Semua Bab 塩対応の国宝級アイドルは、私の手料理がないと生きていけないらしい: Bab 171 - Bab 180

198 Bab

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 不安がないと言えば嘘になる。 だが、あれほど楽しそうに自分たちの才能の羽を広げている子供たちを見ていると、私の迷いなどちっぽけなものに思えてきた。 私がすべきことは、親の不安を押し付けることではない。 彼らがどんなに高く飛んでも、疲れた時に必ず帰ってこられる温かい場所を作ることだ。 私は目の前の食材に意識を戻した。 今日の夕食は、初めての撮影を明日に控えた彼らのための特別なメニューだ。「よし。お肉の下ごしらえは完了」 塩コショウで下味をつけた鶏もも肉に、薄く小麦粉をまぶす。 熱したフライパンにオリーブオイルをひき、鶏肉を皮目から並べ入れた。 ジューッという激しい音と共に、香ばしい匂いが立ち上る。 皮がパリッと黄金色に焼けたら裏返し、中までじっくりと火を通していく。 そこにスライスした新鮮なレモンと、フレッシュなローズマリーの枝を投入した。 柑橘の爽やかな酸味とハーブの清涼感のある香りが、フライパンの中で鶏肉の脂と混ざり合う。 疲労回復に効果的なクエン酸をたっぷり含んだ「鶏肉のレモンハーブソテー」だ。 鶏肉に火を通している間に、手早く付け合わせを仕上げていく。 鮮やかな赤と黄色のパプリカを細切りにし、さっと塩ゆでしたスナップエンドウと一緒にボウルへ。 オリーブオイル、レモン汁、少量の蜂蜜と粒マスタードを混ぜ合わせた自家製ドレッシングで和えれば、彩り豊かなマリネの完成だ。 視覚からも食欲を刺激し、ビタミンもたっぷりと補給できる。 さらに、胃腸を温めるために温かいスープを用意する。 玉ねぎ、人参、セロリを細かく刻んでじっくりと炒め、透き通るような琥珀色のコンソメスープに仕上げた。 野菜の甘みが溶け込んだ優しい味わいだ。 野菜嫌いで偏食気味なセナさんでも、これなら文句を言わずに食べてくれるはず。 大きなお皿の真ん中に、こんがりと焼けた鶏肉を乗せ、レモンの輪切りを飾る。その横に彩り豊かなマリネを添えた。 土鍋の蓋を開けると、ふっくらと炊き上がった白米がツ
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 食後のお茶を飲みながら、話題は明日の撮影のことになった。 セナさんがタブレットを取り出し、画面をタップする。「明日のスケジュールを最終確認しておきましょう。香盤表によれば、スタジオ入りは午前9時。我々Noixのスタッフを3名、警備として配置済みです。クライアントへの挨拶からスタッフの動線の確保まで、全て手配完了しています」「さすがセナお兄ちゃん! 抜かりないね」 ハルくんが感心したように声を上げた。「伊織、茉莉。今日のレッスン通りにやれば、絶対に大丈夫だからね。明日はカメラの前で、一番かっこいい顔と一番可愛い顔を見せてやるんだよ!」 ハルくんが2人の前にしゃがみ込み、拳を握ってみせた。「うん! 伊織、かっこよくできるよ!」「茉莉も、可愛いお姫様になる!」 双子は不安を見せるどころか、自信に満ちた声で力強く返事をした。「俺もカメラの裏から見守ってる。だから、いつも通りでいいんだ。お前たちの笑顔が、一番の武器なんだからな」 パパの言葉に、伊織と茉莉は安心しきったように笑い合った。「俺が初めての撮影の時は、緊張しすぎて顔が引きつってたからな。あいつら、俺より度胸があるかもしれない」 レンくんが自嘲気味に呟くと、ハルくんがすかさず突っ込んだ。「レンくん、あの時ロボットみたいにガチガチだったもんね。今でも動画残ってるよ!」「うるさい、オレンジ頭。あれはもう消去しろって言っただろ」「あはは、やだね! このネタは一生擦ってやる」 微笑ましいやり取りを見つめながら、私は深く息を吸い込んだ。 もう、迷いも恐怖もない。 伊織と茉莉の無限の可能性を信じる。 この小さな星たちが明日どんな輝きを放つのか、一番近くで見届けよう。 レンくんが立ち上がり、伊織と茉莉の頭を大きな手で優しく撫でた。「明日はいよいよ本番だ。今日はもう、しっかりお風呂に入って早く寝るぞ。肌のコンディションを整えるのも、モデルの立派な仕事だからな」「はーい!」
