جميع فصول : الفصل -الفصل 20

38 فصول

11.幸せな時間。

盗撮犯を無事、送り出した後、私たちはシアター内へと戻った。しかし、かなり揉めていたこともあり、戻った時には、もう映画はクライマックスを迎えていた。その為、結局映画はあまり見られなかったのだが、映画館のスタッフの方が、盗撮犯を見つけ、対応してくれたお礼にと、また好きな映画を一本観られるチケットをくれたので、あまり悲しい気持ちにはならなかった。むしろ、それでも盗撮犯を捕まえられたことの方が嬉しく思えた。映画はまた見に行けばいいだけだ。もう日が暮れ始め、街に灯りがつき始めた頃。私たちは映画館から出て、帰る為に駅へと向かっていた。悠里くんと並んで、街の中をゆっくりと歩く。幸せな時間の中で、私は今日という最高の一日に思いを馳せた。今日はとても楽しかった。運命diaryに登場した神社で、たくさん風景や推しの写真を撮り、映画にまで行って…。推しの素晴らしすぎるところをたくさん見れたり、改めて知れたり。推しとたくさんの時間を過ごすことができた今日という日を、きっと私はキラキラと輝く宝物のように大事にし、忘れられないだろう。今日は私にとって人生最高の一日だった。しかしきっと沢村くんにとっては違っただろう。私のせいで。「…沢村くん。さっきはごめんね。私のせいでほぼ映画、見られなくて…」申し訳ない気持ちでいっぱいになり、ぎゅっと両手に握り拳を作る。もっと私が盗撮犯の対応をきちんとできていれば、沢村くんの手を煩わせることなどなかった。動画の保存場所に気づけなかった私のせいで、沢村くんは映画を見られなかったのだ。「え?何で謝るの?鉄崎さんのせいじゃないじゃん」眉間にシワを寄せ、深く反省していると、そんな私に沢村くんの不思議そうな声が届いた。あまりにもあっけらかんとしている沢村くんに、私は驚いて、無言のまま、目を大きくぱちくりさせる。悠里くんはそんな私に優しく続けた。「悪いのはどう考えても盗撮していた人だよ。鉄崎さんは何も悪くない」夕日に照らされる私の推しはなんて眩しい存在なのだろうか。この輝きとかっこよさはきっと世界を救う。「俺、今日、鉄崎さんと一緒にいられてめっちゃ楽しかったよ。鉄崎さんの知らないところとか、知っていたけど改めて知れたところとかも知れて、良かったって思った。本当に楽しかった。ありがとう」夕日を背に、はにかむ沢村くんには
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12.お誘い。

最高すぎた推しとのデートの翌日の放課後。 私は今日も風紀委員室にいた。 そして机を挟んで目の前に座る千晴のことを睨んでいた。 今日こそはきちんと反省文を書かせる為に。 先日は仕事のついでに千晴の反省文の監督をしたせいで、酷い目にあった。 だから今日は仕事もせずに、千晴から片時も目を離さないつもりだ。 少しでもおかしなことを書き始めたら止めてやる。 「ねぇ、先輩」 「ん?」 先日とは違い、一応真面目に反省文を書いていた千晴を睨みつけていると、ふと千晴が思い出したかのように手を止め、顔を上げた。 急にどうした? 「先輩は土日何やってたの?」 「え?土日?」 「そう土日」 千晴からの突然の質問に首を傾げる。 私を見る千晴には、何か意図があるようには見えず、本当に今思ったことをそのまま口にした、という感じだ。 「推し…じゃなくて、沢村くんとデート」 なので、私も特に何も考えずにただ淡々と千晴からの質問に答えた。 「…」 私の答えを聞いた後も、千晴は何も言わずに、ただじっとこちらを見続ける。 そんな千晴の様子に、まだ続きが聞きたいのかな、と思い、私は続けて喋ることにした。 「運命diaryっていう漫画が原作の映画を観に行ったんだけど、その前にその漫画に出てきた神社に行ってきたの。近場にまさかあんな神スポットがあるなんて知らなかったよ」 そこまで言って、制服からスマホを取り出し、ライブラリを開く。そしてその中にある風景の写真や沢村くんの写真を千晴に見せた。 ここまで喋り出すともう止まらない。 「沢村くんかっこいいでしょ?デートのプランも沢村くんが考えてくれて、めっちゃ楽しかったんだよ。沢村くん、すごいスマートで、子どもには優しいし、盗撮犯には毅然と立ち向かうし。困っている人には、平等に手を差し伸べられる素敵な人だったの」 昨日のことを思い出し、思わず締まりのない表情になる。推しが尊すぎて、語っても語っても、語り足りない。 あんな素晴らしい人の彼女になれた私は世界一の幸せ者だ。 ついヘラヘラしたまま千晴を見ると、千晴はどこか面白くなさそうにこちらを見ていた。 …少し語りすぎたようだ。 この話はこれで終わりだ、とライブラリを閉じ、ホーム画面に戻してから、スマホの画面を消
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13.VIPなデートの幕開け。

