「お待たせしました」 私は湯気の立つ器をレンくんの前に置いた。参鶏湯(サムゲタン)風の薬膳粥だ。 トロトロに煮込まれたもち米と、スプーンで崩せるほど柔らかな鶏肉。余計な味付けはせず、塩だけで素材の旨味を引き出している。 レンくんは震える手でスプーンを握ろうとしたが、力が入らないようだった。カチャン、とスプーンが皿に当たる。「私がやります。任せて」 私はスプーンを取り、お粥をひとすくいした。フーフーと息を吹きかけて適温にする。「はい、あーん」 恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。今は緊急事態だ。 レンくんはすがるような目で私を見つめる。おそるおそる口を開けた。 スプーンが口の中に消えた。「…………」 彼がゆっくりと口を動かした。その瞬間、大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。「……味が、する」 噛み締めるような声が、静かな部屋に響く。「砂じゃない……。生きてる味がする……」 彼は私の手首を掴み、むさぼるように2口目を求めた。 止まっていた心臓が再び鼓動を打ち始めるように、彼の体に「生」が満ちていく。 3口、4口。涙を流しながら、彼はひたすらに命を飲み込んでいった。 完食して器が空になると、彼は力が抜けたように私の肩にもたれかかった。骨ばった背中が痛々しいけれど、そこには確かに温かい熱が戻っていた。「……もう二度と離さない」 私の背中に回された腕に、強く力が込められる。「離れないでくれ。お前がいないと、俺は息ができない。この何日かで思い知った」「はい。もう離れません。私も思い知りました。私にだって、レンくんがいないと駄目なんです」 私は彼を抱きしめ返す。その背中を優しく撫でた。「私がレンくんの命を守ります。もうどこにも行きません
Last Updated : 2026-02-03 Read more