Semua Bab 塩対応の国宝級アイドルは、私の手料理がないと生きていけないらしい: Bab 161 - Bab 170

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166:【第2部】始まりは突然に

今回から第2部スタートです。 第2部はレンと紬の間に生まれた双子中心のお話になります。よろしくお願いします! ◇ 第2部「星を継ぐ小さな双子」 ◇ 「ああっ、茉莉! その花瓶はオモチャじゃないから! 危ないから、振り回すのはやめなさい!」 都内某所の超高級タワーマンション、ペントハウス。  我が家の朝は、今日も今日とて戦場のような騒がしさで幕を開ける。  広々としたリビングの絨毯の上を、5歳になった娘の茉莉(まつり)が元気いっぱいに駆け回っている。  ツインテールに結んだ黒髪が、うさぎの耳のようにぴょこぴょこと跳ねていた。「パパー! だっこ!」「おっと。茉莉は今日も世界一可愛いな」 茉莉をヒョイと抱き上げたのは、私の夫である綺更津レンだった。  テレビで見せる『絶対王者』の冷たい美貌はどこへやら。  目尻をデレデレに下げて、甘ったるい声で娘の頬にすりすりと頬ずりしている。 ファンが見たら卒倒する光景だが、仕方ない。  彼は私の大事な旦那様で、双子たちのお父さん。こればっかりは譲れないのだ。「パパ、絵本読んで」「おう、伊織。どれがいい? パパが全部読んでやるぞ」 ソファの隅でおとなしく絵本を開いていた息子の伊織(いおり)も、トコトコとレンくんの足元にやって来た。  レンくんと同じ吸い込まれそうなアイスブルーの瞳が、期待にキラキラと輝いている。(くっ……! 顔面偏差値が高すぎる……!) 私はフライパンを振りながら、内心で激しく萌え転がっていた。  圧倒的美貌のパパと、天使のように愛らしい双子の戯れ。  毎朝無料で拝めるこの光景は、間違いなく国宝級の尊さだ。  神様、今日もアイドルならぬ家族の尊い供給をありがとうございます!「ほら、レンくん。お仕事の時間でしょ。絵本は帰ってきてからね」 私が声をかけると、レンくんは露骨に口を尖らせた。
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 この人の独占欲と甘えん坊っぷりは全く変わっていない。……私のドキドキも変わらない。 むしろ双子が生まれてから、妙な対抗心を燃やしてくることすらある。「……行ってくる。夜はご褒美、ちょうだいね」 チュッ、と耳たぶに熱い感触を残し、彼は颯爽と玄関へ向かった。 振り返ったその顔は、もう甘えん坊のパパじゃない。 5万5千人を熱狂させる、完璧なトップアイドルの顔だった。 この切り替えの早さ、何度見ても慣れないわ。◇  彼らを見送った後、私はキッチンで本格的な戦闘態勢に入った。 今日のNoix(ノア)のスケジュールは、テレビ局での長時間の特番収録だ。 体力を消耗する彼らのために、ガツンと元気が出るお弁当を作らなければ。「よし。今日のメインは『ニラダレの豚肉炒め』よ!」 フライパンにごま油をひき、豚肉を炒める。 ジュワッという美味しそうな音と共に、お肉の色が変わっていった。 テレビ収録前だから、ニンニクは控えめに調整する。 代わりに生姜をたっぷりと効かせ、ニラと醤油の特製ダレを一気に流し込んだ。 甘辛く香ばしい匂いがキッチンに充満した。 これはもう、白米が無限に消えていく悪魔の味付けだ。 横のコンロでは、ほうれん草の胡麻和えを手早く仕上げる。 甘めに味付けした分厚い卵焼きを切り分け、赤いミニトマトと一緒に三段の重箱へ隙間なく詰め込んだ。「完璧だわ」 色鮮やかなお弁当箱を包みながら、私は満足げに頷いた。 少々年齢を重ねたとはいえ、Noixたちの仕事は今でもハード。体力を使うから、食事は実に大事になる。 これを持っていけば、あの猛獣たちも大人しくなるはずだ。 ◇  昼下がり、私はお弁当の入った大きな保冷バッグを持って、伊織と茉莉と手を繋いでテレビ局を訪れた。 裏方として通
