「本当に……本当に、ごめんなさい!」田中くんの声が、会議室に響いた。床に額がつくほど、深く頭を下げている。その肩が、激しく上下していた。私は、何も言えなかった。3ヶ月ぶりに見る田中くんは、あの日よりも少しだけ大人びて見えた。でも、今は子供のように泣いている。「田中くん……」私が声をかけると、田中くんは顔を上げた。目が、涙で真っ赤に腫れていた。「あの事故……僕のミスでした」田中くんが、かすれた声で続ける。「咲希さんが、伝達メモを何部も作ってくれて、口頭でも確認してくれていたのに……」田中くんは、自分の顔を両手で覆った。「僕が……僕が甘く考えていたんです」総支配人が、静かに促した。「田中シェフ、続けなさい」「はい……」田中くんは涙を拭い、もう一度私の方を向いた。「あの日、僕は特製ソースにヘーゼルナッツペーストを加えました。アレンジのつもりで」震える声。「伝達メモは……見ていました。『ナッツ類厳禁』と書いてあったのに……」田中くんの拳が、きつく握られた。「『少しなら大丈夫だろう』『ソースに混ぜれば分からないだろう』と……そう思ってしまったんです」会議室が、しんと静まり返った。「レイラちゃんが倒れた時、目の前が真っ白になって。怖くなって……言えませんでした」田中くんは、再び床に手をついた。「咲希さんが、全部かぶってくれて……」肩が、小刻みに揺れている。「僕、ずっと苦しかったんです。咲希さんが犠牲になって、自分だけ料理人を続けていることが」
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