ドームの巨大モニターにレンくんが映し出された。カメラが彼の左手首をズームアップする。「ッ……!」 私は息を止めた。きらびやかなゴールドの衣装と、高級なアクセサリー。その袖口から覗いていたのは、青と銀の刺繍糸で編まれた不格好なミサンガだった。 私が編んだものだ。手芸屋さんの糸で夜なべして編んだ、子供騙しのような手作り品。数百万円のハイブランドのブレスレットを外してまで、彼はそれを身につけていた。 5万人の視線が集まる、この晴れ舞台で。(バカ……。あんな安物、衣装に合わないのに……) 視界がにじむ。涙があふれてくるのを止められない。バラードの新曲が静かに、けれど力強く響き始めた。『♪雨の夜に迷い込んだ温もりを――』 彼が歌い出す。その歌声は技術を超えた「魂の叫び」のように響いた。歌詞の言葉ひとつひとつが、私との思い出をなぞっている。 雨の日の出会いと温かいスープ。繋いだ手の熱さ。 彼は時折、客席を見渡すように顔を上げる。けれどその視線の先は、カメラでも2階席でもない。まっすぐにアリーナ最前列の、私の方へと向けられていた。(見ないで。そんな目で見ないで。みんなにバレちゃうよ) 私は必死に顔を伏せようとした。でも目が離せない。彼の歌声が、見えない糸となって私を縛り付けている。 曲がクライマックスを迎える。壮大な弦楽器の音色が響き渡り、最後のフレーズが紡がれる。『♪この誓いは、永遠に解けない――』 歌い終わりと同時だった。レンくんはマイクを持ったまま、左手首を口元へと引き寄せた。巨大モニターにその仕草が大写しになる。 彼は愛おしそうに目を閉じる。長い睫毛がスポットライトを浴びて、彼のまぶたに影を落とした。 彫像のように美しい姿のまま――青いミサンガに唇を押し付けた。 チュッ。 マイクが衣擦れの音と共に、微かなキスの音まで拾った。「キャァァァァァァァァ――ッ!!!」
최신 업데이트 : 2026-01-21 더 보기