「姿勢は正しく。ふらふらしない。それでバルダート家のメイドが務まると思ってるの?」 エスティラの自室でのティータイム。 疲労困憊のアデーレに対し、エスティラの厳しい言葉が突き刺さる。 ティーポットを持つアデーレの手は、緊張のせいか小さく震えていた。 室内にはアデーレとエスティラの他、ドアの横で待機するロベルトの姿があった。 午前中共に行動していたアメリアは、食料品買い付けのために貯蔵庫のチェックをしているところだ。「とはいえ、淹れるお茶はそこそこなのよね。相変わらず」 目の前のカップに注がれる紅茶を眺めながら、エスティラがつぶやく。 それはエスティラなりの誉め言葉なのだろうか。「今後うちに仕えるんだったら、更に腕を磨いてもらわないとお話にならないけどっ」 ティーカップ片手に語るエスティラに対し、使用人を続けるつもりはないと胸中で愚痴をこぼすアデーレ。「まぁいいわ。それよりあなた」 彼女は何を思ったのか。 エスティラはアデーレに対し、テーブルを挟んだ向かいのソファを指差し、座るよう言葉なく命じてきた。「え? はぁ……失礼します」 逆らっても良いことはないため、命じられるがままに腰を下ろす。 柔らかく、深く沈み込む座面の感覚。
Last Updated : 2025-12-24 Read more