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 食事が終わり、彼らは再びスタジオへと向かった。 私と双子は控え室に残って、テレビモニター越しに収録の様子を見守る。 モニターの中のレンくんは、先ほどのデレデレパパとは完全に別人だった。 照明を弾く銀色がかった髪。氷のように冷たく、それでいて熱を帯びたアイスブルーの瞳。 キレのあるダンスと圧倒的な歌唱力で、空間そのものを支配している。 20代の頃よりもさらに迫力を増して、見る者誰もを虜にするかよのような魅力を放っていた。「パパ……かっこいい!」「セナお兄ちゃんもハルお兄ちゃんも、すごいね!」 伊織と茉莉は、モニターに張り付くようにして画面を見つめている。 2人の小さな瞳には、憧れの光が宿っていた。 キラキラと輝くステージの上の姿は、子供たちの目にも魔法のように映るのだろう。 ◇  収録が小休止に入り、双子が少し退屈し始めた頃。 私は気分転換を兼ねて、2人を連れて廊下の自動販売機へと向かった。「伊織、茉莉、どのジュースがいい?」「ぼく、ブドウの!」「あたしは桃がいい!」 それぞれジュースを買ってやり、飲ませる。「さあ、そろそろ戻るからね」「はーい」「あっ、窓があるよ!」 その帰り道、廊下の大きな窓から見える景色に、伊織と茉莉が張り付くようにはしゃいでいた。「あっ、伊織見て! 飛行機!」「ほんとだ。パパたちも見てるかなあ」 無邪気に笑い合う双子の様子を、微笑ましく見守っていた時のことだ。「……あの、すみません。そこのお嬢ちゃんと坊っちゃん」 突然、見知らぬ男性から声をかけられた。 首からスタッフパスを下げた、業界人らしいラフな服装の男性だった。「えっ? あの、どちら様でしょうか」 私は警戒して双子を背中にかばうように前に出る。
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(キッズモデル? 伊織と茉莉が?) どう断ればいいのか言葉を探していると、廊下の奥から足音が近づいてきた。「紬?」 聞き慣れた低い声が響く。 振り返ると、ちょうど前半の収録を終えて控え室に戻る途中のレンくん、セナさん、ハルくんの3人が歩いてくるところだった。 レンくんは、私が知らない男に引き止められているのを見て、眉間にシワを寄せた。 ズカズカと足早に近づいてくる。「どうした。何かトラブルか?」 レンくんがスッと私と双子の前に立ち塞がる。 ディレクターを鋭い視線で射抜いた。「レンくん……あのね、この方が、伊織と茉莉をキッズモデルにって」 私がディレクターの言葉を伝えると、レンくんのまとう空気がさらに冷たく、険しいものに変わった。「……お断りします。俺の子供たちを、表舞台に出す気はありません」 レンくんが冷たく言い放つと、ディレクターは目を見開いて硬直した。「こ、子供たち!? ええっ!? 綺更津さんのお子さんだったんですか!?」 ディレクターは素っ頓狂な声を上げた。 無理もない。 レンくんと私が結婚したのは、半ば公然の秘密だ。 ファンはもちろん、業界の人であればだいたい知っている。 けれど双子の子供の存在は、業界内でもごく一部の限られた人間にしか知らされていない極秘事項だったのだから。 レンくんのアイドルのイメージもあるし、子供たちの安全のためでもある。 ディレクターはあんぐりと口を開けたまま、レンくんと双子を交互に見比べている。 しかし彼は敏腕と呼ばれるだけあって立ち直りも早かった。 驚きは、すぐにそれ以上の熱へと変わる。「なるほど、この圧倒的なオーラ……綺更津さんのDNAを受け継いだ逸材なら納得です! いや、だからこそ絶対にうちのプロモーションで起用させてほしい!」 ディレクターは熱心に続けたが、私は首を横に振った
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170:レンの心配