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178:モデルデビューの日

「伊織くん、茉莉ちゃん。今日はこちらのAスタジオになります。どうぞ」 分厚い防音扉が押し開けられる。 スタッフの声に導かれて、私たちはフォトスタジオの中へ足を踏み入れた。 このスタジオは都内でも有数の規模を誇る大型なもので、中はとても広い。 天井を見上げれば、見慣れない巨大な照明機材が格子状のレールにいくつもぶら下がっている。 床には無数の黒いケーブルが這い回り、大きなレフ板や送風機があちこちに配置されていた。「わぁ……! ここ、おっきいね!」「パパがいつもお仕事してる場所みたい!」 伊織と茉莉は、大勢の大人たちが行き交う慌ただしい空間を前にしても、泣き出すどころか目を輝かせて歓声を上げた。 私と手を繋いだまま、スタジオの隅々まで興味津々といった様子で見回している。 本来ならば、5歳の子供にとってこれほど非日常的で物々しい環境は、怖がってしまってもおかしくない。 事実、私自身も張り詰めた現場の空気に少しだけ肩をこわばらせていた。「おい、そこのケーブル。しっかりテープで床に固定しておけ。子供たちが足を引っ掛けたらどうするつもりだ」 私の隣を歩くレンくんが、眉間に深いシワを寄せてスタッフに指示を飛ばしている。 今日は彼も「Noix(ノア)の綺更津レン」としてではなく、双子の保護者として同行していた。 セナさんが事前に手配してくれた通り、スタジオの出入り口から楽屋の廊下に至るまで、Noixの現場でよく顔を合わせる信頼のおける警備員やスタッフが立っている。 外部のマスコミや不審な人間が入り込む隙は一切ない、鉄壁のセキュリティ体制が敷かれていた。「レンくん、そんなに怖い顔をしないでね。スタッフの皆さんも細心の注意を払ってくださっているんだから」「分かってる。だが、万が一ということもある。あいつらに怪我でもさせたら……」「大丈夫ですよ。ほら、伊織も茉莉もこんなに楽しそう」 私が2人の姿を目で示すと、レンくんは少しだけ目元を緩めた。
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 慣れない環境での緊張をほぐし、脳に糖分を補給させるために用意してきたのだ。もちろん、私の手作りである。「わあ! ママのゼリーだ!」「食べる! あーんして!」 2人が鳥のヒナのように口を大きく開ける。 私は小さなフォークでゼリーを刺し、順番に口へと運んであげた。「ん〜っ! つめたくて美味しい!」「お口のなかでちゅるんって溶けちゃった!」 幸せそうに頬を抑える2人の笑顔に、メイクスタッフたちからも「可愛い!」と黄色い声が上がる。 うんうん、うちの子たちは可愛いでしょう!「やっほー、伊織、茉莉! ハルお兄ちゃんが応援に来たよー!」 突然、メイクルームのドアが勢いよく開いた。 何事かと振り返ると、オレンジ髪の遊馬ハルくんが満面の笑みで飛び込んできたところだった。 その後ろからは、葛城セナさんが静かな足取りで部屋に入ってくる。 2人は自分たちの仕事の合間を縫って、わざわざ駆けつけてくれたのだ。 スタッフたちから「嘘、Noixの葛城セナと遊馬ハル?」「わざわざ応援に来たの?」と声が上がる。 ……レンくんが仕事を休んで付き添っただけでも大変だったのに、まさかセナさんとハルくんまで来るとは。 彼らの双子溺愛っぷりは本物である。「ハルお兄ちゃん! セナお兄ちゃん!」「まったく、ハルは声が大きすぎます。子供たちが驚くでしょう」 セナさんは呆れたようにため息をつきつつ、伊織の頭を優しく撫でた。「あなたたちなら何の問題もありませんよ。いつものように、楽しんできなさい」「昨日のレッスンの成果、しっかり見せてやれよ! カメラに向かってバーンって決めるんだぞ!」 ハルくんが拳を突き出してウインクをする。 双子も「うん! バーンってやる!」と元気に拳を突き返した。「さあ、お着替えが完了しましたよ。スタジオへ行きましょう」 綺麗に仕上げてもらった伊織と茉莉は、もう天使としか思えないほど可愛ら