私が千晴とメルヘンランドに行く、と言ってから、まだ1週間も経っていない。だが、気がつけばその話をした週末、土曜日には、千晴と共にメルヘンランドに行くことが決まっていた。『じゃあ土曜日の10時に先輩の家に迎えに行くから』と、特に何か決めるわけでもなく、ただ一方的に千晴にそう言われて迎えた、約束の土曜日。私は千晴に言われた通り、家で私を迎えにくる予定の千晴を待っていた。ここからメルヘンランドまでは車で約1時間ほどだ。当然、学生である私たちの交通手段に車などなく、行くなら電車かバスでだろう。どちらで行ってもいいのだが、まあ、電車で行くのが無難だ。私たちはまだあちらまで行く交通手段でさえもきちんと決めていなかった。しかし、千晴がうちに来てからそれを決めても、決して遅くはないと考え、私は何も決まっていない現状に何も思っていなかった。約束の時間、10時になった頃。ピンポーンと家のチャイムが鳴り、「あらぁ。どうもぉ」という、お母さんの明るい声が聞こえてきた。おそらく千晴が来たのだろう。そう判断した私は鞄の中身をざっと最終確認すると、階段へと向かった。我が家は階段を降りてすぐそこに玄関がある構造だ。「とっても美人さんねぇ、まさか柚子の彼氏さん?」階段を降りている途中で、そんなことを聞くお母さんの後ろ姿と、お母さんと向き合う千晴の姿が見える。違う違う。彼氏じゃない。それ後輩。お母さんの千晴への質問に思わず私は心の中でツッコミを入れた。「はい、彼氏です」「…っ!?」だが、千晴は私の心の中のツッコミとは裏腹に、さも当然のようにお母さんに自分が彼氏だと頷いた。「違う違う違う!」千晴の衝撃の大嘘に慌てて階段を駆け降りる。そんな私を見てお母さんは「まあ、照れちゃって〜」と、どこか楽しそうにしていた。全く私の言葉など信じていない様子だ。照れていない!訂正しているだけなのに!「先輩、おはよう」慌てて降りてきた私に、混乱の元凶である千晴が平然と微笑む。千晴の今日の格好は、黒の大きめの半袖シャツに黒のスラックスと、全身黒コーデだ。制服姿の千晴しか見たことがなかったので、私服姿の千晴はどこか新鮮で、とても大人っぽかった。ちなみに私の今日の格好は、動きやすいワイドデニムパンツに肩に大きなフリルのある白のキャミだ。髪はいつもとは違い、おろ
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14.お化け屋敷。