 ペントハウスの広大なリビングでは、興奮冷めやらぬ双子たちが声を上げていた。「パパみたいに、こうやってバーンってポーズするの!」「茉莉はねえ、フリフリの可愛いお姫様のドレス着る!」 伊織と茉莉は元気いっぱいにじゅうたんの上を飛び跳ねている。 手に握っているのは、ハルお兄ちゃんから誕生日日レゼントでもらったおもちゃのマイクだ。 2人はこれを宝物のように大事にしていて、パパやNoixメンバーの真似をして遊ぶのが大好きなのだ。「るん、るん~♪」「ららら~♪」 双子は独創的な動きで踊りだした。 テレビ局の控え室で見ていたレンくんのダンスを、自分たちなりに真似しているらしい。 小さい手足を一生懸命に動かす姿は、もはや天使や妖精にしか見えないくらい可愛らしい。 だが。 いつもなら、この天使たちの戯れを見て一番にデレデレに溶けるはずの人物が、今はひどく重い空気を放っていた。 ソファの中心に深く腰掛けたレンくんは、無言で手元の小さな紙片を睨みつけている。 ディレクターから渡された、あのアパレルメーカーのキッズモデルのオファー名刺だ。 眉間に深いシワを刻み、唇をへの字に曲げたまま、彼は微動だにしない。 手の中の紙片を親指の爪で弾く小さな音だけが、彼の苛立ちと戸惑いを物語っていた。「伊織、茉莉。お風呂に入りましょうか。汗をかいちゃったし、パパも少しお疲れみたいだから」 私が声をかけると、双子は「はーい!」と元気よく返事をして、トコトコとバスルームへ向かっていく。 レンくんはこちらを振り返ることなく、ただ深いため息を1つだけ吐き出した。 ◇  双子をパジャマに着替えさせて、ベッドルームの柔らかい間接照明の下で絵本を読み聞かせる。 いつもなら数ページでまぶたが落ちてくる時間なのに、今日の双子は妙に目が冴えているようだった。「……ママ」 タオルケットをぎゅっと握りし
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 あの時のカメラのフラッシュの無遠慮な眩しさを思い出すと、身震いが出る。 突きつけられるマイクの群れと、見ず知らずの人間からぶつけられる敵意の刃は、今でも私の心に焼き付いている。 あの恐ろしい記憶が脳裏をよぎり、私の指先がすっと冷たくなった。 あんな経験を、この子たちにさせるわけにはいかない。絶対に。 けれど、目の前にあるキラキラとした希望の光を、親の恐怖心だけで摘み取ってしまっていいのだろうか。「……ママから、パパにしっかりとお話ししてみるからね。だから今日は、もうおやすみなさい」 私は努めて優しい笑顔を作っる。 2人の頭を撫でると、伊織と茉莉は安心したようにこくりと頷いて、ようやく目を閉じた。 ◇ 「すや、すや……」「むにゃ……」 双子の規則正しい寝息を確認してから、私はキッチンへと向かった。 張り詰めた空気を少しでも和らげるためには、温かくて甘いものが必要だ。 お湯を沸かし、リラックス効果のあるカモミールティーを2つのカップに丁寧に注ぐ。 冷蔵庫の奥から取り出したのは、昨日からしっかりと冷やしておいた私のとっておき、特製カスタードプリンだ。 卵黄を贅沢に使い、たっぷりの生クリームで深いコクを出した生地は、とろけるようななめらかな口当たり。 そこに合わせるのは、大人の味覚を満足させるためにギリギリまで焦がした、ほろ苦いカラメルソースである。 見た目はシンプルだが、一口食べれば幸せになれる魔性のプリンだ。 もう夜だけれど、今日くらいは甘い幸せを心と体に補給するべきだろう。 トレイにティーカップとプリンを載せて、リビングへ戻る。 レンくんは先ほどと変わらない姿勢で、頭を抱えるようにしてソファに沈み込んでいた。「レンくん。少し甘いものでも食べて、落ち着きましょう」 私が隣に座り、ローテーブルにプリンを置いても、彼は顔を上げ