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 先ほどまで無邪気にはしゃいでいた5歳児の顔が消え、被写体としての『プロ』の顔が引き出される。 伊織は昨晩のリビングでのレッスンで掴んだコツを活かし、サロペットのポケットに軽く両手を突っ込んだ。  あごを少し引き、キャップのつばの下から、大人顔負けのクールな流し目をレンズへ向ける。 だが、ただ気取っているだけではない。  小道具として渡されたアンティーク調の望遠鏡をパッと構えると、レンズ越しに私とレンくんの方を見て「あ、パパ見つけた!」と無邪気な笑顔を弾けさせた。 計算されたクールさと、作り物ではない子供らしい好奇心。  その2つが見事なバランスで融合している。「素晴らしい! その表情、すごくいいよ! 目線をもう少し右に流してみて!」 カメラマンの要求に、伊織は言葉を持たずに顔の角度で応えてみせた。「完璧だ! 茉莉ちゃん、次は満面の笑みでお願いできるかな!」 ディレクターの指示に、茉莉は小首を右に傾け、カメラに向かってパチンとウインクを飛ばした。  両手を広げてクルクルとその場で回り出す。イエローのキュロットスカートが花びらのようにふわりと舞い上がった。「茉莉、お花畑を飛んでるの! パパ、見てる?」 心から楽しそうに笑い声を上げ、カメラの枠の中で軽やかにステップを踏む。  その笑顔は太陽のように明るく、周囲のスタッフたちの顔まで自然とほころばせていく。「すごい……本当に5歳児か!? 指示に対するレスポンスが早すぎる!」「照明さん、もう少しサイドの光を弱めて! 彼女たちの自然な肌の質感を活かしたい!」 現場の熱気が一気に高まっていく。  モニターに映し出される写真の数々に、ディレクターは興奮を隠しきれない様子で拳を握りしめていた。「まさに私が求めていた逸材だ! 完璧なポージングの中に、決して失われない天真爛漫な子供らしさがある。このギャップがたまらない!」 リテイクが皆無の状態である。  一着目の撮影は、なんと予定の半分の時間で終了してしまった。「お疲れ様!
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「よし、今度は少し大人っぽい雰囲気でいきましょう。2人で手を繋いで、ゆっくり歩いてきて」 カメラマンの指示を受け、伊織がスッと右手を差し出した。  茉莉がその手を取り、チュールスカートの裾を左手で上品につまみ上げる。  双子はカメラのフラッシュを浴びながら、堂々とした足取りでホリゾントの中央へと進み出た。「いいね、その凛とした表情! 伊織くん、茉莉ちゃんをエスコートするみたいに少しだけリードして!」「はーい!」 伊織が茉莉の手をそっと引き、カメラに向かって優雅に微笑む。  茉莉は伊織の肩に少しだけ顔を寄せて、はにかむような笑顔を見せた。 もはや指示を出す必要がないほど、2人はカメラの前で完全に自分たちの世界を作り上げていた。 その時だ。  カメラのすぐ横、ディレクターの後ろから、急に奇妙な動きをする人物が現れた。「ほーら! 伊織、茉莉! こっち見ろ! パパの顔、面白いだろ! びよ〜ん!」 なんと天下のトップアイドルであるレンくんが、両手で頬を引っ張り、目をひんむいて全力の変顔を披露していたのだ。  子供たちの緊張を少しでもほぐしてやろうという、彼なりの親心なのだろう。  普段のクールな姿からは想像もつかない、あまりにも全力すぎる変顔に、周囲のスタッフたちが必死に笑いをこらえて肩を揺らしている。 だが、当の双子たちは全く笑わなかった。  それどころか、伊織はスッと冷めた目をレンくんに向けてはっきりと言い放った。「……パパ、今お仕事中だから邪魔しないでね」「そうだよ。パパ、お顔が変だよ。ちゃんとかっこいいお顔して?」 茉莉も呆れたように首を横に振る。  5歳児から放たれた容赦のないダメ出しである。 レンくんの顔がピシリと固まり、変顔のまま完全にフリーズした。「……えっ?」「ぶっ……! あははははっ!! レンくん、自分の子供にマジ説教されてる!! ダッサ!」 こらえきれなくなったハルくんが大爆笑し、スタジオ中が堰を切ったように温かい笑い