買い物を済ませ、バケハを被り、サングラスを付けたら、いよいよメルヘンランド攻略スタートだ。VIPチケットの特典で、どのアトラクションも待ち時間ゼロで遊べるというものがあったので、私たちは早速一番人気の待ち時間200分超えの屋内アトラクションへ行った。たくさんの人が200分待ちの列へと並ぶ中、すいすいと別ルートに案内され、進む私たち。そして本当に待ち時間ほぼゼロで屋内アトラクションに乗れた。とんでもなく楽しい。最高。それから私たちはさらにメルヘンランドを攻めた。ジェットコースターに4Dライド。シアタータイプのものや屋内アトラクション、屋外アトラクションなど。とにかくたくさんのアトラクションを待ち時間ゼロでどんどん体験していった。いろいろなアトラクションを体験した私たちの目に次に留まったのは、廃れたお屋敷が舞台のお化け屋敷だった。楽しげな雰囲気の広がるここメルヘンランド内では、どこか異質で、静かな雰囲気の古めかしいお屋敷。遠い昔に流行り病が原因で亡くなってしまった人たちの幽霊が今もあのお屋敷で彷徨い続け、生者に自分たちと同じような苦しみを望み、死へと誘う、というコンセプトのものらしい。「迫力あるね」 特に何とも思っていなさそうな千晴の横で、私は「…そ、そうだね」と表情をこわばらせた。実は私はお化け屋敷が苦手だった。暗がりから急に誰かから脅かされるという行為がどうしても無理なのだ。先ほどから目につくアトラクション全てを制覇してきた私たちだったが、ここにきて、私から先ほどまでの勢いがなくなった。「先輩、次ここ?」「へ?あ、うん」あー!やってしまった!つい先ほどまでの流れのまま、千晴の問いかけに頷いてしまったことに、心の中で頭を抱える。だが、頷いてしまった以上、「やっぱりやめよう」とは言えない。後輩である千晴に先輩である私の情けない姿は見せたくない。「い、行こ行こ。行ってやろう…っ!」なので、私は自身を鼓舞して、お化け屋敷の方へと足を踏み出した。そんな私の横で千晴が「先輩怖くないの?ここ」と首を傾げる。「…まあ」「ふーん」本当は力強く「全然怖くない」と答えたいところだったが、歯切れの悪い返事となってしまった私を、千晴は何故か黙ってじっと見つめてきた。な、何?やっぱり、嘘だってわかる?「俺、実はこういうのちょっと苦手
last updateآخر تحديث : 2025-12-14
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15.デートの終わり。

「…」疲れた。お化け屋敷からやっと出た私は、もう満身創痍で、千晴に寄りかかっていた。あんなもの入らなければよかった。何も楽しくなかった。「先輩、大丈夫?」ぐったりとしている私の様子を伺う千晴は、私とは違い余裕があり、どこか満足げだ。お化け屋敷が苦手だと言っていたわりには、ずっと平気そうで、私を抱き寄せたまま、腰を抜かす私を何度も何度も庇ってくれた。どうなっているんだ。本当は苦手ではないのか…?千晴に疑念の視線を向け始めた、その時。 「きゃー!」突然、女性の甲高い叫び声がこの場に響いた。 ただ事ではなさそうなその声に、周囲の人々はざわつき始める。声の方へと視線を向ければ、そこには倒れている女性と、女性ものの鞄を抱えて走る、全身黒ジャージの30代くらいの男がこちらに向かって走ってくる姿があった。状況から見ておそらくアイツが女性から鞄を奪ったのだろう。…全く。せっかくのメルヘンランドなのに。全員の楽しい気持ちに水を差す行為、許せない。「…はぁ」ひったくり犯を捕まえる為に、大きなため息を吐き、千晴から離れる。それからひったくり犯を睨みつけて、腕をあげようとした。「先輩、下がって」しかし、そんな私の前に千晴が現れ、左手で私を制止した。あのひったくり犯から私を守ろうとしての行為なのだろう。だが、私にはそんなもの必要ない。お化け屋敷ではぜひ私を守ってもらいたいが。「千晴、大丈夫」私を庇うように立った千晴を避け、こちらに迫ってくるひったくり犯をもう一度睨む。ひったくり犯は目の前に現れた私を見て、「退けや!」とすごい形相で叫んできたが、私は構わず右腕を肩の高さまで上げ、少し曲げて構えた。先ほどまで満身創痍だったはずなのに、体の奥底から力がみなぎる。私の中の正義感がそうさせる。「止まりなさい!」そして私の叫びと共に振り抜かれた右腕は、見事にひったくり犯の首へと当たり、ひったくり犯はその勢いのまま、地面へと仰向きに叩きつけられた。ラリアット成功だ。「…ゔっ」私からラリアットを喰らったひったくり犯は、うめき声を漏らしながらも、表情を歪めていた。とても苦しそうだが、犯罪に手を染めたやつに慈悲など必要ないだろう。「返しなさい、それ」「…あ、は、はい」私に凄まれたひったくり犯は、半泣きで何度も頷き、鞄をこちらに差し出
last updateآخر تحديث : 2025-12-15
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16.同じにしたい。side千晴

