内と外、二つの心臓が同じように波打ち、高鳴っている。夜の病院は静まり返っていた。時折、通り過ぎる看護師たちが小声で言葉を交わし、言うことを聞かない患者の愚痴や残業への不満を漏らす声が微かに聞こえてくる。誰も気づいていなかった。誰もいない静かな廊下の片隅に。同じように、途方もない喜びに胸を満たしている二人の人がいることを。……それからの二日間。遥はぶかぶかの患者衣を着て、病室で結衣を抱きかかえ、二人で手話の練習をしていた。結衣には怪我はなかった。彼女が覚えているのは、湊が覆い被さるように自分を抱きしめてくれたこと、そしてその後、一面に血が広がったことだけだった。最も凄惨な場面は、見ずに済んだらしい。この二日間、結衣は少しでも時間があると湊の病室へ走って行った。彼の体にたくさんの管が繋がれているのを見ては、ボロボロと泣き出してしまう
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