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 モニターに次々と映し出される、堂々とした我が子の姿を見つめる。 カメラのストロボの光を浴びるたび、双子の表情はより輝きを増していく。 彼らは誰に教えられるでもなく、自らの意志で生まれ持ったアイドルの才能を爆発させていた。「はい、オッケー! 素晴らしい! 文句なしのオールアップです!」 カメラマンの明るい声がスタジオに響き渡る。 要求されたコンセプトのカットをすべて完璧に、しかも一発OKでこなすことができた。 そのため撮影は予定時刻より2時間も早く終了してしまった。「お疲れ様でした!」「伊織くん、茉莉ちゃん、最高だったよ!」 スタッフたちから大きな拍手が送られる。 ディレクターが小走りで私たちの元へ駆け寄って、深く頭を下げた。「綺更津さん、奥様。本当にありがとうございました。最高の写真が撮れました。私のディレクター人生の中でも、これほどスムーズで感動的な撮影は初めてです。公開時の反響が今から楽しみでなりません」「いえ、こちらこそお世話になりました。子供たちがご迷惑をおかけしなかったか、ヒヤヒヤしていましたが……」「迷惑だなんてとんでもない! 彼らは本物の天才ですよ!」 ディレクターの絶賛の言葉に、私は深くお辞儀を返した。 着替えを終えた伊織と茉莉が、「ありがとうございました!」とスタッフ全員に元気よく手を振る。 その愛らしい姿に、最後まで現場は温かい空気に包まれていた。 ◇  フォトスタジオからの帰り道。 用意されたワンボックスカーの広い後部座席で、私は疲れ果てた双子がすぐに眠ってしまうだろうと思っていた。 しかし、実際は違った。「パパ、次のお仕事はいつ? 明日?」「茉莉、お写真もっといっぱい撮りたかったなぁ。次も可愛いドレス着たい!」「楽しかったよね。茉莉のドレス、かわいかったよ!」「伊織の服もかっこよかったー!」
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183:配信ハプニング

 ライ麦パンの焼ける香ばしい匂いが、ペントハウスのキッチンにふわりと広がっていく。 トースターから取り出したパンの表面はカリッとキツネ色に焼き上がった。 触れるとサクッとした心地よい音が鳴っていた。 今日は本来であれば、休日。 けれど1つ特殊な仕事が入っている。 Noixの新曲ミリオンヒットを記念した、ファンクラブ向けの公式ライブ配信の日だ。 コンセプトは『休日のNoixのオフの姿』。 セナさんの提案により、外部のスタジオではなく、セキュリティが万全なこのペントハウスのリビングの一角に撮影セットが組まれることになった。「紬ちゃん、お腹空いたー! 配信始まる前になんか食べたい!」 リビングのソファから、ゆるいオーバーサイズのニットを着たハルくんが身を乗り出してくる。「今作ってますから、少し待ってくださいね。配信中もつまめるように、サンドイッチにしますから」「サンドイッチ? いいね!」 私はボウルにたっぷりのアボカドを入れ、フォークの背で滑らかになるまで潰していく。 そこに、あらかじめオリーブオイルとガーリックで香ばしく炒めておいたプリプリのむきエビを投入した。 味の決め手は、レモン汁とコクのあるマヨネーズ、少量の黒胡椒だ。 爽やかな酸味がエビの甘みを引き立て、アボカドの濃厚さと見事に調和する。 具材をたっぷりとライ麦パンに挟み込み、一口サイズにカットしていく。 サクッ、サクッという包丁の音がリズムを刻んだ。「できましたよ。『アボカドとエビのタルタルサンドイッチ』です。はちみつレモネードも用意しましたから、喉が渇いたら飲んでくださいね」 木製トレイにサンドイッチの山と、輪切りのレモンが浮かぶガラスのピッチャー、人数分のグラスを載せてリビングのローテーブルへと運ぶ。「うっわ、美味そう! エビがはみ出てる!」 ハルくんが早速手を伸ばして、パクリと一口で頬張った。「んんっ! パンがサクサクで、アボカドとろとろ。これ最高!」「こら、ハル。配信
