自身が弱者と蔑む者からの暴言と、決して屈しないという反逆の言葉。 思い通りにならないエスティラの態度を前に、イェキュブの口元であろう場所から歯ぎしりのような音が響く。 背後で起きている想定外の状況に気づくこともなく、エスティラの顔を踏むその足により一層の力を込めてくる。「ヴェスティリア……ヴェスティリア、ヴェスティリア、ヴェスティリア……ッ!」 その名を呪詛のようにつぶやき続けるイェキュブ。 エスティラの新たな心の支えとなった彼女の存在は、魔女にとって最も邪魔な存在であったのだろう。 強大な力で魔獣を打倒し、人々の命を救う存在。 弱い人間を相手にすればよいだけだったイェキュブにとって、これほど厄介な相手はいないはずだ。「ああ……ああそうかい。奴がアンタの心の支えってことかい」 押しつぶさんばかりの力を足にかけるイェキュブ。 苦悶の表情を浮かべるエスティラのこめかみに向け、右手に持った杖の末端を突きつける。「ならば、もういいよ。アンタの中身は虫の餌さね」 そうつぶやくと、杖を持つ右手の各所から人間を内から食い尽くす虫が湧き出す。 無数に現れたそれは骨の杖を伝い降り、苦悶の表情を浮かべるエスティラの頭上を目指す。「アンタのママ代わりと同じように、痛みと恐怖で泣き叫ぶがいいさぁ!」 アメリアが受けた残虐な行いが、自分自身に迫ろうとしている。 それでも、エスティラの顔には恐怖も落胆もなかった。 苦しみながらも決意の表情を崩さず、拘束を抜けようとあがき始める。 巨大なサイクロプスの手から逃れることなど、普通の人間には叶わないことだ。 それでもエスティラは諦めない。 死ぬわけにはいかないと、彼女も分かっているのだ。 自分の死によってもたらされる、大いなる災いを許したくはないから。 しかし異形は、人知の及ばぬ力でそれらを蹂躙し、世界を我が物顔で闊歩する。 悪意ある力を振りかざす者達によって、ささやかな平和が失われていく。 きっとまた、どこかで命が無残に奪われていく。 ――だが、ヒーローとは蔓延る邪悪を挫き、払う存在。 そして目の当たりにした人々の支えになれる、心強い存在。 だからこそ、彼らは英雄の名を与えられるに相応しい。 それが、佐伯 良太が画面の向こうで見た、英雄の姿だ。 突如、
Last Updated : 2026-01-13 Read more