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「断るに決まってる。あいつらを、俺たちが味わったような場所に引きずり出すわけにはいかない」 彼の表情はトップアイドルのそれではなく、ただの父親としての苦悩に満ちていた。「子供の存在が世間にバレれば、間違いなくマスコミの標的になる。カメラに追い回されて、あることないこと書かれて……。俺の大事な宝物を、そんな危険に晒せるかよ」 痛いほど気持ちは分かる。私も全く同じ恐怖を抱いているのだから。「ええ、分かります。でも……」 私はティーカップの温もりを両手で包み込みながら、言葉を探した。「でも、あの子たちのあんなにキラキラした目を、大人の都合で摘み取ってしまっていいのかなって、迷ってしまうの。『パパみたいになりたい』って、あんなに嬉しそうに笑っていたのに」「それは……」 レンくんが言葉に詰まる。 彼だって、自分に憧れてくれる子供たちの夢を無下にはしたくないはずだ。 子供たちを守りたい。 でも、あの子たちの気持ちも大事にしてあげたい。 2人で堂々巡りの悩みの迷路に迷い込んでいると、玄関の方からガチャリとドアの開く音がした。「ただいま戻りました」「あー疲れた! 今日もレッスンきつかったー!」 深夜の打ち合わせと明日のリハーサルを終えたセナさんとハルくんが、リビングに入ってきた。「おや、甘い匂いがしますね。……そして、ひどく重たい空気だ」 セナさんが眼鏡のブリッジを中指で押し上げて、鋭い視線を向けた。 一方のハルくんは「おっ、紬ちゃんの特製プリンじゃん!」と歓声を上げる。 勝手に冷蔵庫から自分の分を取り出して、向かいのソファに陣取った。 夜中に甘いものを食べる罪悪感とか、そんなものとは無縁の人なのだ。「何かトラブルですか?」 セナさんがカモミールティーのカップを手に取りながら尋ねてきたので、私はテレビ局でのスカウトの一件と、私たち夫
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「あなたと紬さんの結婚は、既に世間に広く受け入れられています。ここで子供の存在を明かし、あなたのイメージに『家族を愛するアットホームな父親』という新たな側面を加える。これは、Noixのファン層をさらに広げるための強力な戦略になります」「でも、それでいいんですか? Noixの今までのイメージは?」 私が戸惑いながら言うと、セナさんは薄く微笑んだ。 こういう表情をすると『魔王』のニックネームがよく似合う雰囲気になる。「イメージは変わるものですよ。我々もそろそろ30代です。いつまでも恋愛ご法度の若々しいアイドルのイメージは、変えていかないとね」「俺はまだ20代だけどねー!」 ハルくんがニヤニヤ笑ったので、セナさんは絶対零度の視線を向けて黙らせた。 彼は続ける。「子供たちに話を戻しましょう。隠し続けて週刊誌にすっぱ抜かれる爆弾を抱えるより、我々のコントロール下で華々しくデビューさせる方が、はるかに安全で効率的です」「でも、マスコミが……!」「我々Noixのチームと事務所が、総力を挙げて彼らの盾となります」 セナさんの言葉は、強い説得力を持ってリビングへ響いた。「完全な安全網を構築することは可能ですとも。彼らの撮影現場には必ず我々の息の掛かったスタッフを配置し、悪意のある記者は物理的に排除する。子供たちには指一本触れさせません」「…………」 それでもレンくんは、迷うように目を閉じてしまった。「そうだよ、レンくん!」 プリンを完食したハルくんが、身を乗り出して力強く頷いた。「隠れてコソコソするより、堂々としてた方が絶対かっこいいって! あいつらの夢、俺たちで守ってやろうぜ。ポージングも笑顔の作り方も、俺が全部仕込んでやるからさ!」 オレンジ髪の猛獣の無邪気な、それでいて頼もしい宣言に、レンくんは大きく息を吸い込んだ。 仲間たちがここまで言ってくれている。 いつまでも子供たちを隠すこと
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174:小さな天才たち