side千晴太陽が沈み、パーク内が電飾の海に包まれる。その中で俺の隣を歩く小さな存在に、俺はじんわりと心が暖かくなった。意志の強そうな瞳に、小さな口。綺麗だが、可愛い要素もある、美人な柚子先輩の横顔は、いつまでも見ていられる。先輩を見て俺は改めて、好きだな、と思った。複数の事業を展開する、日本有数のグループ、華守グループの跡取り息子である俺は、生まれた時から特別で、何をしても許される存在だった。周りの大人たちによって勝手に決められたつまらない道に、俺に頭が上がらない全ての人間たち。俺を取り巻く全てがつまらない。そう思って生きてきたが、先輩と出会って全てが変わった。先輩は時に強く、時に優しい人だ。それは誰に対しても同じで、俺に対してもそうだった。そんな先輩が俺は好きだ。今日の先輩も本当によかった。強いところも優しいところも見れたし、何よりも私服の先輩はいつも見る制服の先輩とはまた雰囲気が違い、カジュアルでとても可愛いかった。だが、そんな大好きな先輩に〝彼氏〟ができてしまった。その枠はいずれ俺のものになるはずだったのに。最初、先輩に彼氏ができたと知った時、はらわたが煮えくり返った。心が、体が、不快と怒りに支配され、どうしようもない不快感が俺を襲った。しかし、今はもう落ち着いている。何故なら先輩が彼氏に選んだ相手が、ただの先輩の推しだったからだ。先輩は別にアイツのことを異性として好きではない。ただの推しとして推しているだけだ。先輩からアイツの話を聞くたびに、そこに俺と同じ熱を一切感じなかったので、すぐにそうだとわかった。まあ、だからといって、先輩の口から他の男の話なんて聞きたくないが。だから一刻も早く俺を好きになってもらわなければならない。そうでなければ、この不快な状況がずっと続いてしまう。「うわぁ…」俺の隣にいた先輩がある場所を見て感嘆の声をあげる。先輩の視線の先には、このパークのシンボル、大きな西洋式のお城があった。先ほど先輩と共に軽食を食べた場所だ。ライトアップされているそれは昼間のものとはまた違うものに見えた。一般的な感想を述べるなら、あれは綺麗なのだろう。俺にはただ光っているな、という感想しかないが。けれど、そんなただ光っているだけの建物でも、先輩越しに見れば、何故かとても輝いて見えた。先輩と
last updateآخر تحديث : 2025-12-16
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17.お土産と影。

side柚子沢村くんの名誉ある彼女(上辺だけ)になり、もう1ヶ月。10月に入り、暑さも和らいできた今日この頃。私は今日も朝の委員会活動を終え、教室へと移動していた。そしてその道中、下駄箱でなんと朝練後の私の推しと遭遇した。「おはよう、沢村くん」「あ、鉄崎さん。おはよう」私に挨拶を返して、爽やかに笑う沢村くんは今日も相変わらず眩しすぎる。練習後で暑いだろうに、着崩すことなく、きちんと着ている制服。汗を拭くために首にかけられているタオル。少しだけ乱れているが様になっている髪。練習後にしか得られないかっこよさがそこには確かにあった。推しが尊すぎる。かっこよすぎる。今日も沢村くんのかっこよさに密かに目を奪われていると、ふと、沢村くんの肩にかかった大きな黒リュックでゆらゆらと揺れているあるものに目がいった。沢村くんのリュックでゆらゆらと揺れているのは、メルヘンランドのマスコットキャラクターである、メルヘン猫のぬいぐるみキーホルダーだ。あのふわふわで可愛らしすぎるキーホルダーは以前、私が沢村くんにお土産としてあげたものだった。ーーーーそれは遡ること、約2週間前のこと。*****放課後、たまたま時間が合い、沢村くんと一緒に帰っていた私は満を持して、鞄から可愛くラッピングされた袋を取り出した。「沢村くん!これ!」「…?」私にずいっと袋を押し付けられて、沢村くんが不思議そうにそれを受け取る。「どうしたの、これ?」それから伺うように私を見た。「…あ、あのね。この前、メルヘンランドに行ったから、そのお土産で…」迷惑ではないだろうか、と不安に思いながらも、おずおずと沢村くんを見る。すると、そんな私の不安なんてよそに、沢村くんはまじまじと私が渡した袋を見つめて、とても嬉しそうに目を細めた。「俺のためにわざわざお土産を買ってきてくれたの?嬉しい…。ありがとう、鉄崎さん」「…へ、あ、あ、うん」まさかこんなにも喜んでもらえるとは思わず、私まで嬉しくなり、声がうわずる。推しが私なんかのお土産でこんなにも喜んでくれるとは。買った甲斐があったし、今後どこへ行くにも必ず沢村くんへのお土産を買おうと思えてしまう。推しに貢ごう。絶対…!舞い上がっている私の横で、沢村くんは早速袋を開け、中身を確認すると、「メルヘン猫だ。かわいい」と顔を綻ばせてい
last updateآخر تحديث : 2025-12-17
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18.お願い。

