凍てつく嵐の如き戦士が去り、荒れた通りに冬のロントゥーサ島の空気が戻る。 地面に突き立てられたフラムディウスを冬の風が撫でる。「ありがとうございます……ありがとうございます……っ」 アデーレが身を挺して守ろうとした家族の両親が、子供を抱きしめながら何度も頭を下げる。 だが今回、彼女の力だけではこの家族を救うことは出来なかっただろう。 敵対しているとはいえ、結果的に魔獣を倒したのはベルシビュラなのだから。 そんな事実が複雑な感情を生み出し、アデーレの胸中で渦巻く。 初めての苦戦と敗北に近い結末は、彼女にとって無念を抱かせる経験となった。(本当に、私はお礼を言われる立場なのかな) 表情では平静を保ちつつも、感謝を告げる家族の姿に申し訳なさを抱くアデーレ。 その時、両親の間に立っていた少女が彼女の方に歩み寄る。「ヴェスティリアさま」 そう言って、少女がアデーレのスカートを軽くつかむ。 両親が慌てて制止しようとするが、アデーレは大丈夫だとうなずいて返す。 スカートを握る少女は、どこか心配した面持ちでアデーレを見上げている。「どうしたの?」 その視線が気になり、アデーレは少女の目線に合わせるためその場にしゃがみ込む。 彼女の動きに合わせ、少女もスカートから手を離す。 その手を今度は遠慮がちに、アデーレの頬へと寄せていった。 小さな手が自身の頬に触れ、少女の体温が冷えた肌に伝わる。 聖火を司る巫女のはずなのに、自らの体温がここまで下がっていたのかとアデーレは内心驚く。 そんな彼女をよそに、少女は小さく口を開く。「痛くない? 大丈夫?」 何のことか分からず、少女の言葉にアデーレは首をかしげる。 だが少女と同じように自身の頬に触れてみると、手袋越しに熱い液体の感触を覚える。「あっ」 白い手袋に染み込んだ鮮血の赤。 自分でも気付かないうちに、顔に傷を負っていたらしい。 それをずっと見ていたせいで、少女はどこか不安げだったのだろう。 特にこれまでヴェスティリアが傷ついた姿を見たことがない人ほど、こういった状況は印象深く映るものだ。 アデーレは血で汚れた手袋を脱ぎ、汚れのない手で少女の頬に手を寄せる。「うん。平気だよ」 彼女はそう言いつつ、少女の不安を晴らすように優しく微笑んだ。 その言葉を素直に受け取ったのだろう。少
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