ドサッ、と重たい音がリビングに響いた。無造作にローテーブルに投げ出されたのは、分厚い書類の束だった。「損害賠償の試算表だ。これに加えて、スポンサー3社からの契約解除通知、および違約金の請求書が上乗せされる」 ソファの向かい側に座った初老の男――Noixが所属する事務所の社長が、冷たい声で告げた。 怒鳴り声ではない。感情の一切を消し去った、事務的な通告だ。それが余計に事態の重さを物語っていた。 私は恐る恐る、一番上の書類に目を落とした。 桁が多い。いち、じゅう、ひゃく……。ゼロの羅列を目で追ううちに、指先から血の気が引いていくのが分かった。「小日向紬さん。君の人生を何十回売っても、この端数すら払えない額だよ」「……っ」 呼吸が止まる。私のせいで。私が調子に乗って、彼らの「聖域」に踏み込んだせいで。 Noixが築き上げてきた栄光が、数字という乾いた現実で解体されようとしている。「払います!」 沈黙を切り裂いたのは、レンくんの声だった。彼は私の手を強く握りしめたまま、社長を睨みつけていた。「俺の貯金も、資産も全部売る! それで足りなければ一生タダ働きでもなんでもする! だから……紬を責めるな。無理やり連れ込んだのは俺なんだ!」 悲痛な叫びだった。私の手を握る彼の手のひらは、冷え切ってしまっている。 しかし社長は眉ひとつ動かさなかった。「ほう? お前が払うか。……だが綺更津、金で解決できるのは『事務所』の懐事情だけだ」 社長は冷酷な目で、レンくん、そしてハルくんとセナさんを見回した。「失った信用は金では買えない。世間は君たちを『ファンを欺いた裏切り者』として見ている。この女を匿っていた共犯者としてな」「待ってください社長!」 ハルくんが身を乗り出した。いつもの明るさは消えて、必死の形相だ。「紬ちゃんがいなきゃ、レンくんはダメになるんです! 飯も食えなくなるし
최신 업데이트 : 2026-01-26 더 보기