 双子のモデルデビューを決意して、いよいよ撮影日が明日になった日。 ペントハウスの広大なリビングは、普段のくつろいだ空間から一変して、即席のスタジオへと模様替えされていた。 大きなイタリア製のカウチソファは壁際に寄せられて、中央の毛足の長いラグの上には広々とした空間が作られている。「さあさあ! ハルお兄ちゃんによる、特別ポージングレッスンの始まりだよー!」 オレンジ色の髪を揺らしながら、遊馬ハルくんがよく通る声で宣言した。 彼の手には、どこから持ってきたのかおもちゃのディレクターズカチンコが握られている。 カチンコというのは、あれだ。 映画監督などが持っている、2本の拍子木でカチンと鳴らすやつ。「はーい!」「よろしくおねがいします!」 双子が元気いっぱいに返事をする。 伊織と茉莉はお揃いの動きやすいTシャツとデニム姿に着替えている。 2人の目は、これから始まる新しい遊びへの期待でキラキラと輝いている。 壁際に寄せられたソファには、我が家の絶対王者であるレンくんと、Noixの頭脳である葛城セナさんが並んで腰掛けていた。 2人は腕を組んでいる。オーディションの特別審査員のような真剣な眼差しでリビングの中央を見つめていた。 私は少し離れたオープンキッチンに立ち、夕食の準備をしながら、彼らの様子を微笑ましく見守っていた。 まな板の上に鶏もも肉を広げ、余分な脂を丁寧に取り除いていく。 包丁がトントンと軽快な音を立てるたび、リビングから賑やかな声が耳に届く。「じゃあ、まずは基本の立ちポーズからね。カメラのレンズはあそこにあると思って」 ハルくんが仮想のカメラを指差し、スッと表情を切り替えた。 普段の無邪気な笑顔が消えて、トップアイドルとしてのスイッチが入る。 彼は右足を少し引き、腰に軽く手を当てた。 あごの角度を絶妙に調整し、視線をカメラに向かって鋭く流す。 ただ立っているだけなのに、周囲の空気が一気に華やかになった。 プロのモデルが
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 伊織のポーズはただのモノマネではない。 5歳の男の子が持つあどけなさと、背伸びしたかっこよさが完璧に融合した、彼にしかできない見せ方になっていた。「すごい……伊織、かっこいい!」 私は思わず声を上げる。 包丁を持っていたから、拍手できなくて残念だった。「次は茉莉の番!」 伊織のポーズに刺激されたのか、茉莉がピョンと前に飛び出してきた。「はい、茉莉ちゃんもポーズ!」 茉莉は両手を腰に当てるのではなく、両手の人差し指で自分のふっくらとした頬を突いた。 小首を右に傾けて、カメラに向かってパチンと完璧なウインクを飛ばす。 とびきりキュートで、見る者すべてを虜にする満面のアイドルの笑顔。「うわぁっ!?」 ハルくんが叫び声を上げて、そのまま床に座り込んだ。「嘘でしょ!? 俺、そんなアレンジ教えてないよ!? っていうか、一回見せただけだよ!?」 目を白黒させるハルくんをよそに、双子は「どう? かっこいい?」「茉莉、可愛い?」とキャッキャとはしゃいでいる。「……驚きましたね」 ソファから見守っていたセナさんが、眼鏡のブリッジを中指で押し上げた。 レンズの奥の瞳が感嘆の色に染まっている。「ハルのポーズを瞬時に記憶し、自分の体格とキャラクターに合わせて最適化している。被写体としての自己プロデュース能力が、すでに本能レベルで備わっている証拠です。レンのDNAの恐ろしさを、まざまざと見せつけられました」「当然だ。誰の子供だと思ってるんだ」 レンくんは深くソファに背中を預け、鼻高々に胸を張っている。 その顔は、トップアイドルではなく完全に親バカそのものだった。「あいつらは俺と紬の子供だぞ。才能の塊に決まってる」「レンくん、私はただの一般人ですから、その才能は100パーセントあなたの遺伝でしょ」 私がキッチンからツッコミを入れると、レンくんは「紬の素直さと可愛さも絶対に入ってる
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