美味しい。その言葉が出る前に、体が反応しているのが分かった。 野菜の味が濃い。鶏肉は驚くほど柔らかく、ナッツの食感がアクセントになって飽きが来ない。何より、「食べても太らない」という安心感が、彼女の食欲を刺激したようだ。「うめー! このパンケーキ、豆腐なの? もちもちじゃん!」「いつもと雰囲気が違うメニューなのに、どれも美味い」 横でハルくんとレンくんが勢いよく食べている。 セナさんも笑みを浮かべながら食事を進めている。 リカさんは無言だったが、フォークを止めることなく、サラダもスープもパンケーキまできれいに完食してしまった。「……悔しいけど、悪くないわね」 ナプキンで口元を拭い、彼女は不本意そうに呟いた。 完勝ではなくとも、判定勝ちくらいは取れただろうか。◇ 食後のハーブティーを出す頃には、リカさんの態度は少しだけ軟化していた。けれど帰り際、彼女は玄関でヒールを履きながら、私に冷たい視線を向けた。「料理の腕は認めるわ。でも、勘違いしないでね」 彼女は隣に立っていたレンくんの腕に、今度はしっかりと触れた。「貴女はあくまで裏方。レンの隣に立って絵になるのは、私みたいな『選ばれた女優』だけよ」「……おい」 レンくんが低い声を出したが、リカさんは構わずに続けた。「来週の『ドラマ制作発表パーティー』、レンも来るでしょ? そこで格の違いを見せてあげるわ。……じゃあね、レン! 来週楽しみにしてる!」 彼女は最後に私を鼻で笑うと、風のように去っていった。◇ リカさんが去った玄関で、私は小さく息を吐いた。「あんな奴の言うこと、気にするな」 レンくんが私の肩を抱き寄せてくれる。彼の体温が温かい。けれど私の心には、リカさんが残した言葉が棘のように刺さっていた。『選ばれた女優』と『裏方』。
최신 업데이트 : 2026-01-15 더 보기