全ての力なき人々のために。 アデーレが思う正義の在り方を重んじるならば、その決意だけは貫き通さねばならない。 たとえそれが、自身の存在に縋りたいと涙する少女の気持ちに背くとしてもだ。 だが、果たして切実な思いに背くことだけが、正しき行いなのだろうか。 自問自答を頭の中で繰り返すアデーレの頬を、裏門側からのかすかに湿り気を帯びた風が撫でる。 そんな風に誘われるように、彼女は再び背後を振り返る。「お嬢様ーっ!!」 そのとき、建物の陰からアデーレたちの方へと駆け寄ってくる人々の足音が聞こえてくる。 アデーレがそちらの方へ目を向けると、ちょうど中庭へと踏み込んできた指揮官と目が合った。「おおっ、お嬢様! ヴェスティリア殿たちもご無事でしたかッ」 指揮官の声に呼応するように、彼の部下が続々と中庭へと姿を現す。 しかし何を思ったか、先頭に立っていた指揮官がアデーレと顔を合わせた瞬間、彼女たちから離れた位置で足を止める。 後方に続く部下にも手振りで立ち止まるよう指示を出し、彼らもそれに従い立ち止まる。 場の雰囲気をアデーレの表情から悟ったのだろうか。 どちらにせよ、ただならない様子のエスティラに気を遣い、指揮官たちは遠巻きからアデーレたちの様子を見守る。 そんな彼らに向け、アデーレは無言で頭を下げる。 そして促されるように、涙をこぼすエスティラと向き合うために振り返る。 エスティラの眼差しは、アデーレの言葉を受けてもなお懇願に満ちていた。「私は完璧なんかじゃない。彼らがいなければ守れない命もあった」 両親を救ってくれた指揮官の雄姿を思い浮かべつつ、アデーレは少し寂し気に笑う。「あなたの傍には、私すらも助けてくれる心強い人たちがいる。それはあなたにとって、必ず頼りになる存在だから」「ヴェスティリア……でも私は失敗して…………」「誰しも完璧ではないし、失敗をすることだってある」 「だけど」と間を挟み、アデーレは言葉を続ける。「失敗っていうのは、そこで立ち止まってしまったということ。省みて前へ進むことが出来れば、また新しい結果につなげることが出来る」 それは間違いなく、良太がフィクションの英雄たちから学んだことだった。 世界が変わろうとも決して裏切ることのなかった心の支えであり、アデーレの中にあるヴェスティリアという存在
Last Updated : 2026-01-23 Read more