「銀行の振込記録だ。君の実家への送金記録が、メディアに流出した」その言葉と共に差し出されたスマホの画面には、生々しい数字が並んでいた。250万。それは、家政婦として働いた数ヶ月分の給料を、実家に送ったものだ。少しでも実家の助けになればと思って送ったお金が、今は私たちを引き裂く『証拠』として、ネットの海で嘲笑の対象になっている。「SNSでは、昨日の会見以上に炎上している。『純愛の皮を被った人身売買だ』と叩く声が止まらない」蓮さんは、スマホを見た。その画面には、既に多くの記事が並んでいた。『氷室蓮の婚約者は元家政婦!契約結婚の疑惑』『シンデレラストーリーの裏に隠された真実』『氷室グループ御曹司、偽装婚約か』手のひらに、じっとりと汗が滲んだ。蓮さんは、私の手を取った。「大丈夫。今日、全てを話す」力強い声だった。「さっきも話しただろう。一緒に戦うと」胸が熱くなった。「はい」強く頷くと、蓮さんは私の手をそっと握り返した。◇午前9時。神崎さんが、急いでペントハウスにやって来た。「氷室様、状況は刻一刻と悪化しています」神崎さんがタブレットを見せる。そこには、SNSの投稿が次々と流れていた。『やっぱり金目当てじゃん』『家政婦から婚約者って、完全に玉の輿狙い』『氷室蓮も騙されてるんじゃない?可哀想』『偽装婚約確定でしょ。祖父を騙すための茶番』『氷室蓮、女を見る目なさすぎ。家政婦に金掴まされて、骨抜きにされたか』一つ一つの言葉が、鋭い刃物のように胸に突き刺さる。『家政婦に金掴まされて骨抜きにされた』その言葉を見た瞬間、怒りが込み上げてきた。蓮さんが私に騙されているとでも言うのか。昨夜、二人で想いを確かめ合った時間は?あの温もりは?あのキスは?全部、嘘だったとでも?
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