「おはよ、先輩」私の声を流れるように遮った千晴は、何故かそのまま私を後ろから抱きしめてきた。生徒たちの視線が一斉にこちらに注がれている気がする。…何だ、これ。「…おはよう、千晴。離してくれない?」「俺のお願い聞いてくれたら離す」「…お願いぃ?」気怠げな千晴の声に眉間にシワを寄せる。一体お願いとは何なのか。「うん。俺、今回のテストヤバそうでさ。だから先輩に勉強教えてもらいたいんだよね。ダメ?」「なんだ、そんなこと?」未だに私を自身の腕の中へと閉じ込め続ける千晴に、私は思わず苦笑する。お願いだと言うからもっと難しいことでも言われるのかと、身構えてしまったではないか。「勉強くらいいくらでも教えるよ。はい、わかったら離す」千晴のお願いをさっさと聞き入れ、私は自分を離すようにと、後ろに振り向き、グッと千晴の胸を押す。だが、何故か千晴は私を離そうとせず、「もうちょっとだけ」と、私の頭に自分の頭をぐりぐりと押し付けてきた。千晴のせいで私の綺麗な一つ結びがボサボサだ。「やめろバカ!髪がボサボサになっちゃうじゃん!」「そしたら俺がまた結んであげる」「そういう問題じゃない!」先ほどよりももっと力を入れて千晴の胸を押すのだが、びくともせず、私は千晴にされるがままだ。力では敵わないと思い、私は一度千晴から逃れることを諦め、どうすれば自由になれるのか考えることにした。やはりここはみぞおちに一発、私の肘を喰らわせるしか…。「嫌がってるだろ、離れろよ」今まさに千晴のみぞおちを狙いかけたところで、沢村くんがどこか面白くなさそうに私たちを見て、千晴の肩を掴む。「は?何、お前?」「鉄崎さんの彼氏だけど」「…」「…」それから2人は、私を挟んで、千晴がにこやかに、沢村くんが怖い顔で、静かに互いを睨んだ。間に挟まれた私はとんでもない空気に1人晒される。…居心地が悪すぎる。「…千晴、私を離しなさい。あと沢村くんを睨むな」もう我慢の限界だと、できるだけ怖い顔で千晴の頬を掴んで横に引っ張る。私の推しを睨むだなんて言語道断。許されるものではない。私に頬を引っ張られた千晴は何故か嬉しそうに「はぁい」と間の抜けた返事をし、やっと私から離れた。千晴から解放された私はそのまま自由になった体で、千晴の方へと振り向き、千晴を見据える。「…それでいつ勉強教
last updateآخر تحديث : 2025-12-18
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19.わかっていない。