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 私は双子にお気に入りのおもちゃを渡した。 電池で光る剣と、星の飾りがついた魔法のステッキだ。 剣は伊織、ステッキは茉莉のお気に入り――と言いたいところだが、この子たちはどちらも好きに使って遊んでいる。 この前は伊織がステッキの魔法少女、茉莉が剣のヒーローごっこをやっていて笑ってしまった。案外似合っていたので。 おもちゃを手にした双子は、プレイルームに駆け込んでいく。 私はプレイルームのドアをしっかりと閉めた。 それからキッチンの奥、カメラには絶対に映らない死角にパイプ椅子を置く。 ノートパソコンを開いて配信画面をモニタリングする準備を整えた。「それでは、配信をスタートします。3、2、1……」 セナさんの合図と共に画面の『OFFAIR』の文字が消えて、3人の姿が映し出された。「みんな、こんにちは! Noixの遊馬ハルです!」 ハルくんが元気に手を振る。 セナさんは優雅に一礼した。「葛城セナです」「綺更津レンだ」 レンくんはクールに挨拶をする。 3人がカメラに向かって手を振ると、画面の右端を流れるコメント欄が爆発的な速度で流れ始めた。 まるでテキストの滝である。 同時接続者数のカウンターが、数万、十数万、数十万とみるみるうちに跳ね上がっていく。『ミリオン達成おめでとう!!!』『部屋着姿が尊すぎる!』『3人ともリラックスしてて可愛いー!』『レンくんの鎖骨ヤバい』 祝福と歓喜のコメントが、画面を埋め尽くしていく。「みんな、ミリオン達成、本当にありがとう。これもずっと応援してくれているファンのみんなのおかげだ」 レンくんが画面越しに深く頭を下げると、コメント欄にはさらに大量のハートマークが飛び交った。「今日は『休日のオフ感』をテーマに、ここでゆっくりみんなと話そうと思ってさ」 ハルくんがサンドイッチを一つ手に取り、カメラに向かって見せびらかす。
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 3人のトークは楽しく続けられている。「お前のおかげでテイクが3回も増えたんだぞ。次やったらマイクスタンドを投げつけるからな」「こわっ! セナくん、レンくんが暴力振るおうとするー!」「自業自得です。私もあの時は、ハルの顔に台本を叩きつけようかと思いましたから」 3人のわちゃわちゃとしたやり取りに、コメント欄は『仲良しすぎるw』『ハルくん怒られてるww』と大盛り上がりを見せる。 私はキッチンの奥で、その様子を微笑ましく見つめていた。 ステージ上の完璧なパフォーマンスも素敵だけれど、こうして気心の知れたメンバー同士で素顔を見せ合っている姿も、彼らの大きな魅力だ。「次のコメントです。『皆さんはお休みの日は何をしているんですか?』」 セナさんが新しい質問を読み上げた。「私ですか。私はもっぱら読書か、ハルが散らかしたゲームの片付けですね。彼には片付けという概念が備わっていないようなので」「えー! 俺だってたまには片付けてるよ。休日はだいたいゲームしてるか、寝てるかかなぁ」 ハルくんがサンドイッチをモグモグしながら答える。「レンはどうです?」 セナさんに話を振られ、レンくんは少しだけ口元を緩めた。「俺は最近、少しだけ料理を手伝ってる。野菜の皮むきとか、簡単なことだけどな」 その発言に、コメント欄の動きが一瞬止まった。直後に凄まじい勢いで流れ始める。『えっ!? レンくんが料理!?』『レンくんが料理男子に!?』『包丁持ってる姿とか想像しただけで倒れそう』『誰に作ってあげてるの!?』 レンくんと私が結婚していることは、ファンの間でも公然の秘密として知られている。 あえて「誰」とは言わない絶妙な匂わせ発言に、ファンたちは好意的な反応を示しているようだった。「包丁の使い方はまだ危なっかしいですけどね。たまに指を切りそうになって、こちらがヒヤヒヤしますよ」 セナさんがすかさずフォローを入れ、話を上手くまとめている。
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