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16.同じにしたい。side千晴

last update Last Updated: 2025-12-16 11:06:37

side千晴

太陽が沈み、パーク内が電飾の海に包まれる。

その中で俺の隣を歩く小さな存在に、俺はじんわりと心が暖かくなった。

意志の強そうな瞳に、小さな口。

綺麗だが、可愛い要素もある、美人な柚子先輩の横顔は、いつまでも見ていられる。

先輩を見て俺は改めて、好きだな、と思った。

複数の事業を展開する、日本有数のグループ、華守グループの跡取り息子である俺は、生まれた時から特別で、何をしても許される存在だった。

周りの大人たちによって勝手に決められたつまらない道に、俺に頭が上がらない全ての人間たち。

俺を取り巻く全てがつまらない。

そう思って生きてきたが、先輩と出会って全てが変わった。

先輩は時に強く、時に優しい人だ。

それは誰に対しても同じで、俺に対してもそうだった。

そんな先輩が俺は好きだ。

今日の先輩も本当によかった。

強いところも優しいところも見れたし、何よりも私服の先輩はいつも見る制服の先輩とはまた雰囲気が違い、カジュアルでとても可愛いかった。

だが、そんな大好きな先輩に〝彼氏〟ができてしまった。その枠はいずれ俺のものになるはずだったのに。

最初、先輩に彼氏ができたと知った時、はらわたが煮えくり返った。

心が、体が、不快と怒りに支配され、どうしようもない不快感が俺を襲った。

しかし、今はもう落ち着いている。

何故なら先輩が彼氏に選んだ相手が、ただの先輩の推しだったからだ。

先輩は別にアイツのことを異性として好きではない。

ただの推しとして推しているだけだ。

先輩からアイツの話を聞くたびに、そこに俺と同じ熱を一切感じなかったので、すぐにそうだとわかった。

まあ、だからといって、先輩の口から他の男の話なんて聞きたくないが。

だから一刻も早く俺を好きになってもらわなければならない。

そうでなければ、この不快な状況がずっと続いてしまう。

「うわぁ…」

俺の隣にいた先輩がある場所を見て感嘆の声をあげる。

先輩の視線の先には、このパークのシンボル、大きな西洋式のお城があった。

先ほど先輩と共に軽食を食べた場所だ。

ライトアップされているそれは昼間のものとはまた違うものに見えた。

一般的な感想を述べるなら、あれは綺麗なのだろう。

俺にはただ光っているな、という感想しかないが。

けれど、そんなただ光っているだけの建物でも、先輩越しに見れば、何故かとても輝いて見えた。

先輩と
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    私が千晴とメルヘンランドに行く、と言ってから、まだ1週間も経っていない。だが、気がつけばその話をした週末、土曜日には、千晴と共にメルヘンランドに行くことが決まっていた。『じゃあ土曜日の10時に先輩の家に迎えに行くから』と、特に何か決めるわけでもなく、ただ一方的に千晴にそう言われて迎えた、約束の土曜日。私は千晴に言われた通り、家で私を迎えにくる予定の千晴を待っていた。ここからメルヘンランドまでは車で約1時間ほどだ。当然、学生である私たちの交通手段に車などなく、行くなら電車かバスでだろう。どちらで行ってもいいのだが、まあ、電車で行くのが無難だ。私たちはまだあちらまで行く交通手段でさえもきちんと決めていなかった。しかし、千晴がうちに来てからそれを決めても、決して遅くはないと考え、私は何も決まっていない現状に何も思っていなかった。約束の時間、10時になった頃。ピンポーンと家のチャイムが鳴り、「あらぁ。どうもぉ」という、お母さんの明るい声が聞こえてきた。おそらく千晴が来たのだろう。そう判断した私は鞄の中身をざっと最終確認すると、階段へと向かった。我が家は階段を降りてすぐそこに玄関がある構造だ。「とっても美人さんねぇ、まさか柚子の彼氏さん?」階段を降りている途中で、そんなことを聞くお母さんの後ろ姿と、お母さんと向き合う千晴の姿が見える。違う違う。彼氏じゃない。それ後輩。お母さんの千晴への質問に思わず私は心の中でツッコミを入れた。「はい、彼氏です」「…っ!?」だが、千晴は私の心の中のツッコミとは裏腹に、さも当然のようにお母さんに自分が彼氏だと頷いた。「違う違う違う!」千晴の衝撃の大嘘に慌てて階段を駆け降りる。そんな私を見てお母さんは「まあ、照れちゃって〜」と、どこか楽しそうにしていた。全く私の言葉など信じていない様子だ。照れていない!訂正しているだけなのに!「先輩、おはよう」慌てて降りてきた私に、混乱の元凶である千晴が平然と微笑む。千晴の今日の格好は、黒の大きめの半袖シャツに黒のスラックスと、全身黒コーデだ。制服姿の千晴しか見たことがなかったので、私服姿の千晴はどこか新鮮で、とても大人っぽかった。ちなみに私の今日の格好は、動きやすいワイドデニムパンツに肩に大きなフリルのある白のキャミだ。髪はいつもとは違い、おろ

  • 推しに告白(嘘)されまして。   12.お誘い。

    最高すぎた推しとのデートの翌日の放課後。 私は今日も風紀委員室にいた。 そして机を挟んで目の前に座る千晴のことを睨んでいた。 今日こそはきちんと反省文を書かせる為に。 先日は仕事のついでに千晴の反省文の監督をしたせいで、酷い目にあった。 だから今日は仕事もせずに、千晴から片時も目を離さないつもりだ。 少しでもおかしなことを書き始めたら止めてやる。 「ねぇ、先輩」 「ん?」 先日とは違い、一応真面目に反省文を書いていた千晴を睨みつけていると、ふと千晴が思い出したかのように手を止め、顔を上げた。 急にどうした? 「先輩は土日何やってたの?」 「え?土日?」 「そう土日」 千晴からの突然の質問に首を傾げる。 私を見る千晴には、何か意図があるようには見えず、本当に今思ったことをそのまま口にした、という感じだ。 「推し…じゃなくて、沢村くんとデート」 なので、私も特に何も考えずにただ淡々と千晴からの質問に答えた。 「…」 私の答えを聞いた後も、千晴は何も言わずに、ただじっとこちらを見続ける。 そんな千晴の様子に、まだ続きが聞きたいのかな、と思い、私は続けて喋ることにした。 「運命diaryっていう漫画が原作の映画を観に行ったんだけど、その前にその漫画に出てきた神社に行ってきたの。近場にまさかあんな神スポットがあるなんて知らなかったよ」 そこまで言って、制服からスマホを取り出し、ライブラリを開く。そしてその中にある風景の写真や沢村くんの写真を千晴に見せた。 ここまで喋り出すともう止まらない。 「沢村くんかっこいいでしょ?デートのプランも沢村くんが考えてくれて、めっちゃ楽しかったんだよ。沢村くん、すごいスマートで、子どもには優しいし、盗撮犯には毅然と立ち向かうし。困っている人には、平等に手を差し伸べられる素敵な人だったの」 昨日のことを思い出し、思わず締まりのない表情になる。推しが尊すぎて、語っても語っても、語り足りない。 あんな素晴らしい人の彼女になれた私は世界一の幸せ者だ。 ついヘラヘラしたまま千晴を見ると、千晴はどこか面白くなさそうにこちらを見ていた。 …少し語りすぎたようだ。 この話はこれで終わりだ、とライブラリを閉じ、ホーム画面に戻してから、スマホの画面を消

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