「…かっこいい」お昼休み。私は今日も教室の窓際の席で雪乃と弁当を食べながら、外でバスケをしている私の推しこと、沢村くんのことを見つめ、うっとりとしていた。今日のような沢村くんと一緒に昼食を食べられない時は、決まって沢村くんはいつもあそこでバスケをしている。それが私と付き合う前からの沢村くんのお昼の過ごし方で、私と付き合うようになってから、沢村くんは週に2回ほど私の為に時間を作り、私と一緒に昼食を食べてくれていた。全て彼氏としての責任感から。絶対私と昼食を食べるよりも、気心の知れた友人たちとバスケをしている方が楽しく、有意義なはずだ。それなのに、ただ付き合っているというだけで、私の為にわざわざ時間を作ってくれるとは、なんて私の推しは優しく、完璧で究極の彼氏なのだろうか。「…はぁ、かっこいい」ボールを持つ沢村くんの周りに集まってきた相手チームの男子生徒たちを難なくかわし、遠くから綺麗なフォームでシュートを決めた沢村くんに、思わず感嘆の息が漏れる。沢村くんを見ながら食べる白米が一番美味しい。「…ふ、相変わらず好きだねぇ、王子のこと」「へ?まあ、うん。好きだね」私の視線の先に気づいた雪乃が揶揄うように笑ってきたので、私は当然だと頷いた。雪乃の言っていることに間違いは一つもない。私は沢村くんのことが好きだ。「アツアツね。最近、様になってきたよ、2人とも。ちゃんと付き合っているように見える」「本当?私ちゃんと彼女できてる?」「できてるできてる」私の言葉に気だるげに頷く雪乃に私はホッとする。以前、付き合いたての頃、私たちは本当に付き合っているのか、と疑われるような関係だった。だが、この1ヶ月で、登下校や昼食を共にし、デートまでした私たちは、もう誰もが認めるカップルとして定着しつつある。この学校で沢村くんに興味を持つ者で、私が彼女だという事実を知らない者はおそらくいないだろう。私はしっかりと彼女という名の壁になるという役割を果たせているようだ。「けど、まだ危ういよね、アンタ」「え?私?」窓際からさっさと弁当へと視線を戻し、卵焼きを口に入れた雪乃に私は首を傾げる。危うい?私が?「千晴くん。あれ、どうすんの?」「へ?千晴?」考えてもよくわからないので、じっと雪乃の次の言葉を待っていると、雪乃から何故か千晴の名前が出てきて、私
last updateآخر تحديث : 2025-12-19
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20.勉強会ですよ?

放課後。ホームルームが終わり、いつものように荷物をまとめていると、教室内がやけに騒がしいことに気がついた。「なぁ、何でアイツがここにいるんだ?」「だ、誰か、反感を買った命知らずな奴がいるとか?」「怖いけどかっこいいよね…」「話しかけたいけど、無理だよねぇ、普通に怖い」騒つく生徒たちの声に何となく誰が現れて教室内がこうなったのか察する。こんなにも必要以上に恐れられ、だが、かっこいいと騒がれる特殊な生徒なんて、この学校には1人しかいない。荷物をまとめ終え、全員の視線が集まる扉の方へと視線を向けてみると、そこには予想通りの人物が開いている扉の枠に体を預け、こちらをじっと見ていた。その人物、千晴が出入り口を塞いでいるせいで、誰もその扉を使えず、仕方なくもう一つの扉からそそくさと出て行っている。その姿に、私はため息を漏らした。全く、この教室にいる全員の帰る邪魔をするなんて。「ちょっと、千晴…」鞄を急いで持ち、呆れたように千晴の元へ行くと、そんな私を見て、千晴の表情は無表情から柔らかい笑顔へと変わった。「先輩、迎えに来たよ」「はいはい。全く。邪魔になってるよ。そこ」「邪魔?なんで?」私に呆れられながら注意された千晴が不思議そうに私を見る。何故、自分が邪魔になっているのか、全くわからないといった様子だ。…逆に何故、自分が邪魔になっていると思えないのか知りたい。「こんなに大きな奴が出入り口塞いでたら通れないでしょ」「人が来たら避けるけど」「そういう問題じゃない。みんなアンタが怖いの」私にそこまで説明され、千晴はどこか不服そうに急に黙る。それからほんの少しだけ間を置いて、伺うように私を見た。「先輩も俺のこと怖い?」先ほどの柔らかい笑みを消し、私の本心を探るようにこちらをまっすぐと見つめる千晴。私よりも全然大きいのに、まるで小さな子どものようにこちらを見る千晴に、何を言っているんだ、と私は鼻で笑った。「怖いわけないでしょ?私は千晴が邪魔なとこにいたら、ちゃんと邪魔って言うから」私は泣く子も黙る、この学校の風紀委員長なのだ。一生徒のことを怖いだなんて思うわけがない。そもそも千晴は素行が悪く、見た目が派手なだけで、怖いやつではない。私を害そうとしてきたことなんてもちろんないし、もし仮に千晴が私を害そうとしようものなら、あらゆ
last updateآخر تحديث : 2025-12-20
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